第270話
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「あ…あのね、桃坂さん…ちょっといいかしら…?」
「速水さん?」
あの堂々として物怖じしないあい先輩が珍しく緊張している。
いつの間にか私達のところに来てもぞもぞしながら先輩に声を掛けるあい先輩のことに私達は少しだけ雑談を止めて様子を見るようになった。
「ちょっとだけ話したいことがあるんだけどちょっとあっちで二人っきりで話さない…?」
「もちろんです。」
去年まで先輩はあい先輩のことを多少怖がっていた。
まあ、確かにあい先輩は近寄りがたくて人前ではいつも高圧的な態度を取っていたから無理もない。
でも今の先輩を見るとなんだかあい先輩のことを前みたいに怖がっているようには見えない。
むしろ前よりあい先輩のことを親しく感じているみたいで私個人ではなんだかすごくほっとした感じ。
「じゃあ、ちょっとあっちへ一緒に来てもらえるかしら?」
「はい。」
っと人目につかないところで二人だけで話したいというあい先輩の意向を受け入れて
「ごめんなさい、ことりちゃん。すぐ戻りますから。」
先輩は私の額にそっとチューをしてから席を外し…
ってなんでチュー!?先輩って私のこと、もう完全に赤ちゃん扱いしてるんじゃない!?
「むむむ…私だってことりちゃんにチューしてあげたいわ…」
「あい先輩…?」
なんだかすごくうずうずした顔してる、あい先輩…
言っときますが人前でチューされるのは子供扱いっぽくてあまり好きじゃないですからね…
「でも一体先輩にあい先輩からどんな話を…」
奥の庭の方へ一緒に歩いていく先輩達を見て私はやっぱり気になるという気持ちを隠せなかった。
大まかうみっこ絡みの話に間違いないがどうしても気になってしまう。
私は自分の意志でうみっこに謝るために、そして自分の罪を悔い改めるためにお姉ちゃんのおかげでやり直せた学校生活をそこにおいてまた戻ってきたが未だにたくさんの人達に守られるばかりである。
先輩だっていつも
「大丈夫ですよ、ことりちゃん。マミーがなんとかしますから。」
っと言っているし私のことを全然信じてもらえない。
いや、ちょっと違うか。
先輩の場合は多分周りの人達が大切すぎて余計な心配までやっている感じで自慢ではないがそれはおそらく私自身も含まれていることだろう。
うみっこは先輩のそういうところについて
「それが先輩の魅力だし仕方ないよ。まあ、たまには私だけを見て欲しいなって気持ちはあるんだけどね。」
っと先輩のお節介な心遣いのことをあんな風に話したがそれが満更でもなかった気がする。
でもうみっこが先輩に惚れたのはきっとそういう温かいところもあるんだろうと私はそう思う。
「付いて行こう…か。」
私はうみっこが繰り広げた今回の事件に首を突っ込むにはまだ知らなすぎだ。
直接な原因は私だがどうしてうみっこがあんな決定をしたのか、まだ知らないことが山ほどある。
これは私が今までたくさんの人達に守られるだけの籠の中の鳥に過ぎないという証拠だ。
自分のせいで起きたことだから自分が解決しなければならない。
私にはそのための権利と責任が課せられている。
私はちゃんとうみっこに謝って皆に許しを求めたい。
そのために私は今よりたくさん知る必要がある。
そう思った私は
「二人共、ちょっとごめんね。私、お手洗い。」
クリスちゃんと先程クリスちゃんから紹介してもらったまつりちゃんに少し席を外すことを知らせた。
クリスちゃんとまつりちゃんがいるベンチから少し離れてから
「皆、ちょっと力を貸して欲しい。」
私は先程触れ合った小鳥ちゃん達を呼びかけた。
「チュンチュン。」
あっという間に私が身を隠している木の下に集まってくれた小さな友達。
目白、雀、エナガ、その他にもこの近くに住み着いている子達がいっぱい私の呼びかけに駆けつけてくれた。
あい先輩と先輩の後を追いかけると言っても私なんかがあのあい先輩にバレずに隠しきれるとは微塵も思わない。
実際あい先輩は子供の頃に何度も暗殺の危機に遭ってそのせいか人並み以上用心深い。
灰島さんと一緒にいる時はそれなりに気を許して心のガードが多少緩くなっている感じだが残念ながら私はお姉ちゃんみたいに特殊な訓練を受けたことが一切ない。
私の気配なんて一瞬で補足されて
「どうしたの?♥ことりちゃん♥そんなに私のことが気になるのかしら♥」
「そんなにマミーと離れたくなかったんですね♥もー♥ことりちゃんって本当に甘えん坊さんですね♥」
その場で捕まってあのデカパイの二人の間に挟まれて今までの中で一番の子供扱いをされてしまうのにほぼ間違いない。
「二人共…私のことをいつも子供みたいに…」
こういうのを言うのもなんだが私は先輩やあい先輩よりひと足早く社会に出て見事に社会の一員として働いた。
社会経験は私の方が豊富であえて言わせてもらうと私の方が二人に比べて社会では二人よりもずっと先輩ってこと。
私は自分の名前で着実にお金を稼いでいてそれなりに貯金もしている。
自分の名義でマンションやビルも何軒持っていて「灰島」みたいな大手企業の株も買い取って引退後の計画もそこそこ立てている。
「もうことりは立派に経済活動をしているからちゃんとした管理方法を身に着けなきゃダメ。
お姉ちゃんが手伝ってあげるから将来のためでも今日から自分の財政事情くらいは把握しておくこと。」
特にお姉ちゃんのことを疑っているわけではないだがそれでもお姉ちゃんは金に関しては徹底的に扱っていた。
後ろめたいことがないように私の収益も含めて事務所も兼ねている組の資産を透明に管理して当然契約もちゃんと守ってくれた。
「無理な仕事はダメ。体こそ資産だし第一ことりはお姉ちゃんの世界一の宝物だからお仕事で健康でも害したら元も子もない。」
一刻も早くキャリアを積んで上に上り詰めてのし上がりたがった私と違って割りと私に関しては徹底的な過保護の路線を貫いたお姉ちゃん。
結局私のワガママでなるべく私へのオファーは全部引き受けることにしてくれたが今になってはあの時のお姉ちゃんの気持ちも分からないまでもない。
そんなお姉ちゃんのおかげで私は立派な大人になって自分の意志で物事を判断できるようになった。
まあ、確かに去年のことは自分なりにちゃんと反省しているつもりだがとにかく私はもうある程度の自立ができるようになった大人ということ。
「私だってできるんだもん…」
うみっこと皆に謝りたいのは本当だが私は内心二人のことを振り向かせたいと思っている。
あい先輩は自分が思っている一番かっこいい女性像の一人で先輩は初めて自分の伴侶になってもらいたいと思った人だから私のことを甘く見ないで欲しい。
そのために必要なのは情報。
先のあい先輩の
「じゃあ、ことりちゃんは今日から私と一緒に「ホワイトノイズ」のメンバーね?」
って言葉の意味は未だに把握していないがおそらくその「ホワイトノイズ」ってやつがあい先輩が考えている今回の派閥争いを終戦させる対策の一つなんだろう。
私は自分の決意を示すためにもなんとしても先輩達を上回って行動しなければならない。
クリスちゃんやまつりちゃんなら快く協力してくれそうだが知り合ったばかりでさすがに私の方が先輩なのに可愛い後輩ちゃん達に迷惑かけるわけにはいかないし。
「よし…」
そう思ってなんとか自分だけで頑張ってみようと心を決めた私は自分の指に留まっている丸っこくて可愛い雀ちゃんをリーダーにして
「いい?皆。二人で何の話をするのか聞くだけだからそんなに近づかなくてもいい。なるべく自然にね?」
その小さな友達に大事な任務を与えた。
子供の頃からよく使った方法。
私みたいな「魔法少女」は大体動物達と会話することができてそれを有効に活用してきた。
第1に転校した時は学校のことはあまり知りたくなかったから皆に学校の知らせを頼まなかったが今の私は違う。
私は自分が変わるため、そして過ちを正すためできることなら何でもする。
それが今の私の決意である。
「じゃあ、行ってらっしゃい。」
私からの頼み事を理解してくれた小さな友達はそのまま私の元から離れて奥庭の方へ飛び立った。
晴れ渡った青空を横切ってどこまでも飛んでいくその小さくても生命力の溢れる強い羽ばたきについ私もあんな風にの自由に飛び立ちたいと思うようになってしまう。
それからしばらく
「チュンチュン。」
「あ、皆、返ってきたね。お疲れ様。」
二人の話が終わったのかクリスちゃん達といた私のところへ戻ってきた小鳥さん達。
だがそこで私が報告されたのは
「どうですか?♥速水さん♥マミーのミルクは♥」
何故か先輩にくっついて夢中になって先輩のおっぱいを吸い込んでいるというあい先輩のことであった。
「一体何があったの…?」
私はそのことを自分の目で確かめるために
「ごめん…!二人共…!私、トイレ…!」
再び席を外して二人がいる奥庭の方へ走り出した。




