第287話
遅くなって大変申し訳ございません。。
特に何かあったわけではありませんがなんだかうまく書けなくて時間が大分掛かってしまいました。
毎日規則正しく書こうとしているんですがやはりまだまだ修行が足りないようです。
これを機にもっと精進していきたいと思いますのでこれからも応援よろしくお願いいたします!
いつもありがとうございます!
幸いおやじの手術は成功、なんとか命だけは助かった。
多数の銃傷と切傷、普通の人だったらとっくに死んでもおかしくないほどの重傷だったが
「お医者さん、びっくりしたそうよ。おじさん、ものすごく頑丈でもう回復しようとしてたから。」
さすがおやじ。やはり簡単には死なない。
あいのその言葉にそこに集まっている全員は胸をなでおろした。
「「ゴーレム」は土の一族。自然の魔力の影響を最も大きく受ける種族だから大地が生きている限りよほどのことでは死なない。それでもたかり危ない状況だった。」
っと話しながら私達のところへ近づいたのは
「良かったな、こんごう。」
「おじさん…」
おやじの古い知人であり、現「黄金の塔」を率いている「ファントムナイツ」の騎士団長、「湖の騎士」「ランスロット」卿であった。
あいとそっくりの透き通るような透明な肌と真っ白な髪。
湖を思い出させる静かな青い目は決して人を圧倒するわけではなく、ただ静かに私達を導いてくれる。
まとっている紺色マントは高い身長と恐ろしいほどよく相まってさらなる孤高さを増している。
おやじよりは大分年下だがそれでもどこから見ても20代にしか見えない信じがたい若さ。
この人こそ「黄金の塔」の「神様」に仕える歴代の守護騎士の中でも最も強くて清澄な騎士だと言われている「湖の騎士」、そしてあいの実の父親である「ランスロット」卿である。
仕事中だったのか着替えもせず鎧のままで病院まで来てしまったおじさん。
でもおやじの無事を確認して少し安心したような顔をしているあいと同じく素直で優しい人であることを私はよく知っていた。
「すみません。こんな時間にわざわざ…」
「いや、私の方こそ気を遣わなくてすまない。」
「黄金の塔」を率いる首領にふさわしく普段なら絶対会えない多忙な人。
そんな人だからおやじのことまで気を回せなかったのももちろんよく知っている。
「私が事前に彼を止めておけばこんなことは…」
でも彼が私に私達一家のことを何もかも全部隠していたことはこれっぽっちも知らなかった。
「電話でなく直接会うのは初めてですね、ランスロット卿。」
その時、そんなおじさんに声をかけてきたのは
「初めてお目にかかります。「大石雲子」です。」
「あ、大石刑事。」
何故かおじさんと知り合いであった大石刑事であった。
私におやじに係っている全てを話してくれた大石刑事。
大石刑事はまず私に「影」と呼ばれる世界のことについて知っているのかを聞いてきた。
「噂なら聞いたことがあります。なんでも願いを叶える代わりに自らその中から怪物にならなければならないってとこ。
ネットでは結構有名ではないんですか?それ。」
今時のJKなら誰でもスマホを持っていていつでも数々の情報に触れることができる。
私もその中の一人で今に至ってはスマホはもう日常生活から欠かせない必需品となった。
この前は見るのは単なる世間話などのことに限られていたが最近では
「何してるの?こんごう。今会議中ー…ってまたまつりちゃんとメッセ?」
「べ…別にいいだろう…」
一人だけの部活に入って新入部員の火村とメッセージすることは増えてここんとこあいから注意されることが多くなってしまった。
「百花繚乱」の関係者や仕事関連の人以外とアドレス交換なんて初めてだったからつい嬉しくなってしまってー…という本音はさすがに言えない…
「私に何か言う前にあいつからなんとかした方がいいんじゃんねぇ?」
っと私が目配せで指したところには
「あぁーセッ○スしたいなー」
団長としての威厳も、責任も丸投げにしたアホの「竜人」団長がやる気を失って机の上で頬付けになっままスマホで今夜の生贄を探していた。
ネットの世界でしか存在しなかったはずの世界。
でもその都市伝説のような世界が本当は実存しているもので、自分の父がそこの関係者だと聞いた時、私はその場で固まってしまった。
あそこでおやじが何のために何をしたのか、大石刑事は教えてくれなかった決してろくなことではないというのだけは彼女ははっきり話してくれた。
「病院へ運ばれた時、お父さんの体はボロボロでした。全身が欠けてとっくの昔に限界を迎えたという感じでとにかく無惨な姿だったのです。一体どこで何をすればああいう体になるのか私には想像もできません。」
っと発見当時、おやじの体を見た大石刑事はその酷さに体を震えた。
「残念ながらその世界のことを公表することはできません。これはあそこの女将さんとの約束でもあります。
世界政府はいつでもあそこを潰したいと思っているんですが「影」はもう化け物達だけのものではなくなりました。」
「それはどういう…」
「住民」と呼ばれる土着民と主人の女将。
でもあそこに関わっているのは思ったよりもずっと巨大な悪であった。
「大犯罪組織「Family」、極端環境主義団体「Nature」、人界の覇王「大家」、インチキ宗教団体「運命の時」などの大物から複数の犯罪組織に至るまであの世界は全ての悪をかき集めた「悪魔の壺」。
女将さんは彼らの命で誰かの願いを叶えてあげられば誰でも構わないと言いましたが私は正直彼らに願いを叶えてもらえる資格があるのかと思います。」
悪に対する嫌悪感を剥き出しに晒し出す大石刑事。
彼女は幼い頃、刑事だった祖父がある犯罪組織の事件について調べていた途中、彼らに殺されてしまったことで心から悪を憎むようになったと私にそう話してくれた。
そしてその組織が「影」と繋がっていてそこから今までもなかった未曾有の危機に触れることができたという大石刑事。
その時、彼女は目的であった組織のことまで後回しにしてもこちらの件を優先するべきだと判断し、上層部と話し合ってこの件に取り掛かることになった。
「「影」は今ある人物と暗躍して何か危険な計画を企てています。「神族」や「魔神族」、「酒呑童子」のような神話的な存在すら欺いてしまうほど私達の想像を遥かに超えた存在。
でもその人物にたどり着く前に正体をバレてしまってあそこから抜け出すしかありませんでした。」
最後までその人物の正体を突き止めることはできなかったが確実に掴み取った証拠もある。
一つはその人物はうちの学校の生徒のような姿をしているということ、既に世界政府上層部を含めた特定の階層まで引き入れたほど計画が進んでいること、そして何故か彼らはこの計画のことを「星の救済計画」、「方舟」と呼んでいること。
後、その計画には「黄金の塔」の最高意思決定機関である評議会まで関わっていてそれを主導しているのが
「レーンちゃま…」
「黄金の塔」評議会長「朝倉愛憐」、本名「小金井愛憐」であること。
本当のことを言うと私はあの人のことがあまり好きではない。
「鍛冶屋の神」、「黄金の神」と呼ばれる彼女は「黄金の塔」と神界のことであれば何でもする筋金入りの最右翼で歴代の「神族」の中でも偏りが一番激しいと言われている。
でもその中に「ゴーレム」という種族は入ってなくておやじはそんな彼女に私達の「黄金の塔」の地位を約束されるためにとてつもない上納金を払っている。
彼女にとってゴーレムは使い捨てのコマ、とりわけおやじは使いやすいカモ扱いだった。
私が彼女を含めた評議会の爺達のことが嫌いになるのも無理ではない。
そんな彼女がまさかその得体も知れない存在と結託していたということはさすがの私でもかなりショックであったが
「レーンちゃまがまさか…」
一番衝撃を受けたのは彼女のことを実の姉のように、そして親のように従っていた「黄金の塔」のお姫様であるあいであった。
あいは特に
「その人物はおそらく生徒達にも手を出していると思われます。」
という大石刑事の話についに体をふらつくほど動揺するようになった。
自分が守ってあげるべきだった大切な生徒達。
そんな生徒達を利用して悪いことを企んでいる人物と自分が姉だと思って従っていた人が暗躍しているということはあいにとっても相当な衝撃になったと私はそう思う。
実際あいは何度も彼女がそんなはずがないと大石刑事の話を否定しようとしてなかなかその話を受け入れられなかった。
でも
「彼女の話は本当だ、あい。それは私が保証する。」
さすがにお父さんにそう言われた時は認めざるを得なかった。
おじさんがアイレーン様の異変に気づいたのはつい最近のこと。
特に用がない限りあまり人と関わらないようにしている彼女の部屋に何度も招かれた人物がいる。
特別な許可がないと入り口すら見つけ出すことのできない評議会長室に外部からの出入りが確認されたことはおじさんにとって一大事の非常事態だったが
「私だって友達くらいは自分の部屋に招待する。そんなことまで一々気にしないのだ。」
っと非常に不愉快な顔でこの話題についてこれ以上話したくないと一蹴する彼女の勢いに結局何も聞き出せなかったそうだ。
「その時探知したのはこの世ならざるものの気配。それは正しく脅威だと私はそう感じた。」
今まで彼女の暴走をなんとか抑制してきたおじさん。
でももし彼女が外部の力を利用して今度こそ自分が思い描いている偏った世界を作る気なら何があっても止めてみせるとおじさんはそう決意した。
それはきっと戦争の火種になって再びこの世界は戦乱の炎に飲み込まれてしまう。
そうなったら今度こそこの星は滅亡してしまうことを戦争で両親を失ったおじさんはよく知っていた。
神界の住民として神様である「神族」への詮索を行うのは断じてやってはいけないご法度。
もしその事実が本人や他の「円卓の騎士」に知られてしまったら「ファントムナイツ」は全ての地位を失って私達ゴーレムのように皆から疎まれる種族に成り下がりかねない。
それでもおじさんはその人物の正体と計画の全貌を突き止めて今の平和を守ろうとした。
誰も不幸にはさせない。
騎士となった時、おじさんは自分の剣にそう誓ったのであった。
「だから同じ目的を持っている大石刑事と協力してこの計画を食い止めるつもりだった。
まあ、実際会ったのは今日が初めてだがな。」
おそらくおやじは途中でこの計画の恐ろしさに気づいて自分でなんとかしようとしたら逆に返り討ちされたかも知れない予想しているおじさん。
おじさんは数日前、おやじから電話がかかってきたことがあって
「多分とっくに昔に道を間違えてしまったかも知れない。だったら残された道はここで過ちを叩き直して最初からやり直すしかない。
全ては私がなんとかする。」
何か決意したような話を自分にやったことを私に話してくれた。
その後、おじさんは一度たりともおやじとの連絡が取れず、時間だけが過ぎていく。
そして今日、おやじは瀕死の状態になって私達の前に現れた。
おじさんはそのことに重い責任感を感じていた。
そしておやじは最後にこう話した。
「こんごう。父さんはいつだってお前のことを愛している。」
と。
子供の時、私を残して一人で村から離れたおやじ。
そのせいで私は散々な目に遭ってきた。
皆から疎まれた時も、森の大火災の時も私の傍にいてくれたなかったおやじのことを私は今も恨んでいる。
それでもそんなおやじのことを憎みきれない自分のことを私は今も心からかっこ悪くて情けないと思っている。
「そこであいとこんごう、二人に頼みたいことがある。」
そして私達にこの二人が本当のことを話した理由を聞かれた時、
「はい。任せてください。」
前例のない学校内部調査が「百花繚乱」の元で行われることになった。




