第60話
いつもありがとうございます!
「すみません…!遅くなりました…!」
「あ、みもりちゃん。」
約束の時間より大分遅れてしまって全力で走ってきた私を見て
「あらら。もうこんなに汗だくになっちゃって。私が拭いてあげますね。」
中からハンカチを…って
「ペロペロ♥しちゃいますね?♥」
なんか舌が出ているし!?
「すごい汗…♥よし♥きました♥」
何が!?って顔怖っ!
「はい、みもりちゃん♥こっちおいで♥」
「いたっ…!これ、普通に痛いから…!」
自分の欲望のために大切な幼馴染の女の子に向けて再び例の関節技を容赦なく掛けてくるゆりちゃん!
そこから一気に私のブラウスのボタンを外したゆりちゃんは
「あらあら♥大変♥谷間にもこんなに汗が溜まっちゃって♥このままだと風邪に引いちゃいますよ♥」
っと破廉恥な手さばきで私の胸の狭間をかき回し始めました!
でも風邪なんかが今のゆりちゃんより危なくなることは断じて!断じてないと私は思います!
「やめ…!やめってば…!」
「うふふっ♥もがいても無駄ですよ?みもりちゃん♥だってみもりちゃんは私より遥かに弱いですから♥」
もう勘弁して欲しいと哀願してあがいている私の叫びにもびくともしないゆりちゃんの欲情!
ゆりちゃんはついに
「みもりちゃんの腋♥くぱぁしちゃいますよ?♥」
強制的に私の右腕を思いっきり持ち上げて人前ではあまり出すこともない私の密かなところを満天下にお披露目しちゃいました!
開け放された腕の狭間。そこから感じられるスースーとした寂しさと凄まじい恥ずかしさに私は抗おうとする意思をもろになくし、自分にも既に泣いているじゃない?って思うほど目が潤ってきましたが
「あなた達…」
そんな時私のことを助けてくれたのがもう訳分からなくなった私達のことをドン引きな顔で見下ろしている赤城さんでした。
「何しに来たのかお忘れではなくて?いちゃつくのは後にしていただけます?」
なんか怒られてる!?理不尽!!
「もー…みもりちゃんが誘惑しちゃうから怒られたのではないですか…」
お前がそれ言うのかよ!!
赤城さんのおかげでゆりちゃんのいたずらはその辺で収まりましたが実はこうなるってある程度予想はしていました。
ゆりちゃん、前の学校でも同じ部活をやったことがありませんから。
私は1年からずっと水泳部だったしゆりちゃんは生徒会と陸上部の掛け持ちでたまに遊びに行く時以外はお互いの部活を一緒にやったことがありませんでした。
いつも
「いつかまたみもりちゃんと一緒に何かしたいですね。」
って一緒にアイドルをやった頃のことを名残惜しく思っていたゆりちゃん。
私はそんなにゆりちゃんの心を知っていながらも決してまたアイドルをやろうって言い出せませんでした。
ゆりちゃんはアイドルを止めさせられた理由のことを別に私のせいではないって言ってくれましたが私は今もそのことに責任を感じてします。
ゆりちゃんも私みたいにアイドルが大好きだったしもうアイドルの活動を続けられないって言われた時すごく悲しんでいましたから。
後でそれが御祖母様の指示によることだったと言われた時、私はゆりちゃんに顔向けができませんでした。
あの家に連れて行かれて自分の出生を含めてあの時の話を薬師寺さんから言われた時、私は自分が崩れ落ちる気分でした。
私が「大家」の血を受け継いだせいでゆりちゃんがアイドルを止められた。自分がダメだったせいでゆりちゃんが悲しんでいた。そして自分の都合でファンやたくさんの人をがっかりさせてしまった。
そう思ったらだんだん自身がなくなり、普通な自分が嫌になったんです。
自分がもっと特別でしっかりしていたらあの時、何か別の方法を考え出せたかも知れないのに。普通で情けない私はファンの皆をがっかりさせたくないから、悲しむゆりちゃんが見たくないからってそのままアイドルを止めてしまいました。
周りを言い訳にして自分の心から逃げ続けていた私への罰は自分への嫌悪という形で私に戻ったのです。
だからゆりちゃんは嬉しかったんでしょう。今は色々あって一緒にアイドルができなくてもまたこうやって一緒に何かをやれることが。
でもそれは私も同じ気分でした。
「さあ、みもりちゃん。ゆりが頑張って早く片付けちゃいますね?その分みもりちゃんとの時間が増えますから。」
だから今はこのままそっとおこうっと思いま…
「うふふっ♥これ、見てください、みもりちゃん♥面白そうなおもちゃでしょ?♥この前通販でお母様が買ってくださったんです♥今日はこれでいっぱい遊びましょうね?♥」
やっぱり止めた方がいいかも…!何よ!?そのいけなそうな形のおもちゃは!?っていうかおばさんはあんなものを娘に買い送るわけ!?意味分かんないよ!!
「これは没収ですわ。」
「ああ…!」
でもさすがに副会長の赤城さんの前で見せびらかすにはさぞ無理があったので早速その場で没収されてしまいました。
「まったく…あなたという人は…」
呆れたと言っているような顔。
でもそんなゆりちゃんの突飛な行動も可愛い後輩の幼馴染への愛情表現だと赤城さんはそのまま
見逃してくれることにしました。
でも私的にはもっとびしっと言って欲しかったんです…
「さあ、今日は頑張って早く片付けますわよ。ただでさせ今日は人が少ないですから。」
「そういえば…」
言われてみれば確かに今日は人が結構少ないですね…生徒会室はこんなに広いのに赤城さんとゆりちゃん二人だけで…
「実は今日は皆お休みなんです。最近夜遅くまで仕事をすることが多かったので。」
「え?そうなの?ゆりちゃんは大丈夫?」
「私は平気ですから安心してください。」
っとゆりちゃんは問題ないって顔をしましたが私はなんとなくゆりちゃんの疲れに気がづきました。
子供の時から人一倍は勤勉で真面目だったゆりちゃん。
きっと皆が休む今の時期に自分まで休むわけにはいかないって思ってたんでしょう。
だから赤城さんもそういうゆりちゃんのことを認めてくれて気を使っていて。
私達の学校のために頑張っている二人のために私から何かしてあげたい。私も赤城さんとゆりちゃんのことを手伝いたい!
大した大役は務められないかも知れませんけど私のことでちょっとだけでも元気が出たらって思ってます!
ゆりちゃん!赤城さん!何でも任せてください!
「急にどうしたんですか?みもりちゃん。でもありがとうございます。」
っと張り切っている私のことを喜んでくれるゆりちゃん。
そういえば掃除とか細細しい雑務だったっけ?よし!それなら問題ないです!
「みもりちゃんは家事が得意なんですからね。料理もうまくて。女性力高いです。」
「えへへ…そうかな…」
両親が忙しかったせいで自然にそういうスキルが上がっただけでそんな大したことではないと思うんだけどさすがに女性力が高いって言われるのはちょっと嬉しいかも…
「へえーいいお嫁さんになりそうですわね。」
「そ…そうですか…えへへ…」
赤城さんまでそんなに褒めなくても…でもありがとうござい…
「むむむ…」
ってなんか剥れ気味っぽいですね…ゆりちゃん…私、なんか気に触ることでも言っちゃったかな…
「ダメです…みもりちゃんは私の旦那様になってもらいますから…誰の嫁さんに渡すつもりは一切ありません…なのにみもりちゃんはヘラヘラ嬉しそうな顔で…」
えええええ!?私、そうだったの!?
「みもりちゃん…ゆりを置いてけぼりにしてお嫁さんなんかにはならないでください…あなたのお嫁さんはあなたのゆりじゃないですか…」
だから不機嫌そうだったんだ!そういえばこういうやり取り、小学校の調理実習の時もやった気がします!
「みもりちゃん♥みもりちゃんのお料理は一生ゆりだけに作ってください♥そのお礼にゆりは最高の奉仕としてあなたに仕えますから♥」
とか言って周りをドン引きさせちゃったりして…!私、その後、先生に呼ばれて面談までしたんですよ!?お母さんにも先生からの電話があって…!
じゃなくて…!
「約束してください…ゆりはもう十年も待っているじゃないですか…」
「うんうん…!約束するよ…!だからそんな顔は止めて…?」
ゆりちゃん、なんかすごく落ち込んでいてここはやっぱり早く慰めてあげなきゃ…!もう…!テンションの振り幅がガバガバすぎるよ…!
昔から私とのことが関わったらすぐこんな風になっちゃうのは分かっていたけど…!
「ちょ…ちょっと落ち着いてくださいませ…!緑山さん…!」
ゆりちゃんの予想外の反応に私並みにびっくりしたような赤城さん。
戸惑っているところを見ると今のゆりちゃんの反応に相当驚いたようです。
「わ…わたくしが悪かったですわ…!ほら、おもちゃはお返ししますから…!」
やっと片付けたと思ったのに何返しているんですか!?
「べ…別にそんなに落ち込むことではないじゃないですか…!わたくしはただ虹森さんが緑山家のご家族になることを話しただけで…!」
「そ…そうでしたね…すみません…取り乱してしまって…」
「わたくしの方こそごめんなさいですわ…次からはちゃんと主語をつけるようにしますから…」
「はい…ありがとうございます…」
何…この空気…
「そ…そういえば桃坂さんは今日から見学のためお留守だったなのでは…!?ならその代わりにこのわたくしがお二人さんの指導を務めさせていただきますわ…!」
「赤城さんが…ですか!?」
そこから驚く役は赤城さんから私に移ってたちゃったんです。
でもそれは仕方ないことだと思います。だってあの「Fantasia」の「真紅のシンデレラ」と呼ばれる赤城さん直々の指導だなんて恐れ多すぎ!
なんかお金とか払わなくてもいいんですか!?
「別にお金とかいりませんわ…っていうかあなた、わたくしのことを何だと思いますの…?」
「あ…すみません…」
別にそういうつもりじゃなかったんですけど…
でもいきなりそういう美味しい話が向こうから訪れてくれたんですから驚いちゃうのも当たり前ですよ…
特に私みたいな子には…
「別にそんなに卑屈にならなくてもいいですから。婦婦揃って細かいことに気にしすぎですわ。」
「え!?婦婦って言いましたか!?副会長!?」
あ。ゆりちゃん、元気出た。
「えへへ…嬉しいです…みもりちゃん、聞いてください…婦婦ですって…」
「げ…元気が出て何よりですわ…」
あ。赤城さん、めっちゃ引いてる。
「じゃあ、良しってことでよろしくて?そう決まったらさっさと片付けちゃいますわ。虹森さん、今すぐ紅茶をお願いしてもよろしくて?」
「え!?あ、はい!」
赤城さん、ご注文早っ!っていうか私、本当にお茶くみだったの!?
「みもりちゃん。私はミルクティーでお願いします。みもりちゃんの搾りたてのホカホカミルクで。」
「うん…!分かった…!」
ってそんなの出ないわよ!?
こうして私の初めての生徒会お助けが始まったのですがその内容は主に赤城さんのお茶を入れたりゆりちゃんのボケに付き合ったりする何かそういったことでした。




