第302話
遅れてしまい大変申し訳ございません。
新年早々から仕事やら行事やら色々押しかけて少しペースを落としてしまいました。
あと少し遅くなりましたがあけましておめでとうございます!
去年頑張れたのも、今年も頑張れるのも全部皆様からの応援のおかげだと心から感謝しております。
これからも頑張っていきますので何卒よろしくお願いいたします。
今年の目標はとにかく頑張ることですのでこれからも楽しめるぶっ飛んだユリユリな作品ができるように頑張ります。
それとぜひ仲良くしてください!
いつもありがとうございます!
お姉ちゃん。
それは妹の生まれて初めて会うライバルであり、同時に憧れである存在。
妹は常に姉の後ろ姿から世界を見て、その生き方を真似することで生きる術を身につける。
そして私もまたお姉ちゃんの後をずっと追いかけてきたわけだが
「あ!これ見て!みらいちゃん!これとかどうかな?」
「あらあら。殆ど紐しかないスカスカの下着ですね。開放感と爽快感の溢れる素敵なものだと思います。」
「でしょでしょ?これつけたらお姉ちゃんっぽく見えるだと思うな。」
「ダメに決まってるじゃないですか、こういうの。」
「えー」
正直に言って今のうちのお姉ちゃんにはその姉としての威厳の欠片もないと思う。
「ことりはどう思う?」
っと私に布の面積が極端に少ない、まるで大事な日に大好きな人のためにつけるようなそういうとっておきの下着を見せびらかしてくるお姉ちゃん。
そんなお姉ちゃんに私から言えるのは
「全然似合わない。」
「えー」
とにかくもうちょっと声を抑えてその際どい下着のことを元に戻してという話だけであった。
「大体こういのは先輩みたいなボリューミーな人が付けるもんでしょ?
お姉ちゃんも、私も全然ボインじゃないし余計に悲しくなるだけだよ。」
「いや、こういう需要もあるってお姉ちゃんそう言われたもん。」
何の需要だよ、それ。
何故未成年の私達がこんな大人向けのランジェリーショップで買い物をしているのか。
それはまず先輩の胸周りが前より大きくなってもはや特注ではなければそのでっかい胸が収まらなくなったことから話さなければならない。
そして2つ目の理由というのは
「うわぁ!なにこれ!なんか一番隠すべきのところに穴が開いているぞ!」
単にうちのお姉ちゃんが最近こういうことに興味ができたことである。
意気揚々とまた別の下着を取り上げて私と先輩のところに突き出してくるお姉ちゃん。
特定の目的のため、主にイベントなどに備えて作られたようなその穴のランジェリーに一瞬私は固まってしまったが
「あ、これなら前にセシリアちゃんが履いたことがあるんです。
でも下着なのになんか大事なところを隠してないから私は不良品かと思ったんですよ。」
さすが天然の先輩。全く動じないのが逆に怖い。
というかあれだけ会長が露骨にアピールしたのに全然気づかなかったんだ、先輩。
「へえー思ったより大胆じゃん。お姫様って。」
「うん。あの人なら絶対やると思ったよ、私。」
っとお姉ちゃんは会長にも意外な面があるんだなって驚いているがああ見えてもあの人、先輩のこととなったら結構積極的になるからな。
先輩のためにイベントもたくさん用意するし色々気を遣っていて。
ちなみに先輩が使っているお金の殆どは奨学金と会長からの援助から出るもので今住んでいるいるマンションだって会長がもっぱら先輩のために借りたものである。
会長は欲しいものがあれば遠慮なくカードで買って頂戴って言ったが
「んー…でもただでさえお世話になりっぱなしですしできるだけ節約しないと…」
っと常に節約が身につけている先輩は本当に必要なものでなければあまり財布を開けなかった。
「私だって先輩のためにいっぱい用意してあげられるのに…家だってお小遣いだって…
なのに先輩はいつも「セシリアちゃん、セシリアちゃん」ばっかり…」
っとうみっこはそんな何でもかんでもやってくれる会長に対していつも嫉妬の炎を燃やしていたが
「でもまあ、あの人にはなんか特別なものを感じちゃうんだもんね。
私とは違った先輩への特別な想いとか。」
内心会長のことをずっと気に入ってたと私はそう思う。
あのうみっこが認めるほど先輩への会長の恋心は格別なものということであった。
「でもまさか下着姿まで見せる仲だったなんてね。よほどみらいちゃんのことが好きなんだ。」
「まあ、入学の時からずっと一緒だったって聞いたから。めっちゃ仲良しなんだよ」
入学式で生徒代表として壇上の上に立った先輩のことを初めて見かけた時、いわゆる一目惚れというやらを経験したという会長。
それっきり先輩のことに付きまとうようになったという会長のことはもはや知る人ぞ知る有名な話だが
「なんかそれだけじゃないような気がするんだよな。」
うみっこだけはその他に何かある、そう感じ取っていた。
まあ、それだけ会長と先輩の絆は特別ってわけだが
「仲良し…」
その時、私は一瞬見かけてしまったお姉ちゃんの揺らぐ眼差しのことがふとものすごく気になるようになってしまった。
「やっと買いましたね。」
「サイズ合うものありました?」
「ええ。」
そうしているうちに、いつの間にかお会計を済まして購入した品を私に確かめさせる先輩。
さすが多種族の大人向けのお店だけあって色んなサイズを取り扱っているんだなって感心している私に先輩から見せてきたのは
「でもやっぱり人間向けのものから探すのは無理でしたから結局また巨人用なんですけどね。」
ボウルを思い出させる今まで見たこともないでっかいブラであった。
レースフリルの付いている派手な純白の下着一揃い。
デザインだけは華々しくていかにも先輩のイメージにぴったりだが
「え。なにそのデカさ。こわっ。」
問題なのはやっぱりその凄まじい布の面積だと思う。
「先輩、それで爆弾おにぎりでも作るんですか?」
「みらいちゃん、本当にお乳でっかいんだな。ミサイルでも仕込んでいるの?」
「も…もう二人共…!マミーの乳をからかってはいけません…!」
っとプンプン怒っている先輩だが
「先輩のブラで作ったおにぎりうめぇー」
実際私は先輩の古い下着で昼食のおにぎりを作って食べたことがある。
無論先輩には内緒で。
ちなみに具はおすそ分けしてもらった梅干しだった。
「じゃあ、次へ行ってみようか。」
「そうだね。」
っと無事に買い物を済ませた後、次に移ろうと先頭に立つお姉ちゃん。
久しぶりのお出かけだからかな、いつもよりずっと張り切っているお姉ちゃんを見ていると心のどこかでほっとしてしまう。
なんだかんだ言っても結局お姉ちゃんだって私や先輩みたいな普通な年頃の女の子だったんだなって。
そんな当たり前なことすら気づかないほど私は自分の存在とお姉ちゃんのことを別物と感じていたことに少し恥ずかしい気持ちにもなってしまう。
「ことりちゃんとすずめちゃんはどんなものにしたんですか?良かったらマミーにも見せてください。」
っと私達がただいまお会計を済ませた品に興味を示してくる先輩。
家ではしょっちゅう下着姿を先輩に見せつける私だが
「ふ…普通ですよ…」
何を買ったのか先輩に見せるのはやっぱりちょっと恥ずい。
「あら、ことりちゃんらしい可愛いヒヨコさんセットですね。」
「ま…まあ…」
まあ、結局見せちゃうもんね、私って…
「ことりって本当にこれ好きだもんね。」
「べ…別にいいでしょ…?どうせ先輩やお姉ちゃん以外に見せる人もないんだもん…」
「お子様だねー」
っと私のヒヨコさんにケチを付けてくるお姉ちゃん。
一瞬ムキになった私は思いっきり鼻息を荒らして
「そ…そういうお姉ちゃんは何買ったの…!ちょっと見せなさいよ…!」
お姉ちゃんの手に持たれている紙袋からその中身を取り出したが
「見て驚きなさい!お姉ちゃんはことりと違って大人の魅力がもんもん溢れ出す立派なレディーなんだから!」
その中から出てきた豹柄のピチピチなやつが出た時、
「ビッチなの…?」
そう言いながらそれを元に戻すしかなかった。
「もう…あれだけNGって言ったのに…」
っと不満そうな先輩がそう言っても
「大丈夫!ちゃんと二人の分も買っといたから!」
満面の笑顔で勝手に用意した私と先輩の分を見せつけるお姉ちゃんは本当に楽しそうだった。
そして私は今日、今まで見たこともないほどお姉ちゃんのいっぱいの笑顔を見られることができた。
「ことり、ほっぺにクリーム付いてるよ?お姉ちゃんが拭いてあげる。」
「いいよ、自分でやるから…ってなんで舐めちゃうの…!?」
「あらあら。」
一緒にクレープを食べる時も、
「これ、ことりに似合いそうね。」
「分かってるじゃん、お姉ちゃん。」
「さすが姉妹ですね。」
先輩と一緒に私の服を選んでくれる時も、
「あ…!即死コンボ止めろ…!」
「いや!こういう時こそ畳み掛けるべきってことは分かってる!
伊達に引きこもっていたんじゃないんだから!」
「ことりちゃん…?もしかしてマミーがいない間、ずっとゲームばかりだったんですか…?」
「先輩!?」
ゲーセンの格ゲーで私に何度もボコボコにされて苦杯を喫した時やカラオケで一緒に歌っていた時もお姉ちゃんはずっと笑っていた。
勝手に先輩とお姉ちゃん勝負とかおっ始めたくせに割りと自分が一番満喫しているお姉ちゃん。
でも私はそんなお姉ちゃんを見てただひたすらの安堵感しか感じられなかった。
だってこんなにお姉ちゃんが笑っているのはお父さんがいなくなってから初めてだから。
「「帝王」が、君達の父親がいなくなった。」
ある日、突然訪れたお父さんの行方不明の知らせ。
不在のお父さんの代わりに「黄金の塔」から派遣された人が預かったがいつまでも他所の人に託すわけにはいかないとお姉ちゃんは自ら組長の道を選んだ。
「ヒーロー」になりたかったお姉ちゃんは普通の女の子としての人生を投げ捨てて皆に罵られ、貶される汚れ役と成り下がったが
「これでお姉ちゃんはことりだけのヒーローになったからそれで平気。」
っとお姉ちゃんは一度たりとも自分の選択を後悔しなかった。
高校入学までお父さんが帰ってこなかった場合、お姉ちゃんが組長を引き継ぐという条件でなんとか「黄金の塔」から猶予を得たが結局お父さんが帰れず、若頭だったお姉ちゃんが次の「赤座組」を継ぐことになった。
お姉ちゃんの最終学歴は中卒。
それさえ幼い頃ずっと続けてきた訓練のせいでろくな学校生活を送ったことがない。
お姉ちゃんに同年代の友達なんて私を除けばたった一人もいなかった。
そんなお姉ちゃんが初めて送る普通なJKらしい時間。
私はお姉ちゃんにこういうなんでもない大切な時間が送ることができたことに心から感謝の気持ちを感じていた。
私と同じ顔。同じ笑み。
心の強度も、精神もそう変わらないはずなのに私のために全部自分一人で背負ってしまったお姉ちゃん。
私の普通な生活はお姉ちゃんの犠牲があったこそ成り立つ悲しくて儚いものであった。
きっとお姉ちゃんはそういう普通な生活に憧れて一緒に遊べる友達が欲しかったんだろう。
っと私は先のお姉ちゃんの震えていた目の意味を自分なりに察したのであった。
「ありがとうございます、先輩。」
そのお姉ちゃんのことを快く受け入れてくれた先輩への感謝。
私は先輩とお姉ちゃんが旧知であることを全く知らなかったがそれでもなお何の偏見もなく私の時と同じくお姉ちゃんのことをもう一人の家族として迎え入れてくれた先輩はただ素直に飾らずお姉ちゃんとも仲良くしてくれた。
それがどうすることもなく嬉しくてありがたくてカフェでお姉ちゃんが席を外した間に私はそれに関してちゃんとお礼を伝えようと思ったが
「いいえ。ことりちゃんの家族は私の家族も同然ですから。」
先輩はお礼には及ばないとそうするのが当たり前だと私にそう話してくれた。
「お姉ちゃん、いつもお仕事とか家のことばかりでこうやって同年代の女の子達と遊びに出かけることなんてめったになかったんで。
だからあんな風に笑うの、本当に久しぶりです。」
「だったらこれからは楽しいこと、一緒にいっぱいやっていきましょうね?」
っとこれから一緒に楽しい思い出をいっぱい作ろうと言ってくれる先輩のことがますます大好きになってしまう一時であった。
結局お姉ちゃんが言った「お姉ちゃん勝負」は単なるデートとなって肝心な私ではなく本人が一番楽しんでしまったが
「まあ、いいや。」
私は今日お姉ちゃんの笑顔がいっぱい見られたことに満足することにした。
そんなお姉ちゃんが今日初めて焦ったのは
「何…?」
夕飯のために行った近くのファミレスであの二人とばったり出会った時。
「あ…」
「お前達…」
今でも理解できない珍しい組み合わせ。
「なんで先生とあんたが…」
今はすっかり忘れていた存在。
青空のような爽やかなスカイブルーの大きなお団子ヘアのその少女は何故か第3女子校の理事長、私達神界の住民にとって最も尊い存在として崇められている「神族」、その生きている歴史と言われている「朝倉色葉」さんの傍にくっついて一緒にバナナパフェを食べていた。
一瞬頭が追いつかなくなった私はその場に固まって呆然とするようになっていたが
「いい機会だ。皆、座り給え。」
そんな私達に少し話し合いたいという理事長からの言葉に私達は思わず彼女達と同席するようになった。




