第300話
ブックマークいただき誠にありがとうございます!!
皆さんの應援のおかげでついに300回を迎えることができました!!
中間辺の修正によってとっくに昔に超えていたんですがとにかくすごく嬉しいです!!
本当にありがとうございます!!
これからも頑張っていきますので何卒よろしくお願いいたします!!
最近同人ゲームに嵌ってしまってちょくちょくやっているんですがこういうのが初めてでなかなか興味深いと思います。
おかげでも3万円もつぎ込んで今月はちょっと厳しそうですね。
もしお勧めのゲームがございましたらぜひ教えてください。
ゲームはあまり得意ではありませんがぜひプレイしてみたいです。
ちなみにホラージャンルはびっくりするほど苦手でできればRPGやそういうジャンルでお勧め頂きたいと思います。
突然凄まじく寒くなって体調を崩しやすくなりました。
年末ということもあってお忙しいとは思いますがどうか健康には十分お気をつけてお過ごしください。
いつもありがとうございます!
翌日、
「起きて!ことり、起きて!」
朝っぱらからやけに張り切って布団の中を私を叩き起こすお姉ちゃん。
ただでさえ声も大きい人なのにこんな風にテンションまでアップされているとたまったもんじゃない。
「もう…朝っぱらから何…?日曜日だしもうちょっと寝かせてよ…」
っと頭の中からギンギン鳴るお姉ちゃんの声になんとか耐えつつ懇願する私に
「何いってんのよ、もう。もう9時は過ぎてるぞ?」
「早く起きろ、このだらしない朝寝坊野郎」って叱ってくるお姉ちゃん…
こうなったら人の話全然聞いてくれないんだから…
お姉ちゃんは私のことを朝寝坊って言ったけど私は普段誰かに起こしてもらう必要もないほど規則正しい生活を送っている。
夜は必ず9時までには寝るようにしていて5時には必ず起きてランニングと朝ヨガを済まして朝食の準備をする。
でも昨夜は先輩のこととかうみっこのこととかで随分夜更かししてしまったし
「好きです。うみちゃん。」
やっぱりそのことを思い出すとなかなか…
「もう…分かったから揺らさないでよ…一体何なのよ、本当…」
結局お姉ちゃんのしぶとさにお手上げして布団の中から這い出してブツブツ文句を並べたが
「おはよう。ことり。」
なんだか嬉しそうな顔で私におはようと挨拶しているお姉ちゃんのことを見るとなんだか急にすごく懐かしいというかほっとしたというか、とにかくそういう気分がしてそのまましばらくお姉ちゃんの顔をじーっと見つめるようになった。
「どうしたの?ことり。」
っと私にまだ寝ぼけているのって聞くお姉ちゃん。
「ううん。何も。」
そして何でもないとその一言で自分の今の行動をまとめる私。
私はこうやってお姉ちゃんが起きてくれたのがいつだったんだろうとふとそう思ってちょっとだけ昔のことを思い出しただけ。
でもお姉ちゃんに知られるのは恥ずかしいからあえて言わないことにする。
「どうしたの?ことり。」
「怖い夢見ちゃった…お姉ちゃんもいなくなっちゃって私一人ぼっちになって…」
一晩中の悪夢で朝起きた時泣いていた幼い自分。
そしてそんな私のことをギュッと抱きしめて
「大丈夫。ことりはお姉ちゃんの希望、宝物だから何があっても絶対お姉ちゃんが守ってあげる。」
どんな苦難があっても最後まで守り抜いてみせると誓ってくれた自分と同じ顔のお姉ちゃん。
私達は同じ日に生まれた同じ顔の双子だったがお姉ちゃんと私の間には決して越えられない壁があっていつだってお姉ちゃんは私よりずっと先を歩いていた。
そんなお姉ちゃんのことがいつからかすごく遠くなった気がした私はある日、突然私の前からお姉ちゃんが姿を隠してからあまりお姉ちゃんと話さなくなってしまった。
連絡はいつも電話だけでこのままだと自分はお姉ちゃんに愛想を尽かされてもう見切られてるんじゃないかなと不安だった。
でもまたこうやって私の傍で私のことを起こしてくれるお姉ちゃんのことを見るとそれはただの杞憂に過ぎなかったことが分かるようになって正直に嬉しい。
うん、やっぱり嬉しい。
「本当に騒がしいんだよね、お姉ちゃんって。いちいちうざい。」
「えー?うざいってなんだよ、もう。」
まあ、恥ずかしいし自惚れられたらもっとうざいから絶対言わないけど。
「あ、起きましたか?ことりちゃん。」
そして私の声がしてもう起きたのかなと部屋に様子を見に入るのは
「あ、先輩。おはようございます。」
今や完全にお姉ちゃんと一緒に私の保護者になって私の身の回りの面倒を見てくれる先輩。
エプロン姿が恐ろしいほどよく似合う先輩は朝食の準備を済まして私が起き上がるのをずっと待っていたそうだ。
「おはよう、ことりちゃん。はい、朝のムギューしましょう。」
っと私の隣に跪いて胸を開いて日課の「ムギュー」を提案してくる先輩。
まだ眠気が残っていたのかなんの疑問も抱かず自然と先輩の懐に入った私の体を先輩は思いっきり抱きしめながら
「今日も良い一日を過ごしてください、ことりちゃん。」
その和やかな声で私の耳元にそう囁いてくれる。
私はこうやって毎朝私のことを抱きしめて元気づけてくれる先輩との日課が本当に大好きだったが
「し…しまった…!うっかり…!」
それは決して実の姉の前で見せるものではなかった。
あまりの自然さに一瞬忘れてしまったお姉ちゃんの存在。
急に押し寄せてきた恥ずかしさに慌てて振り向いたあそこには
「ムム…それ、毎日やるの…?」
何故か思いっきりほっぺを膨らませてすねているお姉ちゃんがものすごく不満そうな顔で私と先輩のことを見ていたのであった。
「ことりってすっかり甘えん坊になっちゃって…大体ことりのお姉ちゃんは私なんだぞ…?
お姉ちゃんには全然甘えてくれないくせにみらいちゃんの前では…」
っと謎の競争心を燃やしているお姉ちゃん…
今、私…なんかとんでもない悪いことでもした…?
「確かにみらいちゃんの胸はふわふわででっかくて温かくて気持ちいいけど…」
「あ、お姉ちゃんもやったんだ。これ。」
「えへへ♥すずめちゃん、ポカポカしてすごくいい匂いがしました♥」
この無差別ハグ魔…
やけに嬉しそうなのがまた腹立つな…
その時、
「いいよ!みらいちゃん!勝負しよ!」
何か変なものでも思いついたのか突然先輩に向かって謎の勝負をふっかけてくるお姉ちゃん。
お姉ちゃんが先輩に申し込んだ勝負は
「名付けて「お姉ちゃん勝負」!どちらがよりことりのお姉ちゃんっぽいのかの勝負!」
本当に謎すぎて全く意味不明だったが
「受けて立ちましょう!すずめちゃん!」
詳細を聞くこともなくあっさりと引き受けてしまう先輩であった。
「私は皆のマミー!マミーたるもの、いかなる時も皆に頼られ、甘やかすことを求められなければなりません!」
っとまたピントのズレた意欲を燃やしている先輩と
「その意気よ!みらいちゃん!それこそ私のライバルにふさわしい気合とも言える!」
そんな先輩に負けじに意気込むお姉ちゃん。
一体何をなんで張り合っているのか全く見当もつかないが
「なんかすごく嫌な予感…」
とりあえず私はそろそろベッドから降りることにした。
***
「探したか。」
昨夜、男はビルの上に立って街を眺めていた。
遅い時間にも関わらず街には相変わらず大勢の人が行き交いしていて絶えることなく車が走っている。
未だに消えない街の光と数多な情報の流れ。
夜空の星は地上の光に追い出されてその姿をとっくに昔に消し、静寂という言葉はもはやその意味すら怪しくなった。
そのめくるめく街の中でその男は暗闇に潜れて街を眺めていた。
「申し訳ありません…それがまだ…」
「そうか。」
闇の向こうから聞こえる返事。
まだ見つからないという期待外れの多少失望の答えだけが返ってきたにも男は特に機嫌を損ねることもなく鳥の形の仮面を外してポケットから取り出したタバコを口に咥える。
闇から伸びた人の腕のようなものが彼のタバコに火をつけ、やがて消える。
一息でタバコを吸い尽くしてチリに崩した男は
「当然だ。小娘とはいえあの「ブラドチェペッシュ」の子孫、「鮮血女王」と「絶対零度」の娘だ。
そう簡単に捕まる玉ではあるまい。」
高を括るわけではなくただ正確に相手を判断し、評価した。
「噂によると親より厄介な術式を使っているそうだ。慎重に掛かれ。」
「心得ております。」
そして屋上から完全に消え去る声。
夜風に攫われるようになんの痕跡も残さず消えた彼は次こそ目当ての対象を確保して帰ってくると意気込んでその場から離れた。
「いつまで逃げられるとは思うな、小娘。」
たったの16歳の小さな少女。
数多な戦場を潜り抜け、生きてきた彼は元軍人で百戦錬磨の老将。
戦いにおける知識も、経験も遥かにその少女を上回っていたがそれでも彼は彼女のことを今まで自分と相まみえてきた敵と同じ、打ち砕くべきの敵と彼らと対等に扱い、認識していた。
くるっと巻いた赤い髪の毛。
満月のような金色の瞳。
自分に向かってあの大きな拳銃を向けたその少女は自分から大切なものを奪ってきた眼の前の全てに明白な敵意を剥き出していた。
その儚くて美しい敵意こそ今まで自分が戦場に飾ってきた鮮血の花であることを彼はあまりにもよく知っていたため、彼は少女のことを本気で潰すべきの敵と見定めた。
「「フォールアウト」は必ず君を探して殺す。そして君が持っているその金色の「概念」をワシにもたらすだろう。」
世界政府にバレないように企業の裏でひっそり運用していた特殊部隊。
「赤城財閥」で運用している「吸血鬼隊」「メルティブラッド」とぶつかったらどうなるのかその性能テストも兼ねた今回の特殊作戦はおそらく会社に莫大な損害を与えるに違いないと彼は確信していた。
だがそれでも彼にはこの世界での全てを諦めても決行する価値があることであった。
「あれが手に入れればワシは何でもする。この世界が「原点」に戻り、やがてあの忌々しいインチキの「神様」さえ排除できれば再び湧き上がるだろう。
そのためには何がどうあれあの「能力」を手に入れなければならん。」
望むのはただ「混沌」。
その混乱と殺意が混ざり合い、渦巻く淀みの中で必ず「宝物」は姿を表す。
その一心でその老衰な傷だらけの男は百年以上も生きてきた。
そしてやっと見えてきた希望。
老人はその赤い「吸血鬼」の少女が守ろうとする金色の髪をしたもう一人の少女からその可能性を覗いてしまった。
昼間、偶然見かけてしまったあの光景は決して幻ではない。
触れるだけで存在を消してしまうその「概念」は喉から手が出るほど手に入れたい。
それこそ長年の悲願を叶えてくれるたった一つの希望であることを彼は直感していた。
「再び戦乱の時代が到来したら世界政府は必ず「あの子」を出す。誰にも見つけられないようにずっと隠していたあの子を。
その時が来たらワシはやっと会うことができるのだ。」
今でも泣きそうな悲しい顔。
だが彼は自分の悲しみと寂しさももうすぐ最後を告げると信じてやまなかった。
「あの子の名前は「オーバーロード」なんかではない。あの子には、ワシの娘には「珠里」という母からつけてもらった立派な名前がある。」
晴れないもどかしさ。
その名前まで奪われ、存在したこともなかったことになってしまった娘への線香として彼はもう一度タバコを咥える。
「どうせこの世界はあの子の犠牲の上に建てられた偽りのハリボテに過ぎん。
あの子の本当の価値なんて理解もできんのだ。」
そして再び燃え盛る怒り。
彼は娘を犠牲にして作られたこの歪んだ仮初めの世界のことを心から嫌悪していた。
かつて「虎之助」「黒医者」「人形職人」と呼ばれた天才。
だが婿の暴走によって娘を無くし、やがて自分もその破滅の渦に飲み込まれ、人生の全てを狂わされてしまった不運の男。
今や「Dr.ドグマ」と呼ばれる彼は
「そろそろ返してもらおう。世界。」
亡霊となって今も世界に対して復讐心を燃やしていた。