第63話
いつもありがとうございます!
同じクラスとはいえ自分とは真逆の明るい人だったゆえ、日頃かなのことが地味に苦手だったなな。
ななは自分に話を掛けるかなのことをあっさり無視してその場を避けることにした。
「怒らせちゃった…かな?」
後ろから聞こえるかなとお友達の声。
友達の子は皆
「ほっといてよ、かなちゃん。あの子、いつもああいう感じだから。」
「そうそう。「赤城財閥」のお嬢様だから私達みたいな庶民とは言葉も交わさない主義かも知れない。1年の時もあんな感じだったらしい。」
っと自分のことを適当に言ったが特に気にすることではなかった。
それはいつものことでこれで彼女から自分への興味を失ってもえばむしろご都合だと思っている。
だが
「そう…かな。」
かなはなぜかそんなななを放っておけなかった。
あの日以来、かなはなぜかななにちょくちょく絡んできた。
「とてもきれいな髪なんだーくるくるって可愛いー」
「これ、食べる?駄菓子好き?」
「良かったら今日の調理実習、一緒にやらない?私、料理とかちょっと苦手でねー」
そんなかなのことにななはひたすらの戸惑いしか感じられなかった。
家庭の事情と日光を気をつけなければならない理由でいつも苛ついている自分は他人よりすぐ怒りっぽくて不機嫌で誰かに話を掛けられるのがめんどくさくてすごく嫌だった。
「どうしてお母様は私を一般の学校に…」
吸血鬼の夜間学校ではなく日中の一般学校に通うのもただの家の方針。
「赤城財閥」の吸血鬼なら誰でも一般生徒と共に小学校を通うべしという決まりのせいでななは仕方なく日中の学校を通っているわけで
「卒業までの心房ですわ…卒業させすれば…」
卒業すれできれば二度と日の下には来ないと卒業だけを待ち遠しく望んでいた。
危なっかしくて苛つく、窮屈なそして毎日。
だがその毎日に現れたかなが一気に自分の人生を彩ってくれることをその時のななはまだ知らなかった。
かなはしつこく近寄ってきて非常に困まる存在だった。
「わぁ!工作も上手なんだね!これってコウモリかな!」
いちいち反応をして周りから注目を集めてそれが嫌だった。
「可愛いお弁当ー私と交換しない?」
遠足の時、勝手に大好物のオカズを取っていくのが嫌だった。
何より
「ね!ななってお家どこ?良かったら一緒に帰らない?」
いつの間にか勝手に名前で呼ぶようになったのが一番嫌だった。
無視していればすぐ離れると思ったその子はどんどん自分が何をしても興味を持つようになって非常に困る存在だったが今まで何度も話をかけようとした子は何人かいたが皆自分のそっけない態度に呆れて離れたがこのかなという少女はそれにめげずにいつも寄ってきたので
「どうしてわたくしなんかを…」
ななはふと彼女への些細な興味を抱えてしまった。
家はそこそこ裕福な家庭。両親とも医者でその祖父母もまた著名な医者の伝統的な医者家計だが
「かなちゃんーまた「もうちょっと頑張りましょう」もらっちゃったー」
「あはは…そうみたい…」
彼女自信は不思議に勉強が苦手だった。
だが彼女の両親は娘のことを心から愛していて今まで一度も勉強のことで責めたことがないらしくて多分家でも十分愛されて育ったとななはその明るくて前向きの性格は当たり前のものだとそう納得してしまった。
だが運動神経だけは抜群でルールさえ知ればどんな試合でも十分な活躍ができた。
球技でも、陸上でも男の子にも負けられないほどの体感と体力。力も強くて体育祭とかの時期になったらかなは常にクラスのヒーローとなった。
その上、個人の人気もすごくて
「なぁ。おめぇ、中黄のこと、好きだろう?」
「違っ…!何勝手に喋っているんだよ…!」
「かなちゃん、格好いいー」
「私、今度のパーティーには絶対かなちゃんに来てもらうんだから!」
男の子のみならず同じ女の子からもよく好きな人の名前として口の端に上ったものであった。
そんな彼女がなぜ自分に興味を持って、しかも拒み続けている自分にこだわっているのかななはふとその理由が聞きたくなった。
クラスの中でも既に
「かなちゃんーもうななみたいな子は放っておこうよー」
「かなちゃん、もう何度も話しかけているけどあの子、全部無視しっぱなしじゃんー」
っとそろそろ辞めた方がいいという話が出回っていたが
「そんなことないよーこの前だってちゃんと相手してくれたもんー」
それに屈せず自分への感心の表すを諦めなかったかな。
ちなみにあれはただ
「はぁ…」
ため息をついただけだったが
日直のため早めに登校した日、
そこで
「ななも日直なんだー奇遇だねー」
朝っぱらからかなと遭遇してしまったななは彼女に自分に寄ってくる理由を聞くことにした。
「どうしてわたくしに構うんですの?わたくしは別にあなたが思うほど大した人ではありませんから…」
魔界有数の大手グループ「赤城財閥」。
その跡継ぎ予定の自分は正真正銘のセレブリティでそれが目当てかも知れない。いくら医者家計の娘だろうと「赤城財閥」の前では比にならないから。
「何か見返りが欲しいんですの?そういうことなら家のものに話しておきますのでそれで…」
「違う違う…!そうじゃないよ…!」
もし友達にいてくれる報酬が欲しいというのならできるだけそれに応えるつもりだった。
付きまとうかなのことがめんどくさくて迷惑極まりなかったが彼女がずっと話を掛けてくれたおかげでななは少しずつ普通な学校生活というものを実感していた。
そう感じさせてくれた彼女に小さな報いというのがしたかったななだがかなはそのことを全力で否定した。
「そんなことないから…!私はただななとお友達になりたくて…!」
「わ…わたくしと…ですか…?」
そして彼女の口から出たその言葉は本当に衝撃的なものであった。
「どうしてわたくしと…」
「どうしてって…」
なぜ自分と友達になろうとするのかに関して疑問を表すななだがそれ以上、それこそ理解しがたいというかなの表情。
かなはただその疑問に
「友達になりたいのに理由とか必要なのかな…?」
自分が思った最も自然な考えを語るだけであった。
「でもわたくしはそんなに面白い人ではありませんし…それにあなたのことをずっと無視して…」
「平気平気ー私は全然気にしないからー」
「で…でも…」
今更感じてしまう悪いって感情にまともにかなの顔が見られなくなったななはそうやってかなからのお友達になりたいという気持ちに難色を示したが
「良かったら今日うちに来ない?」
まもなく自分の手をギュッと握りしめるそのぬくもりに
「わ…分かりましたわ…」
ただ静かにうなずくことしかなかった。
それからななはかなと友達になって普通な学校生活が楽しむようになった。
「なな、バッティングセンター行ってみない?ななだって運動神経がいいから絶対楽しめるよ。」
「そ…そうですの…?」
「絶対そうだよ!私が教えてあげる!」
「じゃ…じゃあ…」
かなはななを色んな場所に連れて行ってくれた。
日光が苦手なななのことに気を使って室内でも楽しめるところへななを連れて行った。
「最近は科学技術とか魔力運用法がすごく発展して室内なら普通に遊べるところとか結構増えたから。例えばここのプールは外に日が出ていても魔力障壁によって属性だけが排除できるらしい。何の理論とか全く分かんないけど。でも吸血鬼の芸能人とか他の種族もよく来るし安全性は保証されているんだって。」
「なるほど。それなら安心ですわね。」
かなと一緒なら昼間のイライラする気持ちも感じられないほど楽しかった。
かなのおかげでななはもっと日中という時間を知ることができた。
人々の生活、景色の色などもっと世界を知ることができた。
ななはその全てを教えてくれたかなに心から感謝し、彼女のことがどうしようもなく好きになった。
初キスは小学校3年の学芸会の時。
王子役として選ばれたかなが眠っているお姫様役の子をキスで起こすシーンを置いてクラスの全員が張り合った時、
「わたくしに譲るのですわ。」
ななはクラス全員を買収した。
練習は着々と進み、そろそろ役に慣れてきた頃、
「私、ななとキスしたい。」
いきなり呼ばれたななに向けたかなの一言はそれだった。
「な…なななに言ってるんですの…!?」
当然その言葉に周章狼狽状態になったななは何度もその意図を聞いたが
「だって私、今までキスとかやってみたことないもん。王子役、やるなら完璧にしたい。でも私、初めての相手がななじゃなきゃ嫌だから。」
思ったよりかなの決意が堅いものであった。
「それじゃ、いくね…?」
「い…いつでもよろしくてよ…?」
結局かなの真顔に負けてしまったななは小学校3年の時、自分の家まで自転車で駆けつけてきたかなに裏の大きなひまわりの庭園で人生初めてのキスを捧げた。
もう死んでもいいほどの幸せ。心臓は爆発しそうだが重なった唇の中から流れ込む感情はあまりにも鮮やかだったので
「なな、今日は本当にありがとう。じゃあ、学校でね?」
「は…はひぃ…」
当分の間、ななはかなと別れた後もしばらくその場から立つこともできなかった。
その日、その光景を目撃したななの母「赤城善奈」は夕食の途中、
「あなたの番が決まりました。」
っと将来かなを自分達の一族として迎えることを約束した。
彼女はやっと娘にも大切な存在ができたことを心から喜んでいた。
「いいな、ななは。」
「何がですの?」
ある日、かなはふとななの髪を羨ましくなった。
「ななは可愛いからこんなくるくるした可愛い髪型もよく似合うのに私はどうしてもこんな感じにはなれないから。」
「可愛いって…」
真っ赤に染まる顔。
かなから言ってくれる「可愛い」はいつもななの心を舞い踊らせる魔法の言葉であった。
「あなただって可愛いですわ…」
一点の偽りもない真心からの言葉。
かなもまたそう言ってくれるななのことがどうしようもなく大好きであった。
「少しいいですの?」
「ん?」
急にかなの背中に回ってかなの髪を弄り始めるなな。
やがて彼女の手先から完成されたのは
「いかがかしら。」
「わぁ!すごい!」
ななと同じ髪型をしているある金髪碧眼の少女であった。
くるっとしたきれいな金髪の自分をななから見せてくれる鏡の向こうから見つめているななは
「信じられない…」
何度も確認してもこれが自分だと信じがたい様子であった。
「思った通りにすごくお似合いですわ。」
「うん!すごく可愛いよ!私、これ好き!」
「喜んでいただいて何よりですわ。」
そんなかなのことにその二倍は嬉しくなったなな。
「ひ…暇な時でしたらたまにやってあげますわ…」
「うん!ありがとう!」
ななは今後のかなのスタイリングは自分が務めることにした。
「でも意外だね、ななって。」
「何がですの?」
「いや、ななってあの「赤城」のお嬢様だからこういうのはお手伝いさんがしてくれると思ったんだ。」
自分専用のスタイリングの道具まで全部揃っているななの意外な面に改めて驚きを感じるかな。
それは「赤城財閥」のお嬢様としてはかなり新鮮なことだったのでかなはその理由を聞かざるを得なかった。
「家の方針ですわ。吸血鬼という存在は他の種族より弱点が多いですから軽く人のことを信用してはいけません。なので大体のことは自らすることになっていますわ。」
多少厳しすぎる吸血鬼の規則。
今は大分ゆるくなったが他種族より弱点が多い吸血鬼にとって他人のことを信用するということは相当のリスクを伴うことだったのでなるべく近くにあまり人を入れない習性やある程度のことは自分でする癖は残ったままであった。
夜に限っては敵なしの強力種族である吸血鬼だが彼らは日が出ている時はどのような種族より弱体化されてしまった。
日光に長期間露出されたら命の危機に直結され、特に周りに人がいるとその危険度は極めて跳ね上がる。
その決まりは周りの威嚇が自分達の身を守るための自衛の手段であった。
「吸血鬼は数が少なく、危険に晒される時が多くて世界政府からも特に注意を払ってますの。特に理由もなく危害を加えようとしたらその場で逮捕、「種族保護法」違反で直ちに犯罪者になりますわ。」
「大変ね…」
「もちろんわたくし達だって人を犯罪者にさせたくないから細心の注意を払っていますわ。」
日の下から生きるため他種族の何倍の負担を抱えなければならない吸血鬼。
そして彼らをこの社会の一員として迎えるために頑張っている他種族達。
その全てのリスクと不便を甘んじて互いを受け入れる努力を欠かさない二人は今も「神樹様」の教えの道を充実に歩んでいた。
「お母様がわたくしを日中の一般学校に送られた理由が少し分かった気がしますわ。」
その決まりにも関わらず自分達の子を日中の学校に通わせた「赤城財閥」の吸血鬼達。
彼らはそこまでして自分の子達にこの世界を見せてあげたかった。
「じゃあ、これからは私がななのことを守ってあげるよ!」
そしてかなこそななが新しく知ったななだけの世界であった。
「法律なんかじゃなくて私がななを守ってあげる!だからななは私の傍から離れないで!」
そう言ってくれるかなの笑顔はまるで真夏の太陽のように陽気いっぱいで胸が熱くなるものであった。
自分には近づけてはいけない光。だがその温かさこそこの世界を維持し、生きられるようにしてくれるもの。
その時のななはかなのその太陽のような笑顔こそ自分にとってそういう存在だとそう感じてしまった。
「…いつまでもそのように笑ってくださいませ。」
ななはその笑顔がいつまでも変わることなく自分を見守ってくれたらいいと心から願ういを捧げた。
中学校に入った後、かなはすぐチア部、ななは生徒会に入った。
二人は尊敬される部長であり、役員であったが
「す…すごい…」
中3の文化祭、そこで二人は招待された新人のアイドルグループを見て
「なな!私達もやろうよ!」
完全にアイドルというのに取り組むことになった。




