第243話
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「さすが姫様だ…」
「ここまで全勝とは…」
驚く大人達。
でも一番驚いたのは
「素晴らしい…」
人の前であまり自分を感情を出さないお父さんまで目を大きくして彼女のことを見つめていることであった。
「いかがですか。「ディアボロ」卿。」
「噂は聞いていましたがまさかこれほどとは。正直に言って驚きました。」
お父さんは誰にでも自分の本名を明かさない。知っているのは娘である私とお姉ちゃんだけ。
だから皆お父さんのことを異名だった「ディアボロ」で呼んでいた。
その頃のお父さんはまだ「黄金の塔」の「騎士」の一員だったので皆お父さんには「卿」って称号付けていた。
「圧倒的…その上、お美しい…さすが「ランスロット」卿の娘さんです。」
その戦いぶりに感心の気持ちを隠しきれないお父さん。
お父さんは「強さこそ美しい」とよく話していた人だけにあい先輩の戦いに魅了されていた。
「今年も結局姫様の全勝ちって落ちのようですな。」
「黄金の塔」には何年の周期を持って皆の前で自分達の子の力を見せつける「騎士大会」ってものが行われていた。
自分の子がいかにも己の力を磨き、鍛えてきたのかを他の種族達に教える行事だったがあい先輩の代の大会はあまり面白くないって評判だった。
だってその大会が開かれる度に勝つのはいつだってあい先輩だったから。
「ディアボロ卿のご息女は参加なさらないんですか。」
っと評議会のジジイ達は「赤座組」の後を継ぐお姉ちゃんの力がどうしても知りたくてお父さんにお姉ちゃんの参加はさせないのかっと何度も聞いていたが
「いや。うちの子には遠慮しておくようにと伝えておきましたから。」
お父さんは何故か毎度その提案を断っていた。
その大会は特に小さな子供達の間で負傷者が出るほど激しい戦いになったため、
「そんな野蛮な大会はとっとと中止なのだ。」
あのお方が次の評議会長になった以後、直ちに中止になってしまった。
でも私は
「きれい…」
今もあの時のあい先輩のことをよく覚えていた。
腰まで伸びた長くてきれいな白銀の髪。透き通った麗しい瞳。
手に持たれていたのは「水の剣」の正式な使い手の中でも最も優れた人にしか使いこなせないと言われている「輪廻」。
「水の剣」なのになんで鞭なんだろうっとかは思えないほど高貴で孤高なその姿に私は一瞬で目を奪われてしまった。
今のあい先輩のことを世間はただの「黄金の塔」が作った偶像なんかくらいで思っているようだがあい先輩は決してそんなやわな人ではない。
親が、特に「ファントムナイツ」の現騎士団長である父が厳しかったせいで子供の頃からとんでもない訓練を重ねてきたのがあい先輩だった。
「水の剣」を伝授されるため何度も死にかけてきて子供の体で受けた厳しい訓練の後遺症のせいで体の色んなところが痛いらしい。
特にあい先輩は「黄金の塔」のために女の子としての色んなことを諦めたからあのお方もそんなあい先輩のことをその親よりも気にかけているんだろう。
もう古傷になったせいで私にも治すことができずそのまま放置しているが私はいつか自分の力がもっと強くなればあい先輩のことを必ず治してあげたいと思っていてそんな私の心遣いをあい先輩はずっと
「ありがとう。ことりちゃん。」
っと言ってくれた。
でもあい先輩は怖い人だった。
「もう二度と私の前に現れないでちょうだい。」
私のことを学校で追い出した時、私に見せたあい先輩のその顔は私も初めて見る表情であった。
まるで私のことをもう人としては見てないような冷たくて無感情な顔。
まさかあい先輩のそんな顔を初めて向けられる人が自分になるとは夢にも思わなかった。
その顔で私との関係はここまでだと話しているあい先輩のことがあまりにも怖くなった私はそのままその場で逃げ出してしまった。
「ん…まあ、今回ばかりはことりが悪かったから仕方がないよ。」
「ごめん…お姉ちゃん…」
自分がどれだけあり得ないことをやらかしたのかはよく知っている。
いくら自分には全く記憶がないって言っても卑屈な言い訳にしかならない。
それを分かっているからお姉ちゃんも正直に私にそう言ってくれたんだろう。私もそれに関しては異存はない。
「まあ、会議で会うことにはなるけどそれくらいは我慢できるから。ことりは何の心配もしないでね?」
「うん…本当にごめん…」
さすがお姉ちゃん。私のことになったらいつでも私の味方になってくれる。
でも私はやっぱりお姉ちゃんにも、そんな気分にさせてしまったあい先輩にも、そして自分が傷つけてしまったうみっこにも到底合わせる顔がないっという気持ちで心が落ち着かなかった。
こんな状況を全く予想してなかったってわけではない。むしろ既に覚悟の上のことだった。
先日ロッカーの中で聞いたあい先輩の話から私はこうなることをとっくに分かっていた。
もしその時になったらあい先輩はきっと私を呼ぶだろうっと。
でも…
「ほ…ほら!ことりちゃん…!ことりちゃんの大好きなママのおっぱいですよ…!」
こうなるとは全く予想していなかった。
あのあい先輩が…あの上品で美しいあい先輩が久しぶりに会った私の前に服をはだけてそのでっかい乳をたぷんたぷんっと垂らしている…
これだけで混乱しすぎて頭がおかしくなりそう…って誰が好きっていうんですか…!?
「ちょ…ちょっと速水さん…!約束と違うんじゃないですか…!ことりちゃんのマミーは私なんですから…!」
そして何故か話をややこしくする先輩からの介入。
そんな先輩にあい先輩は
「そんなのずるいわ…!私だってことりちゃんのママになりたいのよ…!」
やけにムキになって私にその威圧的な胸を押し付けようとした。
「うわぁ…!なにこれ…!」
見れば見るほどすごいって言葉すら出てこない…
揺れる度にたぷんっていうかもうどかんって音まで聞こえそう…
この動きはまるで広大な海を泳いでいるクジラの泳ぎのようにどっしりしてもう怖いって感想しか湧かない…
昔から大きいってのは知ってたけど間近から見ると迫力が違うっていうか…
「ことりちゃん…!マミーのがいいんですよね…!?マミーのおっぱいの方がいいんですよね…!?」
そしてその横から飛び込むのは多分この時代ではもう対等に渡り合える人がないと言っても過言ではないほどの大きさを誇る私の自称マミーさんであった。
「ほ…ほら…!ことりちゃん、言ったじゃないですか…!マミーに抱かれて寝るの好きだって…!」
「せ…先輩…!?何バラすんですか…!?」
「そ…それを言うのなら私だってことりちゃんからお母さんになって欲しいって言われたことがあるわ…!ねぇ!?ことりちゃん!?」
「だからなんでバラすんですか…!?」
続いたのは私の恥ずかしい秘密大暴露大会。
その辺で私はもう穴があったら入りたいと思いようになった。
「はわわ…!ふ…二人共…!もう止めて…!」
そろそろ止めた方がいいと判断した私は二人の間に仲裁役として介入することにしたが
「わ…私はことりちゃんと同棲してるんですよ!?ことりちゃんと一緒に同じ釜のご飯を食べててお風呂の時も、寝る時も一緒…!この前は「先輩…ことりのお嫁さんになってください…」って寝言も聞きましたし…!」
「わ…私はことりちゃんと一緒にキャンプしたこともあるわよ…!ことりちゃんが寝袋を持ってくるのを忘れて私ので一緒に寝てたわ…!」
既に今回のこととは全く関係のない諍いを繰り広げた二人さんは止める気もしなかった。
って私、寝言で先輩にそんなことまで言ってた!?
「へえーことりちゃん、青葉さんのことが好きだったんじゃなかったんだ。」
「それは以外ですね。私はてっきり青葉さんのことが好きだったと思いました。」
「先輩、モテモテ…」
そして今のことでとうとう私の密かに隠していた秘密に気づき始めた皆のことに私は
「わ…分かりました…!分かりましたから…!」
一刻も早くこの場から離れたくてあい先輩の気持ちを受け入れることにした。
「分かりましたから…!だからこれ以上の個人情報の晒しはもう止めてください…!すみませんでした…!あい先輩のこと、避けていて…!」
「え…?本当に…?」
今の私の言葉でやっと私の秘密のことから離れてくれるあい先輩。
でも
「本当の本当に…?私のこと…許してくれるの…?」
今のことがさぞ嬉しかったのかあい先輩は信じがたいって顔で何度も私に今の言葉を確かめた。
「許すも何も…あい先輩は自分の責務に懸命だっただけだし…まあ…二度と目の前に現れるなって言われたのは多少ショックでしたけどね…」
「ご…ごめんなさい…」
っとあい先輩は去年のことを心を込めて謝ったが正直なところあい先輩には何の悪いこともないってのは私が一番知っていた。
あい先輩には「黄金の塔」の次期頭領として責務に励む義務があって先輩はそれに従って行動しただけ。
そのことを責める気なんて端からなかった。
私はただあい先輩が私のことからあっさりと背を向けたことが怖くて悲しかっただけ。
むしろ謝ることを悩んでいたのは私の方だった。
「だってあれだけのことをやっちゃったんですから…先輩の顔に泥を塗っちゃったから…」
「そ…そんなことないわ…!」
っとあい先輩はそれは違うって私の肩を持ってくれたが私はやっぱり自分の方が悪いって思っていた。
ずっと謝りたかったのはうみっこだけではない。
一番謝りたいのはうみっこということに違いはないだが先輩にも、そしてあい先輩にもずっと謝りたかった。
だからこそあい先輩に謝って許しを求めることを私はずっと怖がっていた。
「ことりちゃんの本当の心はそうではなかったんですね。」
私が先輩の家に訪ねていったあの夜、先輩は私に「ありがとう」って言った。
私が本当はうみっことのことを後悔していて皆に謝りたいって思ってたことを先輩はありがとうって言ってくれた。
「だってことりちゃんはとても優しい人なんですから。決して自分の意思で人を傷つけたりはしないとてもいい子なんですから。ありがとう、ことりちゃん。私に本当のことりちゃんの気持ちを教えてくれて。」
っと私をギュッと抱きしめてくれた先輩の温もりに声が枯れるまで泣いていた私。
でもあい先輩に対してはそううまくいく確信がなかった分、私はそれに大きな不安を抱えていた。
でもまさかあい先輩の方から私に謝ってくるとは…
前のあい先輩だったらこんなこと、思いも出せないと私はそう思っていた。
きっと灰島さんとの出会いがあい先輩を変えたんだろう。
二人の間に何があったのか、私には到底知る由もないのだがそれだけはなんとなく感じている。
私だって今までの自分を変えられるような出会いと何度も会ってきたからな。
これでいい。
私だって変わるって自分自身と約束したから。
いつまでも誰かの後ろに隠れてばかりじゃ前に進められない。
「せ…先輩さえ良ければ…」
私があい先輩にそう答えるまで実に長い時間がかかって大きな勇気が必要だった。
今だってあい先輩のことは怖くて接することに戸惑いを感じる。
でもあい先輩だって進もうとしているから私も自分の覚悟を見せなきゃならない。
うみっこに謝るため、先輩達に謝って皆に謝るため私は楽な道を捨ててここに戻ったんだから。
「うん…!もちろん…!」
その時、私に飛びかかってすごい力で思いっきり抱き込むあい先輩!
「あ…あい先輩…!?」
抱かれたその瞬間はあまりにも驚いて気を失いそうになっていたが
「ありがとう…!ことりちゃん…!」
私はついに涙まで流して今の私の言葉に喜んでいるあい先輩を見て今はもうちょっとしっかり粘ることにした。
「ごめんなさい…あの時、あんなこと言っちゃって…」
「も…もういいですよ…先輩の気持ちは十分分かりましたから…」
こちらがいくらもういいと言ってもなかなか謝ることを止めてくれないあい先輩のことに私は困惑を表したが本当のことを言うとやっぱりほっとした。
あい先輩…私のことが本気で嫌になったわけではなかったなって…
「なんだかんだ言ってもやっぱりいい人なんですね…あい先輩って…」
そう思った私は今度は自分の方からあい先輩のことを抱きつくことにした。
いいな…こうしていて心がポカポカですごくほっとできて…って
「せ…先輩…?」
「ことりちゃん…♥可愛いことりちゃん…♥」
こ…これ、なんかどんどん締め付けるのが強くなっているような…!
「ごめんね…♥あんなにひどちことを言っちゃって…♥」
「そ…それはもういいですからそろそろ放して…!」
ど…どうしよう…!あい先輩、なんか変なスイッチが入っちゃったかも…!
胸をどんどんきつく締め付けてくる凄まじい圧力に私はほぼ泣き顔になって私のことを解放してくださいっと何度も懇願してたが
「お詫びに今日はママにたくさん甘えてもいいからね?♥ことりちゃん、本当ちっちゃくて可愛いわね♥いい匂いがするわ♥」
既に日頃の先輩と同じ状態になったあい先輩は私の頭の匂いまで嗅ぎ始めて私のことを先よりぎっしりと締め付けてきた…!
「つ…潰れちゃうチュン…」
こ…これはもはや圧搾のレベル…!ここままでは私の内臓がお尻の中から出てしまうかも知れない…!なんという力なんですか…!あい先輩…!
「あ…!だからダメですってば…!速水さん…!」
そしてこのすごい圧迫力にさらなる重さを加えるのは
「ことりちゃんのマミーは私なんですって…!さあ…!ことりちゃん…!あなたのマミーですよ…!?」
いつになっても自分のことを私のマミーって言ってくれるデカパイの先輩だった。
「せ…先輩…!ダメです…!」
思いっきりほっぺを膨らませて私とあい先輩の方に向かってくる先輩!
そしてその先輩を見た時の私の不安は計り知れないほど大きいものであった!
「う…浮気はダメですよ…!ことりちゃん…!」
ついに私の隣からそのでっかい胸を突き出して密着してくる先輩…!
こ…これ、本当にまずいんじゃ…!
「ことりちゃん…!ミルクの時間、続けましょう…!?」
「あ…!ずるいわ…!私だってことりちゃんにミルク飲ませたいわ…!」
なんで出てもないミルクなんかで張り合っているのか全く理解のできない二人。
でも私は私のお母さんになってあげると言ってくれるこの先輩達が本当に好き…
「ことりちゃん…!?」
あ…あれ…?
「ことりちゃん…!気をしっかり…!」
なんか頭がぼんやりしてどんどん気が遠くなる…それに先輩達の声もなんか遠くて…
その時、私は両方から迫ってくる肉の壁の圧力に耐えきれず気絶し、そのまま気を失い、先輩達はこんごう先輩にめっちゃ怒られたらしい。
でも起きた時のその光景は言葉では言い表せないほど素晴らしくて私はこれでいいんじゃないかとつい笑いが飛び出てしまった。
笑っている皆。
あい先輩も、先輩も皆が笑顔になってニコニコしていてただ見ているだけでほっとする微笑ましい光景。
私は多分その光景を見せるために「神樹様」が私のことをここまで導いてくださったんじゃないかと薄らにそう感じてしまった。




