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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第187話

pixivの方に毎回ありがたいコメントを書いてくださる方ができました。もっと応援してくださる皆様に楽しい作品でお礼しなきゃっと思って張り切っております。

毎日皆さんの応援で頑張っておりますので今年もどうぞよろしくお願いいたします。

いつもありがとうございます!

あいとは小さい頃からの付き合いだった。

真っ白くて澄み通る肌。水色の瞳。向こう側がまる見えるほど透明な白銀の長い髪の毛。幼い私から見たあいの初めての印象は世界で一番美しい人だと思っていたお袋と同じくらい可愛くてきれいな正真正銘のお姫様というものだった。実際あいは「黄金の塔」の中ではそれとほぼ同じ扱いをされていたから全く違うものではなかったかも知れないだろう。


「黄金の塔」の連中が私達「ゴーレム」を見捨てても最後まで私達の肩を持ってくれた唯一の味方だった「(ファントム)」。今私達が神界から追い出されず森で暮らせるようになったのも全部彼らが私達の身の安全を保証してくれたおかげだった。おやじはいつも彼らに感謝しながら彼らを信じて従うことを毎日私に言いつけたが私が最初からあいに好意的だったのではなかった。


あいの父親とうちのおやじがご友人だったゆえ、あいとは小さい頃からよく合ったが正直あいのことはあまり気に食わなかった。何で私達がこいつらの一族に頭を下げなければならないのか全く理解できなかった。だから私はあいから話を掛けられても


「話しかけるな。」


とか言って彼女を突っ放した。それでも諦めず私に近寄るあいのことを私はずっと変なやつだと思っていた。


あいはおやじから教わった私の唯一の趣味だった絵に結構興味が多かった。いつも


「こんちゃんは描くのがすごく上手なんだ!」


っと隣で私の描いている姿を感想したりしたあい。でも私はそんなあいがただひたすらうるさくてうざいからあいが家に来る日はたった一人で森の中で引きこもってしまった。

…そういえばもう「こんちゃん」とは呼んでくれないんだな。


友達になったのは偶然。その日はあいが森から迷子になった日だった。

家に遊びに来たあいはあいを避けて森に行っちゃった私の探すために大人には何も言わずたった一人で森に入ってしまった。

でもその森は森の道に慣れているゴーレムがなければ誰でも道を迷ってしまうほど深い場所。道も険しくて野生の動物もあるから何も分からない子供一人でうろうろするにはかなり危険なところだった。それに外より日も早く暮れて決して大人もなしに来られる場所ではなかった。


予想通りに森の中で迷子になってしまったあい。もし動物達から子供が一人で森に入ったって言われた私が探しに行かなかったなら本当に危なかったかも知れない。

あいを探したのは私が普段よく通っている川の川辺だった。そこで私は最初で最後にあいの泣いている顔を見られた。

転んだせいで足を捻ってしまったあい。この状態じゃもう歩けないだろうと判断した私はやむを得ずあいを背中に背負って下山することにした。


「水の矢」の正式後継者とかで呼ばれている割に細くて小さい体。私に比べたらよほどちっちゃかったあいは家に帰るまでにずっと私の背中からしくしく泣いていた。


「何で一人で来たのよ。」


ふとどうして一人で森に入ったのかその理由が聞きたくなった私は泣いていたあいにそう問いかけた。あまり仲がいいわけもないのにそんなことまでするあいのことにちょっとだけ興味ができちゃったかも知れない、おとなになった私はそう思う。


そんな私の質問にめそめそしながら


「だ…だって私…こんちゃんも、こんちゃんの絵、好きだから…」


っと答えるあい。多分その頃だと思う。私があいのために筆を執ったのは。


初めてだった。私を、私の絵をちゃんと見てくれる人はあいが初めてだった。

「黄金の塔」っというやからは世界政府を恐れて一度「神樹様」に逆らったことがある私達ゴーレムを徹底的に排除してきた。同じ一族だったくせに自分達の安易のため私達を排除する「黄金の塔」を私は許せなかった。だからそのリーダー各の霊も同じものだと思ってた。


だがあいは違った。あいは私のことを人格的な存在としてちゃんと向き合ってくれた。幼稚園の時はお袋が、小学校の時にはおやじが私の傍から離れてもあいだけはずっと傍から私を守ってくれた。森の火事の時もあいだけが私の話を聞いてくれた。社会に出て私が絵を続けられたのも全部あいのおかげ。もしあいがいなかったら私は一生あの森から出てこなかっただろう。

あいが私の気に入った理由は今も分からないんだがあいが私の唯一の友達で存在理由ということだけは否定できなかった。

子供の頃のあいの真似をしてずっと髪を伸ばしてきたのもそれが理由だった。


だが


「あい…?」


あの日、「灰島」のホテルからあの鬼と一緒に出てくるあいを見た瞬間、私の今まで築いてきた私の中のあいの存在があの一瞬でひっくり返っちまった。


何であの日、私はわざわざ市内の美術用品店まで行ってしまったのか。何で学校内でも十分備えられるのにわざわざ苦手な電車まで乗ってあそこまで行ってあんなものを見てしまったのか。

色んな後悔と考えで頭は混乱状態だったがあいを困らせたくなかったので一旦その場から離れることにした。きっと私がそこで二人のことを咎めたらあいの立場はすごく悪くなってしまうから。

だが家に帰った途端、私はかつて一度も感じたこともない吐き気を感じ、朝の食事まで全部吐き出してしまった。当然その翌日は休まざるを得なかった。


初めてだった。あんな幸せそうに笑っているあいは初めて見た。今まで私の絵の中のあいはたった一度もあんな風には笑ってくれなかったのに何でよりによって私が一番嫌いだった「鬼」の傍であんなに幸せそうに笑っているんだろう。そう思っているとこの何も感じない石みたいな胸が崩れそうに痛かった。

お袋が、おやじがいなくなる時もあんなに悲しくなかったのに何で私は柄でもない涙を見苦しく無様に垂らしているんだろう。

その同時に私の魔界への、特にあの鬼への憎む感情は著しく加速化され、今は魔界の名前がついている奴らは言葉も交わさないようになってしまった。


魔界の私の個展は全て取り消し、魔界からの依頼も全部断った。当然私の評判は日々落ちていったがそれでも構わなかった。なんとか抑えてきた私の今までの魔界への憎みと怒りは既に頂点に至っていた。

それ以来、私は全然絵に手を付けてなかった。何をやってもあの日のあいが頭から離れなかったから。あいが喜ばなければ絵なんてもうどうでもいいって思った私は2学期になったら全部辞めちゃおうって決めていた。


だがその前になんとしてもあの鬼とは決着を付けなければなりない。私をこんなに目に遭わせたあの鬼だけは許せなかった。

もうあれをぐちゃぐちゃにしてぶち殺さなきゃ気が済まない。そう思った私はあれに正式に決闘を申し込んだ。

確かにあいは私より強かったが例え私があれに掛けてきた喧嘩としても口を挟めないだろう。あいつだけなら今の私ならなんとか叩き殺せる。「灰島」の跡取り娘に手を出した報いとして私がこの世界から追い出されてもあいつだけは私の手でぶち殺したかった。それが例え私の全てを、あいとの関係や思い出までなくしてしまうことになってしまうとしても。

そうやって私は今、あいつの前に立っていた。


殺したかった。ずっと私の手でぶち殺したかった。何であいの相手がよりによって私が一番憎んでいた鬼だったのか、ただ悪い夢だったらっとずっと思ってた。

だがこの状態になってもあいの心配はあいつだけ。あいには既に見えていた。今の私なら決して負けることはないということを。だからあいつだけを心配している。これが現実だった。


あいの一番の理解者は私だったはずなのに。あいがあの「青葉海」と噛み合うのも、他の奴らから嫌われることも決して望んだことではなかったことも含めて私は全部分かっていた。

ただ家の方針や周りに流されただけの悲しい結果。だったら私があいの代わりに皆から嫌われようとした。

私なんかについてくるやつは誰もいないだろうと力で従わせれば済むこと。私は先頭に立ってあいの代わりに神界側の指揮を執った。


だがそんな私よりあいつの方があいのことをもっと知っている。私が知らないあいをあいつが知っている。私はそれが許せなかった。結局その事実が私をここまで追い詰めてしまった。そのことを思い出したら今でも頭が爆発してしまいそう。

ちょうど今はあのセシリアが不意の事故によって本来の機能をまともに遂行できない状況。なら私はこの機会に乗じてあいつをこの学校から追い出すことにした。


この決闘は私にとって諸刃の剣。私は自分の勝利を確信していてそれはあい自身もそう感じている。だがもし、万が一私があいつに返り討ちされてしまったらむしろ私の方があいとの関係を全部失われてしまう。

あれは鬼。かつてこの星の支配者として君臨し続けてきた魔界の最強最凶悪の種族。「影風」の「青鬼」ではなくても十分脅威的な「人食い」と呼ばれた種族。何が起こるかは私自身も知らないのは十分認める。

それでもやらなければならなかった。例え何もかも失われて虚ろな負け犬になってしまってもあいつだけはこの手でぶち殺さなければならなかった。


…だはずなのに…


「ただいま戻りました…!!」


何だ、お前は…


***


火村さんは思いっきりそう叫びました。爆発寸前だったすみれさんと石川さんの間に漂っていた緊張した空気を裂いて入り込んだ火村さんの叫び。そのとっさに起きたできことにこの私さえ言葉も失ってしまったのです。


「ほ…火村さん…!一体何を…!?」


いきなり登場してしまった火村さんに戸惑っていた全員。あれ…?中には確かに4人いるのに一人だけぼやけて見える人が…結界?


今の状況。私にはすみれさんと石川さんが何か重要な問題をおいて決闘するように見えましたがおそらくあそこの速水さんと何か関係があるはずです。そうでなければあの人は魔界側のすみれさんのところに現れることは断じてない…

ってあ…!も…もしかして…!まさかそういうことなんですか…!?ひょっとするとまさかあの速水さんがこっそり潜んであのすみれさんつ…付き合っていたとか…!?だ…だとしたらこれは今年一台ビッグニュースかも…!!

それなら話の辻褄が合います!あの速水さんと石川さんは私とみもりちゃんみたいな幼馴染だからきっと石川さんはそのことで速水さんの相手であるすみれさんと決闘しようとするのに違いないです!

でもあの二人がぶつかったらきっと両方大怪我してしまうかも知れないからそれを止めるために火村さんが介入して…!


「まつり…?」

「おい。部外者は立入禁止だったんじゃねぇのか。」


でも火村さんのその判断は少し軽率だったかも知れません。だって石川さん、先よりすごい顔になって怒っているんですもの…!


「申し訳ありません。結界は一箇所しか張ることができませんので。」


っと中からいきなり乱入した火村さんのことについて言い訳する声が聞こえましたが顔だけは見当たりませんでした。


「使えない野党だな。おい、きさま。」


うわぁ…!石川さん、めっちゃキレている…!顔だけはとんでもない美少女なのになんという悪人顔…ただでさえ体も大きいのに性格まで悪いからどう見ても悪者にしか見えないかも…!


気に食わないって顔ですみれさんから少し離れて火村さんの方に近づく石川さん。その威圧感に圧されたように思いっきり怯んでいる火村さんですが一歩も引き下がらない火村さんを見ているとむしろこっちがそわそわしちゃいます…!何があったら私が…!


「ここは立入禁止だ。さっさと消えろう。」


すごい顔で火村さんを見下している石川さん…!まるで去年のことを見ているような気分になるほどあの時と同じ光景かも…!っていうかあんなに近くで見ているのにあの人、火村さんのことを本当に思い出せないんですか!?な…なんかめっちゃ腹立ちますね、あの人…!

上等です…!あなたが火村さんに指一本でも触れた瞬間、私が思いっきり蹴飛ばしてあげますよ!あの方の娘さんと言っても手加減はしませんからね!


「あ…そ…その…!」


でもそんな石川さんの気迫にもちゃんと話を伝えようとしている火村さん!可哀相にぷるぷるしている様子を見ているとやはり怖いのは怖いと感じているようですね!


「おい、石川。まつりに手出すな。君の相手は私だ。」

「うるせぇ。」


もしもの時のために石川さんを元の位置に呼び戻そうとするすみれさん。だ…大丈夫ですよ、すみれさん!何があったら私がふっ飛ばしてあげますから…!

いつもと同じ乾燥した表情の彼女でしたがなんだか私には彼女のことが少し悲しそうに見えてしまいました。


あれは…槌なのかな…でもあんなに大きい槌って私初めてです…そういえばすみれさんって自分の専用の武器があるって言われたんですがまさかあれがその武器っというものでしょうか…


「点検の件だね?お疲れだったな、まつり。荒沼さん、後でサイン、お願いします。」

「かしこまりました。お疲れさまでした、火村様。」

「い…いいえ…!特にこれっと言った問題点はありませんでしたのでもう大丈夫です…!」


点検…お仕事の報告でしょうか。でも火村さんは何でいきなりそんなものを…っていうかやはりあそこの誰か自分に結界を張っていますね…名前の方もはっきりとは聞こえませんでした…


「済まないだがこのまま教室に戻ってくれ、まつり。それとできれば誰にでも言わないでね。」

「あ…は…はい!そ…それはもちろんですが…!」


なんとしても火村さんを帰したいと話しているすみれさんとは違って全然帰らない火村さん。彼女のおかげで


「もういいから早く帰れ…うざいんだよ…」


ますます苛ついた石川さんはいい加減帰らないとまじで怒っちゃうぞって顔になってしまいました。


だがそんな石川さんを、いや、そこの全員に向けた火村さんの次の言葉に皆頭でも打たれたような顔になってしばらく何も言えずぼーっとしてしましました。

なぜかと言うと火村さんはその爆発一歩前の彼女達に


「あ…あの…!こ…これって部長から仲良くなろうっと用意した席なんですよね…!?」


っと誰も予想できなかったぶっ飛んだ話をしてしまったからです。

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