第238話
ブックマーク1名様誠にありがとうございます!
最近バイトやお勉強のことで少し遅れてしまい誠に申し訳ありません。。
もっと張り切って行きますのでこれからもよろしくお願いします!
いつもありがとうございます!
「おはよう…」
眠そうな目をこすりながら下に下りる虹森さん。
結構疲れが溜まっていたように今もまだ眠気から完全に抜け出していない彼女のことが
「ほら、みもりちゃん。足元に気をつけて。」
隣の幼馴染はもし足を踏み外して怪我でもしたらっととても心配になっているようです。
「うん…」
「顔洗に行きましょう?手、貸してあげますから取って。」
「うん…ありがとう…」
なんだか懐かしくて安心できる姿の二人。
ここんとこずっと離れていた二人の距離が列車の中でお互いの気持ちを打ち明けたことで一気に縮まったようで何よりなんですが
「おしっこしたくありませんか?ゆりが見守ってあげますからシュィィ♥してスッキリしましょう?」
「うん…」
その性癖まで少しずつ戻った気がして少し複雑な気分です…
っていうか虹森さんにはそろそろ気づいてもらわないと…
「一歩前進っと言ったところかしら。」
「お母様…」
そんな二人のことを見ながら微笑む虹森さんのお母様。
彼女は既に二人の間に起きた異変のことに気づいていました。
「昔からずっとあんな感じなんです。起きる時も一緒、寝る時も一緒。どこを行っても必ず二人一緒で親の私より二人で過ごす時間が多くて。」
「そうでしたね…」
見れば見るほど娘さんとそっくりの虹森さんのお母様。
きれいな黒髪と新緑の瞳。それに熟女という魅力まで加わったまるで大人になった虹森さんのことを見ているような勘違いまでさせてしまうほどこの親子は瓜二つでした。
何よりその優しい心は完璧な親譲りだということを私は彼女を見て分かるようになりました。
そんな彼女は二人のことが愛しくて仕方がないと私にそう話しました。
「できればいつまでも二人のままでいさせて欲しいです。あの子達にとってお互いのことが何よりも大切なんですから。もちろん私にも。」
…さすが親子なんですね。娘ともう一人の娘の気持ちがこんなにもよく分かるだなんて。
「うみちゃんはみもりの過去のこととかもう知ってますよね?」
「ええ…まあ…」
ふと娘に関わっている一部の過去について問いかける虹森さんのお母様。
だが私は彼女から思っているより虹森さんの深いところまで知っていました。
虹森さんがあの「大家」の子ということ、去年あの家で後継者教育を受けたこと、そんな虹森さんを助けるために「影」という裏の世界で一人で孤軍奮闘した緑山さんのこと。
「ロコドルの「フェアリーズ」のこととかお母様が元水泳選手だったこととかも知ってます。だって彼女は何故か私のことを信頼しているようで色々話してくれるんですから。」
「そうでしたね。」
こんな私でも信じて自分のことを隠さず全部話してくれた虹森さんのことには感謝しています。私自身もそれにちゃんと応えなきゃって彼女のことには十分気を使っているし何と言っても虹森さんは私が同好会を離れてから入った初めての後輩ですから。
虹森さんのおかげで先輩はまた笑えるようになって本当に良かったと思います。私の代わりに先輩のことを見守ってくれるから…
たまにそれにちっぽけな嫉妬も抱えてしまう自分ですが今更後悔する気は微塵もありません。先輩にアイドルを続けてもらいたくて、先輩の可能性を信じて選んだこの道に悔いはない。
だから私は私の代わりに先輩のことを支えてくれる彼女のことがお母様と同じく大好きで仕方がないのです。
「あの子に本当にいい先輩たちができましたね。」
「そ…そうでしょうか。」
あまり自分に自覚はありませんでした。
私は極自分の都合で動いているだけで自分のことをあまりいい人とは思いませんでしたから。
もし私がいい人だったというのなら決して学校中をこんな泥沼には巻き込まなかったんでしょう。
それでも何故か彼女は私のことを「いい先輩」っと言ってくれました。
「実は去年、あの家から戻った後、みもりはあまり笑わなくなったんです。あの家で受けた衝撃が大きかったせいでいつも何かに追っかけられているように怖じけついて怯えていました。いくらもう大丈夫だって安心させようとしても決して気を緩めなかったんです。親としてはそれがすごく心苦しかったんです。」
そんな虹森さんが高校生になってからはよく笑うようになった。
好きなことを探して挑戦しようとする彼女はすごく元気が溢れて毎日を充実に過ごすようになった。
彼女のお母様はそれが全部私のようないい先輩や友達のおかげだと言いました。
「あの子があの家のこととかゆりちゃんの秘密とかうみちゃんに話したのは多分うみちゃんのことが大好きでやったと思います。だからこれからもあの子達のこと、見守ってくれませんか?」
っと私に二人の娘さん達のことを頼む彼女の願いを私は断れませんでした。
多分私も同じ気持ちだったと思います。虹森さんに先輩のことや自分の気持ちを託した時はきっと。
まあ、実際頼んだと言っても自分一人でそう思い込んでいることに過ぎませんけどね。
「ありがとうございます。やはりうみちゃんはとてもいい人なんですね。」
「あはは…そうでしょうかね…」
「はい。とても。あ、もしかして名前で呼ばれるの嫌だったりするんですか?ごめんなさい…つい…」
っと初めて出会った時から私のことをずっと「うみちゃん」って呼んでいたことについて謝るお母様。
でも大きくなる前まではよくそう呼ばれましたからあまり気にしていませんから。事務所からも親しんだイメージでアプローチした方がいいって言われましたし。
小学校の以来は誰も「うみちゃん」って呼ばなくなったからすっかり忘れてましたがまだその頃のイメージを覚えている人がいるだなんて思いもしませんでした。
良かったらお母様にはこれからも「うみちゃん」っと呼んでいただきたいんです。もう一人の娘だと思って!
「ええ…!?いいんですか…!?」
「はい!もちろんです!」
何故か彼女のことを見ていると実家のお母さんのことを思い出してしまう。
うちのお母さんもこういう温かい人でした。とても優しくて人の心をすぐ気づいてくれて。
同じ「人魚」だけではなくもっとたくさんの人達を生活させたいとお父さんを説得して家族皆で陸地に出たおかげで私はもっと色んな人達を触れ合うことができました。
私の可能性を信じて陸地での生活を選んでくれたお母さん。私はいつの間にか虹森さんのお母様と自分の母のことを重ね見ていました。
「改めてよろしくお願いします。えっと…お母さん?」
「はうっ…!」
そしてこれが最後の決め手になったのか彼女は私が知っている虹森さんの顔で
「えへへ…私がうみちゃんのお母さんだなんて…」
私のもう一人のお母さんになったことをすごく喜んでくれました。
「えへへ…どうしよう…うみちゃんと仲良くなっちゃいました…」
照れ方もそっくり…そういえば娘の虹森さんもこういう感じでしたね。
「青葉さんとお友達だなんて…夢みたいです…」
とか言って。
本当疑いようもない親子ですね。そういうところ嫌いじゃないんですけど。
「これで私も晴れて「ママ活」開始ですね!」
「…はい?」
そして私はその同時に彼女が私も知らなかった何か別のものを考えていたことに気付きました。
***
「お…重い…」
久しぶりに感じるどっしりした重い空気。そしてこういう場所でその中心にいるのはいつでも
「なんで私が魔界の輩と顔合わせなきゃねぇんだよ。」
「百花繚乱」の副団長のこんごう先輩であった。
森を燃やし、皆の居場所を奪ってその挙げ句、家族までバラバラにされたこんごう先輩。
彼女は今も森に火をつけたのは魔界だと信じているままであった。
そしてそんなこんごう先輩と一番相性が悪い人は
「わざわざそちらから言われなくても十分不機嫌ですから少し黙っていてください。それとも頭固いからやっぱり人の話が聞けないんですか。」
「Scum」の副部長「結日優気」さんだった。
「Scum」の広報活動も兼ねて「Dirty」というバンドのボーカルを努めている彼女は既にメジャーデビューも狙っている有名人で私と同じクラスだったのでそれほど仲が悪いってわけではない。
だがこんごう先輩と相性は極めて相克であり、会う度にこんな風にいがみ合っていた。
年はこんごう先輩の方が一個上だったが結日さんは全く先輩扱いしてくれない。
一度だけ聞いたことがあったが
「昔から気に入らないだけです。それ以上も以下もありません。」
多分中学校からの腐れ縁だと思われる発言で先輩のことをすごく嫌がるだけであった。
中学校の時は二人共この辺りでは結構有名な不良だったらしい。そして結日さんが率いていた暴走族の「Twisted」といつも一人で行動していたこんごう先輩の間のいざこざは同じ不良達の間でも有名な話だったそうだ。
「東の優気」と「西の金剛」。
結日さんの「Twisted」はよくこんごう先輩に喧嘩を売ってきて先輩は売られた喧嘩は必ず買い取るタイプだったから全員その場でぶちのめしたらしい。当然親の結日さんまで出ることになったが結日さんのことをこの学校に入学させた「警視庁」の恩人のおかげでなんとか流血事態までは発展しなかったそうだ。
二人共家の事情で武術を習っていて喧嘩には長けている本物の不良だが面倒見が良くて礼儀正しい結日さんと違ってこんごう先輩の方はあまり人に好かれる性格ではない。だから個人的なことでも、性格的でも二人は油と水のように仲良くにはなれなかった。
「よく言うな。「結日」家の失敗作が。」
「あまり喋らない方が身のためのことです。土人形。」
当然二人が揃っている場所はこういう重苦しい雰囲気になってしまうものであった。
お互いから離れて周りのことは全く気にせず互いの悪口を並べるこんごう先輩と結日さん。
そんな二人をなんとか落ち着けようと
「まあまあ…先輩…ちょっと落ち着きましょう…ほら、結日先輩も…」
こんごう先輩と一緒にこの屋敷にきた「炎人」の子は懸命に二人のことを仲裁した。
だがなかなかうまくいかなくて慌てているところが非常に気の毒だ。
「そんなこと言う割に随分仲良く見えるのではないですか。火村さんと。」
「こ…こいつは例外だ…!オメェなんかとは違ってちゃんと先輩扱いしてるし…!」
「まあ、別にいいんですけど。」
彼女のことを示して些細なちょっかいを出す結日さん。
そんな結日さんの言葉に意外の一面を見せてくれるこんごう先輩の反応はなかなか珍しいものだったが私からも考えると確かにこんごう先輩としては多少信じがたい行動というのには異論はなかった。
何と言っても彼女は筋金入りの魔界嫌いであんな風に魔界の子のための弁解なんて今まで一度もなかったから。
あのこんごう先輩を相手にどれくらい保つなのかは分からないけどこれはきっとこんごう先輩だってもう気づいていることだろう。
でも私はなんだかそれがあまり悪いって感じではなかった。
「皆、もう準備できたわよ。」
そして部屋から一時的に離れていたあい先輩がまた部屋に戻った時、
「それじゃ始めるわね?ようこそ!「灰島」主催の親睦会へ!」
いよいよ今日のメインイベントが始まるようになった。




