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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第2章「始まり」
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第45話

引っ越しのため遅くなりました。申し訳ありません。

いつもありがとうございます!

学校に戻った後も私のやることはまだ終わりませんでした。


「じゃあ、生徒会の方には私から報告するからみもりちゃんは紫村さんのところ、よろしくね?」

「あ、はい…!ありがとうございます…!」


ギリギリの終電でなんとか学校に戻った私達は早速中央広場で別れることにしました。

私の無事と今夜のことについて「百花繚乱」の団長として生徒会に報告しなければならないゆうなさんはこのまま会長さんがいる生徒会室に向かいます。

こんな遅い時間までお疲れ様です。会長さん。


「うう…」


でも今頃ゆりちゃんなら多分寮にいるかも…何も言わずこんな夜中に外に出てしまったんですもの…絶対怒られちゃうよ…なんとかちゃんと謝って機嫌を直してあげなきゃ…


「みもりちゃん、もしかして緑山さんのことを心配している?大丈夫よー緑山さんならみもりちゃんのパンツを見せただけで許してくれるはずだからー」


ええ!?なんじゃそりゃ!?っていうかうちのゆりちゃんのことをそんな風に言わないでくださいませんか!?


「あははっ。じゃあ、私は先に失礼するね?それからえっと…」


っと急に妹のゆうきさんの顔を窺うゆうなさん。

私達と少し離れたところでタバコを吸っている彼女を見ているゆうなさんの目は不安の色でゆらりっと震えていました。


「ううん。なんでもない。」


でもゆうなさんとの話はそこまででした。

きっと言いたいことなんていくらでもあるはずなのにそれを一人で胸に溜めてしまったゆうなさんは「じゃあ、またね」っと私と妹さんから背を向けてしまいました。


生徒会室に向かって遠くなる彼女の背中。彼女は私にも、そして自分の妹さんにも何も言わずそのまま夜の闇に消えちゃいました。


「私達もそろそろ行きましょうか。」


その時、やっと私のところに近寄って寮に戻ることを提案するゆうきさんの声に気がついた私。

でも自分の姉なんかはどうでもいいって言っているような彼女の目に思わずびくっとしてしまいました。


なんと鋭い目…月光に照らされているその赤と黄色のオッドアイはまるで地の底からずっと眠っていて何千年を越えてやっと世界にその姿を現した2つの宝石のように美しく、そして神秘的に輝いてしました。

でもそこに宿っている鋭い光を見た時、私の本能は危険を感じ取り、思わず全身に警戒の神経を尖らせてしまいました。


「そう警戒しなくても大丈夫です。龍とはいえ別に食ったりはしませんから。」

「あ…!す…すみません…!」


私からの警戒心を気づいたようにまずはなんとか私を安心させようとしたゆうきさんのその話にやっと自分がどれだけの失礼なことをやっているのか分かってしまった私。

私は今日初対面の人、しかも私の護衛で私のことをずっと見守ってくれた人のことを思いっきり怖がっていたのです!

私ったら…!なんと失礼なことを…!


でも私の失敬なことにも顔色さえ乱さずそっと笑みを浮かべるゆうきさん。私はその笑みを見てから少し落ち着くようになりました。


「仕方ないでしょう。こんな見た目じゃ。結構誤解されやすいタイプというのは承知の上でのでそう謝らないでください。」


今日初めて話し合う彼女の声は私が知っている「Dirty」のボーカルの「結日(ゆうひ)優気(ゆうき)」さんそのものでした。

渋くて少し重みのある声。でも聞いているとなんだか心落ち着く安心感のあるほっとする感じのその声は自分のことを誤解されやすい人だとそう言いました。


「別に否定する気はありません。実際私はこの学校に来る前には不良でしたから。」


「Scum」の部長さんである寮長さんに報告するため、私と一緒に寮まで行くことにしたゆうきさん。

話している間、少し気づいてしまいましたが彼女は私が思っていたほど怖い人ではありませんでした。


「私のことをテレビで…ですか。ちょっと照れくさいですね、そういうの。」

「そ…そうですか?」

「ええ。あれはただバンドの先輩達の押し付けに仕方なく出ただけで私本人はあまり人に見られるのが好きじゃないです。」


じゃあ、どうしてバンドのボーカルという目立つことを…っと聞く私の質問にまた照れくさい顔をするゆうきさん。

それには彼女なりの深い理由がありました。


「これは私の恩返しです。」


そう言ったゆうきさんは合ったばかりの私に少しだけこの学校に来る前の自分の話してくれました。


「私は家から出た後、今までずっとばかたれの奴らと一緒に悪いことばかりしてきました。バイクを盗んで道路を走り回って気に入らないやつがあったらとりあえず殴ってみた。そのために自分を鍛えたわけではなかったのに私はいつの間にか頭ごなしで人を殴ったりするクソみたいな人間になってしました。だから社会からずっと排除されていました。」


社会から遠ざけられていた孤立感。ゆうきさんはそれが嫌になればなるほど社会から空回りしていたと自分の過去を振り返っていました。

でもきっとその頃の自分も分かっていたはずです。自分がそんなことをすればするほど社会から遠くなることを。

でも彼女はなぜかそれを断ち切れなかったと言いました。


「姉さんが「勇者」になったという話を聞いてからそれはもっとひどくなりました。私だって姉さんと同じ龍なのに私はなぜ家からも捨てられた社会のゴミで姉さんは皆から尊敬される「勇者」なのか。そんなことを思い出せば出すほど私は自分が嫌になってそれを忘れるために夜の道路を走って毎日を喧嘩で過ごしました。」


自分の意味を求めて夜の街をさまよい続けたゆうきさん。そんな彼女を正しい道へ導いてくれたのが「Scum」の部長、「紫村(しむら)(さき)」寮長さんとの出会いでした。


「はじめでした。戦う前に既に負けることを知らせているような人は。少し恥ずかしいですがあの時、私ちょっと漏らしちゃったんです。」

「えええ!?そ…そうですか…!?」


自分の恥ずかしいことをどうってことでもないって平然とした口調で明かしているゆうきさん。でもその表情は悔みの一欠片もない実に爽やかな顔だったので私はそのことに逆に驚かされてしまったのです。


「部長は私をぶちのめした後、こう言いました。分からない時は第3に来い。そこでお前が忘れていた自分を、分からなかった自分を探すんだっと。だから昔世話になった知り合いの警官に頼んでここに入学しました。ばかたれだけど一緒にいると楽しかった奴らとも別れて姉さんがいるこの学校に。」


その後、ゆうきさんは寮長さんの誘いで「Scum」に入部したそうです。寮長さんが直接スカウトしに来ることなんてめったになかったのでゆうきさんの話はすぐ話題になりました。


そう言って自分の首元に巻かれている少しボロくて古いものと思われる赤いマフラーをそっと握るゆうきさん。

その目はどことなく懐かしくて切ない匂いがするちょっぴり寂しいものでしたがその同時にとても大切な思い出を胸いっぱい抱いていたのでゆうきさんにとってそのマフラーはどれだけ大切なものなのか私はすぐ分かるようになりました。


「「Scum」に入って皆を守る間に気づいたんです。何だ、結局私は姉さんみたいに誰かを守りたかったんだっと。」


彼女はしょんぼりした苦い笑みであの時、自分が気づいたことはそういうものだったと言いました。


「私は姉さんのことをずっと羨んでいただけでした。皆に尊敬されて感謝される姉さんみたいな人が。でも今までの自分は社会から排除してきたゴミだからそれは叶う道もない夢見がちに過ぎなかった。それに絶望して私はずっと逃げていたんです。社会からも、私自身からも。

でもここに来てそれじゃダメだと分かったんです。例え「勇者」ではなくても私の力で誰かを守れる。それだけで私は自分が変わらなければならないというのを気づくに十分でした。」


その頃、引き受けたのが「Scum」から推進していた音楽プロジェクトの一つであった「Dirty」の活動。ゆうきさんは自分なりにこの学校に恩返しがしたかったと「Dirty」でからの活動のことをそう言いました。


「この学校に来なかったら今頃私は年少とか入っていたかも知れません。その後は私のことを見込んでいたヤクザ組織なんかに入って姉さんとは真逆の仕事をしているんでしょう。私は私の変えてくれたこの学校に自分の声で感謝の気持ちを伝えたくてバンドを始めました。まあ、先輩達と違ってろくな音楽教育も受けなかったせいで実力も足りなくて性格も悪いからなかなか人気が出ないのは少し残念だと思いますが。」


っと以外に普通な悩みをしているゆうきさんはこれからもバンドは続けるつもりだとすごく張り切っていました。

でも私は決してゆうきさんのボーカルとしての魅力は十分備えていると思います。ゆうきさんは今のバンドの人気は全部同じバンドの先輩達のおかげだと言いましたが私はそれにはきっとゆうきさんの歌の力もあったと思います。

だって私、ゆうきさんの歌、すごく良かったんですもの!なんとはっきりとは言えませんけどとにかく聞いていると元気が出るっていうか勇気が出るっていうか…!ゆうきさんだけに!


「そう言われるとちょっと自身ができますね。ありがとうございます、虹森さん。」

「ど…どういたしまして…!」


案外素直な反応のゆうきさんから少しびっくりはしましたが私は正直に言ってちょっと嬉しかったです。私からの応援で誰かが元気を出してくれてそれがすごく嬉しくて…

ってあれ…?この感覚…どこかで感じたような…


「いい人ですね、あなたは。」

「えへへ…そうでしょうか…」


先まではちょっと怖いって思っていたゆうきさんがこんなに親しく感じられちゃうなんて…やっぱり人は話し合ってから考えるべきかも知れませんね。


でもそう感じていても私はゆうきさんにお姉さんのゆうなさんのことを決して聞けませんでした。それは多分ゆうきさんにとっても、ゆうなさんにとっても一番の地雷のはずですから。何も知らないくせに軽々しく家族の問題に首を突っ込むわけには…


「姉さんとのことは悪いと思います。」


っていきなり向こうから来た!?


会長さんみたいに私の頭でも読み取ったように先のゆうなさんとのことを謝るゆうきさん!

でもそれは会長さんみたいな特殊能力ではなくただの私の顔から気づいたことに過ぎませんでした!


「本当そういうのは下手くそですね、虹森さんって。聞きたいって気持ちが顔に全部漏れていますし。」

「そ…そうなんですか…!?す…すみません…!勝手に…!」

「いいですよ、別に。特に隠しているわけでもありませんから。」


っとさり気なく私自身もあまり自覚してない弱点を曝け出すゆうきさん!は…恥ずかしい…!


「素直でいいじゃないですか。私、そういう人、好きです。」

「そ…そうですか…?あ…ありがとうございます…」


好きって…ゆうきさんみたいにかっこいい人からそんなこと言われるとさすがにすごく嬉しいって気分になりますがくれぐれもゆりちゃんの前ではお控え願いますね…?ゆりちゃん、絶対ゆうきさんのことを「あのたらし目…」とか言って嫌うかも知れませんから…


「それはそれで怖いですね。別にそういうつもりではありませんが。」

「あはは…」


っと軽い会話でゆるくなった空気の中で私から聞きたいと思っていたゆうなさんとのことについて少しだけ話そうとするゆうきさん。

彼女はまず家の事情まではさすがに解き明かすわけにはいかないって予め私の求めましたが私もそこまでは触れてはいけないと思いますから。

私はただ初対面なのに私のことを信じて自分の悩みのことを少しでも話してくれる彼女のことがとても嬉しかったんです。

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