第242話
ブックマーク誠にありがとうございます!
最近自分はあまりダラダラしない方がいい人間だと気づいてしまったんです。
一度ダラダラしたらどこまでも怠けてしまうふしだらでダメな人間…
というわけでもう少し自分を急がせようと思いました。
そしてもう一つのお知らせですが最近新たに始めた作品がありますのでこちらもよろしくお願いします!
普段好きなスポーツの一つであるゴルフをテーマにした百合の作品です。もし一度でも見てくださったらとても喜ぶと思いますのでどうかよろしくお願いします。
いつもありがとうございます!
久しぶりのことりちゃんは相変わらず可愛かった。
体はあんなにちっちゃくて可愛いのにつぶらの目はすごく大きくてまつげも長くて本当に妖精さんみたい。
私の命令で学校から締め出される時より髪は大分短くなったがその愛しさは今も変わりがない。
でもことりちゃんはたった一度も私に近づかなかった。
理由は十分分かっている。きっと去年のことのせいだろう。
「あ…あい先輩…全部ことりのせいです…うみっこにはちゃんと謝ります…だからもう一度機会を…」
っと私に泣き顔で哀願していたことりちゃん。
でもあの時の私は
「もう二度と私の前に現れないでちょうだい。」
そう言いながら彼女から背を向けてしまった。
あのことを今も後悔している。
セシリアだって私や他の子には相談もせずにただ青葉さんのことを助けなきゃという一心で後先考えず懲戒委員会を開いて皆を学校から退学させたことを後悔していた。
私も同じ。
青葉さんもことりちゃんと一緒に私の一推しだから一刻も早く助けなければならなかった。
だから私もできるだけ青葉さんからことりちゃんのことを引き離した方がいいと思って彼女の処罰も兼ねて学校から追い出した。
信じられなかった。
ことりちゃんはよく人前で大きい顔をしたり少し自意識過剰みたいなところもあったが決して人を傷つけるような悪いことをする子ではなかったから。
最も私を一番苦しませたのは私が信じていたそんなことりちゃんが仲良しの青葉さんにあんなひどいことをしたという事実であった。
「あい先輩!これ、今度公開される映画の試写会のチケットです!」
っと自分が出演する映画の試写会の席を用意してくれたり
「あい先輩!今度ことりと一緒に雑誌の撮影してみませんか?先方からもう一人欲しいってオファーが届いてあい先輩がぴったりかと思って!だってあい先輩、スタイルもいいし美人ですから絶対人気出ますよ!」
時々そっちのお仕事を誘ってくれたり色々私のことを気遣ってくれた私の大好きなことりちゃんは私の妹みたいな存在だったから。
だから本人から本当のことを言われるまではそのことは信じたくもなかった。
でも
「すみません…あい先輩…ことりも…ことりもなんで自分があんなことをしちゃったのか分かんないです…」
っと私の前で全ての罪を打ち明けることりちゃんの話に私は不意打ちを食らわせられたような衝撃を受けてしまった。
その後、ことりちゃんの処分は「黄金の塔」評議会に移された。
当時、あのお方は
「「魔法の一族」なんてもう用済みなのだ。上納金を着実に払っているのは飯田があいつらのせいで世界政府に対する我々の立場が悪くなったことには間違いない。いっそこのままここからも追い出した方がいいんじゃないのか?」
っとついにことりちゃんの一族ごと私達「黄金の塔」から引き離そうとした。
「でもあいが随分と可愛がってた子だ。お前の世代で起きたことだからお前が処理しろ。お前があいつの仕打ちを決めるのだ。」
幸いあのお方は私に全ての権限を与え、私は青葉さんを救うため、そしてことりちゃんを非難の矢面から守るため一度学校から追い出した。
ことりちゃんは「赤座組」の娘だから転校する学校くらいたやすく賄えると思ってなるべく学校から離れさせようとした。
これで自分は完全にことりちゃんから嫌われると承知の上でやったことだから今更自分が傷ついても仕方がない。
でも今になってあの時、もっと賢く行動してたらと後悔してしまう自分のことも仕方がなかった。
その後のことはセシリアからちょくちょく聞いていた。
学校から追い出された後、学校になかなか馴染めなかったことりちゃんはついに登校拒否となった。
おそらく自分だけ普通な学校生活を営んでいることが青葉さんに申し訳が立たなかったんだろう。
結局ことりちゃんは姉のすずめさんが苦労して入れてあげた学校も辞めるようになってしまった。
ことりちゃんが学校を辞めてから去年世話になった同好会の桃坂さんのお家で居候させてもらったのは既に把握済みだった。
だってすみれちゃんは桃坂さんの親友ですみれちゃんは付き合っている私にだけそのことを話してくれたから。
「ごめんなさい、桃坂さん…ことりちゃんのことで迷惑かけちゃって…」
「いえいえ。私もことりちゃんと一緒に暮らしてすごく楽しいですし。」
そんな桃坂さんとこっそり会ってことりちゃんの生活に必要なお金をこちらから全部負担してたがそれだけではどうも気が済まなかった。
最近は家から生活費を送っているようだし私としてもうことりちゃんに何もやってあげることがないようで寂しくなったりもした。
二人はなんとかうまく同棲できているよう。
桃坂さんは同じ女から見ても極めて女子力が高くてことりちゃんもああ見えても普通にお料理もできて結構家事に役に立つ。
何より相性もいいし仲も良くてことりちゃんから桃坂さんのことを自分の姉並みに懐いている。
つくづく羨ましくなっちゃうわよ。そんなの。
この前、学校に来ていたことももう知っている。
同好会で私が虹森さんと色々話し合ってた時、ロッカーの中に隠れていたのも知っている。
こう見えても一応「水の剣」を伝授してもらったし気配にはそこそこ敏感だからすぐ分かる。
後でこっそりことりちゃんが入ってたロッカーで
「すごい…ことりちゃんの濃厚な匂い…」
ことりちゃんの肌の匂いを感じた時、私はふと悲しくなった。
挨拶の一言もせずに行ってしまったことりちゃんのことに「ああ…やっぱり私…避けられているんだ…」っと。
去年まではあんなに懐いてくれたのに今の私は彼女にとって避けれべきの怖い存在。
自分が選んだはずの道だが私はそうあっさり断念できるほど潔い人ではない、ただの往生際の悪い普通な人だった。
今日この親睦会にことりちゃんを招いたのは極簡単な理由。
あやふやだった自分を反省し、最初からやり直したいと私が決めてたから。
もう誰も傷つけない。皆が笑顔にできる学校にすると私が決めてたから。
だから理事長は私にこう話したと思う。
「赤座の復学届だ。受け取るか、それとも却下するかはお前が決めろ。」
っと私にことりちゃんの復学届を差し出した理事長はそれっきりで何も言わなかった。
多分私にこのことを一任するということだろう。
私は将来「黄金の塔」の頭領にならなければならない立場の人だから。理事長は私にその場につく資格があるのか私のことを試していると私はそう解釈した。
「任せてください。」
そう言って私は理事長から差し出したことりちゃんの復学届を取り上げて部屋から飛び出した。
ずっと謝りたかった。
ことりちゃんのことも、他の子達のことも含めて全部。
一緒にこの学校をもっといいところにしようと言いたかった。
でも今私ははっきり気づいた。
私とことりちゃんの間にあるこの遠い距離感を。
いくら私が頑張っても彼女の心に残った深い傷は直せない。
自分の曖昧な態度が招いた結果は予想より遥かに惨めで残酷だった。
たとえその全てが覚悟の上で行われたことだとしても…
「ことりちゃん。そろそろミルクの時間ですよ?」
「だ…だからそんな誤解を招くようなことは止めてくださいって…!」
「ミルクの時間…」
先程桃坂さんのところに「Scum」の黒木さんが加われて
「なになに?皆で乳の話してるの?私も混ぜてよー」
「ゆうな先輩…」
ゆうなまで合流してあそこは結構賑やかになった。
「さすがゆうなだ。まったく物怖じしない。」
「ええ…」
そんなゆうなのことを内心感服しているこんごうはもう私の心を知っているように肩をポンポンと軽く叩いて私のことを励ましてくれた。
「お前がこれでいいのなら私からもお前に言うことは一つもない。」
でもその同時にこんごうから言ったその言葉は私にこんな風に問い詰めているようだった。
「お前はこれでいいのか。」
っと。
その一言が重くて鋭くて私は返す言葉が見つからず、ただそうやって固まっているだけであった。
「私は最初から反対だったからこれで構わん。むしろこれで良かったと心からそう思っている。」
「こんごう…」
彼女は既に見抜いていた。
私のことりちゃんへの本当の気持ちを。そして私の迷いの正体のことも。
だから私にこんな話をしているんだろう。
お前の覚悟はこんなものだったのかと、彼女は私に聞いていた。
「お前がやったことだから最後までちゃんとやりきれ。もう逃げないと決めたんだろう?」
そう私に私自身の心を聞くこんごう。
その同時に彼女は私に求めていた。
曖昧な自分を捨ててもう逃げないと決めつけた私の決心を。この先、どんな大変なことが訪れても挫けないと自分自身に誓った私の覚悟を。
でもこんごう自身は本当は私にこんな話、したくなかったかも知れないと私は薄らに感じていた。
私の立場を考えてことりちゃんに関わることを反対していたこんごう。
決してことりちゃんが嫌でそんなことを言ったわけではないのは私でも十分わかっていた。
ことりちゃんはあのお方に目を付けられていて「黄金の塔」にとってマイナス要素にしか過ぎないからきっとその点を案じてくれたはず。
その心が全く分からないものではない。
なのにこんごうは私に聞いてくれた。
このまま何もせずに失ってもいいのかっと。
桃坂さんやゆうなに囲まれていることりちゃんを見ていると胸がこんなにもズキズキして仕方がない。
「ことりちゃん!?まさか家でみらいちゃんの母乳食べているの!?私も欲しいよ!」
「ええ…!?誰もそこまで言ってないんですけど…!?っていうかゆうな先輩…!声、めっちゃ大きいですから…!」
「ちょっと待っててくださいね?ことりちゃん。今用意しますから。」
「先輩も一々乗らないでくださいよ…!」
っと困りながらも決して笑いが止まらないことりちゃんの姿はとても微笑ましいものながらも同時に私の心をもどかしく焦れさせてしまった。
去年の私だったらきっと一緒だったんだろう。
「ことり…あい先輩のこと、大好きですから…だからことりのもう一人のお母さんになって欲しいな…とか言ってみたり…」
っと照れくさく私にそう言ってくれた可愛い女の子。
でも私はそんなことりちゃんのことをたった一度の失敗で見捨てて彼女の気持ちを裏切ってしまった。
私は「黄金の塔」の次期頭領だからくだらない情なんかに縛られてしくじってはいけないという言い訳を付けて彼女を皆から追い出してしまった。
「ありがとう。こんごう。」
でも私はもう逃げない。
今までの迷いばかりだった自分に取られた時間の分まで全部取り戻してみせる。
今のこんごうの話で改めて自分のことを振り返ることができた私は
「ことりちゃん。」
自分の意思を、自分の覚悟を信じて足を踏むことにした。
「速水さん?」
「あい先輩…?」
一歩近づいて声をかける私の存在に気づいたような桃坂さんとことりちゃん。
でもことりちゃんは私を見た途端、すぐ桃坂さんの後ろに隠れてしまった。
「ほらほら、ことりちゃん。速水さんはことりちゃんと仲直りしたいだけですから。」
後ろに隠れていることりちゃんに何度も大丈夫って話している桃坂さんの声にもびくっともしないことりちゃん。
むしろ彼女は桃坂さんの服にしがみついて
「い…嫌です…」
なんとしても彼女から離れようともしなかった。
明らかに警戒している顔。
その姿にまた私は自分の粗忽を反省したが
「ことりちゃん。聞いて。」
私はそれにめげず自分の気持ちを彼女にちゃんと伝えようとした。
「私、ことりちゃんに授乳したいわ。」




