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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第193話

遅れてしまって申し訳ありません。些細な交通事故に巻き込まれてしまってその処理で少し時間がかかってしまいました。

大したことはありませんがここ数日投稿に集中できなかった状態だったのでとても申し訳ない気持ちです。

もっと頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いいたします。

いつもありがとうございます!

「おい!こいつの母ってさ!こいつを捨てて夜逃げしちまってよ!」

「俺も知ってる!他の男の家に出入りしてたらしいぜ!」

「マジカ!すげぇな!ってことはお前もキモいおじさんにパパとか言ってお小遣いとかもらっちまうのかよ!」


蔑視。「罪の一族」である私にはいつもついているのはそういう類の視線ばかりであった。

私がどんだけ頑張ってもどんだけ分かってくれって訴えても誰も分かってくれない。だから私のところにはこういう蠅がたかることはいつものことだった。


「あんたみたいなゴーレムとは同じ空間にいたくないから。この「神樹様」に逆らった人でなし目。」

「石川ってさ。お父さんもいないんだって。愛人とかできちゃって家を出ちゃったらしい。」

「ちょ…ちょっと!聞かれちゃったらどうするの…!ゴーレムってすぐ人を殴ったりするから気をつけなきゃ…!」


でたらめの噂。大人達から漏れ聞いた私に関する数少ない情報を適当に作り上げた偽った嘘話。私の周囲にはいつもそういうでたらめな話が初中漂っていた。

いつものことだった。何気なく罵られて何気なく笑われる。それは生まれてからずっと続けられていたことだった。


この世界にとって真実なんかはどうでもいいこと。あいつらはただの興味本位でそんな嘘まみれの話で私を貶し、人格を引き下げた。

お袋も、おやじも決して他の人ができたから家を出たわけではなかったというのは誰より私自身が一番分かってた。不器用なおやじも、バカほどお人好しのお袋も決してそんな理由で私の傍から離れたことではない。私はただ何も言わず小さな私を捨てたそのこと自体が許せないだけであった。


私があいの手に引かれて社会に出たのは中学校の時。ずっと森に住んでいたゴーレムが社会に出ることはめったにないことだったので私の噂は既に学校中に広まっていた。

当時あいは「黄金の塔」の老いぼれ達の社会への許可を得ることに少し手間をかけていたので社会への進出はあいより私の方が1年くらい早かった。

あいの父は私への差別を案じてなるべくそういう偏見がないと思われる名門の学校に私を通わせてくれたが社会ってやつはそんな甘っちょろいものではなかった。私は転校したその日からずっと学校の皆からネタにされてた。


入学式が終わって正式な授業が行われるその初日。登校した私を迎えてくれるクラスメート達の最初の一言がそれだった。

神界にいる頃からずっと聞いてきたことだけどあそこの人間は私の前だけでは私の両親のことや種族のことについてあまり口に出さなようにした。下手に口を開けたら卒業までずっと病院で暮らすことになるから。だがさすがに社会のぼんぼん達はそのことまでは知らなかったようだ。


あいつらが言っていることは殆どが呆れるほどでたらめなことばかりだったがたまに本当のこともあった。ゴーレムは、特に私はよく人をぶん殴ったりした。


「すみませんでした…もう…許してください…」


女だろうと男だろうと、年が多いだろうと子供だろうと私は躊躇せずぶちのめしてあげた。

いくら家からちやほやされて育ったろうと私には関係ない。私はただ二度とそんな戯言は叩けないように徹底的にねじ伏せるだけだった。


実に愉快な気分だった。偉そうに私の悪口をやっていたやつらがピーピー泣きながら許してくださいって土下座しているところを見ていると胸の奥が晴れていった。たまにそいつらの知り合い達が大勢でリンチを加える時もあったが後で一人ずつ何倍で返してあげたら二度と私のところには目も当たれなくなった。おやじから教わった古武術は以外にそんなところで役に立ってくれた。

だが残念ながら私は戦いから喜びを求めるタイプではなかったので向こうから先に絡んでこない限り私からは何もしなかった。


東には「結日優気」、西には「石川金剛」って不良としての名が広まる頃、私はあいと一緒に芸術文化系の屈指の名門第3女子校に入学することにした。


「今度はちゃんと二人で入学できるわね。」


っと私との入学を楽しみにしてくれたあい。私は中学校の頃、喧嘩とかでずっとあいに迷惑を掛けてきたから高校生になったらちゃんとしようと決めていた。


入学直後、私はそこで子供の頃、離れてしまったお袋と再会できた。私は社会に出た以来たった一度のお袋のことを探そうとはしなかったのでお袋がこの学校で働いていること自体を全然知らなかった。

もちろんあいは知っていた。あいなりに気を使って私とお袋を合わせる作戦だったと思う。もしお袋がその学校にいることを私に知られてしまったら私はきっと他の学校を選んでしまったかも知れないから。


だがあいの頑張りにも関わらず私は結局お袋と仲直りはできなかった。

当然だ。私はお袋が憎くて憎くてお袋のことを忘れようとしたから。向こうからは何度も私と連絡を取ろうとしたりちゃんと話そうとしたらい色々頑張ったようだがあいにく私の精神はお袋がいなくなったあの朝に止まっていたので私はお袋の気持ちを受け入れなかった。遠いところにいるおやじとは手紙くらいは取り交わしたがお袋のことはもう全部忘れようとしていたところだった。

結局私とお袋の仲はあいの望み通りにはいかなかった。


その頃、引き受けた「百花繚乱」の副団長の肩書。特に誰かを守るために入ったわけでもない、ただあいから誘ってくれたから入ったそこから引き継ぐことになった副団長って席は私には到底務まるものではなかった


「私はやっぱりこんごうがやった方がいいと思うな。」


っと私にやってもらいたいってお願いするあいのためにやむを得ず引き受けることにした。

多分いつも迷うばかりの自分には誰かを引き連れる資格はないと思っていただろう。私は私が副団長を引き受けることであいの負担が少しでも減ると思って柄でもない副団長という肩書を付けることになった。


2年生だった去年、私は久しぶりに自分の展示会に行くことになった。私は私の絵を魔界のやつらに見られるのがあまり好きではなかったからなるべく自分の展示会には行かないようにしてた。だがあの日は主催側からのサイン会のオファーもあって魔界の人達がうじゃうじゃする市内まで足を運ばなければならなかった。


「石川さん!いつも応援しています!」


予想通りサイン会には魔界の人もたくさん寄り集まっていた。不本意だが私はそう言ってくる全ての魔界の人に


「ありがとうございます。」


っとお礼を伝えなければならなかった。


偽りの笑顔。私はファンの皆の笑顔をそう思ってた。魔界の人によって死にかけた記憶のせいでその全てを嘘にまみれた嘘の笑顔と勝手に決めつけていた。

自分の絵はただあいを喜ばせるべきのもの。ずっとそう思っていた私にファンの応援はただの上辺だけの空世辞に過ぎなかった。


だからあの時、どうして私はそんなことを言っちまったんだろう。


「本当は魔界の人間ごときには見せたくない。」


あの時の私は最悪だった。


ほんのりした温もりに包まれている炎の色の長い髪。そして初々しい表情と汚れのない純真な目。特に目立つタイプではないだがこういう普通なタイプこそ案外周りからすごく好かれるってことを私はよく知っていた。

一度見ただけで分かるほど愛しい少女。きっと周りからいっぱい愛されてきただろうっと思われるほど温かい目をしていた魔界の少女。

かつて森の大火事の時、私達を助けてくれた世界政府消防隊の隊長の人と同じ種族の「炎人(ほむらびと)」の少女はトイレの前から私のことをずっと待ち続けていた。


「あ…あの…!」


顔まで赤くなって私に丁寧に用事してきた可愛い手紙を差し出す炎人の子。そのファンレターにどれほどの時間と思いを込めたのかその時の私には分かるあるまい。


「い…いつも応援しています…!私、石川さんに憧れて絵を描いています…!」


恐れすぎて今でも死にそうな顔。見ているこっちが心配になるくらい興奮している少女は何でも話を噛んでしまったがその純朴な姿がまたいいチャーミングになりそうだった。


私を憧れて絵を描いているって話している少女は私の絵が、私のことが大好きって言ってくれた。


「私、石川さんのこと、大好きです…!」


嬉しかった。本当は嬉しかった。

私の絵が好きな人はいくらでもある。だが誰も私という人間のことを好きにはしてくれなかった。

当然だ。私の魔界嫌いは既に折り紙付きだから。だから私は決して人に好かれるタイプではなかった。

それを知っているはずなのに私のことが好きって言ってくれる魔界の子はその炎人の子が初めてだった。だから私は柄でもなく嬉しすぎてどうしたらいいのか迷ったくらいだった。


「これ…よ…読んでくださいませんか…!」


他所から見たら絶対告白とかなんかで誤解されても仕方がないほど非常に恥ずかしがっていた少女。私はその少女にもっと感謝の気持ちを伝えるべきだった。


だが私は決してその手紙を受け取らなかった。受け取らないところかあんなひどいことまで言って自分の手で少女の手から差し出した手紙を振り落としてしまった。

どうして何の関係もないファンの子にそんなひどいことまでやってしまったのかと言われると私自身もうまく答えられない。魔界のことが憎かったとはいえあの子とは何の関係もなかったのに。結局私の精神は何の成長も成し遂げなかったということだ。


それからあの子がどうなったかは知らない。だがあの子が泣いていたのは確かだった。

顔は覚えてない。私はあい以外の人にはあまり気を使わないから。まして魔界の子なんかには全く興味もなかった。

だが私はなぜかあの子の泣いている顔がとても痛かった。

その時、先走ってしまった私の誘致で狭い心は私のことを心から応援してくれる名も知らない少女を傷つけてしまった。


私は魔界の人間なんかは大嫌いだ。今もそのことに変わりはない。

私達は魔界によって「罪の一族」になり、森を奪われて、社会から排除されてきた。散々差別されて散々嫌われてきた私達。その上、私は魔界によって死にかけたこともあったからあいつらのことが嫌いになるのは当たり前のこと。

だがあの時の私はなぜか心底から自分の行動を後悔していた。


きっとありったけの勇気を集めて自分の気持ちを伝えたはずなのにただ自分の事情であんなひどいことしか言えなかった自分に嫌悪感まで感じてしまった。私は一体何がしたかったんだろう…


あいとあの鬼のことはそんな私の態度が招いた「神樹様」の罰だと思う。私は「神樹様」が成し遂げた平和と共存に害にしかできないことをずっと突っ張ってきたから罰当たりにも文句も言わない。

幸せそうだったあい、そしてあいと触れ合った唇に驚いていた鬼。私の負けは端から決められていたものだった。


昼に聞いてしまったあいからの一緒にはできないって話を聞いてようやく心を決めた。ごもっともな話だ。今までの私、そして今の私はあいにとって迷惑ばかりだったから。今思えば私自身もあまり私みたいな面倒でしつこくで性格も悪いやつとは組みたくないと思う。

今までずっと頑張ったな、あい。


最後の話し相手としてあの鬼のところのこの炎人の子を選んだことには本当に大した理由はない。私はただあいとの別れを覚悟したままあいと同じ空間にいるのが気まずかっただけだった。

この子が去年のあの子だとは全然思わなかった。私はあい以外の人の顔なんてあまり記憶に残したりする人間ではないから。

単なる気まぐれで珍しく誰かとちょっとだけ話したくなったからあの子と本の間話し合った。


普段なら魔界の人間とは絶対話さない私だったがあの時の私は本当に何もかも全部諦めた状態であった。だから今の自分の気持ちを全部打ち明けても困ることはない。私はもうこの学校から離れて一人で生きるつもりだから。


そう思っていた私だったが


「私は石川さんが好きでした。」


どうして私は知り合いでもない魔界の子から好きだったって言われているんだろう。

だが不思議に私はその話を聞いた時そんなに嫌な気分ではなかった。

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