第205話
ここんとこブックマークの数が減ってしまい少し落ち込んでいます。でも今月に入って不本意ながら投稿の数を減らしてしまった私のせいだと思って反省しています。
またのお越しいただけるような楽しい作品を書くことしかないと思ってもうひと踏ん張りです!
いつもありがとうございます!
*就職の件で次回の投稿が少し遅れております。ご了承お願いいたします。(__)
「み…みもり…ちゃん?」
翌日、私はいつもと同じく学校へ行きました。昨夜火村さんと石川さんのことを最後まで見届けてしまったせいで帰りが遅くなったんですが
「そうでしたの。もう遅いから話は明日にしますわ。」
珍しく副会長はそれ以上何も言わないでくださいました。多分私のことを色々気遣ってくださったと思います。最近みもりちゃんのことで随分大変な時間を送っている私に石川さんのことまで任せきってしまったと思っているかも知れませんね。
でもそれも全部この学校のため、いいえ、みもりちゃんのためですから私は全然気にしません。
むしろ気にするのはその次の日、つまり今朝、今の自分の目の前で起きていることの方でした。
今の状況になってもまだ判断がついてない私ですがこれだけははっきりと分かります。
「みもりちゃん…?」
昨夜、私の知らないところでみもりちゃんの心境に何か変なことが起きたということを…
「うわぁ!?どうしたの!?これ!?」
「い…いつもと随分変わった格好ですね…虹森さん…」
ちょうど教室に入った野田さんも、前原さんも今のみもりちゃんを見て結構驚いていますね…
そりゃそうでしょう…普段大人しくてし淑やかな「和」って感じがするみもりちゃんのあんな姿を見てしまったら誰でもこんな反応かも…
私だって今こうやって後ろの方からこっそり覗いているんですもの…
「何で今日は学ランなの!?」
みもりちゃん…何で男装なんかを…
いつも制服はきちんと整って日頃の身だしなみに十分気をつけていたあの可愛くて優等生の手本だったみもりちゃんが思いっきり制服を着崩してあんなにふしだらな格好をしているとは…もうなんと言えばいいのか言葉すら見つかりません…
随分古いものだと思われる学生帽と季節外れの分厚い黒い学ラン。風に揺らめいた自慢の長い黒髪は一本筋できちんと結びつけ、こっそり潜んでいるみもりちゃんのキリッとした魅力を一層引き立ててもうそれはもはや男性性と言っても過言ではありません。
襟についている鎖は全く意味不明ですがそれもまた全体的な野生性を引き上げてくれるいいアクセントになってその渋い雰囲気を増えていく。
何より
「キリッ。」
今までは見たこともない野性的で重みのあるみもりちゃんの視線に心を奪われそうです…!
これは本当に貴重なものかも知れませんね…!私、生まれてみもりちゃんの男装を今まで一度も見たことがありませんもの…!理由はともかくこれは中々…!
「でも…」
こう見ている間にもいつの間にか気づいてしまうのです。生まれて初めて見たみもりちゃんの男装なのに私の胸は何も感じられませんでした…
ただ奇をてらった珍しさに気を取られただけで私の胸はみもりちゃんを見ている今も真の心でみもりちゃんのことを受け入れていない…単に今まで見たこともないみもりちゃんの珍重な一面を見られたというほんの小さな喜び以外には何も…
そしてその後を継ぐとてつもない罪悪感に私はもう一度苦い愛憐を味わいざるを得ませんでした。
燃え尽きてもう動かない焦げ付きた胸…こんな胸ではみもりちゃんの愛情を受け止められません…
今の私はただ遠いところからあなたを見守っているだけ…
「やかましい!!」
えええええ!?!?
みもりちゃんへの後ろめたい気持ちに沈んでいた私の意識の目を覚ましたのはいきなり聞こえるみもりちゃんの怒鳴り声でした!
なんですか!?一体何が!?
「ギャギャうるせぇんだよ!!朝っぱらから女が騒ぐんじゃねえ!!」
何言っているんですか!?みもりちゃん!?
な…なんか見た目だけではなく喋り方も変になっているんですけど!?っていうかみもりちゃんだって女の子なのに!!
「び…びっくりした…!」
「ご…ごめんなさい、虹森さん…!」
慌てて騒いでいたことを謝る野田さんと前原さん。普段絶対大声を出さないみもりちゃんだったから随分驚いている様子です。
でもお二人さん!今のは明らかに叱られることではありませんでしたからご安心してください!
驚いたのは私も同じです。みもりちゃん、いつも鋭くツッコミを掛けてきますがあんな風には絶対言わないんですもの…あんなガサツで不良っぽい喋り方…
いつもなら…
「えへへ~♥ゆりちゃん、大好き♥交尾しよう?♥」
っともっと可愛くて女らしく…ってあまりにもびっくりしたせいで頭が記憶を捏造してきましたね…
とにかく私が知っているみもりちゃんは絶対あんな風に人を言い詰めたりする人ではありません!
一体私がいない間あの可愛いみもりちゃんに何があったんだか…とりあえずそろそろ教室に入って詳しく話を聞かなきゃ…
「お…おはようございます、みもりちゃん…」
「あ、緑山さん!ちょうどいいところに!」
おずおずしながら現れた私を見てまるで「虹森さん、今日はなんか変だよ!」っと言っているような目を私に向ける野田さん…
でも後ろからずっと見守っていましたから状況はよく分かっていますから。ここからは私がやりますのでお二人さんはもう戻ってもいいです。
「そ…そうだ!何かのイメージチェンジでしょうか~か…かっこよくて素敵だと思います~…」
実に苦しいフォローをしてくれる前原さん…困っているのは皆一緒ですがこんな状況でもなんとかみもりちゃんのことを理解しようとする前原さんの心遣いについ頭が下がってしまいます…
でも多分そういうイベント的なものではないと私はそう思います…
「ど…どうしたんですか?みもりちゃん…何で学ランなんか…」
っと聞く私の顔をじーっと見つめるみもりちゃん…な…なんか調子狂いますね…こういうみもりちゃん…ずっと黙っているのが逆に怖いんですけど…
「ファションだ。」
っと一言で今の自分の行動を決めつけるみもりちゃん!ファ…ファションだったんですか!?これが!?
近くで見たら今日のみもりちゃん、なんかすごい顔になっていますね…迫力があるっというか、落ち着いているっというか…
この前まで向けてくれたニコニコした笑顔じゃなくこんなに真剣な真顔で私のことをじーっと見つめて…何を考えているのかさっぱり分かりませんね…
「そ…そうだったんですね。お体の具合は…」
「うん。平気。」
つっけんどん返事…特に怒っている様子はありませんがなんだかむっつりしているような…もしかしてこの前からずっと私からみもりちゃんのことを避けていてその仕返しっというわけでしょうか…
しかし近くから見ればますますイケメンっぽいですね、みもりちゃん。以外に男装とか向いているかも。
本人はあまり気づいてないんですが元々とびっきりの可愛子ちゃんですからね、うちのみもりちゃんって。お肌も白くてきれいで眉毛も長いですし。
この学校に来て周りの皆が全部みらい先輩やかな先輩みたいな美人さんだらけで少しいじけているようですがみもりちゃんだって負けないくらいきれいですから。
でもまさかそのみもりちゃんが男装という破格なことをするとは…意味は分かりませんが正直に言って少しやばいくらいお似合いということは認めざるを得ませんね。
「それでどうしてこうなったのか説明してもらえないかと…ってみもりちゃん?どこ行くんですか?」
一体どうして今の状況に至ったのかその経緯を聞く私を差し置いて急に席から立って私の質問に答えずそのまま教室から出てしまうみもりちゃん。
そのそっけない態度に少し戸惑ってしまう私でしたがなぜか私の足はそんなみもりちゃんの後を追おうとはしませんでした。
多分私はこう思ってしまったかも知れません。
今のみもりちゃんは私のことで頭がいっぱいだから今の行動はきっと私のための努力の一つに間違いない。でもそれを聞いたところで今の私の今の気持ちが変われるとは思えない。
そうなると私はまたそのみもりちゃんの優しい心を傷つけてしまうのだろうっと…
薄らにそう感じてしまったあの時の私は私をおいて教室から離れてしまうみもりちゃんの背中を悲しく見つめているだけでした。
「緑山さん、あそこで姫様がお呼びになっているよ?」
考え事に夢中になっていた私にお客さんが来たことを教えてくれる野田さん。
魔界出身の野田さんから「姫様」と呼ぶ人はこの学校にたった一人しかいないということをよく知っていた私は私を会いに来た人が誰なのかすぐ推理できました。
かつて私がみもりちゃんをおいて一番のライバルだと決めつけてた人。その人にみもりちゃんのことを奪われたくなかった私は己の弱さを克服するためにまた自ら禁止された「裏の世界」へ足を踏み入れてしまいました。
でもあそこで私を引っ張り出してくれたのはみもりちゃんだけではなかったです。同じ相手をおいて張り合う恋敵なのに私のことが好きって言ってくれたその人。彼女は今は私にとって腹を割って全てのことを話せるかけがえのない仲間であり、友達になりました。
いつも私とみもりちゃんのことを気にかけて心配してくれる優しい人。彼女は今回もまた私達のために足を運んでくれました。




