第56話
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「でも良かったね。中黄さんにこんな賑やかな後輩達ができて。」
急にほぐれた顔の青葉さん。
青葉さんは去年までのかな先輩は少し元気がなかったと言いました。
「実は中黄さん、二人が来る前にはちょっと元気なかったんだ。原因はまあわざわざ言う必要はないと思う。でも二人が同好会に入ってくれたおかげで中黄さん、去年と比べて明らかに明るくなったから。」
っと私達に感謝の気持ちを伝える青葉さん。
そんな大したことはしてませんけど…っと照れくさく笑っていた私の手をギュッと握った青葉さんは
「ううん。本当にありがとう。」
もう一度私にありがとうって言いました。
なんてきれいな手…真っ白ですらっとした指と川の小石みたいな滑らかな手の感触はまるで水の中に手を入れているみたい…
でも何より青葉さんのこの人を自分の中に引き込むような心地よい音色がたまらなくほどほっとする…
「いつまでとっているつもりですか?」
「うわぁ!?」
っといきなりすごい顔で私と青葉さんに中に入り込むゆりちゃん!
し…しまった…!ちょっと長すぎだったかも…!
「もう♥みもりちゃんったら♥そんなに嬉しかったんですね♥青葉さんとギュッとしたことが♥ごめんなさいね♥私がきれいで大人気の青葉さんじゃなく無様でみっともないゆりちゃんで♥」
ってなんかめっちゃ怒ってる!?
「そ…そんなことないよ…!ゆりちゃんだってすごくきれいだから…!」
「ええ♥嘘は良くないですよ、みもりちゃん♥だってみもりちゃん、私と一緒にいる時はあまりそんな顔をしてくれないんですもの♥」
やっぱり怒ってる!!
ゆりちゃんの怒りゲージは大体こんな感じです。
「もう…どうしてみもりちゃんはそんなに他の人と仲良くしようとするんですか…あなたのゆりが傍にいるのに…」
これが第1段階。これならまだなんとか取り返すことができます。
ほっぺを膨らませたりこねたりするだけのゆりちゃんはそれなりに可愛いですから私はたまにゆりちゃんのことをからかったりしちゃうんです。
「あらあら♥そんなに他の女が良いですね?♥ごめんなさい、みもりちゃん♥みもりちゃんの好みのタイプではなくて♥こんな無様なゆりなんて嫌ですよね?♥」
これからは難易度が急激に上がります。
じわじわと溜まってきた怒りが笑顔を被って噴出される第2段階なのでこの状態のゆりちゃんには口の利き方にも十分注意を払わなければなりません。
もし間違ってしまったら…
「もうこの部屋から出ることはできません…私のことを…あなたのゆりのことを世界一で愛していると話してもらうまでは…」
あはは…あれは確かに怖かったんですよね…
中1の頃だったかな…なんかゆりちゃんが私のことを誤解しちゃって夜中まで私のことを体育倉庫に閉じ込んだのは…
家では私とゆりちゃんがいなくなって警察まで出動して本当大変だったんです…
でも一番怖いのはやっぱりあれかな…
「みもりちゃん?」
「あ…ごめん…」
急に静かになった私のことを心配そうに見つめているゆりちゃん。
やっぱり未だに怖いんだな…ただ考えただけで固まっちゃうくらい…
「ごめんね、ゆりちゃん…」
「み…みもりちゃん!?どうしたんですか!?」
いきなり抱きついた私のことに今まで怒っていたのが全く考えられなくなったように思いっきり驚いてしまうゆりちゃん。
でも今はもう少しこうさせて欲しいっと思う私でした。
怒ってもいい。駄々をこねてもいい。ワガママ言ったりパンツを盗んだり匂いを嗅いだりしてもいい。
監禁されるのはちょっと怖いけど我慢するから。ゆりちゃんの気が済むまで私も頑張ってみるから。
「だから私を独りにしないで…」
「みもりちゃん…」
抱えられているゆりちゃんの中から百合の花の匂いがする。私が一番安心できる場所の花の香がする。
辛い時、苦しい時、いつでも私を待ってくれる世界一で温かい場所。
私…ゆりちゃんのことが本当に大好きっ…
「はぁ…♥みもりちゃん…♥そうでしたね…♥ゆりに…♥はぁ…♥こんなに甘えたかったんですね…♥じゃあ、早速やっちゃいましょうか…?♥」
何を!?っていうか顔、怖っ!!
でもこうしてくれるゆりちゃんのことが私…本当に大好きだから…
「どうしましょう…♥ついにこの日が来たんですね…♥みもりちゃんと私が結ばれる日が…♥
ゆりの膣内に全部出してもらいますからね…?♥」
だから何を!?私から何が出るの!?
「本当に二人は仲良しなんだね。つい羨ましくなっちゃうよくらい。」
「そ…そうですか?えへへ…」
私とゆりちゃんの茶番を見て随分と楽しくなったような青葉さん。
でもその後の赤城さんは
「あの二人も虹森さんと緑山さんみたいな感じだったって聞いたけどね。」
そんな私とゆりちゃんのことを赤城さんに重ねてまるで本人のことのように残念がっていました。
あの「Fantasia」のメンバーなのに人気者の会長さんと違っていつもひとりでいる赤城さん。
そんな彼女のことを心配するのは同じ音楽特待生である青葉さんも同じでした。
「赤城さんはむやみに自分の心を許したりはしないから。その場に入れるのはいつだって中黄さんたった一人だけ。」
っと自分にも知らない二人の仲で絡んでいる凝りのことを悲しむ青葉さん。
彼女はライバルの同時に大切な友達である赤城さんのことも、そんな赤城さんを心配しているかな先輩のことも心から案じていました。
「私が二人のことを知ったのはこの学校に来てからだけど二人は私にとってかけがえのない友達だから。だからなんとかしてあげたかったんだ。」
「青葉さん…」
清らかで優しい青い目。
その目を見つめた時、私は心からこう感じてしまいました。
「やっぱりいい人なんだ、青葉さん…」
っと。
「赤城さんが何か企んでいるのは私も分かっている。でもそれは私のことと関係のあることだから私にはどうにかできなかった。できるのはせいぜい赤城さんの話し相手になってあげるだけのちっぽけなこと。」
今回の派閥争いの中心に立っている自分にできることはごく一部しかないと自分の無力さを悔しむ青葉さん。
でも私はその時、その青葉さんの口から衝撃的なことを聞いてしまいました。
「こんなんじゃ先輩のことが守れないのに…」
そう言った青葉さんはとても…とても悔しく見えました。
その時の青葉さんから言った言葉の意味が何なのかまだ未熟だった私にはちっとも分かりませんでした。
私は自分の聞き間違いかも知れないと思いながら青葉さんに今の言葉について聞きましたが
「ううん。何でもない。」
そんな私に彼女はいつもの爽やかな顔で答えることを避けるだけでした。
私が何度も聞いたところで彼女から正直に言ってくれるはずがない。私はそれを無意識的に感じていたかも知れません。
でも私はそれにもかかわらずもっと突っかかるべきでした。例えそれが正解にたどり着かなくてももっと食らいつくべきでした。
もし私がもっと勇気を出したら何か変わったかも知れないと遠い未来の私はずっと後悔しました。
「でも赤城さんのことを嫌いにならないで欲しい。二人共、今はただ空回りしているだけで本当は赤城さんだって中黄さんのことを傷つけたりはしたくないから。」
っと他の人には知らない本当の赤城さんの気持ちを私達に教えてくれる青葉さん。
青葉さんは私達にできるだけ赤城さんと仲良くして欲しいとお願いしました。
「ああ見えても結構寂しがり屋さんだから。本人は絶対違いますわって否定しているけどね。」
「可愛いところもあるんじゃないですか。副会長って。」
「まあねえ。」
青葉さんの言っていることをなんとか分かってくれたようなゆりちゃん。
ゆりちゃんは生徒会の仲らいで副会長である赤城さんの面倒をちゃんと見てあげることを約束してくれました。
「副会長にはみもりちゃんのことを助けて頂いた恩がありますから。ぜひ協力させてください。」
「もちろん。ありがとう、緑山さん。」
なんだかんだ言ってもやっぱり優しいんだな、ゆりちゃん。ゆりちゃんだって可愛いところ、たくさんあるんだから。
「それはそうと…」
面倒を見るって言ってたけど一体何からどうすればいいのか見当も付きませんね…
同じ生徒会のゆりちゃんはともかく私には本当に赤城さんとの繋がりがないんですから…
話だってあの日が初めてでそれ以来喋ったことは皆無ですし…
「そういえば赤城さんって食事はどうしているんですか。やっぱり吸血鬼ですから血とか…」
「あ、やっぱりそっちなんだね。大丈夫。血は血だけど別に昔の映画みたいに人を噛んだりはしないから。」
「そ…そうですか…?」
でもやっぱり血は取っているんだ…
実は私…スプラッターとか全然苦手です…ホラー映画とかも絶対NGですしお化け屋敷にも全然入れませんから…
暗いところはめっちゃ苦手でびっくりするほどビビりすぎますからそういうたぐいのものには近づかない主義なんです…
「でもゆりちゃん、意外とホラー映画とか好きなんだよね…」
本当に意外なんですがゆりちゃんは見た目と違って筋金入りのホラー映画マニアなんです。
恋愛映画とかも好きなんですけど私と一緒に映画を見る時はいつもホラー映画ばっかり予約するほど大好物なんです。
そのおかげで映画の予約はとっくに私の役目になりました。無理矢理に怖い映画を見せられるのはもう散々だから…
ホラーだけじゃなくゴアも全然オーケーそうですし。あまり好むジャンルではなさそうですが。
「そうですね。お化けなんか全然怖くないですから。私の方がずっと強そうですし。」
まあ…それは分かるかも…
「それにみもりちゃんが「ゆりちゃん…怖いよ…」ってギュッとするのが可愛くてつい見ちゃうんですよ。」
「ええ…!?私そう…!?」
「あははっ。虹森さん、可愛すぎるよ。」
うう…なんかすごく恥ずかしいんですけど…
ゆりちゃんがそんな目的でホラー映画とか私に見せたなんて全然知らなかったよ…
「というかホラー映画ならみもりちゃんがちょびっと漏らしますからむしろ目当てはそっちでしょうか。」
キサマ!!
その日、私にはホラー映画を見られない理由がもう一つできました。
「でも赤城さん…やっぱり血液とか摂取するんだ…」
やっぱり「神樹様」によって世界が一変したと言っても種の性質までは変わらなかったようですね。
「神樹様」のお力で命に関わる致命的なところは大分解消したと聞いたんですけど…
「でも吸血鬼にあって血液は生きるのに欠かせないものだから仕方ないよ。私だって水がなければ生きてられないし。」
「私はみもりちゃんがいなければ生きられません。」
ありがとう、ゆりちゃん…私もゆりちゃんがいなきゃダメだから…
青葉さんは私達よりもう少し赤城さんの吸血鬼という種族に詳しいらしいです。
吸血鬼の血液についたこと、太陽との関係、そして「神樹様」によって変わった彼らの生活様式など。
青葉さんは友達である赤城さんのために独自的に色々調べてみたそうです。
「世界政府によって人に直接危害を加えるのは禁止されている吸血鬼の人には一定量の血液パックが一生無常で提供されるんだ。それほど吸血鬼には重要なところなのよ。血液は全部献血されたもので病院や血液センターなどに行けばもらえる。私みたいな人魚が陸上生活のために「神社」や「教会」に行くのと同じね。」
「へえーそうだったんですね。」
これはちょっと興味が湧いちゃうかも。
私、この星の歴史とか種族学とかが大好きですからこういう話にすごく興味があります。
良かったらもっと話して…
「何しているんですの?あなた達…」
その時、いきなり掛けられた女性の声。
びっくりして見上げたそこには
「赤城さん…!?」
いつの間にか私達の存在を気づいてすぐ前まで近づいていた赤城さんが少し呆れたって顔で私達を見つめていました。




