第235話
近頃面接のため投稿が少し遅れてしまいました。大変申し訳ございません。(__)
結果から申し上げますとまあ、ぶっちゃけに言って爆死しました。なんか言葉もうまく出なかったし緊張しすぎちゃって。
それに仕事自体もあまり合わないような気がして。
あまり向いてないんじゃないかなってバスの中でずっとそう思いこんでましたね。仕事と好きな事を両立するなんて難しいことですね。
いつもありがとうございます!
あいはいつもそうだった。
「コンちゃん、リアちゃん。こっちおいで。」
いつも私達より先を歩いていつの間にかもうあそこまで行ってしまう。
そんなあいに置いて行かれないために私達は歩くのを止められずずっと足を運び続けた。
「ちょ…ちょっと待ってください…姫様…」
私はともかくあいのいとこである「リア」はなかなかあいのペースに追いつけなかったが
「はい、リアちゃん。お手出して。」
あいは私達が少し遅くても必ずその先から待ってくれた。
私はそんなあいが大好きで
「僕…大きくなったらきっと姫様に…」
リアもまたあいのことをずっと愛していた。
だが元の場所から離れて街に出た私達がいつも喧嘩ばかりで社会と食い違って迷っていた時、私達はそんなあいのことをひどく傷つけてしまった。
一番苦しかったのはそれでもあいは何も言わずに必ず私達のことを待ってくれていたことだった。
「僕…高校は第1で決めました…もう姫様に迷惑掛けたくないので…」
リアのやつは感心だった。
「第1に入ったら絶対「Silence」に入ります…姫様と同じ学校が通えなくなるのは悲しいですがそこに行って立派になりたいです…そうしたらきっと姫様だって僕のことを…」
「霊」とは違って正式な「ファントムナイツ」にはなれない「悪霊」はただの裏方として活躍するしかなかったのにあいつはあいのために頑張るのは止めなかった。
一度でもいいからあいに自分のことを振り向かせたい。ただそれだけであいつは「Silence」の参番隊隊長になって学校の重役になった。
喧嘩だけが売りだったあいつが勉強も頑張って今は立派な「Silence」として活躍している。健気なやつだと本気でそう思っている。
だがあいつはいつまでもあいの影に留まってその背中を守ることしか考えなく、一度もあいのことを追い越すことを夢見もしなかった。
私だってそうだった。いや、あいつの半分もできなかった。
あいつだったらきっとあいとあの鬼のことを知られても全力であいの力になってあげたんだろう。でも私は私の力が欲しいというあいの言葉になかなかうなずいてあげなかった。
「お願い、こんごう。私にはやっぱりこんごうの力が必要なの。」
透明できれいな目。
いつ見てもあいは美しい。何と言ってもあのアイドル大統領のエルフのお姫様と一緒に神界のお姫様だからな。こんなあいのことをあの真っ暗に焦げ付いた鬼に取られたなんて、改めて考えても腹が立つ…
っと思いかけていた私の目についたのは
「えへへ…」
この場の空気が随分苦手なのか気まずく笑っている火村であった。
ほんのり揺らめくろうそくのような髪の毛。そして鬼の親戚だけに持つことができる「焔人」特有の火が通っているような炭色の肌。
その優しい瞳から溢れ出している温もりはなぜか見ているとほっとしてしまう。
そんな火村のことを見て私はこれ以上、あの鬼の悪口は止めることに…って
「な…なんでそんな目で見るんだよ…?あい…」
ふと気づいてしまうあいからの視線。
どうやらなんだかすごく興味深いものでは見たという目だな、おい…
「ふーん?別になんでもないけど?」
「…絶対なんでもないじゃないだよな?お前…」
昔からのからかう時だけに見せる冷やかしの顔。
これ、絶対何か誤解しているようだな…
「それにしても朝早くごめんね?まつりちゃん。」
「い…いいえ…!どうせ特に予定もなかったんですから…!私の方こそわざわざあい先輩に迎えに来て頂いて恐縮です…!」
「そんなにかしこまらなくてもいいってー本当可愛いな、まつりちゃんはー良かったらうちの子にならない?」
「ええ…!?そ…そんな…!」
「おい、あい…うちの子って何だよ…っていうか困ってるからもう止めな…」
火村のことが随分気に入ったようなあいとそんなあいの愛情が少し重荷に感じる火村。
最近親戚のリアとの距離が離れてきたあいはここんとこ火村のことを妹並みの存在として思っているようだ。
それより火村ってあいのことを「あい先輩」呼ぶんだな…
「あれー?こんごうってもしかして嫉妬している?まつりちゃんと私が仲良くなってのが急に気に食わなくなったのかしら?」
「一々うるせぇんだよ、お前って本当…」
またからかう表情…本当鬱陶しいな、こいつ…
でもまあ…いつも通りの方が気まずくよりマシだからいいとしようか…
「聞いてる?まつりちゃん。嫉妬ですってーあの「狂の金剛」が嫉妬ですってーウケるわよね?」
「ええ…!?そ…そうだったんですか…!?」
なんで急に話振るんだよ、お前…全然ちげぇからお前を一々反応すんな…
「すみません…気が利かなくて…そういえば私…今までずっと「石川さん」って呼んでいましたね…これからはちゃんと「こんごう先輩」と呼ぶようにしますからどうか機嫌直してください…」
なんで私が慰められるハメになっちまったんだよ…っていうか普通に宥めるなよ…
でも先輩…か。そういえば今まであまり呼ばれたことがなかったな。
今まで
「あ…あの…!石川さん…!」
とか
「副団長…!こちらの書類、お願いします…!」
とかで皆ビビっていたからな。
別に怒ったわけではなかったが表情とかでよく誤解されてるし特に気にはしない。同中の生徒もいるから中学校の時の噂も結構広まっているから無理もねぇ。
でも改めてこの子から「先輩」って言われるのはなんかちょっと…ん…小っ恥ずかしい気分だ…
「あ、照れてるわね、こんごう。こういうところ、本当に可愛いんだから。」
っと私の頭を撫でるあいのことがいつにもましてやかましい私だった。
もうすっかり元通りになったな、あい…でも私はやっぱりあいにはこういう明るい顔が一番お似合いだと思うからずっとそういてくれ。
「良かったね、コンちゃんー可愛い後輩ちゃんができてー」
「またこういう時ばかりコンちゃんかよ…いいからそろそろ本題に入ってくれ。」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいからもっと喜びなさいってー」
「照れ隠しじゃねぇよ…」
「もうー本当に「コンデレ」なんだからー」
いつのあだ名だよ、それ…
「まあ、こうなったら人の話は全然聞こえねぇしそう決まっちまったらしょうがねぇ。好きなように呼びな。火村。」
「あ…!は…はい…!よろしくお願いします…!」
「良かったね、まつりちゃんーやっと先輩って呼べるようになって。」
「はい!ありがとうございます!あい先輩!」
っとお互いの顔を見ながら喜ぶ二人。
この様子を見ると私と合流する前に事前に二人で話し合ったことかも知れない。この前から火村にそういう気配を感じたから。
「…やっぱりグルだったのかよ、あい…」
「ごめんごめん。でもまつりちゃんが可哀想だったから。」
「すみません…騙しちゃって…」
別に謝ることではないが…それに悪気があったわけでもないし。
「もういいって。それにより火村まで呼びつけてしかもあの「赤座小鳥」だなんて。先も言ったが私は絶対反対…」
「まつりちゃん、それ知ってる?「霊」の女の子は皆下着は履かないんだぞ?」
「ええ…!?それじゃ…!あい先輩って今ノーパンってこと…!」
「確かめてみる?」
って何ふざけやがってるんだよ、おめぇは。
「じゃ…!じゃあ、失礼します…!」
お前は普通に乗りに合わなくてもいいからめくるのはやめろ。っというか普通に履いているから。
「今大事な話の途中だからそういうのはあとにしてくろ。」
「あ…!す…すみません…!」
「あ…いあ…お前じゃなくてな…」
「ダメだよ、コンちゃん。そんな怖い顔したら。」
「てめぇのせいだろ。」
でもそれからもあいはなかなか私に詳細な内容を教えてくれなかった。ただ何度もこう話しながら
「大丈夫。全部うまくできるから。」
今はただ自分を信じて欲しいと言うだけであった。
「分かったからそれはもういい。でも赤座のことだけは反対だ。お前と赤座が再び接続するのを外に見られちまったらきっと評議会が動く。最後にはあの人まで出てしまうかも知れない。そうなったらおじさんだけじゃかばいきれなくなる。」
「黄金の塔」は一度でもしくじったものは容赦なく切り離す。「ファントムナイツ」が「黄金の塔」の設立からずっとそのトップとして君臨し続けられたのもその徹底的で抜かりのない腕を認められたからこそだ。
だがそれもあくまで個人的な話で評議会、ひいては評議会のトップであるあの人が関わることになったら話はまた別のものだ。
「確かに今の「黄金の塔」で「ファントムナイツ」に逆らえるやるはない。同じ評議会の中でも「ファントムナイツ」の権力は絶対的だからな。」
でももし評議会長のあの小さな暴君にこの計画のことが見つかってしまったらきっと「ファントムナイツ」の今までの地位は大幅で揺らいでしまうはず。
「あれは話の通じないものではない。私はあのババアからあれについて聞いたことがある。」
今は私達の学校で理事長に勤めているあれと同じ神族のあのババアはいつか私に彼女のことを話したことがあった。
「あいつは強い。今までのどのような神族よりも強い。真っ盛りの私や第1の妹ならともかくそれ以外あいつと対等に渡り合える神界のものなんて今後絶対現れないだろう。」
「開闢」と呼ばれるあのババアまであの人のことをそう言い切った。
今までのどの神族より強い神話のまた神話の存在。それが「黄金の塔」評議会長の「朝倉愛憐」、本名「小金井愛憐」だと。
「「黄金の神」という名前は伊達じゃない。今の時代であいつと互角に渡り合える存在なんて精々あの「酒呑童子」しかいない。」
遠い昔、二人共自分の教え子だったからそれに関しては誰より詳しいとあのババアは言ったがその話には納得せざるを得なかった。
なにせ私はあれを私の目で直接見たことがあるからな。
「まだ全然足りないのではないのか。」
「…申し訳ございません。愛憐様。」
「やっぱり使えな、お前は。それに私のことは「アイレーン」と呼べと何度も言ったはずだが。」
「黄金の塔」の会員資格を維持するには毎年それに相応な上納金が必要だった。そして私達「ゴーレム」は「罪の一族」になってからたった一度もその上納金を充足して払ったことがなく、親父は必ず上納金の精算が完了になったら直ちに評議会に呼び出されてあのちっこい暴君に恥をかかなければならなかった。
「黄金の塔」からはとっくに昔に追放されたのに文句一言も言わずバカ真面目に評議会に上納金を払っていた親父。私はそれが後代の皆のためだったということをこの歳になって知ることができたがとにかく親父は自分より遥かに小さなガキに皆の前で蔑視されなければなかった。
「お父さん…」
朝まではあいんちに遊びに行こうと言った親父が私の知らない場所から皆の前で謝っている。偶然そこを通りかかっていた私はその光景を見てトイレに隠れて密かに泣いてしまった。
「あい、私はお前のことにもう関わらないと言ったがお前の身の回りに危険が迫るということになったらそれは別の話だ。私にはお前を止める権利があって守る権利がある。あの人はきっとお前を力でねじ伏せてしまう。私はお前が傷つくことだけは何があっても絶対許されない。赤座は一度お前が追い出した。評議会の老いぼれ達は今はただ「赤座組」から巨額の上納金をもらったからわざわざ黙っているがそのうち「赤座組」を含めた「魔法の一族」は全員「黄金の塔」の資格を剥奪される。これは感とか生ぬるいものじゃない。絶対だ。」
かつて自分達の権利を取り戻すため「神樹様」に楯突いた私達が全ての地位を取られた挙げ句、「黄金の塔」から剥奪されたようにそのうち彼らもまた同じハメになってしまうだろう。そうならないように「赤座組」は色々手を尽くしているようだいつまで持つかは分からない。
「黄金の塔」はそういう集団であった。
失敗者には二度と立ち上がる機会すら与えない。極限まで追い込んでそこから強くなることだけをモットーにしている彼らは今までずっとそういう方法で強くなってきた。
だから皆そこから追放されないために頑張って生き残っている。その地位を奪われた瞬間、種族としての未来は途切れてしまうからな。
「大家」を嫌悪し、この世から排除しようとしていても所詮はそう変わりもない集団。
親父はそれを知っていながらも私達が神界で人としての並々な生活ができるようにずっと上納金を払っていた。
でもなんでだろう。
私はこんなにも不安で心配ことしか考えていないのにあいはどうしてこんなにも平穏で落ち着いているんだろう。
まるで静かに静まっている水面のようにその心に一点の不安もない。その姿は逆に私を一段と強く動揺させてしまったがそんな私の心とは関係なくあいは以前にもまして静寂な目をして私と火村のことをずっと見つめていた。
「大丈夫。大丈夫だから。」
ただそんな風に保障もない魔法の言葉だけを繰り返しながら。
「まつりちゃん、胸大きいわねー」
「そ…そうでしょうか…?あい先輩の方がもっと大きいと思うんですけど…」
「そうかしら。ちょっと触ってみる?」
「いいんですか…?じゃ…じゃあ…うわぁ!?なにこれ!?重っ…!」
おい、少しでもいいから緊張感持て。




