第214話
いつもありがとうございます!
「あ。虹森さん。」
「青葉さん…!」
通り過ぎだった私のことを見つけて近づいてくる青葉さん…!何か言いたいことでもあるような顔なんですが…!
「今はダメ…!」
さすがにこのタイミングは…!!
「あ、もしかして急いでいるところ?ちょっと話したいんだけどいい?」
「あ…!は…はい…!」
急に私の止めて何か言いたいことがあると言う青葉さん。
色々まずい状況だと思いますが私からも青葉さんに謝らなければならないことがありますから…!青葉さんのお話が終わったら先の授業のこと、ちゃんと謝ろう…!
そして先輩から頼まれた私達の里帰りの同行も…!
っと張り切っていた私でしたが
「先はごめんね。ひどいこと言っちゃって。」
「…え?」
突然謝ってくる青葉さんの話に自分から謝らなければならないってことまでつい忘れてしまいました。
「あ…え…?なんで青葉さんが…?」
って戸惑っている私のために本当のことを話してくれる青葉さん。
青葉さんが終わった後、私は先部室で先輩から言ってたことがやっと分かるようになりました。
「別に虹森さんのことが嫌ってわけであんなこと言ったんじゃないから。私、いつも私と仲良くしてくれる虹森さんにすごく感謝している。」
「い…いいえ…!それは私の方こそ…!」
仲良くしてくれてありがとうなんて…!むしろ私の方こそ光栄と思います…!私みたいなどこにもある子に青葉さんみたいなすごい人が構ってくれることなんてめったにありませんから…!
「大げさだなー虹森さんはもっと自身を持ってもいいと思うからそんなに自分を下げないで。」
っと笑ってしまう青葉さん。夏の青空みたいな爽やかな笑顔は今日もお日様に照らされてすごく清々しい感じです。
「すみません…授業の途中でなんと失礼なことを…」
「いいよ、もう。実は先のあれ、全部わざとやったことなんだ。私、あまり人に怒ったりするのは苦手だからうまくできたのかは分からないけどね。」
「わざとですか…!?」
まさかあれって全部お芝居ってわけですか…!?なんでそんなことを…?
「いや、だってこれならちょっとだけでも緑山さんのことを引き出せるんじゃないかなっと思ってね。緑山さん、虹森さんのことに限ってはめっちゃ怖い人だからもし私からあんな風に言っちゃったら虹森さんのために怒ってくれたりしないかなって。どうだった?緑山さんの反応は。」
「どうって…」
お茶目さんみたいにぎこちなく笑っている青葉さんのことですが本当のことを言うと私は今の青葉さんの話にびっくりされちゃいました。
まさかあの「伝説の歌姫」の青葉さんが私とゆりちゃんのことのためにあんなことまでしちゃうとは全然思えませんでしたから…
青葉さんと仲良くなったと思ったことが私一人の思い違いに済まなくて本当に良かったんです…
「そんなわけないじゃん。虹森さんだって私の大切なお友達だから。手伝ってあげるのは当然じゃない?」
「青葉さん…!」
えへへ…友達…私と青葉さん、本当にもう友達なんだ…なんだかすごく嬉しくて笑いが止まりません…
「そんなに嬉しいの?」
「えへへ…すみません…」
「変わったねー」ってヘラヘラしている私のことをそう言った青葉さんでしたが私は普通に嬉しかったんです。
青葉さんと仲良くなれたことも、やっと先輩の役に立てる自分になった気がしたことも。
先の青葉さんのことを少し寂しいって思ってた自分のことが恥ずかしく思われるくらい私、すごく嬉しいです!
「でもまさかあれが本当に演技だったとは。さすがです!青葉さん!」
「そう?普通だと思うんだけどね。」
「そんなことないです!」
青葉さんは買いかぶりだと言いましたが私は全然そう思いません!先のは本当に鳥肌が立つほどの迫真の演技でしたから!
視線や体の些細な仕草まで完璧に仕上げて!私、青葉さんのそのすごい演技を目の前から直で見たわけですね!なんかもう感動しちゃって…!
「よしなさいって。そう褒められても私から虹森さんにパンツを見せたりはしないから。」
え!?なんじゃそりゃ!?
「っていうか私からのアドバイスをあんな風に聞き取っちゃうとは。私、そっちのが地味にショックなんだから。」
「あ…すみません…」
そりゃ怒りますね…せっかくもらったアドバイスをあんな形で使うなんて…私だって絶対怒りますよ…
っていうか一体何なのよ…「ゆりちゃんの大好きなみもりちゃんのパンツですよ…」って…
「それで結局どうだったの?緑山さんの方は。」
「ゆりちゃんのことですか…」
っと期待に満ちた目でその後のゆりちゃんのことを聞いてくる青葉さん。
期待しているところ本当に残念ですが結論から言うとあまり効果はなさそうだったと私はそう感じました。
ゆりちゃん、教室に戻る廊下からも
「ごめんなさい、みもりちゃん…私のせいで…
って感じてずっと謝っていたし…
教室に戻ってもあの状態はあまり変わらなかったんです…
いつもだったら…
「青葉さん…いい度胸しているのではありませんか…いいでしょう…今日からあなたのことを私のみもりちゃんに歯向かう敵と見做します…本気で踏み潰させて頂きますから覚悟してくださいね…?」
って意味の分からないことをぶつぶつしたはずなのに…
「それはそれでちょっと怖いかな…?っていうか私、もしかしてとんでもないことでもやっちゃったの…?」
ってすぐ真っ青な顔になってしまう青葉さん。
でも安心してください、青葉さん…私が絶対止めますから…
とにかくゆりちゃんの調子にあまり変化はありませんでした。せっかくお手伝いしてくれた青葉さんには申し訳ないですがゆりちゃんは今もあんな調子です…
「そうか…やっぱりこれもダメなのか…」
心配そうな顔で少し落ち込んでしまう青葉さん。
「ごめんね。私が足りなかったせいで…」
「い…いいえ…!むしろ感謝したいのは私の方ですから…!本当にありがとうございます…!青葉さん…!」
私は私達のことを心から気にかけてくれるそんな青葉さんの優しさが本当に大好きでした。
「また私から何か考えてみるから。何か手伝えることがあったら何でも言ってね?」
「は…はい!ありがとうございます!あ…!」
っとふと思い出した青葉さんへのもう一つの要件。
私は「じゃあ、またね、虹森さん」っと私と別れようとする青葉さんの呼び止めた後、
「青葉さん…!今週の週末、何か予定でもありますか…?」
今週末の彼女の都合を聞きました。
「土日ならいいけど?どうしたの?」
「あ…!えっと…!」
っと週末は暇だと答える青葉さんでしたがよく考えてみればこれってちょっと言いづらいかも…
青葉さんは学校内の部活の中でも最大規模の大型部である「合唱部」の部長で私とは比にならないほど大忙し人です。「交流の日」のことや学期末の発表会、カレンダーの撮影会やテストなどを目前にしている今の時期に果たして青葉さんを私達の里帰りに誘ってもいいのか…
「ただうみちゃん、ここ最近ずっと無理しているように見えたのでちょっと休ませてあげたいだけです。」
でもそう迷っている同時に思い出してしまった先輩のその言葉は私をついに動かせました。
先輩に頼まれたから…青葉さんのことを少しでも休ませてあげたいって先輩が言ってたから…私はそんな先輩のためにでもここはなんとか青葉さんをうまく誘って…!
「あ…あの…!一緒に行きませんか…!?気持ちよくなるところ…!」
って全然うまく誘っていない!!
一体何!?気持ちよくなるところって!?
それより青葉さんの反応は…!?
「気持ちよくなるところ?あ!もしかして風俗店でも連れて行ってくれるつもり?虹森さん、早すぎ~!」
やっぱり!!っていうか言い方!!
「ち…違います…!決してそういうもんじゃなくて…!」
「あははっ!虹森さん、盛りなのは分かっているけどそんな店に行ったら緑山さんに怒られちゃうぞ?」
だから言い方!!
「違いますってば…!私はただ青葉さんのことをうちの街に招待したいだけで…!」
「虹森さんの街?」
しまった…!つい…!
勢いで飛び出してしまった本音。どう説明したらいいのか慌ててしまう私でしたが
「いいね。それ。」
「え…?」
案外あっさりと引き受けてくれた青葉さんのことにその説明の必要はないことを気づくようになりました。
「実はここ最近疲れが溜まっちゃってね。部員の子達にも少し休んだ方がいいと言われてて。本当は週末にも学校に来るつもりだったけど先輩達に禁止されちゃってやむを得ず休むことになったんだ。でも私、仕事以外に陸地での旅行とかあまり行ったことがなくてどうしたらいいのかって悩んでいてね。市内に出て遊ぶのもいいけどどこか知らないところでゆったりしたいなっと思ってたのにちょうど良かったね。」
「じゃ…じゃあ…!」
ポケットの中から手帳を引き出して何かを書き込む青葉さん。私はその行動が週末の予定を書き込んでいるということを気づいて心の底から思いっきり喜んでしまいました。
「こんな私でも良ければね。」
そう言いながらまたその爽やかな笑顔を私に向けてくれる青葉さん。
青葉さんは今週末の私達との旅のことを「楽しみ」って言ってくれました!私は青葉さんのその言葉がすごく嬉しかったんです!
「じゃあ、出発時間が決まったら教えてね。」
「はい!ありがとうございます!」
詳しいことは後で話すことにした後、そろそろ部室へ行かなきゃっと行ってしまう青葉さん。私は遠くなる青葉さんの背中に嬉しいって気持ちで何度も手を振りながら彼女のことを見送りました。
まさか私みたいな普通な子があの青葉さんと…これで先輩もきっと少しくらいは安心できると思います。青葉さん、喜んで引き受けてくれて本当に良かった…
でも…
「じー…」
あそこロッカーの後ろに隠れているあの人のこと…一体どうすればいいのか…
彼女と出会ったのは今から約30分前のこと。でも
「マネージャーちゃんってうみっこと仲いいんだね…」
彼女はいつの間にか私のことをずっと「マネージャー」と呼んでいました。
突然私のところに飛び込んできた新たな事件。これを説明するにはまず30分前に時間を遡らなければならないので今から少し時間を巻き戻したいと思います。
まだ誰も来ない空きの部室。先輩まで出てしまったせいで一人になって部室の留守をしていた私は
ーコンコン
っと音がするドアをそのまま開けてしまいました。
同好会には会長さんやゆうなさんを除けばめったにお客さんが来なかったので私は誰かのオファーかなっと燥いでドアを開けましたがそこにいたのはオファーとかの可愛いものではない
「え…?」
この学校の根本まで吹き荒らしたある「台風の目」でした。




