第311話
いつもありがとうございます!
赤城さんの噂はあっという間に広まりました。
「ウソ!?あの赤城さんが!?」
「マジだって!」
かな先輩との駆け落ち。
学校にもいかずどういう風の吹き回しか突然かな先輩と一緒にここから逃げ出すことにした赤城さんのことはあっという間に噂になってあらゆる推測を呼び寄せました。
「禁断の恋を叶えるために中黄さんと一緒にどこかに逃げたのよ!」
とかのでまかせのデタラメばかりが生徒達の間に流れているがその真相は
「あの二人は抜き打ち検査から逃れるため協調を求める治安ドローンと現場に出動した警察官を攻撃し、そのまま逃げ出したらしい。」
という名目で赤城さんとかな先輩は現在指名手配犯となって追っかける者達から逃げていました。
突然私達全員を「合唱部」部室まで呼び出してそのことを伝えた青葉さん。
でも青葉さんは
「あり得ると思う?私は赤城さんが絶対あんなことをする人ではないってことを誰よりも知っているのよ。」
赤城さんはきっと何らかの陰謀に巻き込まれたことに違いない、そう確信していました。
私自身もそう思います。
赤城さんはすごく真面目な人で潔い人。後ろめたいことややましいことなんて一ミリもやってないってことはこんな私でもはっきり分かっています。
そんな赤城さんがただ抜き打ち検査から逃れるために、しかもかな先輩まで巻き込んであんなことをしたはずがない。
少なくても私とここに集まった皆はそう確信していました。
「理事長も同じ意見なの。彼女はきっと何か事故に巻き込まれたのではないかと。」
だから大事になる前に彼女を探し出してこっそり自分と会わせて欲しい。
そのために理事長さんは青葉さんだけに本当のことを話したらしいです。
「直に皆知るようになる。だから私はなるべく彼女達を探し出して誤解を解き、ここに帰られるようにしたいの。
そのために皆に協力して欲しい。」
っと私達に赤城さんとかな先輩捜索を頼む青葉さん。
ただ大切な友達のことを助けたいというその気持ちは私達の心の中に大きく響いて
「もちろんです!任せてください!」
私達は捜索に力を惜しまないということを約束しました。
防犯ドローンと管轄の警察官を襲った容疑で現在指名手配が掛かったという赤城さん。
このことはすでに赤城さんの「赤城財閥」のところにも届いたらしいです。
「今のところマスコミに取り上げられてないのはただ「赤城財閥」がなんとか彼らを抑えているだけ。
でもこれも時間の問題だし直に皆知るようになってしまうよ。」
「確かに話題になるだけなら何でもいいって思うマスコミの特性上「赤城」家の娘、しかも世界的なピアニストである副会長が公権力に対して暴力を振り回したというこの話はうますぎます。」
もしそうなったら今度こそ収拾がつかなくなってしまう。
そうなる前に私達で赤城さんとかな先輩を探し出してこの事件を解決しようという青葉さんの提案に私達皆積極的に同意しましたが問題はどうやって赤城さんとかな先輩を探すのかということ。
赤城さんは有名人でかな先輩だって美少女ですしどこにいても必ず目立つタイプだと思いましたがネットにも全然出てこないし…
でも私達は案外早く赤城さんにたどり着くことができました。
「…ことりちゃん?」
その時、先輩に掛かってきた一本の電話。
外に出てその電話に出た先輩は
「皆、私からも少し話があります。」
今の話について自分からも伝えたいことがあると今度は自分の話を続けました。
***
「ただいまですわ。」
「あ、お帰り、なな。」
ずっと夢見てきた二人っきりの生活。
「ご飯、できてるよ。」
私は今、すごく幸せに満ちていた。
夜遅く仕事から帰ってきた私をいつもの笑顔で迎えてくれる彼女。
真夏のひまわりを思い出させる鮮やかな金髪と透き通った青い目。
太陽のような明るさと温かさに満ちているその笑顔を見たら一日の疲れが一気に溶けるような気分に包まれてしまう。
彼女の名前は「中黄花奈」。
かつて自分が自分の人生を掛けて愛し、そして未来永劫愛していく唯一の人。
私は私自身のことより、そして彼女自身よりも彼女の存在を心から愛していた。
「今日は魚が安かったんだ。あ、先川にカモさん達がいてね?可愛かったよねー」
っとノリノリになって今日のできことについて話す彼女。
追われる身とはいえ彼女にはできるだけ前と変わらない生活を遅らせてあげたかった私はなるべく彼女のことを自由にさせていた。
追手を恐れて部屋に閉じこもっているばかりでは牢獄の独房生活と変わりないから。
買い物の話、散歩の時に出会ったご近所さんやカモさん達の話。
なんの変哲もない話ばかりだが今の私達にとってこんななんてこともない日常さえ身に余る贅沢であることを私はよく知っている。
だからこそ私の彼女の話に耳を傾け、彼女の話に集中していた。
「あ、ごめんごめん。私の話ばかりだった。ご飯、冷めちゃうよ。」
っと話を止めて私に食事を勧める彼女。
「喝!!」
でもそこで私はさすがにそう叫ばざるを得なかった。
「び…びっくりしたじゃん…!どうしたの…?」
っと驚いたネズミのように円の目を大きく開かせて今の行動の意味を聞く彼女だったが
「全然ダメですわ!あなたにはお嫁さんとしての意識が全くありませんもの!」
すでに彼女のどんくささに呆れてしまった私は自分でもすごい勢いで彼女のことを言い詰め始めた。
「ご飯ところじゃありませんわ!まずは「あ・た・し♥」でしょ!?」
「ななって本当そういうの好きなんだよね…」
っと今度は彼女の方から少し呆れたような顔をしたが私にとってそういうシチュエーションは結構大事な部分で一度はこういうことがしたかったため彼女には何が何でも次からはそう言ってもらいたい。
「わ…分かったからちょっと落ち着いてよ…鼻息すごいんだから…」
「絶対ですわ!次からは絶対そう言ってもらいますから!」
結局次はちゃんとやるって約束はしてくれたが果たして彼女がしっかりしてくれるのかはまだ未知数のままであった。
「もう…明日も仕事なのに元気すぎるじゃん…」
っと口では渋々と言っているが
「ご…ご飯冷めちゃうから一回だけ…一回だけだからね…?」
結局私の前でスカートの中から下着を脱いでくれる彼女であった。
こっちに来てから毎日続けている行為。
お互いの体と触れ合って交わす愛の感情。
「あっ…!そこ、気持ちいい…!」
「ここですの…♥」
私の手先に伴って起き上がる震え、そして吹き出してくる潮水。
私でどれだけ彼女が気持ちよくなったのかを物語ってくれるその思いっきりの噴出に自分の満足感もあっという間にぐんと高まってくる。
敏感で柔らかい体。少し撫でただけなのにこんなにも気持ちよく震えてその反応がたまらないほど楽しい。
舌と指、脱ぎきった自分の体まで使って彼女のことを気持ちよくさせているうちに自分もまたそれに惹かれてどんどん体が熱く、そして気持ちよくなる。
やがてお互いの体が絶頂に達した時、私達は単なる発情した獣のように息を荒らして泣きわめているだけであった。
「せっかくきれいに掃除したのにまた汚しちゃったじゃん…」
「ご…ごめんなさいですわ…」
そしていつもみたいに軽く怒られた私は
「残りはベッドでやりますわ♥」
さり気なく続きの約束を取る。
「エッチ…」
っと少し恥じらう彼女であったが
「い…いいから早くご飯にしようよ…」
どうやら満更でもなさそうだ。
人気の少ない郊外。
赤座さんの父、「帝王」と呼ばれた「ディアボロ」卿の隠れ場として使われたというボロいアパート。
最初の時はこんなところでうまくいけるかしらと思ったが今はここ以外の憩いの場はないと感じているほどすっかり馴染んでしまった。
使いにくい台所も、古いお風呂も、軋む床のこともさほど気にしていない。
「どうしたの?なな。」
私はただ彼女と一緒にいられることだけで十分幸せだった。
同じ食卓で同じご飯を食べて同じ風呂に入って同じベッドで寝る。
同じ時間を過ごして同じ感情を共有して同じ心を育て上げる。
それだけが自分の幸福であり、守りたい日常。
何より自分と同じ考えを、同じ望みを抱いてくれる彼女のことが大切過ぎて仕方がなかった。
決して手放したくない大切な日常。
心配してくれる学校の皆や家族には申し訳ないが今はただ自分のワガママを聞いて欲しい、ずっとそう思っている。
「いいえ。何も。」
だからいつまでもずっと一緒にいてください。
「「11月の雨」…」
かな…
***
その日、スカイタワーを中心にして半径500メートルの結界が張られた。
術師は「赤城財閥」の総帥、「赤城ナターシャ」の娘であり、「赤城」家の次期当主である世界的なピアニストとして名高い「赤城奈々」。
世界政府はスカイタワーの付近の警戒レベルを4階まで上げ、住民達に避難命令を出した。
そしてもしななの救出に失敗した時、射殺も視野にいれるという条件で「ドクタードグマ」の全自動化特殊部隊「フォールアウト」が派遣され、やがて「ブラッドツリー」作戦がその幕を開けたのであった。




