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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第240話

最近「水星の魔女」にハマっています。スレミオカップル押しなのでもっと頑張ってもらいたいですね。

いつもありがとうございます!

「先輩…?大丈夫ですか…?」

「お前…」


私の後を追ってきた火村のことに私は口に挟んでいたタバコを取り出した。


「あ…!だ…大丈夫です…!」

「そうか…」


邪魔してすみませんって私にそのままでいいとあいつはそう言ってがやっぱり私はこいうの前では控えた方がいいと思ってタバコの火を消すことにした。


この学校は特に生徒の喫煙を禁止してない。生徒の自主性を重んじる学校の方針に従って生徒の殆どは本人達の判断に委ねている。

それはただの放置ではない。この学校には世界有数の名門のお嬢様がたくさんいて彼女達はいつかその名と名誉を担ってもらうことになる。そのための身だしなみや心ばえ、そして自主性をこの学校で試されていると言っても過言ではない。

無論その中に私やあの失敗作のようなはみ出しのものもちゃんと存在していた。


自分達の行動によって一家の名誉が落ちてしまう恐れがいるからこの学校の生徒達はなるべく問題を起こさないようにしている。

だが私が入学した頃は確かな上下関係があった。今の火村のように気安く上級生に近づいたり上級生に気を使わせたりすることは決して認められなかった。たとえそれが学校外でのことでも。

まあ、うちの団長様は1年生のくせによく上級生達と共寝していたがな。


それを覆したのがあのアイドル大統領のセシリア。

今は何らかの原因で記憶がふっとばされているがあいつは確かにある意味での化け物だった。

心理支配(メンタルドミネーター)」というチート系の能力を使わなくても十分人の心を鷲掴みできる絶対的なカリスマ。その上、「プラチナ皇室」のお姫様という保証された身分と人気アイドル「Fantasia」としての目覚ましい功績。何より身分や出身も超えて誰でも仲良くなれる恐ろしい親和力。


「おはよう、こんごうちゃん。」


っと私にもよく挨拶くれたバカみたいなお人好し目。

セシリアは生徒会長選挙に出る時、よくこう話した。


「この学校は歌やこんごうちゃんみたいな芸術で人々の心を豊かにするのが目的だから。だからもっと自由でなければ。」


誰の目も気にせず自由に自分を表現できる学校にしたい。そういうクリエイティブな創造力はもっと自由な雰囲気で発揮できるものだと。


当然当時の上級生達はあいつのことを目の敵にしてあいつのことを生徒会長の当選を防ぐためにあらゆる手段を尽くしたが結局彼女達もまたセシリアに魅了され、あいつは去年ほぼ満場一致で生徒会長となった。


もしあいつが生徒会長にならなかったならきっと私がこうやって魔界の子と言葉を交わすことすらなかっただろう。

だからあいつに感謝することだな、火村。そうじゃなかったなら私とお前の道が交わることなんてなかったはずだから。


「先輩…?」


そう思っている私にあいつはその大きな目を丸っこくして私の顔を見つめたが私からこれ以上のことを火村に言うことはなかった。


「何しに来た。」

「あ…いいえ…先輩一人でどこか行っちゃいましたから…それが心配になって…」


私の言い方が悪かったのか少し答えをためらう火村。でも私が怒ったのはこいつのせいじゃないから。

どちらかというとあいの方だ。


「え…?あい先輩、何かしたんですか…?」


っと火村はまだ何にも気づいてないようだがあいの野郎…先は私の力がどうしても必要とかいいやがったくせにあの失敗作のクソガキまで呼びつけやがった…


「それって結局私だけが必要ってわけではないってことじゃねぇか…」


つまり私のこともあいにとって単なる助力者の人ってこと…

それはそれでいいがやっぱり私は未だにあいのことに関しては特別な人になりたいって思っている。

だからあんな風に言っちまったんだろう。お前達だけで勝手にしろって。


「こんごうが必要なの。」


あいがそう言ってくれた時、私は本当に嬉しかった。

ここんとこには感じられなかった生き甲斐ってやつまで抱えてしまったほど嬉しかった。

ああ、やっぱり私はあいのことが好きなんだって。こいつのためなら何だってやってあげたいって。


でも私以外にもたくさんの人達が呼ばれたって知った時はがっかり過ぎてもう全部嫌になってしまった。

何だ、こういう意味だったのかって失望しちゃって。


「こういうの、ガラじゃないっていうのは分かっている。でも仕方ねぇのは仕方ねぇんだ。」


失望しすぎていつの間にか自分の本音を火村に洗いざらいさらけ出している私。


「先輩は本当にあい先輩のことが大好きなんですね。」


そんな私のことを火村は笑ったりはしなかった。


「…笑わねぇのか?」

「え?なんでですか?」

「なんでって…」


自分から考えても大人げない行動。

ぶっちゃけに言って私は思いっきりすねていた。あいが私だけを必要にしてくれなかったことを私は心底から寂しいって思っていた。


「でも私は好きならそういうこともあると思いますから。あい先輩ならきっと分かってくれるはずです。」


そんな私に好きっていう気持ちがあればいくらでもありえるってことだと言ってくれる火村。

だが私は何の寂しさもないいつもと同じ顔をしているこいつのことがなんだかとても心痛かった。


火村のことならあいから全部話してもらった。去年こいつが私の展示会に来たこと、私のことを「大好き」って言った炎人の子がこいつってこと。

それを知った時、私はこいつの前であまりあいのことをしゃべらないようになった。


報われる道もない片思い。

そんな悲しすぎる落ちで終わるのは私一人で十分だ。だからこいつには私なんかに気を使わないで欲しい。

そう思っていた私の期待を裏切るようにこいつは一生懸命私のことを励ましてくれた。


「人ってそういうところあるじゃないですか。好きな人に限っては子供っぽくなったら変な意地を張ったり。私も似たような経験はありますからよく分かりますよ。まあ、先輩のとはちょっと違うかも知れませんけど。」


っと照れくさく笑っている火村の顔を私は何故か正面から見られなかった。


「だから行きましょう?もう始まっちゃいますから。私も朝食抜きでしたからもうお腹ペコペコなんです。先輩は大丈夫ですか?」

「い…いや…私もスタジオで適当に済ませる気だったから…」

「じゃあ、ちょうどよかったんですね。同好会の桃坂さんはとてもお料理が上手なんです。私もたまにごちそうになりましたからよく知ってますよ。」


ああ…あのおっぱいの首席か。そういえば芸術科の中でもちょくちょく話が出ていたな。


「桃坂さんのお料理は何だって美味しいよねー」

「それにお菓子作りもめっちゃ上手だし。やっぱり材料にこだわりがあるのかしら。」

「搾りたて!」


とかの感じで。


確かにあの胸のことを見たらそう思われるのは仕方ないと思う。

うちの団長様やあいの方も相当大きいだがその女に比べたらただの成長いいなってくらいにしかならない。

その大きさはなんという…

とにかくあんなに美味しいって評判であいもこの間、向こうから料理を少し教わったようだ。


「あいつ、昔はあまり料理とかしなかったけどな。」


変わったのはやっぱりあの鬼野郎と付き合ってからだと思う。

急に料理の本を買ったり私に試食を頼んだり。

女は恋をしたら変わる生き物って昔お袋に言われたことがあるがやっぱり私にとっては嬉しくない変化というのは間違いない。

私は往生際が悪いからな。


でもあの鬼のことは認めざるを得なかった。何だってあいつは「灰島」の次期総帥だから。

そんなやつがあいのために頭を下げて皆の前で今まで騙してきたことを謝った。この前だっていきなり私のスタジオにひょっこりやってきて


「本当にすまなかった。石川。私はなんとしても君に謝罪しなければならない。」


っと何度も謝罪したムカつくやつ。


結局私は


「帰れ。もうここに来るんじゃねぇ。」


っとあいつを門前払いしちまったが私は内心あいつのことをすごいって思っていた。

同じ立場だったらきっと私には自分から頭を下げることなんてできなかったから。


そんな私があいに頼られたことが嬉しすぎて一人で勝手に勘違いして燥いちゃってその挙げ句、すねてしまう有様だなんて…

自分から考えても情けねぇ。


「だからどんな顔で戻ればいいのか分かんねぇんだよ…」


っと戸惑っていた私の手をギュッと握った火村は


「大丈夫です。私がついていますから。」


ただそう言いながら私を引っ張ってくれた。


小さくて温かい手。

鬼の血が流れている分、こいつもあの鬼と似たような見た目をしていたが私はいつの間にか私の懐に潜り込んで住み着いたこいつのことがそんなに嫌じゃなくなっていた。

魔界のことが大嫌いな私はきっといつまでも変わらないだろうがこいつだけは例外として認めてあげてもいい。


でもきっといつかこの脆い関係も壊れてしまうのだろう。

私はこいつのように温かい人でも、誰かを元気づけたり励ましてあげたりできるたまではない。

いつまでも過去に縛られて、留まってただ自分の居場所を守るために自分のことしか考えない。

だから私はいずれ早かれ遅かれまたこいつを傷つけてしまう。その時が来たら君は二度と私なんかを愛さないだろう。

お前もまたあいのように私の傍からいなくなる。


そう思った私は今のこの寂しさは自分の中にだけにしまっておくことにした。


***


皆さん。お久しぶりです。「Scum(美化部)」の広報係「黒木(くろき)クリス」です。

私は今ある方に招待されて大企業「灰島」主催の親睦会に参加しています。


「あ、まつりちゃんが来たわ。」

「石川もちゃんといる。」


まずこのパーティーの主催者である「灰島」の次期総帥の「灰島(はいじま)(すみれ)」さん。

お嬢様がたくさんいる第3女子校の中でもダントツで目立つ彼女は私の親友であるまつりちゃんの「Vermilion(消防部)」の部長であり手芸部の部長も努めているすごい方なんです。

「灰島」の「赤鬼」はとても手先が器用なので彼女が作る衣装はどれも素敵でとても可愛です。


そしてそんな彼女と付き合っていて彼女に今度の親睦会を頼んだ「百花繚乱(風紀委員会)」の第三席「速水(はやみ)(あい)」さん。

「黄金の塔」の首長である「ファントムナイツ」の後を継ぐ彼女の美しさは魔界の人達にも評判なんです。

「水の剣」の使い手でとても強くてきれいな彼女は今日の親睦会に私を招待してくれたんです。

お姉様とは別の意味で憧れちゃいますね。


お二人の話に振り向いたあそこには気まずいって顔で向かいに行ったまつりちゃんと一緒に「百花繚乱」の副団長の「石川(いしかわ)金剛(こんごう)」さんがこちらに向かって歩いていました。


「どうやらまつりちゃんがうまく言ってくれたようわね。」


なんだかほっとしたような顔の速水さん。

彼女は石川さんがそんな態度を取ったのがずっと気にかかっていたようです。


なぜ石川さんほどの人が皆の前でそんな態度を見せてしまったのかはなんとなく分かっています。それは多分先の速水さんからの告白がもとなのでしょう。


速水さんへの石川さんの気持ちがどれほど強いものなのかはとっくに知っているつもりです。まつりちゃんとのこともあって私なりに彼女のことを推測してみたんですがそれはきっととても強い想いだと私は確信しています。


誰にも譲りたくない気持ち。その気持ちが自分にも抑え切れないほど強かったから彼女はそうするしかなかったんでしょう。

なんとなく私には彼女の気持ちがよく分かりました。


「只今戻りました。」


っと石川さんと一緒に私達の前に出るまつりちゃん。

そんなまつりちゃんの後ろから渋い顔で皆から目をそらしている石川さんでしたが


「…悪かった…あんなこと言って…」」


彼女は嫌がりながらもちゃんと先の行動を謝りました。


まつりちゃんと彼女の間でどういう話があったのか分かりません。

でもまつりちゃんは私の大好きなその子と同じく人を元気づけて前に進める力を吹き込んであげますから。

私はまつりちゃんの信じていて彼女はきっと大好きな石川さんのことを精一杯励ましてあげたと私はそう信じています。


「もういいわ。」

「うん。私も全然気にしない。」


彼女からの素直な謝りをすんなり受け入れてくれる速水さんとすみれさん。

お二人共、石川さんがそう言ってくれたのがよほど嬉しかったのかそれ以上、先のことについては一言も言いませんでした。


「本当に世話が焼けますね。いい大人が。」


っと先までいがみ合っていた副部長のゆうき先輩はそう言いましたが


「先輩…」


私は彼女の口元に広まっているほのかな笑みに気付きました。


「それじゃ今度こそ本当に始めようか。」

「皆、自分のグラスを手に持ってくれ。」


すみれさんの話に皆自分の前に置かれているグラスを持ち上げる。

喫煙などには大分寛大な校則ですが飲酒だけは厳禁されているのでクラスの中身はただの飲料水です。

速水さんだって


「学生にお酒とか絶対ありえないんだから。」


っとお酒だけは特に禁じていて


「うんうん。酒が入っちゃったら事故になりかねないからねー絶対いけませんー」


あの「百花繚乱」の団長さんもそう言っているくらいですから。

まさか団長さんがそういうとは思わなかった私でしたが私もそれがいいと思ってますので特に不満はありません。


「それじゃ「灰島」主催の3界合同親睦会。始めさせてもらうわ。」


そして皆がグラスを持ち上げたことを確認した速水さんの始まりを告げる言葉と同時に第3女子校の歴史が動き始まったのです。

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