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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第2章「始まり」
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第43話

引っ越しのため遅くなって申し訳ありませんでした。待たせてくださって本当にありがとうございます。

いつもありがとうございます!

「おはようございます!先輩!」


放課後の部室。他の部員より一足早く部室に来ているのはいつもみらいであった。


「今日も早いですね。先輩って。」


いつも一番で部室に来て掃除やら練習の準備やらで他の部員より人一倍は忙しくしているみらい。だが彼女は心から同好会での仕事を楽しんでいたのでそれも全部自分の大切な思い出に取り替えていた。

当然同好会の中ではかけがえのない部員として扱われ、愛される存在であった。


だが同好会の中にみらいと同級生の部員はいなかった。美人でしっかりして性格もいいがなぜか中々友達ができてないみらいのことをずっと気にかけていた同好会の先輩達はそんなみらいのために一生懸命新しい部員を探してくれた。


「ダメだわ…」

「やっぱり知名度的に無理だよー」


当時にもアイドルは人を引き寄せるいい手段として使われていた。手段とはいえ皆自分達のなりに随分楽しんでいてお互いのことをいい競争相手と思って競い合い、高め合ったがそれはあくまで過ぎたこと。今はそのような爽やかな勝負の欠片も残っていない。

その中でもみらい達の「アイドル同好会」はびっくりするほど知名度が低かった。


「すみません…先輩…私のために…」

「別にみらいが気にすることではないから。うちの方こそごめんね?」


っといつも謝る自分を慰めてくれた優しい先輩達のことが大好きだったみらい。だが同じ年の部員がいないのは少し寂しい気分だった。


そんな感じでみらいは2年生になり、3年生だった先輩達が卒業して部員の数は著しく減ってしまった。

今年こそ新しい部員をゲットするために張り切った同好会の部員達はその活動範囲を校外まで広めて同好会の宣伝に励むことになったが大型部の知名度に押されて同好会のドアを叩いてくれる新しい部員は誰一人いなかった。


「いらっしゃい。うみちゃん。」


だがそれもまた過ぎたことに過ぎなかった。


みらい代の「黄金世代」の次に入学した次の世代。その中でも明らかな頭角を表したのが魔界最高の歌姫「青葉海」であった。


大型部はなんとしても彼女を先占するためにあらゆる手を尽くしたが


「「青葉(あおば)(うみ)」と申します。入部希望します。」


彼女から選んだのはなぜか隅っこの教室でホコリまみれになっていたあるちっぽけな同好会であった。


入部届を持ってきて自分のことを入部希望者と言ったその有名人の突然な登場にあけらかんとした顔になってしまった同好会の部員達。その中には当然みらいも入っていた。


それ以来、同好会は波に乗って快進撃の連続だった。うみの名声を背負って同好会のくせに他の大型部より圧倒的に目立つことになった。

たくさんのライブをして学校内からも随分知られるようになり、外部からのオファーもたくさん届いた。


「うみちゃんが入ってくれて本当に良かったです!」

「私も入部できて本当に嬉しいと思います。」


っとみらいはうみの入部に感謝していたが実は彼女はこの学校に入学する前からみらいのことを知っていた。


偶然に見かけた同好会の路上ライブ。ろくな機材もないのに世界的な舞台で歌う自分よりも楽しく歌っているみらいを見てうみは自分はに持ってない、言葉では言えない煌めきを感じた。

その後、みらいが第3女子校の「アイドル同好会」ということを知ったうみは安全の問題で陸地の「人魚(マーメイド)」の長期間滞留を禁じている「魔界王家」に第3女子校の魔界交流生徒を申し込み、「神社」と「教会」の協力でみらいと一緒にアイドル活動ができるようになった。


「今日は先輩達が遅いから二人っきりで練習です。「練習デート」って感じ?なんちゃって♥」


っとお茶目な笑いを見せるみらい。

うみはそんな彼女の笑顔が何より好きだった。


「デ…デートって…」


みらいの冗談に少し赤くなるうみ。

昔からずっと他人を演じてきたうみだが彼女はなぜかみらいの前では素直になってしまった。

たまにそんな自分に戸惑いを感じたりしたがうみはそんな自分がそんなに嫌ではなく、むしろ結構気に入ってた。

みらいと一緒にいて今まで知らなかったもう一人の自分を見つけ出せたような気がしてこういう自分も悪くはないとうみはそう思っていた。


「あ!今日はなんとセシリアちゃんが遊びに来るんですよ?うみちゃんは合ったことありますか。セシリアちゃんのこと。」


っと紅茶を入れながら自分の数少ない友達であるセシリアのことを聞くみらい。悪意のない純真で無垢なその表情は見ているだけでもほっとするようなものだったが


「まあ、一応同じ特待生ですから。」


本音のことを言うとうみはセシリアのことを随分煙たがっていた。


みらいが2年生だった去年、セシリアは殆ど学校にはいなかった。

「Fantasia」の新メンバー達のことやツアーのことで学校にいられる時間が非常に少なかったセシリアのことだったがうみはなぜか彼女のことを結構気兼ねしていた。


「でも私、あの人のこと、結構苦手ですから。だってあの人、私達の考えが読めるんですよね?何でしたっけ。「心理支配(メンタルドミネーター)」だったっけ。」


っとセシリアに対する自分の意見を何一つ隠さず正直言ってしまううみ。


「私も相手の気持ちがある程度計ることはできますけどあの人はそういうレベルじゃないですから。そのくせに自分からは何も見せないようにしていて。それって結構ずるいじゃないですか。」


彼女は一方的に相手のことを見抜いてしまうセシリアの能力がどうしても気に入らなかった。


何より


「なのに先輩の前ではあんな風に恋に落ちた少女漫画の主人公みたいになっちゃって…」


みらいに対して自分と()()()()()を抱いているのが一番気に食わなかった。


人の前ではいくらでも自分を取り繕えるうみ。だがこのバカほどでかいおっぱいの先輩の前じゃなぜか自分は何もかも全部さらけ出してしまう。

だから普段なら絶対やらない他人の悪口もみらの前ならこう気安く叩くことができた。それほどうみはみらいのことを心底から信頼していた。


だが


「ち…違いますよ…!うみちゃん…!それはセシリアちゃんもそううまく制御できないだけで決して悪気があるわけでは…!」


みらいは大切な後輩が自分の大好きな友達のことをそう言っていることに我慢がならなかった。


「確かにちょっと分かりにくい性格とは思うんですけどセシリアちゃんはとてもいい子なんです…!ちゃんと話し合ってみればうみちゃんだってきっと…!」


なんとかセシリアのことをフォローしてあげたくてもう涙まで出てきたみらい。その素直なみらいの姿に


「先輩…可愛い…」


っと思ってしまったうみは


「まあまあ、ちょっと落ち着いてくださいよ、先輩。嫌いとか一言も言ってませんでしたから。」


まずはこの慌ててやけに乳まで振りまくっている可愛い先輩のことを落ち着けようとした。


「別に悪い人とは思いません。きっと本人もそのせいで色々大変でしょう。すみません、何も知らないくせにそんなこと言っちゃって。」


今の軽率な発言について心から反省するうみ。そして


「いいえ…!私のことは大丈夫です…!私、知ってますから…!うみちゃんだってすっごく優しい子ということ…!」


そう言ってくれるうみのことをすごく喜んだみらいはいつの間にか彼女の手をギュッと握って感謝の気持ちを表していた。


「今は忙しくてあまり会えないかも知れませんけどセシリアちゃんが学校に戻ったら3人で一緒に食事でもしましょう…!多分来月には戻ると思いますし…!あ!良かったら私の家ではどうですか!」

「せ…先輩のお家…!?」


突然家に誘うみらいのことに少なくない驚きを感じてしまううみ。

だが


「はい…!ぜひ…!」


彼女はその嬉しい提案を決して拒まなかった。


時の流れを忘れるほど楽しい時間。かけがえのない思い出。うみはその大切な時間を自分の一番の宝物だと思った。


人は少なくても愛情溢れて温かった小さな同好会。同好会での時間は今までの人生の中で一番幸せだとあの頃のうみはそう思っていた。こんな幸せの時間を送れるようにしてくれた素敵な出会いに感謝した。


だが一番幸せだと思ったのは


「先輩と出会って本当に良かったんです…」


人生初めて「好き」って気持ちを教えてくれたみらいとの出会いであった。


あの頃のうみは世界誰より幸せった。


***


「でもうみちゃんとの幸せな時間はそう長くありませんでした。」


浮かない顔の先輩。その時、私は実感的に感じてしまいました。ここから先輩から聞かせてくれる話は私が知らないこの学校の隠されていた黒い一面だということを。


「うみちゃんはいじめられました。」


唇をぐっと食いしばる先輩。その表情は未だに先輩が過去の自分を後悔しながら責めていることを代わりに物語っているようにとても苦しくて悲しかったんですが


「先輩…」


私は目の前のこの悲しんでいる先輩に何を言ってあげたらいいのかただ戸惑うだけでした。


「あ…!予め言っておきたいんですけど速水さんではありません…!」


っと話に入る事前にちゃんとしたいところを表す先輩。

先輩はあのエルフ「プラチナ皇室」のお姫様である生徒会長さんも簡単に手を出せないくらいの権力を持っているあの透明できれいだった神界側のリーダーさんのことをこう話しました。


「速水さんは私と今までずっと同じクラスでしたから。私は速水さんのことを2年も見守ってきました。確かに性格は気難しくてちょっと怖そうだけど周りからすごく信頼されて尊敬されている人なんです。何か事情はあるらしいですけど決して自分より弱い子をいじめつけたりする悪い人ではありません。」


強い信頼の目。今の状況から見ると今回の派閥争いの中心になるのは明らかにあの「百花繚乱」の速水さんと「合唱部」の青葉さん。つまり俗に言うゲームとかで出る「ラスボス」ということです。

でも先輩は決して青葉さんの肩を持たず自分の目で確かめてきた速水さんのことを話していました。

少し嫌なことを言ったって誰も文句は言わないはずなのに一生懸命速水さんのフォローする先輩。私は先輩のその広い心に心底から敬意を持ってしまいました。


「主導者達は同じクラスの神界の同級生でいじめた理由はただの妬みらしいです…うみちゃんはこの有名人が集まる学校の中でもすごく目立つ子でしたから…」

「妬み…」


なんて理由なのだろう…っと思ってしまった私でしたが全く分からないものでもない理由かも知れません。自分より優れた人間を見て羨ましくて妬ましい気分になる時なんて誰でもありますから。

だとしても決して暴力が正当化される理由にはなれないこともまた私はよく知っていました。


「速水さんはその事件に関する神界側の全ての責任をたった一人で取ってくれました。主導の子達は一人残らず速水さんによって皆退学。速水さんは神界側の総責任者としてうみちゃんのところに行って自ら頭を下げて謝罪しました。」

「あの速水さんが…」


全然知りませんでした…速水さんは神界の誇り高い「ファントムナイツ」の正式な後継者。だから私達みたいな一般生徒とは比べられないほどの高いプライドを持っているとゆりちゃんはそう言いました。


「「(ファントム)」にとって名誉は命より大事なもの。その誇りに泥を塗るくらいのなら自決を選んでしまう種族です。だから彼らは強いのです。名誉を守るためなら命さえたやすく捨てられる。そういう覚悟を彼らは持って生まれますから。」


「大戦争」の時、神界側の真っ先で敵と戦った「霊」。神界の開放と自由意志を唱えて抗った彼らは今も神界の大英雄として皆に敬われている。その家系で後継者として育った速水さんの苦労、私もちょっとくらいなら分かります。

私だって「大家」の後継者でしたから。家の名誉、自分の世界の運命を背負うってことがどういう意味なのか。私ならその責任の重さを分かります。


「でもまさかあの速水さんが青葉さんに頭を下げたとは…」

「それに速水さんの家は「黄金の塔(ゴールデンタワー)」の親玉。速水さんは自分の立場を承知の上であの時、全部一人で背負ってくれました。同じ「黄金の塔」の子達を自ら学校から追い出してしまったせいで神界の人達にたくさん非難され、罵られましたが速水さんはうみちゃんのために全部受け入れてくれました。」


黄金の塔(ゴールデンタワー)」。それは人界の「大家」や魔界の「魔界王家」のような世界政府以前の神界側の旧統治勢力のことです。

世界政府側の「プラチナ皇室」とは随分相反した態度を取っていた組織ですが最近は少しずつ世界政府に協力的なところを見せているらしいです。

もちろん「魔界王家」ほどの積極的な協調関係ではありませんがでそれでもその共存を図っている姿勢に大きな意味があるとお父さんはそう言いました。


「「黄金の塔」は内部の結束力が強いからよほど大きな事件を起こさない限り決して追い出したりはしませんが速水さんはうみちゃんのために同じ「黄金の塔」だった主導の子達を自分の権限で学校から追放しました。そしてその中には…」


少し話を曇らせる先輩。何かすごく嫌なことでも思い出してしまったのか、噛み締めた先輩の唇は何度も震えていました。


「うみちゃんを助けてくれたのはみもりちゃんもよく知っている私の友人、セシリアちゃんでした。セシリアちゃんがうみちゃんの異変を気づいてくれたおかげでその事件は外に出られました。」

「会長さんが…」


会長さん…いつも自分は自分の能力のことがあまり好きじゃないって言ったのに…

でもそのおかげで青葉さんのことが助かったことを先輩は心から感謝していると言いました。


「もしセシリアちゃんがいなかったらどうなってしまったのか…うみちゃんは強い子だから誰にもそのことについて話したりはしなかったんです…自分が本当のことを言ってしまったら私や他の皆が心配してしまうんだから…

それにうみちゃんはとても優しい子ですから自分をいじめる子達に被害が出ることを恐れてずっと一人で我慢していたそうです…収まるまで自分が黙っていれば誰も悲しまずに済むって…」


そしてついに涙を見せてしまう先輩。そんな先輩を見て私は青葉さんのことを本当に強くて優しい人だと感じてしまいました。

強い…それが決していい方法ではないことを本人も知っていたはずなのにそこまでやれる彼女のことを私は本当に強いって思いました。

でも先輩はあの時、自分から青葉さんのことを気づいてくれなかったことをずっと後悔していました。


その事件は学校に大きな波乱を呼び寄せてしまいました。

最初は軽いいたずらから初めた彼女達のいじめはどんどんエスカレーターしてしまってその挙げ句、病院に入院するほどひどくなりました。

「神社」と「教会」の協力で人魚の下半身ではない人間の足に陸地生活ができても水がついたら元の足に戻ってしまう青葉さんの弱点を利用してあらゆる手で青葉さんの心に消えない傷を与えた当時の主導者達はその動画を撮ってネットの裏側から高い値段に売りさばきました。

この事実が明らかになった時、世界政府は密かに特別調査本部まで作って流通に関わった関係者を含めてその動画を購入した人まで全部逮捕して拘束したそうです。


世界政府の付属校から起きた由々しき事件。世界政府はこの事実が外の人達の耳に入ってしまったらまずいことになると判断してマスコミを統制、徹底的な口止めをしました。

そして学校の責任者にその責任を問い、厳重な処罰を与えました。神界側の「百花繚乱」はもちろん彼女達と一緒に生徒を守るべきだった「Scum」までその評価が地に落ちてしまいました。


理事長は解任、理事会と「黄金の塔」は青葉さんと彼女の事務所、「魔界王家」に莫大な賠償金を払わなければなりませんでした。

「Scum」の部長である寮長さんは自分の生徒をしっかり見守らなかったという理由で世界政府の偉い人達に呼び出されてその責任を問い詰められました。もちろん「百花繚乱」の側からあの速水さんが行ったらしいです。

そのイジメ事件は夢と未来に満ちた第3女子校の名声をたったの一瞬で失墜させてしまったのです。


先輩はその事件について涙を流しながらこう話しました。


「なんで私はうみちゃんのことを気づいてあげられなかったんでしょうか…なんで私はこんなに無力で情けないんでしょうか…」


なぜあの時の自分は苦しんで傷ついていた青葉さんのために動けなかったのかっと…


「みもりちゃんは臆病者ではありません。本当の臆病者は私でした。」

「え…?」


そっと涙を拭いた後、突然自分のことを臆病者だと告白する先輩。

でも私はその言葉の意味がさっぱり分からなくてただ黙って先輩の次の言葉を待つだけでした。


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