第54話
いつもありがとうございます!
「ううん…おしっこ…」
ふと感じられる尿意に覚めてしまう目。
寝る前にゆりちゃんとのお喋りの間にちびちびジュース飲みすぎたせいかも…
「あ…そういえば…」
トイレに行くために体を起こす時、ふと思い出すこと。それは昨夜から部屋のトイレの具合があまりよくないってことでした。
寮長さんには修理のことをお願いしましたがさすがに時間が時間ですし明日直しておくことになりました。
「となるとやっぱり共用トイレに行くしかないかな…」
でもそのため、まさか私がこの時間に廊下まで出なければならないとは…
「ど…どうしよう…」
私…暗いところは結構苦手ですよね…あの家で暮らしていた時、私はずっと暗い部屋に閉じ込められましたからそれがトラウマになっちゃって…
「でもいつまでもこうしているわけには…」
「みもりちゃん…?」
どんどん強くなった尿意になんかお股の方も痺れてきたその時、私の気配に布団から顔を出して何かあったんですかっと聞いてくるゆりちゃん。
変にガサガサしちゃったせいかも…
「ごめんね、ゆりちゃん…起こしちゃった?」
「いいえ…ただ何かあるのかなっと…」
「うん、私が起こしちゃったんだね。ごめんなさい。」
眠気が染み付いている目をこすりながら今の時間を確かめるゆりちゃん。
ゆりちゃんいわく現在の時刻はまだ3時だそうです。
「なんでもない。トイレに行きたいだけだから。ごめんね、起こしちゃって。」
「いえいえ…また寝ればいいんですから…でも今この部屋にいるのは具合が悪いんですからあまり使わない方がいいかと…」
「うん…だから外まで出ようと思って…」
さすがに高校生にもなってトイレに一緒に行って欲しいとは言えませんね…まあ、中学校まではちょいちょい一緒に行ってたんですけど…
何よりゆりちゃん寝る途中でしたからそんなの悪いんですよ…
ちょっと怖いんですけどやっぱり一人で行くことしか…ってゆりちゃん?何してるの?
布団の中から何かもそもそしているゆりちゃん。一体何しているんだろう…
「あ…ちょっと待ってくださいね、みもりちゃん…今準備しますから…」
も…もしかして一緒に行ってくれるってことかな…?
そ…そんなの悪いよ…!一人でも行けるからゆりちゃんはそのままで布団に戻って…!
「いいえ…私が飲んであげようかと思いまして…」
何を!?
「何って…みもりちゃん、お手洗いに行きたかったんじゃ…」
「そ…そうは言ったけど別に何か飲む要素なんてどこにも…!」
っと言いかけた瞬間、頭の中ですれ違うゆりちゃんの普段の行い。
さすがの私でもこの辺でゆりちゃんの言っていることが何なのか悟るようになってしまいました。
「待ってくださいね…こぼしたらもったいないですからちゃんと狙ってくださいね…?」
っと私の前に膝をついて頭を上げて思いっきり口を開けるゆりちゃん!!何でだよ!?
「え…?あ…やっぱりいきなり慣れない姿勢でやるのは難しいですよね…?しゃがんだ方がいいってことでしょう…?待ってください…今仰向きで直しますから…」
だから何でそうなるのよ!!何!?その極端な選択肢!?
「いいって、そんなの…!ちゃんとトイレ行くから…!」
「ええー…どうせ水に流すのなら私に飲ませてください…」
もしかして私がトイレに行く度にそんな風に考えてたの!?怖っ!地味に引くんですけど!?
っていうかただ寝言と言ってくれよ!!
「も…もう…!ゆりちゃんは寝ていて…!私一人で行ってくるから…!おやすみ…!」
っと全く幼馴染にやることとは思われない発想を実行しようとするゆりちゃんを部屋に置いといて部屋から出てしまった私。
もう3時なのに眠気が吹っ飛んじゃったくらいびっくりしちゃったじゃん、ゆりちゃん…!
「今後トイレに行く時は気をつけよう…」
水とかきちんと流したかのか出る前にもう一度確認することを決意した私はそれから数時間後、トイレの修理の時、ゆりちゃん所有の私物のマイクロカメラが巧妙に隠されていたことが分かるようになりました。
その後、ゆりちゃんは寮長さんに呼ばれてめっちゃ怒られました。
「うう…やっぱり暗い…」
消灯済みの真っ暗な廊下。暗い口を開いたその喉の向こうはまるで名も知らないある気色悪い生物の胃袋への通り道…というのはちょっと大げさですけどなかなか不気味って感じです…
1年生の寮は他の建物と違って旧校舎を改装して今も使っているものなんですがその古い歴史があるほど様々な噂が生徒達の口から口へと伝わっています。
「歩く屍」「存在しないはずの演劇部の部室から寝ている女」「湖の地下室」などなど…
まあ、殆どはただの噂にすぎないだけで寮長さんはもうここで百年以上も住んでいますからそういう物騒はことは断じて存在しないと判明済みです。寮長さんも変な不安感を起こすからそういった話は慎むようにって生徒達に注意しました。
それにその「歩く屍」ってのも結局夜の見回りのため、寮の中を回っていた寮長さんのことだったし。噂ってやつな大体そんなもんでしょう。
「でもまあ…」
確かにこんな時間に寮長さんと鉢合わせしたりすると驚いちゃうんでしょうね…私だって初めて見た時は本当にびっくりして…
「何してるんだ。お前。」
「ふぎゃー!?」
その瞬間、背中から掛けられた声にびっくりして思わず大声まで出そうだった私でしたが
「おいおい。皆寝ているから静かにしろ。」
っと言われた時、周りの生徒達に迷惑をかけないためなんとか口をふさいで声を飲み込みました。
「び…びっくりした…!」
特におばけとかが出るっとは思わなかったんですがさすがにいきなりこんな場所で声を掛けられるのは心臓に悪いです…!もう驚きすぎて心臓が飛び出すんじゃないかと思ってました…!
「大丈夫か。すまねえな、驚かせちまって。」
「寮長さん…!」
振り向いたあそこには見回り途中だったと思われる寮長さんが申し訳ないって顔で私のことを見つめていました。
朽ち果てた顔面をなんとか動かして気まずく笑っている寮長さん。
窓からの光に照らされている寮長さんのその姿は驚きや恐れよりどことなく切ない気分を感じさせたので私は一先ず驚いた胸を落ち着けて彼女と向き合うことにしました。
「すみません…!いきなり驚いちゃって…!」
「いや、いきなり声を掛けた私が悪かったから気にしないでくれ。」
少し私の方に近づいて目の前にいる相手のことを確認しようとする寮長さん。
「誰かと思ったら虹森だったか。」
まもなく私のことを気づくようになった寮長さんは改めて驚かせてしまったことを謝りました。
「こんな時間に何してるんだ。もう3時だぞ?」
「あ…すみません…トイレに行こうかと思いまして…」
「そうか。すまないな、早く直してくれなくて。」
「いいえ。時間も遅かったんですから。」
今日の寮長さん、なんか謝るの多いかも…
「昼頃には直しておくからそれまで我慢してくれねえか。」
「はい、もちろんです。ありがとうございます。」
もしかして修理とか寮長さんが直接するのかな。そういえば1年生の寮で起きたトラブルって殆ど寮長さんが処理してくれたかも。
「まあ、ここで住んだのも結構長いからな。その気になればちょっとした家くらいは建てられるぞ?」
「す…すごいですね…」
美化部の活動ってより建設作業っぽいですね、それって…
「いつもこんな風にパトロールしてくれたんですね…いつもありがとうございます…」
「お礼されるぐらいではないから気にすんな。ほら、トイレ行くんだろう?入り口までは一緒に行ってあげよう。」
「ありがとうございます…正直暗いところはちょっと苦手で…」
「えへへ…」ってしょぼい笑いで自分の情けさを誤魔化そうとした私。
でもそんな私に寮長さんは何一つ恥じらうことではないと言ってくれました。
「誰だって怖いところや苦手なところはあるからさ。私だってそうだしな。」
「寮長さんにもあるんですね…苦手なこと…」
そんな私の珍しいですねって言わんばかりの目にほんの少しだけ自分の本当のことを教えることにした寮長さん。
この世界で一番強い人だと言われている第3女子校の「Scum」の部長「ロシアンルーレット」寮長さんは「過去」が一番怖くて苦手なところだと話しました。
「人っていうのは大体先のことよりもう過ぎちまった古いことに足元をすくわれたりするもんだから。私だってそういう人間で今も昔のことに捕らわれている。だからちゃんと前へ進めるやつがいるとつい羨ましくなっちまうんだよ。」
多分自分の「ゾンビ」という種族に関した話ではなく、寮長さんご自分の心の話だと私はそう思います。
前にゆうきさんが話しました。寮長さんは自分がゾンビであることを一度も後悔したり恨んだことがないと。
むしろそういう体になってもっとたくさんの生徒達を自分の手で守れるようになったことを誇らしく思っているそうです。
だったら寮長さんは何を後悔し、何を恨んでいるのでしょうか…どうして彼女は人間の身を捨てて永遠にこの世をさまよう死ねない「歩く屍」の道を選んだんでしょうか…
今の私には寮長さんの話は何一つ理解できない謎そのものでした。
「なあ、虹森。ちょっと頼みがあるんだがな。」
「はい?」
ふと私にお願いしたいものがあると私のことを呼び止める寮長さん。
「よかったら副会長…ななのやつの面倒を見てくれねえか。」
寮長さんから私に頼んだのは他でもない生徒会副会長の赤城さんのことでした。
全く考えてみたこともない寮長さんの頼みに少し戸惑ってしまう私。
そんな私に彼女は自分と赤城さんの珍しい縁について話してくれました。
「あいつの母も、祖母もこの学校出身だからあいつには私個人的な親しみがあってな。二人共生徒会ですげえ活躍してしそのおかげで働きやすかった。特にななは母にそっくりでほっとけねえんだ。気難しくてちょっとしたことですぐ壁を作って自分の中に閉じこもって誰とも話さないから。私はそれが仕方がねえほど気になっちまうんだ。」
「そうでしたね…」
廊下の窓を開けて少し風を当たる寮長さん。
月の光がそっと溶け込んだ夜風に触れられその感触は今の寮長さんの優しい頼みほど心地よくてとても気持ちいいものでした。
「ななは中学校まではどこへ行ってもかなと一緒だったがあいつと喧嘩した後は赤の他人になっちまったらしい。かなだったら「赤城」の赤だけにってくだらねえ冗談とか言うかも知れないだがあいにく私はそういう面白い人ではなくてな。」
「そういう割に今思いっきりうまいこと言っちゃったんですよね…?」
「あ、そうか。」
っと私との会話の間を持たせる寮長さん。
寮長さんの不向きの冗談のおかげで少し緩んだ雰囲気の中、寮長さんは自分が知っている範囲内の赤城さんのことを私に話してくれました。
「何が原因だったのは残念ながら私も知らない。ななはうちの所属でもないしあまり自分の話とかやらないタイプだから。あ、言っておくけど別にお前にななのことを解決して欲しいわけではない。私が言いたいのはただ少しだけでもいいからあいつと仲良くして欲しいということだから。あいつが自分のことを独りぼっちと感じられないようにな。」
「独りぼっち…」
寮長さんはこう話しました。
「うちの子の中でななと同中の子があって知ってたけどななは小学校からかな以外にはあまり友達がなかったらしい。性格的に気難しいところが多くて皆から避けられていたそうだ。分かってはいたけどやっぱりそういう話、あまり嬉しくなかった。
まあ、「吸血鬼」のくせに日の下で暮らしているから無理でもねえ。吸血鬼にとって私達が普通に生活している昼って時間で暮すことなんて放射線がいっぱい詰まって核融合炉の中でシャワーをすることだから。」
もちろんそこまで極端なものではないだが長い時間日差しを当たると肌が焦げて本当に危ない状況になりかねないということは否定できないと吸血鬼の「日光恐怖症」のことを説明してくれる寮長さん。
いつも身につけていた赤城さんの暗い日傘はそういうためのものでした。
「だからあまり人との繋がりを作らなかったそうだ。吸血鬼がこの世界で他の種族と共に生活するためにはその間から生活せねばならないわけだが吸血鬼にとってそれは結構厳しいことだった。
一旦友達ができちまったら一緒に遊んだりするため太陽の下から滞在する時間が増えるからななはそれを恐れていたようだ。ななだけではねえ。私が知っている吸血鬼は全てそんなもんだった。」
そんな赤城さんに初めてできた友達がかな先輩。二人は小学校の時からの幼馴染でした。
「二人の関係がおかしくなったのは中3の頃だそうだ。その前にはあんなに仲が良かったあいつらが急によそよそしくなって今みたいな状態になっちまったらしい。かなと何らかの理由で喧嘩したことがその原因だらしいが先言ったとおりに揉めた理由は誰も知らない。かなのやつもそのことに関しては一言も言わねえから。っていうかななの話が出ると向こうから話から離れようとしちまうからまともに話したこともないな。全部知っているのはせいぜい人の頭のことが読める会長くらいかな。」
「そういえば…」
ふと思い出すみらい先輩の話。
私は今の寮長さんの話と似たようなものを前に先輩から聞いた記憶がありました。
「かなちゃんと赤城さんの間に何があったのは確かですけど残念ながらこの話についてかなちゃんはあまり話したくないように思っているらしいです…セシリアちゃんに聞いても絶対教えてくれないはずだしそうすればいいのか…」
っとお二人さんのことをすごく心配していた先輩。
寮長さんはそんな先輩と同じく自分の孫的な存在である赤城さんと彼女の大切な幼馴染のかな先輩のことを心配していたんです。
「私がお願いしたいのはただななのやつと仲良くして欲しいってことだ。言ったとおりにななはちょっと尖ったところや気難しいところが多いからあまり友達とかいないそうで作ろうともしない。何でも一人でしようとするしすぐ一人になろうとする。なんだか虹森はそういうやつほっとけねえと思ってな。」
「そ…そうでしょうか…」
っと私という人のことを評価する寮長さんの話におこがましいって気まずく笑ってしまう私でしたが本音のことを言うと私だって赤城さんのことをほっておきたくありませんでした。
「だって赤城さんはあの夜、命がけで薬師寺さんから私のことを助けてくれましたから…」
もしあの時に赤城さんがいなかったら私はまた薬師寺さんに連れられてあの家に戻られたかも知れない。
ゆりちゃんは赤城さんにそうさせてくれなかったことをずっと感謝していると言いました。
それにそういう理由だけではありません。
実は私は赤城さんのことを知ってから気にかかることがもう一つありました。
「赤城さん…なんだか歌うのがすごく苦しそうに見えて…」
自分がどれほどおこがましい話を言っているのかそれは私もよく分かっています。何と言っても赤城さんはあの超人気アイドル「Fantasia」のメインボーカルですから。
自己嫌悪とかそういうものに押しつぶされてアイドルから逃げていた私とは全然違うすごくて偉い人に対してなんと生意気なことを言っているのか私自身もよく分かっています。
きれいな歌声。可愛くて愛らしいちっちゃい体とは真逆の抑え切れないほどの圧倒的で迫力あふれるカリスマ。
その上、世界屈指の名門第3女子校の副会長まで完璧にこなしている赤城さんは正真正銘のスーパーアイドルです。
でも私はそんな赤城さんの歌を素直に楽しめませんでした。
「赤城さん…ずっと苦しそうに見えてたんです…」
まるで胸が張り裂けそうな痛くて辛くてどうしようもないって顔…
彼女はその派手な舞台の上に立って皆の前で堂々と歌っていましたが私の目には指一本触れたらすぐ崩れそうにもろくて儚く見えてました。
私は彼女の歌を聞いている間、なぜかずっと胸がチクチクと辛かったのです…
「アイドルは皆に夢を与えて元気づけてくれる存在だからそんな顔はダメだと思います…アイドルがそんな顔をしたら応援してくれる皆が悲しくなっちゃいますから…でも私はただ赤城さんのそういう苦しむ顔は見たくありませんでした…」
きっと赤城さんなりの大事な理由があるでしょう。考えるだけで憂鬱になって何もしたくなり、ただ自分を閉じ込めて自分の内面以外は気にしたくなくなる赤城さんだけの大事な理由があるでしょう。
「でもそんな時こそ一人で全部抱えていてはいけないって私はそう思います…」
もっと元気を出してもっと笑って欲しい。そのために自分の悩みや苦しみを皆と話し合って少しずつ解決していく。
そうやってまた勇気を出して笑顔になるのもとても大事だと私はそう思います。
「私だって苦しい時、泣きたくなる時は全部ゆりちゃんに話しちゃいますから…」
悲しいこと、悔しいことで泣きたくなった時、私の手をギュッと握って話を聞いてくれる大切なゆりちゃん。
私は子供の頃からずっとそんな風にゆりちゃんからいっぱい勇気をもらってきました。
だから私はそんな彼女のために頑張りたいです。
赤城さんが勇気を出せるように、そして笑顔で歌えるようになるために彼女の傍から彼女のことを見守ってあげたいです。
今の私じゃ多分赤城さんにとってそんな大役が務まる存在にはなれないかも知れませんがせめて彼女が自分のことを一人だと感じないように私が彼女を励ましてあげたい。
あの夜、薬師寺から私のことを助けてくれたように今度は私が赤城さんを助けてあげたい。
寮長さんから頼まれた時から私はずっとそう思っていました。
「そうか。」
今の言葉が自分の頼みを引き受けるという答えだと理解したような寮長さんは
「ありがとうな。」
私の頭にそっと手を上げて今のありがとうって気持ちを表しました。
それはきっと大変な道でしょう。大したことはできないかも知れません。
でももし私がほんのちょっとでも赤城さんの心を開くことができたら赤城さんが笑ってくれるかも知れない。
何よりかな先輩への心を開いてくれるかも知れないっという期待感に私の体は勝手に寮長さんの頼みを受け入れました。
「明日から当分の間、生徒会のトップはななになる。会長も、あのルルって書記もいないから明日からの生徒会は必ずななの思惑通りに動くはずだ。もしお前がいることでななの心境に何かの変化が起きたらななはもう一度心を改めてくれると私はそう思う。特に負担を持つ必要はないから虹森は虹森のやり方でななの面倒を見てくれ。」
「け…結構重要なお役目ですね…」
別にそういうつもりではないってことは分かっていますがさり気なくプレッシャーになっちゃったんですね、今の言葉…
っていうかあのルルさんって会長さんと一緒に3年生だったんだ…
でもやるしかない…!私は赤城さんのお友達になって赤城さんの話を聞いて赤城さんの悩みを一緒に考える…!
必ず赤城さんの笑顔を取り戻して見せる…!そしてそれをきっかけに徐々に赤城さんの心を開いてかな先輩とも仲直りさせるんだ…!
っと張り切っていた私を見て
「頼もしいな。やっぱりお前に頼んだのが正解だった。」
腫れ朽ちた口元を歪ませてほっとした笑みを浮かべた寮長さんは
「じゃあ、明日からよろしくな。何かあったら相談してくれよ。」
そのままパトロールに戻りました。
廊下の端から寮長さんの姿が消える頃、胸に詰まった謎の高揚感。
それは多分何かを始まる前にあたっての期待感やそういうものではなく、ただ赤城さんのお力になりたいというひたすらの純粋な気持ちでした。
「よし…!やるぞ…!」
皆が眠っている静寂の時間。
私の心は夜の廊下をパーっと明かすほど輝いていました。
「みもりちゃん…遅いじゃないですか…」
でも急に押し寄せた尿意に中に入った私はトイレの中で私のことを待ち構えていたゆりちゃんのことにもう一度大声で叫ばなければなりませんでした。
「はい♥ゆりが一緒にいてあげますから早くおしっこしましょうね♥パンツ脱ぐの手伝いましょうか♥」
っと私のパジャマに取り付いたゆりちゃんのことに私は抗うこともできずそのままゆりちゃんの前で用を足すことしかありませんでした。
「あらあら♥健やかできれいな色ですね♥ぴゅっとしてすごい勢い♥」
もう帰りたい…




