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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第207話

いつもありがとうございます!

「なるほど…」

「だからみもりちゃんのこと、あまり責めないでください。みもりちゃんなりに頑張っているってことですから。」

「はい…」


授業の前に訪ねてきた黒木さんからの今朝のみもりちゃんの様子に関する説明を受けた後、なぜあんなことになってしまったのか大体話が見えるようになりました。


校則で厳禁されている男装。おそらくそのことをみもりちゃんは全然知らなかったんでしょう。生徒会の私は既に承知していましたが…

みもりちゃんのことです。あの恥ずかしがり屋さんのみもりちゃんが何の意味もなくあんな格好をしたとは全く思えません。これも多分全部私のことを元に戻すためのみもりちゃんの努力。

みもりちゃん、いつも私に守られているから自分はあまり頼りなく見えているんだろうっとか思っているでしょう。そんな風に思わないでくださいって何度も言ったのに…


「私もびっくりしちゃったんです。まさかあの人見知りのみもりちゃんが男装なんて…」


っと黒木さんは少し心配そうに言っているんですが


「でもまあ…♥可愛いからいいでしょうか…♥」


割りと楽しそうな彼女でした。


「でもあんなの、他の人に見られちゃったら困ります。特に副会長や「百花繚乱」の関係者ならなおさら…」

「はい…それに先は私の能力でなんとかフォローしたものでしたからなんとかうまくできたんですが授業が始まったら私から手伝うことはできませんから。」


っということはつまり…


「今のみもりちゃんは変な方向性で頑張りすぎです。だから何をするのか全く予想できません。」

「そ…そうでしたね…」


まさか私の方からあんなことを気にしなければならないなんて…いつもならこういうの心配するのはみもりちゃんの役目だったのに…


そしてついに鳴ってしまう授業の始まりを知らせる予鈴。みもりちゃんがどこへ言ってしまったのかも知らない今の状況じゃ授業もままならないでしょうがそれでも教室へ戻らなければならないんですから。


「後は私に任せてください。何をされてもなるべく驚かないようにどっしり平常心を保ちますから。」

「はい…ご存知のようにみもりちゃんは他人のことを気にしすぎますから。もし緑山さんの反応がいまいちって感じだったらきっとがっかりして何かもっと変なことを起こしてしまうかも知れません。だからなるべく適当に反応してあげれば…」

「そう言われても…」


黒木さんが心配するのも十分分かります。私とみもりちゃんは子供の時からずっと一緒でしたから相手の気持ちなんて一発で気づくことができます。

先も私のいまいちな反応のせいでみもりちゃんは席を外したんでしょう。今頃他の方法を工夫しているはずです。


でも今の私じゃみもりちゃんがどんなことをしてくれても何の喜びも感じられませんから…みもりちゃんが私のためにあんなに頑張っているのに私はその頑張りを素直に受け入れられない…それがどれほどみもりちゃんを苦しませるのかずっとみもりちゃんと一緒だった私が一番知っているというのに…


だから黒木さんは心配なんです。私のこの半端な態度がまたみもりちゃんを傷つけてしまうことを恐れて…


「そ…そうじゃないです。」


っと思っていた私の話を遮って今の言葉を訂しようとする黒木さん。彼女が気にしているのはただみもりちゃんだけではありませんでした。


「た…確かにみもりちゃんのことが心配になるのは事実です。何と言ってもみもりちゃんは私にとって大切な人ですから。でも私が心配しているのは緑山さんも同じです。」

「私も…ですか。」


少し緊張したような顔。

普段みもりちゃんの話が出たら私からどんな反応が飛び出されてしまうのかをよく知っているからこその反応…なんか反省しますね…


「だって傷ついてしまうのは緑山さんも同じですから…がっかりしてしまうみもりちゃんを見て今の自分に罪悪感を抱いてしまうんですから…」

「罪悪感…」


っとまるで会長のように私の心を見抜いた黒木さんのその話は私の心を直撃して痛く、そして鋭く揺さぶってしまいました。

こんな純真な顔をしていてもさすが魔界の「ファラオ」…侮れません…


黒木さんの言った通りです。今の私がみもりちゃんに対して唯一に感じられるのは私のせいで傷ついてしまうみもりちゃんを見た時、心をひどく痛めるエグい罪悪感だけ。それ以外はまるで焦げ付いたアスファルトのように何も感じられません。

そのずっしりした黒い感情が胸の底から湧き上がる時、私の苦しみはこれ以上はないと言えるほど痛くて辛かったです。


斧で振り下ろされるように割れてしまう心。刃で切り落とされるような鋭い痛み。焼きごてに焼かれてただれて焦げてしまう涙。

みもりちゃんの悲しい表情を見る時、私の心はあっという間に負の感情に飲み込まれて崩れて蝕まれてしまうのです。

いっそこの目をえぐり出してあの子の悲しい顔が見られなくなりたい。でもそんなことをしたらあの子はもっと悲しんでしまうのだろう。

どうしたらいいのか分かりません。私はただ周りが全然見えない心の暗黒空間に苦しみながらうずくまっているだけでした。

それをこの魔界の姫様は全部見抜いたということですね…まいりましたよ、本当…


「そんなのダメだと思います…私にとって緑山さんだって大切な人ですから…」

「大切な人…!」


っとなんかすごく恥ずいことを言っちゃう黒木さん…!

ちょ…ちょっと待ってください、黒木さん…!


「はい?」


前から言いたかったんですが黒木さんってそういうの、結構ぱっぱと言っちゃうんじゃないかなっと…!


「い…嫌だったんでしょうか…」


い…嫌っというか…!なんか告白の感じでちょっと恥ずいなっと思うっというか…!私、みもりちゃん以外の人にはそういうの断るつもりですから…!

大体黒木さんはいいんですか…!?みもりちゃんじゃなくて私にそういうことを…!

もちろん私も黒木さんのこと、結構気に入っています…!今の私に一番の相談相手ですし、みもりちゃんのこととか気兼ねなく話し合えますから…!

前はクソ泥棒猫女とか思ったんですが今はそう思いませんし…!


「えっと…そんなに深刻にならなくてもいいと思うんですけど…っというか私のこと、そう思ってたんですね…泥棒猫とか…」


あ…ごめんなさい…


「別にいいんですけど…とにかく私はみもりちゃんだけではなく緑山さんの力にもなりたいっということです。みもりちゃんと緑山さんは一心同体の存在ですから一人が助けられてもう一人が傷ついてしまうだなんて、そんなのダメです。私は両方助かる方法を一生懸命探し出します。お姉様のことや交流の日のこともあって色々大変だと思いますがとにかくみもりちゃんと緑山さんのために精一杯がんばりますから。」

「黒木さん…」


な…なんか涙が出そうですね…みもりちゃん以外の人にこういう話を聞くのは初めてだから…とても心強いです…


「良かったんですね。じゃあ、私は授業がありましてそろそろ戻りますね。何かあったらすぐ連絡してください。」

「分かりました。ありがとうございます、黒木さん。」

「いえいえ。」


黒木さん…なんて頼もしい人なんでしょう…みもりちゃんのことも相談できていつも私達のために一生懸命頑張ってくれて…


「とにかくあまりみもりちゃんががっかりしないように気をつけてください。私も時々様子を見に来ますので安心してくださいね。」

「心掛けます。」


そう言って教室へ戻ってしまう黒木さん。彼女と仲良くなれて本当に良かったんです。こんなにみもりちゃんのことで助けてもらって。

それにしてもみもりちゃん、もうすぐ授業が始まるのにどこへ行っちゃったんでしょう…


***


「なるほどー一発で失敗しちゃったということですか。」

「そうなんですよ…!」


今もはっきり覚えているゆりちゃんの目…間違いまりません…あれはただ珍しいものが見られたというだけで決してこの格好に何の効果もなかったというのを証明しているそういう目でした…!


「私…!今までゆりちゃんとずっと一緒だったから一発で分かるんです…!ゆりちゃん、なんか「頭、大丈夫ですか…」って心配しているような目でしたから…!」

「あの緑山さんに限ってそれはないと思うのですが。まあ、とにかくあまり進捗がなさそうだったのは確かですね。だって虹森さんが無事にここまで来られたのがその証拠です。そうじゃなければ今頃体育倉庫にでも連れられる()()()でもやっているのでしょう。」


ええ!?何だそりゃ!?


「っというかその格好でここまで来たんですか。ダメじゃないですか。この学校、男装は特に禁止されているから気をつけてくださいってあれほど言ってたのに。何と言っても男装が禁止された原因は3年生にありますからここに来る時はもうちょっと慎重に…」

「みもり…ちゃん?」


その時、後ろから聞こえる馴染んだ声。


「この声…もしかして…」


不安そうな予感…急に畑さんが固まっちゃってずっと黙っているから余計にもっと怖いんですがとにかく一旦振り向かって確かめなきゃ…


っと思って振り向いたそこには


「これ、なに♥何かのイベント?♥それとも何かのプレイ?♥良かったら私も混ぜてくれない?♥私、こういうの大好きなんだ♥」


朝っぱらから思いっきりスイッチが入っている「百花繚乱」の団長であり、この学校で男装が禁止された原因である


「楽しみだね♥」


このまともじゃない学校の中でもぶっちぎりの変態さんと呼ばれている「結日(ゆうひ)優奈(ゆうな)」さんが男装した私のことをよだれまでたらしまくりながらすごい勢いで狙っていました。


まるで獲物を狙っているような虎の目…それはまさし「恐怖」と呼ぶべきのものでした。

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