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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第196話

ブックマーク1名様誠にありがとうございます!最近投稿が少し遅れ、いいアイディアが思いつかなくて悩んでいましたが相変わらずたくさんの方々に読まれているようにとても嬉しいです!

もうすぐ200話でございます!まだまだいっぱいありますのでどうか最後までお供いただけるのなら幸いです!

いつもありがとうございます!

「結局最後まで見届けてしまいましたね…」


偶然見かけになった火村を追ってこんな夜遅くまで彼女のことを見届けるとは自分にも全く予想外のことでした。

みもりちゃんのこと以外は興味もなかった私がいつの間にか他の人のことにもお節介するようになった。私は多分自分の目で確かめたことから今の状況を打開するヒントが見つかりたがるかも知れません。

みもりちゃんへの気持ちを取り戻してあの子を笑顔にしたい。今の私は強くそう願ってしました。


「強いんですね…火村さんは。」


柱の後ろに隠れて火村さんと速水さんの会話を全部聞いた私は改めて彼女の心の強さについて感心してしまいました。

去年石川さんから手紙まで落とされて泣いていた彼女のことを私とみもりちゃんで慰めてあげましたがそんなことがあったとしても彼女はまだ自分の好きな気持ちを諦めてはいませんでした。

初めて合った時と同じく…いや、もっと強くなったひたすら真っ直ぐで変わらない純情。私は彼女のその気高い志に心底から敬意を捧げました。


今はまだその心に相手から答えてくれないかも知れない。でもあの人を見ていつまでも熱く、そして純真に燃え上がる彼女の恋情はいつかは彼女の心を動かしてきっと報われると私は信じています。

私は今日彼女からまた自分の未来への道を一歩踏み出したことを心を込めて祝福しました。


「石川さん、学校を止めるつもりだったんですね…」


盗み聞きはよくないのは十分分かっていましたが先の庭からの二人さんの話は私にも本当に衝撃的な話ばかりでした。

去年のこと、そして今のこと。去年私とみもりちゃんで火村さんのことを慰めてあげた時の石川さんが自分からひどいことを言われた火村さんに対してあんなことを思っていたとは。なんだかんだ言ってもやっぱりあの方とそっくりですね。


「ゆり、お前はもう帰れ。」


みもりちゃんのために私が「影」にいた頃、あの方は私にそう言いました。


体は大きくて無口でいつも人と距離を取っていたあの人のことを私はずっと気まずく思っていましたからあの時のその言葉の意味を私はさっぱり分かりませんでした。


「ここはお前みたいな子が身をおいてもいい場所ではない。外に出ろ。そして二度とここには戻ってはいけない。」


激しい戦いで潰されてしまった両目。もはや限界に達してしまって崩れて欠けてきた体。動くたびに体の関節は軋む音がうるさくて最近はまともな食事もできないほど衰弱になって動ける時間まで限られてしまったあの方はその見えない目を私に向けてもう外の出ろって言いました。

あれはあの不器用な人なりの私への気遣いだったんです。自分の娘と同じ年頃の私がどうしても気にかかったゆえ、あの方は私を外へ行かせてあげたかったのです。


「申し訳ありません。それはできません。」


でも私はあの方の気遣いに応えられませんでした。あの時の私はみもりちゃんのために強くならなければならないという考えに捕らわれていましたから。あの子のために「怪物」としての道を選んだ去年の私に外に出る選択肢は存在しませんでした。


同じ一族で最後まで自分達の味方になったくれた「(ファントム)」以外は誰も信じない「ゴーレム」。そんなゴーレムのあの方から私に外に出ろって言ってくれました。結局ゴーレムという種族は自分達もよく知らない部分から他人のことを思っていたということです。


「そんな人の娘さんだからきっとあなたもそういう人だったんでしょう。」


背負いすぎてもうへとへとになったあまりにも早く大人になってしまった可哀想なゴーレムの女の子。私とみもりちゃんみたいなろくな幼い頃の思い出も持てずそのまま大人になってしまったあの人は自分の先代の人達がやってきたことと同じく自分達のこと以外の人間には興味を持たないようにしました。

ただ今まで自分を支えてくれた幼馴染の女の子を頼って生きていた。私には彼女の気持ちがよく分かります。

だってあれは私の生きるその意味でしたから。


そんな彼女がそんなに嫌がっていた魔界の子に励まされて少し周りを見る目を持つことになった。多分彼女の両親も、その幼馴染の女の子も彼女にその目を養ってあげたかったのではないかと私は謹んで思います。


「それにしても速水さん…よくあんな決心が付きましたね…」


っと再び昼のお茶会のことを思い出す私。でもあれは多分この学校の今までの止まっていた時間を動かす歴史的な一大事だと私は直感しました。


Bullet(新聞部)」の部長「(はた)蕗子(ろこ)」。学年は3年で「陽炎(選挙管理委員会)」の傘下の組織として一応生徒会所属の人なんですがこの学校では会長や速水さん、魔界側の青葉さん並の大物です。

かな先輩の仲裁でなんとか今回の派閥争いに加わらない人界の人達まで動かせる影響力を持っている彼女なんですが幸い彼女はこの学校の奇異な仕組みにあまり興味がなさそうで今のところ会長のご方針に素直に従っています。

まあ、元々「精霊」という種族はいたずらやら世間話やらそういうのが大好物ですから今の学校にはあまり面白みを感じていないのでしょう。


冷静な判断と決してしくじることもない狙撃の腕を認められて「プラチナ皇室」直属の親衛隊「Judgement」の最年少で抜擢された彼女ですが彼女は昔自ら「勇者」を放棄した人界のある女性と同じく自分の足で「Judgement」を抜けました。理由はただ「面白くないから」。

あれから彼女はスクープを探し回るようになったと昔の共同作業途中私にそう言いました。

そういえば畑さん、奪われたカメラちゃんと返してもらったんでしょうか。あそこにあるみもりちゃんのデータ、早くこちらから引き受けたいんですが…あの時、私は全部没収されちゃいましたから…


でもまさかあの畑さんまで包摂して学校内の分かれている勢力達を和解するつもりだなんて…速水さん思い切って大勝負に出ましたね…

速水さんが「手芸部」のすみれさんと付き合っていたのも驚きでしたがそれ以上速水さんからこの学校のパワーバランスを崩そうとするのがもっとビッグニュースです…

まさか彼女の方からそういう提案をしてくるなんて生徒会は全く把握していませんでしたから。


「これもあなたが引き連れてきた風のおかげなんでしょうか…」


ふとこう思ってしまいます。これはきっと良い風ではないかと。

誰より皆の笑顔が好きで皆に仲良くなって欲しいと心のそこから願ってやまなかった新緑の瞳を持つ黒髪の女の子。家の事情で自身を失い、躓いていた時もありましたがあの子は勇気を出してまた一歩踏み出してくれました。

きっとあの子が直接学校の流れを変えたわけではないかも知れない。でも私はその意志が知らず識らず周りを巻き込んでいい方向へ進むように導いたと信じたいです。


それに私、去年の泣いている顔ではなく今のニコニコしている火村さんを見てこう思います。異なる種族同士にお互いのことを補って分かり合うことも悪くはないなって…

あなたはこんな皆の笑顔が見たかったんですね…


「私も頑張らなきゃ…」


でもやっぱり今の私はあなたの笑顔が一番で見たいんです…みもりちゃん。


***


「会長ったら…逸れてはいけないってあれだけ言ったのに…」


セシリアがみらいに保護されてうみのことを待っている間、同じ時間にうみはいつの間にか自分の傍から逸れてしまったセシリアのことを先からずっと探し回っていた。


深く被った大きな帽子。目が見えないほど濃いめのサングラス。

「伝説の歌姫」、「歌劇少女」などの派手なあだ名で呼ばれている自分と超一流アイドル「女王様」のセシリアはこれくらいしておかなければすごく目立つだから変装は欠かせないと思ったうみは今の自分と同じ格好を彼女にもしておいた。

だが変装があまりにもうまくできてしまったせいか却って仇になった今の状況に彼女は呆れたそうに笑ってしまった。


「やりすぎよ、私…」


自分は望まなくても皆に注目されてしまう側の人間だから変装には特に気にするようにしていたうみは自分の完璧すぎる変装能力に改めて舌を巻いてしまった。


役になりきるのは俳優としての基本の中でも最も基礎なものだと思っていたうみはこういうところにも抜かりがなかった。

いかなる時も、場所にも気にせず演じて歌うこと。それこそ彼女の生きる方。それこそ彼女を芸の頂点に立たせた彼女の心掛けであった。


だが時々思ってしまう。もしかして今の自分はただ作られた一つの役に過ぎないのではないかと。役になり過ぎてもう本当の自分を失ってしまったのではないかと。

だからこそ自分にはみらいが必要だった。彼女の前なら自分は誰より素直になれた。隠さず、飾らず好きな気持ちをいくらでも外に出せた。

彼女との時間があまりにも大切すぎてもしみらいが卒業していなくなってしまったらどうしようと怖くなった時もあったがそれでもうみはその時間を精一杯楽しませてもらった。

だがみらいより早く彼女の傍から離れてしまった自分のことに彼女は逆に笑ってしまうくらいであった。


ことりのことで学校の全ての生徒達を敵に回した後、彼女は以前にもまして余計な考えが多くなった。ことりが学校を去ってみらいがいなくなった後、彼女はこれが本当の自分なのか疑わしくなってしまった。

自分は一体誰で一体何がしたいのか。自分は何がしたくてみらいから離れてしまったのか。


「先輩…」


彼女はただあのこと以来笑わないようになってしまったみらいのことが嫌になって苦しかっただけであった。


セシリアが記憶を失ったと初めて聞いた時は嘘だと思った。彼女は決して自分のために能力を使わない人間、自分が愛しているおっぱいのでっかい先輩の女の子と同じく他人のことを心から思ってくれる優しい人間だから「神樹様」の「恵」がある限り能力の暴走なんてありえないとそう信じていた。


「「青葉海」さん…ですよね…?」


だがお見舞いに行ったそこで言われて彼女の一言でうみはやっと現実を受け入れられた。


セシリア。同じ芸の世界に身をおいて同じ仕事をしていたことりにも感じられなかった「ライバル」としての意識を初めて目覚めさせたのは彼女が初めてだった。

魔界に「青葉海」があれば神界には「セシリア・プラチナ」がいるという話が存在するくらい世間にはそういう構図が作られていたが実際は俳優としての自分とは得意分野も少し違ったので入学直後はあまり気にしてはいなかった。


だが


「ごめんなさい、うみちゃん。今日はセシリアちゃんのところに行かなければならないので今日の部活は少し早めにお開きにしましょうね?」


自分にとって一日中最も大切な時間であるみらいとの部活の時間を取ってしまうのはなかなか感心できないものだった。


「ぐぬぬ…先輩、いつもセシリアちゃん、セシリアちゃんばっかり…」


自分はみらいのことが好きになったこの学校に入学したのにそれを差し置いて目の前で図々しくみらいのことを横取りする目論見だと思ったうみはあれから本格的にセシリアのことを警戒する気になったが先にみらいのことを好きになったのはセシリアの方だった。

だがその事実を全く知らなかったうみはセシリアのことを目の前に現れた人生初めての「恋敵」と決めつけた。


ということもあったがそんなうみとしても彼女の極まった音楽スキルとその人格はずっと認めないわけにはいかなかった。


優れた歌唱力、派手な振り付け、そして圧倒的なパフォーマンス。生まれつきのスター性と皇女として身につけたカリスマ性、人にすぐ溶け込む親和力は彼女がただ歌だけが取り柄というわけではないと証明していて誰もその意見に関して異論はなかった。

美人で勉学も欠かさず一生懸命励んでいる皆に尊敬され、愛される生徒会長。作詞、作曲も一人で全部こなしているその「持って生まれた」アイドルのことをうみは内心憧れていた。


その上「メンタルドミネーター(心理支配)」という「権能」まで使って人の頭の中を覗いたり操ったりすることができるって言われた時は何というチートキャラなのよって思ったがとんでもない世話好きで以外のところから見せてくれる人間味溢れる姿にほんの少し心を緩めてしまったうみであった。


今はもういいライバルでいい友達と言ってもいいくらい仲良くなった二人。特にうみは彼女にずっと感謝していた。

みらいの代わりに密かなところからたくさん助けてくれたセシリアはいつも自分が何もできないと自分を責めていたが彼女がいなかったら学校はとっくにダメな状態に差し掛かったことをうみは彼女自身よりよく知っていた。

いつも自分のことを気にしてくれて面倒を見てくれた温かい人。うみにとってもセシリアは本当に大切で大好きな頼りになる先輩であった。


そんなセシリアが自分のことを見て知らないっという顔をしていた時は胸がドサッとした。何か重要なものが欠けてしまったようなその顔を見た時、最初に思い浮かんだのはみらいだった。

記憶を失ったしまったセシリアを見て彼女がどれほどの衝撃を受けたのか自分には想像もつかないだろう。


「はじめまして~「青葉海」と申します。」


だからあの時はただ普通にそう言うしかなかった。


「わ…私、青葉さんの大ファンなんです…!青葉さんの「シンデレラ」も見に行きました…!」

「そうだったんですね~嬉しいですね。」


あれは十年も前にやった舞台。小さいシンデレラとして精一杯演じた役。自分の「青葉海」という名を世界中に響かせた舞台だったので特に愛着も持っている作品だった。

だがまさか記憶が吹っ飛んで子供の頃に戻ったと言われた彼女からその作品の名前を聞くとは全く思えなかった。

うみは彼女から本当に子供の頃に戻ってしまったことを知ってその事実を受け入れることしかなかった。


「でも青葉さん…私が知っている時よりずっと大人になったんですね…背も高くて胸も大きくて…こんなに素敵な女性になって…」


なんだか名残惜しそうな顔。自分が覚えている「青葉海」がこんなに大きくなっていることから改めて記憶を失ったことを思い出してしまったようなセシリアはほんの少し自分の思い出を寂しく感じてしまった。


「この体は私が知っている体ではないですから…だからきっと今の私は青葉さんが知っている私ではないでしょう…悔しいですね…私だって青葉さんと仲良くなりたかったのに…」


っと自分の記憶にはない大きくなった自分の体を見るセシリア。まるで今の自分にはないうみとの記憶を未来の自分は持っていたことを羨んでいるような言い草に胸がちくっと痛むうみだったが


「それじゃ今の会長に私のこと、知ってもらってもいいでしょうか。」


その一方、普段絶対見せてくれない素直なところをさり気なく晒すセシリアのことがほんのちょっと可愛くなったうみは


「私とデートでもするのはどうですか?」


っと自分が考えても唐突なことを提案することになった。


「青葉さんとデート…」


そう呟いたセシリアは早速真っ赤な顔になって


「は…はい…!ぜひ…!」


っとすごく喜んでくれたがそれがまた我慢できないくらい可愛かったうみはそのうち具体的な日時を伝えることにして病室から足を運んだ。


その後、うみは「プラチナ皇室」にこのことを報告、彼女の姉である「ビクトリア・プラチナ」からの直々の許可を与えられた。

護衛をつけてお互いの予定に支障がない日を選んで皇室専用の車まで貸してもらって市内で彼女のデートを楽しもうとしたうみ。


だがあの時、


「うみっこ…?」


うみはなぜ今日という日を選んでしまったのかっと自分の選択の間違いを後悔してしまった。

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