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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第211話

2つ目の投稿作のタイトルは「ハナミタマー巫女の花園」です!

巫女をテーマにした異能系の作品ですがこれもまたぶっ飛んだ百合話の予定ですのでぜひお読みいただければ本当に嬉しいです!

やっぱり何かを書いて誰か読んでいただくことは楽しくて嬉しいものだと改めて感じました!これも皆様の応援のおかげです!

いつもありがとうございます!

「あれはひどかったねー」

「そう言っているあなたは随分楽しんでいたと思いますが…」

「そうかな。」


毎年「Bullet(新聞部)」の主催で学校敷地のプライベートビーチから行われるグラビアカレンダーの撮影会。それは改めて思い出しても確かに楽しい思い出でした。


厳しいオーディションを勝ち抜いた隔月に当たる12名のモデル。「Bullet」から集めた人気投票のアンケートとオーディション、両方の条件を満たすのは中々しんどいことでしたがその広報効果は保証され、一気に知名度も上がるので各部からもカレンダー撮影にあたって最高の候補を選ぶために熱を上げました。


本来情報が少ない1年生が選ばれることなんて殆どなかったんですがその時、私達の代ではなんと4人も選ばれて史上最大の1年生と呼ばれました。

それまでは「黄金世代」よ呼ばれる私達の一個上の学年。つまり先輩と会長の世代が1年生の時、3人を排出したのがレコードとして思われていましたが私達代によってその記録は覆ってしまったのです。


「赤城財閥」の跡取り娘で世界的なピアニストとしてお嬢さん達に大人気だった赤城さん。老若男女、誰にでも好かれる皆のアイドル中黄さん。

そして私と今は学校からいなくなってしまった赤座さん。特に中黄さんと赤座さんの人気がすごかったです。


「二人共好かれやすいタイプでしたから。入学ばかりの1年生というハンディがあったのにそれほどの人気だったとは。会長世代を相手にして本当に頑張りましたね。」

「まあ、あっちは明らかに「黄金世代」とか呼ばれるから。私は思ってたより順位が低かったからちょっとショックだったかな。」

「あら。そうでしたの?」


少し珍しいって顔をする赤城さん。


「いや、あなたがそういうことを気にするとはあまり思えませんでしたわ。あなたはあまりそういうことに拘らないタイプっと思っていましたの。」

「んーそうだね。」


本当のことを言うと私って子は結構勝ち負けに拘る勝負師気質のある性格でした。

初めて赤座さんのことを見た時だってこの人には演技で負けたくないっと思ってたし、赤城さんにだって音楽のことで負けたくなかったと思いました。会長だって歌のことにおいて私の最大のライバルでしたし。唯一その気にならなかったのは精々先輩だけでしょうか。

とにかく私はあまり負けというのを謙虚に受け止められるそういう大人っぽい人ではありませんでした。

だから衝撃だったんです。私の撮影会の順位が12名の中で7位とことを知った時は。私は己の地位に安住しすぎだったんです。


「でもそのおかげであの時の自分が傲っていたことが分かったから。」


世界は広くて私なんかよりすごい人はいくらでもいる。自惚れていた私はその撮影会でそれを悟れました。

前に進むには何が必要なのか。あの時の私はその経験からもう一つ学びました。


「でもわたくしは嫌でしたわ。その撮影会。」

「あー言われてみれば確かにそうだったような気がする。」


っと口を尖らせてあの時の気持ちを語り始める赤城さん。でも私は今もあの時の赤城さんのご機嫌斜めの表情をはっきりと覚えています。


「わたくし、日光は苦手ですから海は嫌いですわ。」


っと海を煙たがる気持ちを表す赤城さん。そんな彼女に


「赤城さん。もしかして私のこと、嫌い?」


っと聞く私の冗談に


「そんな話じゃないですから…」


呆れたそうに笑ってしまう優しい赤城さんでした。


実はその撮影の前に赤城さんのことについていくつかの憂いの話がありました。本当に「吸血鬼」の赤城さんに水着を着せて海辺で撮影を行ってもいいのかっと。


「日差しに吸血鬼が触れたら灰になるという話は随分大げさな話ですわ。今は「神樹様」の「恵」のおかげでさすがにそこまではならないんですの。」


っと会議から皆の前で言った赤城さんの意思に従ってそのまま進めることになった撮影会。

でもその当日、赤城さんは撮影の間、日傘の下からずっとおどおど怯えていました。


透明なお肌と赤い髪の毛が元気な黄色い縞柄の水着とよくマッチして周りからも大好評だった赤城さん。撮影自体は大成功でしたがやっぱり日差しが怖いのは仕方なかった赤城さんは自分の撮影だけを早く済ましてそれからずっと傘の下に身を隠していました。

自分を傷つける日差しを恐れながらその太陽の下からわいわい笑っている皆のことを羨ましく眺めていた赤城さんのその目。私は今も忘れていません。


そんなに日差しのことが怖いのに断らず撮影を受け入れた赤城さん。後でその理由を聞いた私は


「だってわたくしのことを応援してくださった方々がいらっしゃるんですもの…その気持ちに私なりにお礼がしたくて…」


っと赤城さんから言われた時は本当に驚いちゃいました。


いつも中黄さんのこと以外は全く興味もなさそうだった赤城さんがまさかあんなことを思っていたとは。そのせいで「Fantasia」の中でも一緒に入った書記のルルさんと違って明らかに人気が低かった赤城さんは本当は自分なりにファンのことを思っていました。

中黄さんを振り向かせるためにやるだけだと言ったアイドルだったが赤城さんは歌って踊ることに自分なりの達成感を得ていた。

私はなんだかんだ言ってもいつも自分の役目に一生懸命な赤城さんのプロとしての意識を尊敬せざるを得ませんでした。


でもあの時の赤城さんの撮影にはもう一つの楽屋ばなしがあります。


「実はね?あの時、中黄さんが赤城さんのことをずっと見守っていたんだ。撮影が終わるまでずっとね。赤城さんに何かあったら自分が守ってあげるつもりで。」

「え?そうだったんですの?」


初めて聞いたって顔で驚く赤城さん。でも知らないのも無理ではないと思います。だってあの時はなんとしても内緒にして欲しいっと中黄さんから言われましたから。

でも仲直りできた今、私は赤城さんにもうちょっと中黄さんの気持ちを分かって欲しいです。


「中黄さん、あの時、赤城さんのことを気にしすぎて自分の撮影には集中できなかったんだ。そのおかげで撮影も一番手間取っちゃってめっちゃ怒られたんだ。それに会長と私に赤城さんのことも頼んじゃってね。一人じゃ寂しいから赤城さんと話し合って欲しいと。」


赤城さんから気を使ってしまうことを恐れて撮影の間、ずっと不安な目で陰から彼女のことを見守っていた中黄さん。

爽やかな金髪と情熱の赤い水着がとてもお似合いだった中黄さんでしたが彼女は撮影が終わった後、「Bullet」のところに呼び出されてあの畑さんにめっちゃ怒られました。


さすがのあの中黄さんだって畑さんの前では涙を見せざるを得ませんでしたが


「次は真面目にお願いします。あなたはやればできますから。」


最後のその言葉は彼女にとって大きな力になったそうです。なんだかんだ言ってもやっぱりいい人ですね、畑さん。

人の隠し撮りを勝手に売っちゃったりするのは止めて欲しいんですが…


本人はあまり明かしたくないと今までずっと隠してきましたが私はそういうの良くないと思います。

知られることならやっぱり知った方がいい。それはきっとお互いの心の絆をもっと深めてくれるはずだから。


後で


「ええーなんで言っちゃったのよー恥ずかしいから言わないで欲しかったのにー」


っとちょっとした嫌味は言われるかも知れませんが…


でもまあ…


「ええ…?あの人があんなことを…?わたくし…初耳なんですけど…?ええ…?本当に…?」


今でも爆発しそうな顔が相まった恥ずかしがっている赤城さんを見たらやっぱり話して良かったかも。

悪いって気持ちより先走ってしまう嬉しいって気持ち。分かりやすくて可愛いですね~赤城さん。


「あははーじゃあ、私はそろそろ行くね?」

「あ、はい。演技指導、頑張ってくださいませ。」


中央広場で赤城さんと別れることになった私は赤城さんに「赤城さんもお仕事、頑張ってね」っと手を振りました。

遠くなる赤城さんの後ろ姿は去年とは比にならないほど逞しくて元気そうに見えてなんだかほっとする感じ。


「良かったね、赤城さん。中黄さんと仲直りできて。」


その赤城さんの背中に中黄さんとの祝福の言葉をこっそりと渡す私。こんな私の気持ち、どうか届いてくれたらいいですね。


「私にはもうできないから。」


あの撮影会に確かにいた赤い髪の毛の小さな女の子。

誰より楽しく、元気に笑っていた昨日街で偶然出会った彼女のことを私はそうやって心の中に小さな心残りとして葬ることにした私は少し切ない気持ちで頼まれた1年生の教室へ足を運びました。


***


「なるほど…それで先輩のことを…」

「はい。そういうわけです。」


急に熱が出て私を教室まで運んでくれることになった畑さんの話はこうでした。


「桃坂さんにはどうしてもカレンダー撮影会に参加してもらいたいです。あの人、去年は恥ずかしいからって参加しなかったんですから多分今年も参加しないつもりのはずでしょう。ですが私はどうしても出て欲しいと思っています。」


っと先輩からの撮影会の参加を強く願っている畑さん。でもその話にはこういう内幕がありました。


「虹森さんもご存知だと思いますが青葉さんは桃坂さんのことが好きで仕方がない人です。でも赤座さんのことで露骨に彼女のことを避けている状態。私はなるべくあのお二人さんをくっつけたいと思います。じわじわ接続を増やしていけばあの青葉さんだって少しずつ心を開いてくれるかも知れないと思いますので。いくら大人ぶっていてもあの人だってただの16歳の高校生。好きな人を傍においていつまでも耐えきれるわけありません。」


その時、私は心の底から驚いてしまいました。この蛇みたいな目で何の感情も浮かべない畑さんが実は先輩と青葉さんのことをここまで気にしていたとは思えませんでしたから。

周りの人からは一体何を考えているのか全く分からないって生徒会の何人かを除けば誰も近づこうとはしないこの畑さんがこんなにもいい人だったとは…

私は彼女に自分の未熟さを謝らなければなりませんでしたが


「別に虹森さんが謝ることではありません。実際私はあなたが思っているほどいい人でもありませんから。」


彼女は実に冷静に自分のことを分析しました。


「私は少年兵です。人なんていくらでも殺してきたしいつ自分が殺されても何も感じないと確信しています。そんな私がこの学校の奇妙な生態系にだけは興味を感じています。外では全く通用されない女の子だけの花園。私はその奇妙な女の子の水族館がいつまでも見たいだけです。それを荒らされるのは虫酸が走るほど不愉快で仕方がないです。」


っと言った畑さんはそれから自分に関しては一言も言ってませんでした。私からもそんな彼女に何も聞きませんでした。

でも彼女に背負われている間、私はこう思いました。あなたはゆりちゃんがいい人って言った人です。だからあなたはいい人だと私はそう信じますっと。


「っていうか桃坂さんの写真があれば結構儲かると思いますので。」

「ええ!?ないそれ!?」


っていきなりなに!?まさかあれ、販売とかしちゃうんですか!?


っと驚きながら聞く私を


「大丈夫です。売るって言っても生徒の間の話ですから。」


っという屁理屈で安心させようとする畑さん!でも全然大丈夫じゃない!!


「先言ったとおりにあのカレンダーの件はうちの一大イベントの一つです。その同時に大切な収入源でもあります。ここのお嬢様方は案外そういうことにお金をかけることを惜しまないんですよね。グッズも出て結構売れるんです。」

「グッズも出るんですか!?」

「もちろんです。撮影に使われる水着だって全部「Bullet」のスポンサーからの協賛ですからいい広報にもなりますし。今年も素敵な夏になりそうですね。」


下心満々じゃん!!


「でも授業の方は大丈夫ですか?畑さん。授業、もう始まっちゃったのに。」


私を教室まで連れて行ってくれる畑さんにはすごく感謝していますがもうとっくに授業は始まった時間。

私はそんな彼女に迷惑を掛けてしまったのかなっと先からずっと心配している途中ですが


「お気になさらず。私、この前まで登校拒否でしたから。」


案外彼女の方からはこれっぽっちも授業のことを気にしていないようでした。


「私なんかより虹森さんの方こそ大丈夫ですか。虹森さんは第1の推薦も受けた優等生だと聞いたんですが。」

「そんなに大したことではないと思いますけどね…」


でも畑さんの言ったとおりに授業の方はちょっと心配かも…確か1限は…


「あら。虹森さん。」

「青葉さん!」


っといきなり私と畑さんの目の前に現れた青葉さん!


私の1限目。それは今日だけ特別に行われることになった青葉さんによる演技指導でした!

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