第208話
いつもありがとうございます!
「みらいちゃん!これ見て見て!」
「どうしたんですか?ゆうなちゃん。もうすぐ授業が始まっちゃう…ってみもりちゃん!?ど…どうしたんですか!?その格好!?」
「あははっ!どうどう!?可愛いでしょ!」
「も…もう勘弁してください…!」
見られてる…!顔も知らない3年生の先輩達に見られてるよ…!
嫌な予感はなんでいつもこんな風に当ててしまうのでしょう…よりによって一番見せちゃダメな相手にこんな風に見つかってしまうとは…
「こっち来て、みもりちゃん!もっと皆に見せてあげようよ!」
「も…もう許して…」
ゆうなさんにこの格好を見つかったのは約10分前のことでしたが私はその10分足らずの間、彼女に散々連れ回されておもちゃ扱いされていました…
「あははっ!本当可愛いわよね!みもりちゃんって!」
そしてついに先輩の教室まで私を連れて来たゆうなさん。困っている私の気持ちなんて全く気にしてくれない「百花繚乱」の団長さんは私の知り合いの皆さんに今の私を見せちゃおうとすごく張り切っていました。
「な…なんでこんなことに…」
なんかもう涙まで出ちゃいそう…!
「私はただゆりちゃんにかっこいいところを見せたかっただけなのになんで…!」
今更後悔しても仕方がないというのはもう分かっています。この人に見つかった時、私の運は尽きたと心の底からそう思ってしまったんですから。
何より…
「ついに来てしまいましたね。変態魔王が。」
ゆうなさんの登場の時、何もかも全部放棄してしまったような畑さんのその目…それが私の勇気にとどめを刺してしまったんです。
「なんとか踏ん張ることしかありません。頑張ってくださいね。」
って何あんたは先から後ろに隠れて写真とか撮っているってわけ!?助けろよ!!
「いや、どうせこうなったから。もったいないですし今月の特集のネタにでも使おうかなっと思いましてですね。あ、言っておきますが私、一応そこの団長殿より下っ端ですから何の役にも立てませんよ?」
何だそりゃ!?
「もう!ダメじゃないですか!ゆうなちゃん!みもりちゃん、こんなに困っているんですもん!」
「先輩…」
そんな中、私に差し伸べられる救援の手…!
それはゆうなさんの無茶振りに私から困っているところに気がついたような先輩は
「うちのみもりちゃんです!返してください!」
あのとんでもない力で私を連れ回していたゆうなさんから私を取り戻しちゃいました。っていうか返すって…
「あ!ずるい!みらいちゃんはいつも一緒同好会でなのに!」
「ダメです!みもりちゃん、こんなに困っているんですから!みもりちゃんは繊細な子だからそんな風に乱暴に扱っちゃダメですよ!大丈夫ですか?みもりちゃん。驚いたんでしょう?」
「あ…いいえ…ありがとうございます…」
強引に振り回されていた私のことを心配して私からゆうなさんのことを離してくれた先輩は
「ここに座って。大丈夫。マミーがいますから。」
座っている自分の足に私を座らせました。
「ちぇっ。私と一緒にいる時はあんなに暴れたのに。」
「ゆうなちゃんは何でも強引だからですよ。ほら、こんな風に優しくやってあげればこんなに大人しくていい子ですから。いい子いい子。」
そうやって先輩の足の上に乗っている私の頭を撫でてくれる先輩。確かにゆうなさんと一緒にいる時よりは落ち着きますがこれは何ていうか…!
「疲れてないんですか?ちち要りませんか?」
これはこれでなんか赤ちゃん扱いされている気分で先よりもっと恥ずかしいんですけど…!?
「だ…大丈夫です…!大丈夫ですから…!っていうか今からボタン外さないでくださいよ…!」
「恥ずかしがるみもりちゃんも可愛いですね♥」
全然そんなことないし!!
なんということでしょう…!男装したままゆうなさんに連れ回されたあげく3年生の教室で赤ちゃん扱いされちゃうなんて…!こういうの全然かっこよくないんですよ…!
「あらまあ。みもりちゃん、随分汗をかいちゃったんですね。慣れてない服を着て緊張したからでしょうか。マミーが拭いてあげますね。」
「ちょ…!?先輩…!?」
っといきなり服の中に手を入れちゃう先輩!じ…自分でやりますから…!
「大丈夫大丈夫。マミー、こういうの得意ですから。優しく拭いてあげますねー」
「せ…先輩…!自分でやりますから…!くすぐったいです…!」
そしてくまなく全身を拭き始めた先輩の手。刺激なく、まるで赤ん坊を撫でているようなその優しい手の動きにいつの間にかほっとしてしまった自分。
ゆりちゃんやクリスちゃんとはまた違った愛情が感じられてなんだかすごく心地よい…って
「も…もう大丈夫です…!もう大丈夫ですから…!」
「あ…!暴れちゃダメですよ、みもりちゃん…!」
なにこれなにこれ!?ついほっとしちゃってそのまま先輩に身を委ねちゃったんですがさすがにまずいんですから、これ!!先から周りにずっと変な目で見られてる気もするし…!
「ダメですってば…!大人しくしなさいって…!」
急にとてつもない恥を感じてバタバタと暴れ始めた私をまたそのでっかいおっぱいで抑えようとする先輩!そして
「あ!私も混ぜて!」
先輩と一緒に挟み撃ちを掛けてくるもう一人のデカパイのゆうなさん!
「皆で一緒にギュッとしましょ!」
「つ…潰れちゃう…」
両方から狭まってくる凄まじい乳圧に気が遠くなってきた私はありったけの力を全部絞り込んで今の苦しみを二人さんに表しましたが
「うわぁ!?なにこれ!?みらいちゃん、また大きくなったの!?」
「そのようです…えへへ…」
残念ながらまた一回り大きくなった先輩のおっぱいの話のせいで私の声は二人さんに届かなかったのです。
「でもこれじゃあまり効果ないと思うな。」
「はい?」
っと急に私の格好を見て惜しいって気持ちを表すゆうなさん。どうやらこれにはゆうなさんなりの深い見解があるらしいです。
「ただかっこいいっていいもんじゃないからな。いくらかっこよく取り繕っても相手の心に近寄らなければあまり意味ないから。」
「相手の気持ち…」
ゆうなさん…なんだかすごく真剣な顔をしている…こういうゆうなさん、初めてかも…
「ゆりちゃん、あまり喜んでくれなかったんだろう?当たり前だよ。見た目だけじゃ伝わらないものもあるから。みもりちゃんはただゆりちゃんにかっこいいところを見せたいっと思ってただけじゃない?」
「言われてみれば…」
確かにゆうなさんの言う通りかも…私、ずっとこう思ってたんです。私がもっとかっこよくて頼もしい格好をしていればゆりちゃんはそんな私から何か気づいてくれるって…
私とゆりちゃんはずっと一緒だったから私が考えていることは全部気づいてくれると思ってたんです…
でも先のことではっきりと分かっちゃいました。ゆりちゃん、すごく困っていてこれ、なんかすごく間違えた気がする!って思っちゃったんです。一体私が何を考えているのか全く気づいてくれなかったから。
でもそれは当たり前かも知れません。先の私はただ見た目だけをかっこよく取り繕っただけで私の気持ちなんて全然表していなかったんですから。ゆりちゃんが戸惑うのは当然なことです。
そう言っても今の私にゆりちゃんのためにできることなんて精々こんなことしかありませんですもの…どうすればいいのか…
「大丈夫。」
っと落ち込んでいた私をもう少し力を入れてギュッと抱きつくゆうなさん。
いつにもまして真面目で頼りになるその姿に今日の私は何度も驚かされちゃいましたがそれは決してそんなに嫌なことではありませんでした。
「素直にすればいいんだよ。ゆりちゃんが大好きなみもりちゃんのままにね。」
「私のまま…」
ゆりちゃんが大好きな私のまま…それはどういう…
「む…!みもりちゃんのままは私じゃないですか?すぐここにマミーがいるのに!」
絶対その意味じゃないと思いますけど!?っていうか先輩、なんでムキになってるんですか!?
でもなんとかヒントは掴みました!なんで先の私じゃダメだったのかちょっとわかった気がします!
そのヒント、ゆうなさんから頂いたのはなんだかすごく悔しい気分ですが自分に足りなかったのが何だったのか分かったんです!
ありがとうございます!ゆうなさん!いつも女の子達にちょっかいを出すことしか考えてない人だと思ってたんですけど以外にまともなアドバイスもできるんですね!
やっぱり「百花繚乱」の団長って席はだてじゃないんですね!
「そ…そう言われてとさすがにちょっと傷ついちゃうよ…っていうかみもりちゃんって以外にズバッと言ってくれるんだな…」
「みもりちゃん、しっかりものですからね。マミーの自慢の可愛い子です♥」
なんで先輩が鼻が高くなるんですか!?っていうか私の褒めるところそれだけ!?
「でも本当にありがとうございます。ゆうなさん。何かお礼でもしたいんですけど。」
「あら、そう?じゃあ、腋とか舐めさせて欲しいなー」
「絶対嫌です。」
たった3秒しか経ってないのにもう元に戻ってる…なんか先のアドバイスも怪しくなったかも…
「あ、それは大丈夫です。」
「畑さん!」
どこから湧いたんだ!?この人!?
「こう見えても結日さんは高校に入って一緒に寝た女性の数が300人は越えています。女のことに関しては間違いなくプロフェッショナルです。」
ええ!?なにそれ!?地味に怖いんですけど!?
「男装が禁止されたのもそのせいです。この人、一緒に寝るためなら何でもやるんですから。頭の中はあれですけど一応性格はいいし見た目だってまともですから男装なんかされちゃうと耐えられませんよ。この人のせいで学校行事が中止になっちゃたこともありました。」
「えへへ…照れちゃうよ…」
照れるな!!何やらかしたんですか!?あんた!?
っていうか畑さん、先自分はゆうなさんより下って言ったのに随分露骨に言っているんですけど!?
でもいつの間にか私達の前に現れている畑さんの登場に少し困ったような顔をする先輩。もしかして畑さんとあまり仲良くないんでしょうか…
「いえいえーそんなことないですよーおはようございます。桃坂さん。」
「あ…お…おはようございます…畑さん…」
って明らかに困っているし!!やっぱりあまり仲良くないんだ!!
「違います。私も桃坂さんのこのでっかいおっぱい好きですから。」
「ええ…だからその話は…」
嫌われても仕方ない発言じゃん!!もしかして先輩に何かやらかしたんですか!?ダメですよ!先輩、こんなに困っているから!
「別に何かやったわけではありません。ただ今度の撮影の協力を頂きたいとお話しただけです。」
「撮影?何の撮影ですか?」
っと聞く私に何かの本を見せてくれる畑さん。タイトルは「キラキラメモリアル」…なんかすごく怪しいタイトルですね…
コピー用と思われるこの本自体は何の特別なものでもないんですが本から感じ取るこのすさまじいオーラはなんと言い表しにくいですね…
っていうか見ても大丈夫なやつでしょうか、これ…
「まあ、いいですから開いてみてください。」
「じゃ…じゃあ…」
乾燥の表情で圧を掛けてくる畑さんの話にやむを得ず本を開いて1ページをめくった瞬間、私は早速心底からこう思ってしまいました。
「なんだこりゃ!?!?」




