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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第312話

いつもありがとうございます!

赤座さんのおかげでなんとか命拾いはした私達。

私は「赤座組」のフロント企業の一つに清掃員として雇われ、毎日そこに出勤していた。


「本当にいいの?赤城さん。別に仕事なんてやらなくても私がー…」

「いいえ。面倒を見てもらってますからわたくしも何かお役に立ちたいですわ。」


っと無理はよくないと彼女は言ったが「赤城」家の吸血鬼は皆恩知らずの不届き者が大嫌いで自分もまた一度恩を受けたら最後まで全力でそれに応えるべきだと思っているため、まず今の自分にできることから彼女の役に立っていこうとした。

そして丁度清掃員が必要とされていたため、私はそれに志願、早速就職することになった。


「赤城さんってお嬢様だしやったことあるの?」


っと彼女は少し心配していたが古から「赤城」一族の吸血鬼はその圧倒的な強さの故に敵が多かったため大抵のことは自分でやることになっていた。

無論全く使用人がいなかったというわけではないが肝心な時に頼れるのは自分自身という習性だけはどうも直らなかった。


そんな私が自分の全てを託せる人。

彼女のことを守れるのならいかなる困難も自ら望んで受け入れると自分自身はそう決めていた。


「じゃあ、夜の方がよくない?学校は仕方なかったけどここなら私がお姉ちゃんに頼んでー…」

「本当に平気ですわ。ありがとうございます。」


っと色々私達に気を遣ってくれた赤座さん。

特に病み上がりの私の体を案じて過保護と言ってもいいほど彼女は私のことをずっと気にかけてくれた。


「中黄さんの方はそれでいいの?一応うちから見張りは付けてあげるけどやっぱり家の中で隠れていた方が良いんじゃない?」

「ありがとうですわ。でもあの人にはいつもの生活を送ってもらいたい。それだけですわ。」


家に引きこもっているだけでは自由奔放な性格の彼女の精神が持たない。

かと言ってさすがにドクターの方からの追手も看過できないのも事実。

だから私は今の自分と同じく彼女に変装という条件を付けてある程度の野外活動を許した。

幸い今私達が住んでいるところは都会から随分離れた郊外であそこは神界が近いため「Dogma」製のドローンは入れない。


神界、特に保守的な「黄金の塔」は大戦争の時、最も多くの犠牲者を出した「Dogma」に未だに大きな反感を抱えていて世界政府保安局を経なければ正当な理由でもない限り無条件立ち入りができる「灰島」と違って「Dogma」の関係者、「Dogma」製のものが一歩も足を踏み入れることはできない。

これは今「Dogma」に追われている私達にとって実にご都合であり、赤座さんが私達の隠れ場としてあそこを選んだ理由である。


「普段はあんなにお子様なのに…以外ですわ…」


彼女には悪いが正直に言って私は今まで彼女のことを少し侮っていたかも知れない。

テレビの中や普段の彼女は確かに多少軽薄で軽いというイメージだが私はそうじゃないということはとっくに気づいていた。

弱そうな世間知らずのように見えても彼女は子供の頃からあの芸能界で生き延びてきたベテランでちゃんと周りの心を見抜いている。

その上、頭の回転も早くて気配りが上手で思ったより女性力も高い。

つまり彼女はいわばハイスペックってこと。

でもまさかここまで考えて行動するタイプとは全く思わなかったので今回のことで私は彼女のことを少し見直すようになった。


「ごめんなさい、赤座さん。」

「ど…どうしたの?急に…」


もしかしたら今の彼女の方が私なんかよりずっと上かも知れない。

私はそう思って心からそっと彼女に対しる尊敬の念を表した。


「でも確かに家の中ばかりじゃ退屈だもんね。中黄さん、すごくアクティビティーな人だし。」

「ええ。変装くらいはしてもらいますが近所だけならある程度の気晴らしはなるのでしょう。」


実際もうすっかり慣れて町の中ではそれなりに有名人になって昨日は川辺で子供達と遊んでやったらしいし。

それならひとまず安心できると言いたいところだが


「それはそうと「Dogma」の様子はどうなってますの?」


問題は紛れもなくこっち。

自分なりに「Dogma」の様子を探ってはいるが今のところ全的に「赤座組」に頼っているばかりの無力な私。

それでも赤座さんは私のことを責めることなく自分が調べた全てを私に話してくれた。


「後でお姉ちゃんから話すだと思うけどどうやら「Dogma」の方は全く何も知らないみたい。」

「それってつまりドクターの単独行動ということですの?」


現在「Dogma」はドクターの息子である「島田(しまだ)十三(じゅうぞう)」さんが率いているが人格破綻者であるドクターに引き換え息子の十三さんは相当の人格者である。

だからあの夜の襲撃は「Dogma」の意思ではなくドクター一人の単独行動だと考えてはいたがどうやらその読みは的中したようだ。


「「Dogma」、特に社長の十三さんは本当に単なる一般人で赤城さん達を襲った「フォールアウト」ってやらも全く知らないみたい。

多分ドクターは自分の計画を息子にまで徹底的に隠していたと思う。」

「この世界を元の姿に戻す…確かに彼はそう言いましたわよね…」


確かにあんな恐ろしい計画なんて家族にも言えない。

でも私にはどうしてあのドクターがあんなことを企んでいたのかそれが全く理解できなかった。


「世界を敵に回すまでやらなければならないこと…」


もし今回の話が世界政府の耳に入ったらドクターは即拘束され、このことに関する全てを吐き出すことになる。

本人にその意思が全くないとしても会長のように強制的に頭の中から情報を引っ張り出す能力者は確かにいる。

もちろん会長みたいに一瞬見ただけで頭の中が全部分かるというわけではないがある程度の条件さえ満たせばいくらでも覗き見ることは可能、つまりドクターに逃げ道はないということである。

私はただそこまでして成し遂げたいという彼の目的に興味があるだけでもし自分も同じ状況だったらそうしたのかちょっとした疑問を抱いていることに過ぎない。


彼が世界の平和を脅かす脅威であれば排除されて当然。

たとえそれが彼にとっていかなる崇高な目的であれ世界は徹底的に彼を踏み潰すだろう。

それがこの世界の真実でたった一つの正義であった。

私自身もその正義を信じていて今の平和のために頑張ってきた吸血鬼の一員としてその絶対のルールに充実に従おうとしている。

だから今はなんとか身を隠して彼に関する情報を集めて策を講じることだけを考えることにした。


「ごめんなさい、赤座さん。わたくし達のためにわざわざ。」

「ううん。だって二人は私の友達だし手伝うのは当然じゃん?」


っと色々迷惑をかけて申し訳が立たないと謝る私にこれくらいなんとでもないと笑ってしまう彼女のことに私はますます悪いという気持ちを抱えるようになった。


去年彼女が学校から追い出される時、私は何もできなかった。

いや、何もしなかった。

立場の都合もあったがあの時の自分は彼女のことにがっかりしていてこれ以上大事になる前に学校から離れるのが彼女自身のためでもあると特に例のイジメ事件に何も言い立てなかった。

あの頃はあの人のことで頭がいっぱいでこれ以上余計な心配事や厄介なことを増やしたくなくて黙って彼女を学校から追い出すことに賛成してしまった。

そう。私には彼女への友人としての信頼という気持ちが足りなかった。


後でちゃんと謝って彼女もまた


「あの時はそうするしかなかったんでしょ?赤城さんには赤城さんの立場としての事情もあったし。」


っと割とすんなりと許してくれたがやっぱりこのままでは私の気がすまない。

私はその時、今度こそ彼女の友人として力になってあげようと心を決めたのであった。


「あ、ななちゃん。おはよう。ことりもいたんだ。」

「お姉ちゃん!」


午前の日課を終えて屋上で休憩を取っていた私達。

日光を恐れる私のために会社側から設置してくれた日よけ シェードのおかげで快適な休憩を取れることができた私の前に現れたのは


「おはようございます。社長。」


「ハミングバードエンターテインメント」の社長であり、現「赤座組」の組長である「赤座(あかざ)(すずめ)」さん、つまり赤座さんの双子の姉であった。


赤座さんとそっくりな顔、そっくりな真紅色の髪。

そして


「なんだかほっとしますわ…」


ちっこくてなんだか心和む大きさの胸まで。


今の赤座さんはどういうわけか髪を切ってショートカットになったが昔は髪型さえ姉とそっくりだったらしい。

いつもツインテールの髪型にこだわっていた赤座さんとポニテールの姉。

違いがあるとしたら


「絶対勝てませんわ…こんな化け物…」


やはり妹さんとは違って全身から放たれるこのすさまじい圧力と迫力のこと。

これに一瞬触れただけで私はなぜ彼女が「最強最悪の魔法少女」と呼ばれているのか実感することができた。

まるで虹森さんと一緒にいる時の緑山さんのことを見ているような前身が押し潰されるほどの圧倒的な気迫。

それに似たような感覚を私は彼女から感じ取っていたのであった。


「朝からお疲れ様。ななちゃんが来てくれたおかげで事務室もうピカピカだよー」

「それは何よりですわ。」


私の清掃の腕前が結構気に入ったのか称賛を惜しまない社長。

彼女もまた赤の他人である私達のことをただ妹の友人という理由だけで助けてくれた私の恩人だったゆえ、私は彼女に大きな感謝を感じていた。


あの日からずっとこの辺で暮らしながら私達の面倒を見てくれている赤座姉妹。

彼女達は私達の身の安全だけではなく生活全般にまで気を遣ってくれた。

ただ姉の場合は組の復活のための我々「赤城財閥」とのコネが欲しいのかしらと思ったことがあって最初の時は少しだけ距離を離れようとしたがそんな私の考えを見透かしたように


「大丈夫、ななちゃん。絶対そういうことじゃないから。」


彼女は予め今の親切になんの計算や企みもないと向こうから一線を引いてきた。


「赤座組」はもともと「赤座」一族と言われる「魔法の一族」、特に女の場合「魔法少女」と呼ばれる種族が他種族から魔力を取りやすくするために作った民兵隊のような組織でヤクザと名乗ってはいるが徹底的な「黄金の塔」の下部である。

「黄金の塔」、特にその頭領である「神様」には決して逆らえないようになっている彼らは命令であれば何でもする神の兵隊であった。


でも一応「黄金の塔」評議会、「円卓」の所属でその頭に「卿」という肩書が付いているため分類上あの「ファントムナイツ」とそう変わりはない組織である。

ただ彼らの仕事はあくまで「掃除」などの汚れ仕事だけであるゆえ、彼らのように名誉な組織には見られてないのが事実。

それでも彼女はたった一人、大切な妹のために組織の存続を図っている。

その話を妹の赤座さんから聞いた時、私は自分の疑り深い性格と浅はかな思考を恥じらうようになってしまった。


「休憩中悪いけど二人共、ちょっと私の部屋まで来てくれる?話があるから。」


っと今すぐ自分と一緒に自分の部屋まで行くことを頼む社長のすずめさん。


「ええ。よろしくてよ。」

「うん、分かった。」


そう答えた後、私達は飲み尽くしたドリンクの缶をゴミ箱に入れて彼女の後を追ってすずめさんの部屋へ向かった。

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