第316話
いつもありがとうございます!
理事長から赤城さん達と中黄さんに起きたことを聞いて私は皆にこのことを相談することにしました。
二人共同好会の皆にとってもとても大切な友達だからきちんと相談しておきたかった。
余計に心配させることになってしまうかも知れませんがむしろその方が二人のためになにかできると思った私は同好会の全員を「合唱部」の部長室に集めました。
そして皆に今赤城さん達が置かれている状況について自分が理事長から聞いたことをありのまま話した時、
「赤城さんがそんなことをするはずがないです!」
ありがたく皆は赤城さんの潔白を心から信じていてくれたのです。
特に一度赤城さんに助けてもらったことがある虹森さんの場合は
「何かの間違いです!だって赤城さんは優しいし決して人を傷つけたりはしませんから!」
自ら彼女の潔白を証明すると強い勢いで彼女へ無限の信頼を表しました。
「そうですね。闇雲に力を振り回す人ではないということだけは私が保証します。」
「きっとなにかの誤解です!だってマミーは赤城さんのことを信じてますもん…!」
同じ生徒会としてずっと見てきた副会長のことを誰よりも信じている緑山さん。
そしてアホなほどお人好しの先輩も彼女の身の潔白を信じている。
私はもう独りぼっちにはならなくなった赤城さんのことになぜかほっとするようになってしまいました。
「できればこのこと、ここでの話にしてもらえますか?」
でもこのことを口外して欲しいと私達に要請する先輩。
先輩は自分達とは違って世間はそううまく彼女達のことを信じてくれないことをすでに分かっていたのです。
療養中の会長。
学校での会長の世話は殆ど先輩と速水さんに任されて実の姉である「プラチナ皇室」のビクトリア女王ですら簡単に会いに行けない。
実際私は別れる前にかおるさんから
「たまにでも良いですのでセシリアの写真を私に送っていただけないのでしょうか。
あいつ、妹のことになると目がなくなりますから。」
っと女王のために写真をもらいたいと頼まれたことがあって先も会長の写真を撮ってかおるさんのところまで送ったばかりですし。
それだけ今の会長のことにおいて先輩と速水さんの権限は実の姉、「ハイエルフ」の女王様以上のものです。
そんな先輩が今回に限って会長を巻き込むわけにはいかないと言った。
それだけ先輩はこのことを非常事態と認識していたということです。
「速水さんにならセシリアちゃんは任せられます。誰も「黄金の塔」を敵に回したくありませんから。」
「先輩…」
珍しく真剣な顔になって考え込む先輩を見て
「真剣な先輩もかっこいい…♥」
私は一瞬うっとりしてしまいましたが今がそれどころではないということを分かっている故にあえて正気を保って先輩の意見に耳を傾けることにしました。
「まずは赤城さんに会って詳しく事情を聞くことが先と思いますが。」
っと手始めに彼女達の接続から図った方がいいと意見を出す先輩でしたが残念ながら今の彼女達の位置は理事長ですら把握していません。
赤城さんが警察に危害を加えたという噂も出ていてもうじきマスコミと警察が動き出すと思いますがその前にこちらから先に赤城さんと中黄さんの身辺を確保しておきたい。
でも肝心な居場所が分からなくてはどうすることもできない。
っと少し困っていた私の頭の中に思い浮かんだのは
「そういえば黒木さんは?」
赤城さんの妹と言ってもいい幼馴染の黒木さんのことでした。
「Scum」の広報係でありながら特殊対処班として活動している褐色肌の魔界のお姫様。
彼女の「魔界王家」と赤城さんの「赤城財閥」は長い間親密な関係を築き上げてきたパートナーでその関係性は赤城さんと黒木さんを見たら簡単に分かります。
赤城さんはいつも彼女のことを「我が愛妹」と呼んでいてそんな赤城さんのことを黒木さんは心から尊敬し、「お姉ちゃん」と懐いている。
確かに「吸血鬼」は貴族ですが王族の「夢魔」にそう気安く触れてはいけません。
それでも二人は本当の姉妹のようにいつも仲が良くて私はその二人の絆にずっと憧れました。
一番最初に駆けつけて来ると思った黒木さんが今ここにいないのはそれなりの理由があるため。
「クリスちゃんは今「神官」のことで魔界にいるの。後で自分の方からこっちに来るって。」
「神官」のことで今は学校から離れている黒木さん。
彼女は自分と赤城さんの関係をよく知っているドクターに疑われないように今は極力彼女との接続を避けていたのです。
でも彼女は夢という自分だけに許された場所で赤城さんとずっと会っていたらしいです。
今は自分なりに解決策を講じていてようですが数日までから全く彼女との夢のチャンネルが繋がらなかったと赤城さんはすごく心配してました。
でも先赤座さんから彼女のことを聞いてた時、
「そうだったんですわね。」
彼女は安堵するような顔で彼女の無事を心から喜びました。
赤城さんと中黄さんのところにたどり着くまでいくつかの難関はありました。
私達はまず赤城さんと中黄さんに接続して話を聞くことにしましたが肝心な彼女達の居所が分からなくて早速壁にぶつかりました。
手がかりなんて一切なし。
その上、警察や他の人達より先に彼女達を見つけなければならないという条件まで付いて状況は限りなくこちらに不利。
こんな状況で私達だけで何ができるのか私はひどく頭を悩まされましたが
「ことりちゃん…?」
その時、先輩のところに掛かってきたある電話が私達を彼女達の元へ導いてくれたのです。
その時に先輩の口から出たその名前を私が聞き逃すわけがありません。
先輩は今のがバレてないかソワソワしている様子ですが前に街で偶然赤座さんに会った時から私はなんとなく事情が分かってきましたからいまさら特に気にすることはありません。
特に第1に親しんだ友人がいるわけではありませんが赤座さんは自分から学校を辞めたと私にそう話しました。
その後、唯一受け入れてくれた先輩のところに世話になって居候させてもらっているらしいですがそれ以来彼女が私の前に現れたことは一切ありません。
だから今は特に気にする必要はないと思いましたがまさかこんなにも早く彼女に会うことになるとは思いもしなかったのです。
「皆さんにお話があります。」
外で赤座さんとの通話を済ませてきた先輩は部室に戻って私達に少し話したいことがあるという先輩。
その中で先輩は
「落ち着いて聞いて欲しいです。うみちゃん。」
この話で特にショックを受けるのは私だと予想して今の通話と今までの自分の話を聞かせてくれました。
今更特に驚くことはないと思ってました。
赤座さんが先輩の家で居候しているのはとっくに知ってましたし改めて聞かれても珍しいとも思いません。
実際先輩から赤座さんとのことを言われても特になんともしませんでしたし。
でもやっぱり一番気になったのは
「やっぱり何も言ってくれないんだ…」
あの夜にあったキスのことについて先輩から何も言ってくれなかったことです。
皆の前で気軽に話せる話題ではないということは承知の上です。
でもまさかここまで気にしていないとは…
去年私が先輩に
「先輩、やっぱりキ…キスとかやってみたことあります…?」
キスの経験を聞いた時だって
「気になりますか?うみちゃん。」
っと先輩はただいつもの笑顔より少し意地悪そうな顔をしてこう答えるだけでしたから今更感がなくてないって感じですが…
「今からマミーにチューしてもいいですよ?」
っとそっと私の方にそのぷにっとした柔らかい唇を向ける先輩の積極的な態度に私は慌ててその場から逃げ出してしまいましたが今思えば随分ともったいないことをしたものだと後悔しています。
それだけ先輩はあの行為に特に深い意味は持たず、ただお母さんが自分の子供に接吻するような自然な行為として認識しているということ。
その辺でさすがに私は結構落ち込むようになりましたが
「まあ、先輩らしいけどね。」
それすら先輩の一部として受け入れてしまう結局先輩に甘い自分だったのです。
でも今は自分のことより赤城さんと中黄さんのことを優先したいという気持ちが大きかった私は早速先輩に今の赤座さんと何を話したのかを聞くことにしました。
そしてその答えとしてまず今から彼女に会いに行く必要があるという先輩。
「どうやら今回のことにことりちゃんが関わっているみたいです。」
先輩は赤城さん達の失踪と赤座さんの中に何らかの関係があると私達にそう話しました。
「詳しい内容は後でことりちゃんから説明するそうです。もちろん何があったのかは本人の赤城さんの口から聞いてもらいたいと言いましたが。」
っと間もなく迎えの車がくるから早速そっちへ向かうと私達を連れていく先輩。
でも私達が目指す場所は学校の外ではなく
「「陽炎」…?」
学校内のどこかに存在しているという謎の組織「陽炎」の部室だったのです。




