第301話
いつもありがとうございます!
「それじゃ、皆。次は夏休みに。」
「体に気をつけなさい、みもり。」
「うん、分かった。」
翌日、私達はそろそろ学校に戻るために駅に向かい、帰りの列車に乗ることにしましたが
「お!きたきた!」
駅前は謎の人混みでまさに大混雑だったのです。
「え!?これってどういうこと!?」
町中の人々が全部集まっている異常な光景にあまりにも驚かされてしばらく言葉も出ないほど呆然とするようになった私。
でも私達のお母さんやお父さん、エメラルド様は全部知っていたようにあまりいつもと変わらなかったので私達は早速今の説明を求めるようになりました。
エメラルド様が運転した車から降りる私達のことを大いに盛り上がって歓迎してくれる町の人達。
お母さんは私達を見送るためにこうやって町中の皆が集まったと説明してくれました。
「やっと来たな、お前達。」
「皆さん、こんにちはー」
「まさるくん!神宮寺さん!」
その人混みの中から真っ先に現れたのは私とゆりちゃんの古馴染みのまさるくんと彼女の神宮寺さん。
二人は学校に戻る私達のために町中の皆がこんな朝早く集まってくれたって今の光景について話してくれましたが
「え…!?どうして…!?」
あまりにも驚いたせいか私はそう簡単に今の状況を飲み込めなかったのです。
まさるくんはこう言いました。
「この町はお前達のことが大好きなだけだ。そうじゃないと誰もここまでしねぇよ。」
もう二度と見られないと思った「フェアリーズ」のライブ。
でも過去の痛みを乗り越えてまたステージの上に立った私達の歌にこの町はまた頑張れる元気をもらった。
それにちゃんとしたお礼と応援がしたくて集まった町の皆のことを自分は代表に選ばれて伝えるだけとまさるくんはそう言いました。
「お前達は地元に愛される立派な「町っ子」だ。俺達は町の宝物である「フェアリーズ」のことをずっと応援するから向こうに行っても頑張れよ。」
っと私達の健闘を祈ってくれるまさるくんは私達の方に手を伸ばして握手を求めて
「俺も追いついてみせる。お前達のように輝ける存在になって必ずビッグになってやる。」
「ええ。頑張ってください。まけるくん。」
「…最後まで最悪だな、お前…」
そんなまさるくんと手を取り合ったゆりちゃんもまたからかいながらもまさるくんの前途を祝しました。
そして
「あ…あの…!私達も青葉さんとセシリア様のこと、ずっと応援しますから…!」
私達の町で最高の歌を歌ってくれた青葉さんと会長さんにお礼と一緒にこれからもずっと応援するという約束する神宮寺さんを含めた多くのファン。
戸惑っていた私達と違ってこういうことにすっかり慣れている青葉さんはファン達に向かって満面の笑みを浮かべて
「はい。これからも皆さんのために全力で歌います。」
これからも心を込めて舞台の上で歌うことを約束しました。
そんな青葉さんと違って最初はかおるさんに隠れているばかりの会長さんでしたが
「わ…私も頑張って歌いますから…!」
勇気を出して話すことができたその一言はきっとファンの皆の心にちゃんと届いた私はそう思います。
「達者でな、皆!」
「本当にありがとう!」
そしてそんな私達のことを大声で応援してくれる町の皆。
私の胸は皆からの応援と町への愛情でいっぱいになってこんなにもワクワクするようになりました。
「じゃあ、そろそろ行くね?皆元気でね。」
「皆さん、この度は本当にお世話になりました。本当に楽しかったです。」
「いえいえ。良かったらうみちゃんも、セシリアちゃんもまた遊びに来てください。」
列車に乗る私達を最後まで見届けるために私達と一緒にプラットホームに入って私達の両親とエメラルド様。
特にお母さんは大好きな青葉さんと会長さんにまたいつでも遊びに来てもいい、むしろ遊びに来て欲しいと何度も言い続けるようになりました。
「なんか娘達のことよりずっと寂しがってるんじゃない…?お母さん…」
「そ…そんなわけないじゃない…!みもりも、ゆりちゃんもまた来てね…!」
「言われなくてもここお家だし夏休みには来るから…」
やっぱり私達のことより寂しがってんじゃないですか…?うちのお母さん…
「かおるちゃんもまた遊びに来てくださいね?次はビクトリアちゃんも一緒に。」
「分かりました。皆さん、お元気で。」
っとかおるさんにまた遊びに来て欲しいと言うエメラルド様と必ずまた来ることを約束するかおるさん。
でもやっぱり一番記憶に残るのは
「ゆり。」
ゆりちゃんとおじさんの別れる前の最後の会話だったのです。
そろそろ出発時刻に近づいてきた頃、荷物を持ち上げようとしたゆりちゃんを呼び止めるおじさんとおなさん。
ゆりちゃんとおじさんの少し気まずい関係のことを知っていた私は息を潜めてその二人のことを注視しましたが
「私達はいつでもお前の幸せを願っている。愛しているぞ、我が娘よ。」
おじさんはただそうやって温かくゆりちゃんのことを思いっきり抱いたのです。
「お父様…」
娘にあまり自分の本音を表さなかったおじさん。
いつも忙しくて厳しかったおじさんのことをゆりちゃんは尊敬はしていてもずっと遠い存在として感じていました。
あまり自分のことを愛していないかも知れないと寂しがっていたゆりちゃん。
でも今のゆりちゃんを見ると分かります。
「私もお二人さんのことを心から愛しています。」
今はもうそんな寂しい思いはしないって。
「良かったね、ゆりちゃん。」
っとほっとしていた私にも言いたいことがあると言うおじさん。
「みもりちゃん、ゆりのことを頼めるかい?」
ただ純粋に娘のゆりちゃんのことを案ずるおじさんの温かい親心に私は当然
「はい、おじさん。私に任せてください。」
っとゆりちゃんは必ず自分が幸せにしてやることを約束しました。
「でも本当に良かったんですか?今でも「ハネムーン」に行った方がよくありません?」
「ハネムーンって…」
「あら♥そうしましょう♥みもりちゃん♥「ハネムーンベイビー」ってやつですよ♥」
「やめろ、二人共。みもりちゃんが困ってるだろう。」
その後、おばさんからの唐突な提案にゆりちゃんが暴走したりそれをおじさんが引き止めたり今日も騒がしい緑山一家です。
「着いたら連絡してね。」
「うん、分かった。お母さんも、お父さんも元気でね。」
「青葉さんも、セシリアさんもまた妹達によろしくお伝えください。」
「はい。エメラルド様もお元気で。」
そしてついに列車に乗った私達とそれを外で見守る皆。
私達の健康と無事を祈る皆のことが何故かすごく懐かしくなった私は発射するその瞬間まで駅から目が離せなかったのです。
たった2日間の短い時間だったのになんだか皆や町のことがすごく懐かしくなって…
やがて列車が進み始め、私達に向かって手を振っている皆がどんどん遠くなって私はますます寂しい気持ちになりましたが
「夏休みにまた来れば良いんですから。」
っと言いながら私の手を握ってくれるゆりちゃんの言葉にその寂しさを吹っ切ることができたのです。
私達を応援してくれるために朝早く集まってくれた皆。
もう列車はこんなにも遠くなってもう町はあんなにちっさく見えてようになったのにまだ皆の歓声と応援が聞こえているような気がする。
それは多分この胸に皆への気持ちがいっぱいになったからだと私はそう思います。
挫けそうになってもずっとアイドルができたのは町中の皆が、ファン達が全力で私達のことを応援してくれたから。
この町は今も変わらず私達のことを応援してくれていたのです。
そしてそんな皆の応援に応えたくて自分ももっともっと頑張らなきゃと私は改めて自分の心を奮い立たせました。
「楽しかったんですね、会長。」
「はい。とても。」
私達が町のありがたい気持ちに改めて気がついたようにまた一段と大きな思い出を作った青葉さんと会長さんは今回の旅を心ゆくまで楽しんでくれたような表情で大変な満足感を現してくれたのです。
特に商店街のイベントで一緒に歌うことができたことに感謝の気持ちまで感じていると青葉さんはそう言ってくれました。
「今回は誘ってくれてありがとう、虹森さん。すごくいい気分転換になった。」
「いえいえ。私の方こそ会長さんも一緒に思いっきり楽しんでもらえて本当にありがとうございます。」
良かったら次も誘って欲しいという青葉さんと会長さんの話がこんなに嬉しく感じられるとは。
でもお礼を言いたいのはむしろあんな素敵な歌を聞かせてもらった私達の方だと私はそう思います。
史上最強ユニットと言ってもいいほど素敵だった「Twinkle」のライブ。
付け焼き刃とは信じられない極限まで高められた完成度。
呼吸もピッタリあってまるで昔からずっと息を合わせてきたコンビのように青葉さんと会長さんのステージは完璧でした。
きっと青葉さんと会長さんの間にはお互いのことに惹かれ合う何か強い繋がりがあると私はそう感じー…
「あ、先輩か。」
そういえば会長さんの「Peach」は儚くて切ない少女の恋心を詩で表現で曲。
となるとやはり考えられるのは…
「はい♥皆のマミー、先輩ですよ♥」
…なるほど…どうりであんな完璧なステージができたものです…
でもそのステージで見つけ出したのはただ「Twinkle」の輝きではありませんでした。
「もう緑山さんったらすぐ眠ちゃって。しかもこんなに虹森さんの手までギュッとして。」
「ラブラブですね。」
「あはは…」
昨夜の疲れが一気に押し寄せてきたせいか列車に乗った途端、すぐ眠りにつくようになったゆりちゃん。
私の手をギュッと握ったその手には昨夜交わした薬指の誓の指輪が光に照らされてキラッと輝いていたのです。
二人一緒に歌って一緒に秘密基地に行って思い出に浸って本当の気持ちを言い合うことで再び確かめることができたお互いへの気持ち。
私は今回の旅での一番の収穫はやっぱりゆりちゃんが元通りになって前と同じく、いや前よりずっと私のことが好きになったことだと思います。
もちろん私もそれに負けないくらいゆりちゃんのことが好きになりましたけどね。
そうじゃなかったら今朝あんなこと、皆の前で言い出せなかったのでしょう。
「ゆりちゃん、私、これからもずっとゆりちゃんと一緒にいたい。だから私はゆりちゃんのことを自分の嫁として迎え入れたい。」
っと私が言った時、
「…はい…もちろんです…」
ゆりちゃんは泣きそうな顔で私のことを見ていました。
今までゆりちゃんが私のことを守ってくれたようにこれからは自分もゆりちゃんを守る。
私が好きで頑張ってくれたこと、支えてくれたこと、何一つ忘れてない。
私にその一筋の気持ちを向けてくれたゆりちゃんの心にちゃんと応えてあげたい。
そう思った私は今までの生半可な態度や気持ちではなく真心でゆりちゃんに接してゆりちゃんだけの特別な人になることを決めてもう一人の自分としてゆりちゃんのことを迎え入れることにしました。
もう単なる幼馴染って言葉で決めつけたりする野暮な自分はおしまい。
これからは隣で君を支えてあげられる強い自分になる。
ただその一心で私は今こうやってゆりちゃんの傍にいるのです。
もちろんおじさんはコップまで落として
「…やはり血は争えない…ということなのか…」
めっちゃ衝撃を受けてしまいましたが
「あらまあ♥ついにみもりちゃんも我が「緑山」家の家族になったのですね♥おめでとう♥ゆり♥
ということはこれからはすずこさんも私達の家族ということかしら♥」
「ええ♥これからもよろしくお願いしますね♥ワンダさん♥」
「二人共…ちょっと落ち着いた方が…」
なんかおばさん達だけがめっちゃ盛り上がってなんだかんだ認めてくれるような雰囲気になっちゃいました。
「じゃあ、早速妹に連絡して式の準備をー…」
「エメラルド様もちょっと落ち着いてください…」
おまけにエメラルド様もすごくご機嫌になっちゃってなんかもう式とか挙げちゃう空気になってそれを落ち着けるためにお父さんだけが大変だったのはまた別の話…
まあ、色々ありましたが私はなんとか無事にゆりちゃんと結婚を前提とした交際を始めるようになったわけですが…
「ムニャムニャ…みもりちゃんのオ○ンコ…♥イチゴ味…♥」
これからも色々教えていかなければならなそうです…
こうやって私達は思い出と皆の応援を胸いっぱい抱いて学校へ戻る列車の中で短い休息を取ることにしました。




