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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第333話

遅くなって申し訳ございません…( ;∀;)

もう何ヶ月も書いてないものやら…本職のこともあってめったに時間が取れなかったので思わず随分休んでしまいました…

できるだけ早く調子を取り戻せるように頑張ります…!

翠湖ちゃんが珠璃のもとから離れてから数年の時間が経ち、


「このままだと人類は滅亡してしまう。」


異種族による戦争が勃発、人類は史上最大の存亡の危機を押し付けられてしまった。


過去何度も指摘された東方面に向けられた敵の大規模の空襲。

直接国境を接している南と北の方ばかり気にしていた人類は比較的に防御が甘かった東方面を攻められ、戦況はあっという間に不利になった。

かろうじて維持していた戦線は復旧ができないほど完全に崩壊され、かなりの戦力を失われてしまった人類は最後の防御線までの後退を強いられた。


圧倒的な戦力差。

残りの戦力を全部集めて最後の抗戦に取り掛かろうとした人類は他の種族に比べて頭数も、個人の強さも遥かに劣る非力な存在であった。

切り札であった「ネバーランドプラン」が挫折した今彼らにできるのはただ怯えて絶望しながら滅亡を待ち受けることくらいしかなかった。

全自動武装システム「アイギス」の完成は間に合ったが、自律型永久発電機関「アマテラス」、統合制御システム「オーバーロード」が未完成のままで終わってしまって、結局すべての対抗手段を失った人類に残された道は絶滅ただ一つであった。


「「両面宿儺」がなんとか持ちこたえているがその時間には限りがある。

その間になんとかせねば…」


陸軍第2師団長、「竹内(たけうち)重太郎(じゅうたろう)」中将。

私が率いている第7科学歩兵連隊、通称「両面宿儺(りょうめんすくな)」が所属している第2師団の司令官で私の直属上司である彼はこの状況にひどく悩まされていた。


明らかな劣勢。

いくら強化人間でできている「両面宿儺」とはいえ猛烈に押し寄せてくるすべての敵を食い止めるには限界がある。

だからこそ彼は「ネバーランドプラン」に異常なほどこだわっていて、それが潰えた今の状況に困惑していた。

私の後ろ盾でもあったその男は人を見る目も確かでそれなりに有能であったが、国のためであれば手段を問わない極端な国粋主義の人物であった。

戦後、すべての種族をまとめた世界政府が出現した時、


「「外道」と生きろって?どいつもこいつもどうかしている!」


彼は世界の新しい秩序に絶望し、


「…この国を建て直す。」


それを最後に自ら例の組織、「大家」の配下に入った。

その後、「薬師寺(やくしじ)」、「犬山(いぬやま)」と一緒に「御三家」と呼ばれる「大家」の柱となったその男の子孫は今も国の修羅として「大家」に仕えている。


「少将、君の意見を聞きたい。」


彼は私にこう聞く。

この状況を乗り越えるには何が必要なのか。

どうすれば絶滅という最悪の結末を免れて人類を存続させられるのかと。


だが、残念ながらもう人類に残された選択地は殆どなかった。

破壊された人類の文明なんてなんの役にも立てない。

非力な人類は奴らの餌になるか、死ぬことしかない。

私はこの時期にすでに最悪の状況を想定してそれまで蓄えた財産を使って家族全員の避難を考えていた。


金や宝石を欲しがるやつならいくらでもいる。それは人間だけではなく異種族にも同じく通用する欲望という簡単な世の理。

異種族の中で隠れて生き延びるのは癪だが絶滅されるよりずっとマシだ。

どのみちこの戦は負ける。それなら私は自分が持っている知識とすべてを利用して我々一家だけでも生き残らせてみせる。

私は敵と刺し違えても戦う道を選ぶ竹内中将とは違う。

私は軍人だったがその以前に一家の主。故に最も合理的な選択をして家族たちを守る責任がある。

そう自分に言い聞かせながら竹内中将の質問にあえて深刻な顔を繕ってみせた。

国のためであれば喜んで命を差し出せる竹内中将と違って私は卑怯だったが決して愚かではなかった。

私は自分が自分の家族しか考えない利己的で都合の良い、そういう人間であることをあまりにもよく知っていた。


部屋に流れる重苦しい沈黙。

これといった答えを出せない私を見て一度ため息を吐いた竹内中将は、


「残りの兵力を全部集めろ。最後の防衛戦を張る。」


師団の残りの戦力を集めて防衛戦を構築して、東方面最後の抗戦の準備を指示した。


百戦錬磨の竹内中将でも死を覚悟せざるをえない絶望的な状況。

家族全員を海外に避難させる手配をすべて済ませておいた私にはどうでも良かったが、この最後の防衛戦が突破されたら人類はこれ以上希望を持つことはできないだろう。

むしろ今までなんとか持ちこたえたのが奇跡と思われるほどよく戦った。

家族と友、社会と国を守るために命がけで戦ってくれた全員に心から敬意を表する。

彼らは本当に勇敢な戦士でこのような絶望的な状況の中でもなお勇気を振り絞って攻めてくる敵を立ちはだかって立派に戦ってくれた。

たとえその結果が敗北とともに訪れる人類の絶滅だとしても、私はその気高い精神と崇高な犠牲は決して無駄ではなかったと、その輝かしい正義の魂に自分にできる最大の敬意を表した。


もしあの時、私が翠湖ちゃんのために「春雨」の男との取引で「アマテラス」を壊さなかったなら多くの若い命を失わずに済んでいたかもしれない。

彼らは戦場で命を落とさず、無事に愛する家族のもとに戻れたかもしれない。

結局、すべての原因は自分にあると、彼らの死の責任は全部自分にあると思うと、今でも頭に向けて引き金を引きたくなるほど惨めな気分になってしまう。

それでもなお生きようとするのはその生命と替えても守りたい家族があるから。

そのためなら人類を裏切ることなんて造作もない。

そう思って私はまた罪のないたくさんの命を無惨な戦場へ向かわせた。


だが私はやがて知らなかったのはむしろ自分の方だったということを思い知らされてしまう。

竹内中将は最後の抗戦のために残りの兵力を集めたわけではない。

彼は待ち続けていた。


「これは「神罰」だ。」


抗えない圧倒的な力。

敵に雷の天罰を下す正義の名を装ったその絶対的な力は「祟」と呼ぶに遜色のないかつて存在したこともない暴力であった。

それが戦場に現れた瞬間、戦況はあっという間にひっくり返され、やがて人類は力で自分たちを蹂躙し、ねじ伏せた外力を返り討ちして徹底的に制圧した。


無慈悲という言葉では説明できない圧倒的な暴力。

だが、その姿はあまりにも美しくかつ愛しくて、私はその場で絶望してしまった。

悲しむ表情も、悔いや罪悪感を感じる様子もなく、ただ淡々とした彫刻のような表情で敵を虐殺し、皆殺しにするその勝利の女神を装った惨殺のジェノサイドは、


「なぜあの子の顔をしているんだ…」


珠璃と一緒に私にとって一番大切な死んだ翠湖ちゃんの顔をしていた。


***


「ワンダーランドプラン」。

第2師団竹内中将のもとで密かに行われた中止となった「ネバーランドプラン」を引き継いだ極秘の兵器開発プロジェクト。

上層部の中でも竹内中将の最側近、そして政府関係機関にしか知られなかったそのプロジェクトは最優先事項として扱われ、総力をあげて進められた一大プロジェクトであった。


国家存亡を懸けた一か八かの大勝負。

国家予算の相当の部分を与えて進められた「ネバーランドプラン」の後身、「ワンダーランドプラン」は何十年も掛けても最後まで完成できなかった史上最悪の兵器をほんの数年で完成させてしまうほど目覚ましい成果を堂々と見せつけた。

それができたのはたった一人の天才のおかげ。

その正体は政府要員によって徹底的に隠されていたが、戦場に現れたその少女を見た時私は直感した。


「ウィル…」


これは間違いなく私の婿であり、珠璃の夫、そして死んだ翠湖ちゃんの父であるあの男の仕業だと。


数年前から私は彼と連絡を取っていなかった。

私は東部の戦場にいて、中央にいた珠璃と他の家族とは連絡を取れなかった。

避難の計画は事前に息子の十三に任せて彼には十三のサポートを頼んであった。

同じ男として娘の珠璃と妻の久美子を任せられるのは唯一信頼できる息子と彼しかないと判断した私は、


「頼んだぞ、十三。私が死んだらこの家の主はお前だ。

男として自分の家族を、姉さんと母さんを守る責任がお前にはある。

ウィルくん、十三のサポートを頼む。」

「任せてください、先生。」

「わかったよ、父さん。」


息子の十三に何度も念を押して、婿のウィルくんに十三を支えてくれと頼んでやっと戦場への足を運べた。


自分が死ぬのはこれっぽっちも怖くない。

むしろ私は自分が亡霊ではないかと思うほど生き過ぎていた。

犯してきた罪、そして重なった不幸の数。

神は私を一生苦しめるために無理矢理に生かしているのではないかと、微塵の信仰心も持たなかった自分ですらそう思い込んでしまうほどであった。

ただ唯一の心の残りとしてどうしても叶えたいものはあった。

それは娘の珠璃の笑顔を取り戻してあげること。

それすら果たせば私は自分が地獄に落ちろうが、いかなる残酷な方法で殺されようが構わないと本気でそう思っていた。


翠湖ちゃんが亡くなってから珠璃は一度も私達の前では笑わなくなった。

私が心から珠璃を愛していたように、娘の翠湖ちゃんを世界誰よりも愛していた珠璃だからこそ感じてしまう翠湖ちゃんを失った時の悲しみの大きさ。

それがどれほど重くて深い、二度と這い上がれない感情なのか私達は皆知っていた。


「お母さん!」


()()()が来るまでは。

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