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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第2章「始まり」
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第25話

いつもありがとうございます!

な…何か言わなきゃ…


「…」


先からずっと黙って車の窓の外をじーっと眺めている赤城さん。その満月な瞳に映る夜の夜景はとても素晴らしくて素敵なものでしたが彼女の顔は先見た時と同じく濃く悲しみに沈んでいるままでした。


私は今赤城さん専用の車で学校まで一緒に同行させて頂いています。いつまた薬師寺さんみたいな「大家」の人が来るか分からないから連れて行ってあげるって車まで用意してくれた赤城さん。

私は今日彼女に助けられました。


「何か言いたいことでも?」


ギック!


私から何か言いたがるような様子を気づいた赤城さんは相変わらず視線を外に出したままそう聞いてきました。


「い…いいえ!助けてくださったからちゃんとお礼を言わなきゃって…!」

「お礼なら先頂きましたからもういいですわ。それに自分の生徒を守ろのも生徒会の役目ですから。」


か…かっこいい…!めっちゃクールですね、赤城さんって…!

それにこんなに近くで見るとさすがにオーラが違いますね…!さすが「真紅のシンデレラ」と言われることはあるかも…!


街の明かりに照らされる蒼白なお肌はひやっとしたその冷たい美しさを外に剥き出し、湧き上がる血液のように熱い鮮血の髪の毛は今でも脈拍を感じられそうに私の胸を走られる。何より一点の淡雲も通らない清く晴れた満月の目はこの夜の全てを見通していて私はそのエゴと言ってもいいほどの圧巻の美しさに気を取られてしまいました。


「あなたが「大家」と関係があるという報告は既に受けていましたわ。もちろん身元については厳守しますのでご安心してくださいませ。」

「あ…ありがとうございます…」


もう報告か…やっぱり私はまだ「大家」の子としてこの社会から警戒されているんですね…分かっていることなんですがやっぱり他人の口から聞くと胸がちょっと痛いっていうか…


「もうここまで離れていれば追っかけないでしょう。」

「はい…良かった…」


これでやっと落ち着きますね…はあ…本当に良かった…

市内から完全に離れて高速道路に入った私達は夜の海を沿って走りました。


「さすがにあの化け物でもこんなところまでは追いかけられないはずですからもう大丈夫ですわ。夜という時間に限ってはわたくし達は誰にでも負けません。」


安堵の溜息を吐き出す私を見てもう大丈夫って安心させてくれる赤城さん。確かにあの薬師寺さんでもこんな夜中の「吸血鬼」には勝てないかも…だから先赤城さんが助けに来た時おとなしくそこから離れたんだ…


「とはいえ実際戦うことになったらどうなるかわたくしにも分かりません。あれって本当に人間ですの?」


そう聞いてくる赤城さんの声を聞いた時、私は薄く気づいてしまったんです。

気づかないほど微弱な揺らぎ、そして無理矢理に止めている震える手。本当は赤城さんだって怖かったんです。あの得体の知れないどす黒い「死神」のことが…


薬師寺さんのことについて私は何も分かりません。むしろゆりちゃんの方が彼女のことについてもうちょっと詳しくて…

確かなのは彼女が「大家」の最後の切り札で今まで「死神」としてたくさんの人達を殺してきたのは間違いのない事実です。


一歩間違えてしまったら大変なことになってしまったかも知れなかったその危険な状況で赤城さんは命がけで薬師寺さんから私を助けてくれたんです。

私は彼女の勇気に敬意と感謝の気持ちをもう一度伝えなければなりませんでした。


「不思議な方ですわね、あなたは。」

「え…?」


やっと窓から離れて私の方に目を向ける赤城さん。彼女はなぜか向こうから先に私の方へ話を掛けてきましたが私はその言葉の意味をさっぱり分かりませんでした。


「初めてあなたが「大家」の人間という報告を受けた時、わたくしなりにあなたのことを結構警戒していましたの。なんと言ってもあの「大家」の後継者教育を受けた人でしたから当然なら当然でしょう。会長はあなたのことを結構信頼なさったようでしたがわたくしにはまだ気を抜く段階ではありませんでしたからあなたのことを影からずっと見張っていました。入学式以来からずっと。」

「わ…私のことをですか…!?」


わ…私、初めて聞くんですけど…!?それも入学式からですか…!?でもゆりちゃん、そういうの一言も…!


「緑山さんにはちゃんと許可を取っていましたからそちらは問題ありませんわ。わたくしの方からも彼女と変に関わりたくありません。むしろ彼女の方からどうかわたくしの目で自分の「みもりちゃん」がどれほどいい人なのか判断してくださいっとわたくしに見張ることを要請しましたから。彼女はどうしてもわたくしのあなたへの疑いを晴らしてもらいたかったんでしょう。」

「ゆりちゃんが…」


ゆりちゃん、そんなことまでしていたんだ…私、全然気づかなかったんです…赤城さんが私のことを監視していたってことも、ゆりちゃんがそのことを赤城さんにお願いしたことも…


「本当にいい幼馴染ですわね。彼女のおかげでもうわたくしの方からあなたのことを疑うことは断じてありませんわ。今まで疑っていて申し訳ありませんわ。」

「そ…そんな…!仕方ないことですから…!」


私の方を見つめた赤城さんは入学式以来ずっと私のことを監視していたことを頭を下げて謝りました。私は世界的な超一流アイドルの赤城さんからのごめんなさいが恐れ入りすぎて何度も大丈夫って言いましたが彼女はそれからしばらくずっとそのままでした。


「あなたはいい人です。とてもあの「大家」の人間とは思われないほど。それはわたくしが保証しますわ。今後何かお困りのことでもありましたら遠慮なく相談してくださいませ。全力でお力になって差し上げますわ。」

「赤城さん…」


赤城さん、すごく頼りになります…私、赤城さんに嫌われているって思ったんですから今の言葉がすごく嬉しいです!

ってあれ…?今までずっと見張っていたってことはもしかしてかな私が先輩と初めて合った日もずっと見ていたってことなのかな…?じゃあ、あの時、先輩にお姫様抱っこされた私のことも…!は…恥ずかしいです!


「ごめんなさいですわ。最近色々ありまして少し苛立ちまして。」

「い…いいえ!私の方こそいきなり訪ねてしまって申し訳ありません…!」

「どうせ会長から誘われたんでしょ?気にしませんわ。」


こう話していて少し分かったようなことが一つあります…

赤城さんが本当はそんなに悪い人ではないってこと。私はこの短い間、その事実だけは強く感じていました。

ゆりちゃんは赤城さんのことを気難しい人って少し渋っていますがそれは多分まだ赤城さんのことをよく分からないからだと思います。後でちゃんと教えてあげなきゃ。


でも今日は本当に驚きました。まさかあの薬師寺さんが私に合うためにここまで来るとは…ここ、世界政府の警察や軍の人達もたくさんいますから絶対近づけないと思ったんですが…

それに薬師寺さん、また会おうって口調で行っちゃいましたからまた来ちゃったらどうしよう、私…


そんな私の気がかりを察した赤城さんは多分その辺は大丈夫でしょうって私を安心させてくれました。


「緑山さんがいる限りそこは大丈夫だと思いますわ。彼女はあの「緑山」家の次期当主。彼女は存在自体でも十分規格外の「怪物」ですが一番恐ろしいのはあなたへの執念です。それが存在する限り先のあの化け物は二度とあなたの近くには現れないでしょう。

それにわたくしは今回の「大家」の侵入をきっかけにしてこの地区の警備を今までとは比べないほど強化させるつもりなんですの。二度と「大家」のような極悪人共目が我が学校の生徒達に近づけないように。あ、もちろんあなたは例外ですわ。」


例外なんだ、私は…


でも今の言葉でちょっと安心しちゃいました。赤城さんの目を見ているとなんだかほっとしちゃって…先はあんなに怖かったのに…


「変ですの?わたくしのこういう反応は。」

「ええ…!?」


エスパー!?


「へ…変っていうかちょっと以外だななんてですね…」


特に変とは思わないんです。ただ赤城さんって以外に人の面倒を見てくれて私やゆりちゃんのことも詳しくて…他の生徒達の安全にもかなり気をつけていて本当にいい人だなって思っただけです。


「わたくしは「赤城」家の次期当主。上に立つものとあれば当然なことですわ。会長はその部に少し自覚を持たないようですがそのうち気づいてくださるはずでしょう。」

「そ…そうですか…」


うわぁ…意識高い…


でもやっぱりかっこいいですね、赤城さん…体はちょっとちっちゃいけど中身はすっかり大人で…会長さんとは違ってしっかりした雰囲気が出て憧れちゃいます…


「とはいえわたくしは皆が思っているほど大人ではありませんの。実際同好会のことに関わってしまったら先のような態度でよそよそしくなってしまうのですし。」

「同好会…」


でも赤城さんは決して自分が大人とは思わなかったんです。むしろ私の目には自分はまだまだ子供っぽいだと言いたいって見えていました。


やっぱりただ疲れているだけで私にそういう態度を取ったわけではないんですね…

でも私は赤城さんから素直に自分の気持ちを話してくれたのがとても嬉しかったのでこれ以上先のことについては考えないようにしました。


「改めてもう一度謝らせていただけますの?あれはやはり先輩としてよくない態度でしたからちゃんと謝りたいですわ。」

「い…いいえ!私は本当に大丈夫ですから…!」


あの赤城さんに謝られるのはなかなかしんどいことだからこの辺で勘弁して欲しいですが結局先のことを謝って許しを求める律儀な赤城さん。

私はそんな赤城さんの真面目な性格に少し敬意の気持ちまで抱いてしまいました。


でも私は赤城さんにぜひ聞きたいです。どうして同好会のことがそんなに嫌いなのか。どうして廃部されなければならないのか。


赤城さんと同好会のかな先輩の間に何かあるってことはみらい先輩から言われましたからよく知っています。でもやっぱり私は同好会がなくなるのは嫌ですからその理由をちゃんとお聞きしたいです。

もし先輩と揉めたことがその理由というのなら仲直りすればいい。自分からちゃんとごめんなさいって謝って昔の仲良しに戻ればいい。私とゆりちゃんは子供の頃からずっとそうしてきました。

何より私は赤城さんの今みたいな侘しい顔が見たくなかったんです。


「…あの人は…元気ですの?」


そう思っている私に向かってふと口を開ける赤城さん。私は彼女のとっさの質問に自分から聞きたいことさえ忘れてしまったのです。


「あの人って…もしかしてかな先輩のことでしょうか…?」


っと聞き返す私の話にそっと首をうなずく赤城さん。私はそんな彼女のために自分が覚えている先輩の全てについて全部話そうとしました。


「は…はい!先輩、いつも元気で明るくて見ているだけでこっちまで元気をもらっちゃうっていうか…!今日の練習もいっぱい張り切っちゃって…!」

「そう…」

「先輩にはいつもお世話になっていてですね…!優しくて美人だし…!おっぱいもでっかいんですよね…!」


慌てて先輩のことを余計なことまで全部並べていた私を見てほんのり微笑んでしまう赤城さん。でも私は赤城さんのその笑みがなんだかとても寂しそうに見えたので思わず言葉を止めてしまいました。


いつも元気で明るい…確かにかな先輩って人はそういう元気の塊みたいな人でした。

美人で世話好きで優しくて元気でとてもいい人。見ているこっちまで明るくなるほどかな先輩はいつも私達を笑顔で迎えてくれました。


でもそんな先輩が暗い顔になってしまう時がありました。それはたまに見てしまう副会長の赤城さんの姿を見る時でした。

胸が痺れちゃいほど寂しくて悲しそうな表情。私は普段の明るい先輩がそんな顔をする時とても胸が痛くて辛かったんです。

そう。今の赤城さんのことを見ている時みたいに…


「後輩達にこれだけ愛される先輩とは…あの人らしいですわね。」


赤城さん、今なんだかほっとしたような顔…まるで自分がいなくても大丈夫そうな先輩のことが分かって安心したような…


「強いんですわね…あの人は。わたくし何かとは違ってちゃんと前に進めていますわ…」


なんだか敗北感ってやつまで感じてしまったそうな悔しい顔…その表情の意味を分かるのは私はまだまだ小さくて子供のままでしたが


「わたしくはまだあの時のままですのに…」


彼女が息で窓を曇らせてその上に小さく「カナ」って書いていたことを見てしまったあの時、私は言葉では語れないほど大きな傷みを感じてしまったのです。


「所詮異なる種族、異なる時間軸の生き物。お互いのことを理解できるわけありませんわ。」


そう言った赤城さんは「カナ」って書いたその名前を自分の手で拭いてしまいました。

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