第185話
あけましておめでとうございます!2022年になりました。皆様の全てのことがうまくいきますように心からお祈り申し上げます。
新年行事で遅れてしまって申し訳ありません。ご理解いただければ幸いでございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします!
いつもありがとうございます!
「石川金剛」。私の人生初めての憧れ。事実的で悲しみがずっしり染み込んでいる独特な画風で全世界を魅了させた天才画家少女。
彼女の絵は最高品として常に高額で取引されていつも偉い人、特にお嬢様達の間で大人気でした。需要に追いつけなくて今注文しても多分私が卒業するまでは描いてもらえないだろう。元々0が何個も付くほどとんでもなく高いものだから私のお小遣いなんかでは夢のまた夢だからとっくに昔潔く諦めちゃいましたがね。
とにかくあの「プラチナ皇室」のビクトリア様さえ前から何度もお願いになったほど石川さんの絵が全世界から大人気でした。
大会からいくつの賞を取ってこの学校に芸術特待生として入学したとはいえ私の絵はまだそのレベルまでには至らない。それほどあの人と私みたいな凡人の間には見えない大きな差が存在しました。
私は絵を書くのが楽しかったです。例え石川さんみたいにすごい人にはなれなくても私は自分の手で自分の気持ちをいっぱい表せる絵を書くのが大好き。私はあまり主張が強いタイプの人ではなかったからその分、自分の気持ちをキャンバスの上にいっぱい描き出しました。楽しい気持ち、悲しい気持ち、幸せな気持ち、全部自分の手でだけはちゃんと話せる。だから私は絵が大好きでした。
そんな私が石川さんのことを知ったのは中学校の頃。ちょうど絵を書くのを止めようとしていた頃でした。
あの頃の私は絵から随分距離を取っていました。いつの間にか絵を書くのがプレッシャーになって楽しくなくなってしまった私はもういいんじゃないかなって描くのを止めたいって思っていました。
だが偶然見掛けになった石川さんの絵を見た瞬間、冷めていた私の絵への情熱が蘇りました。
初めて見た彼女の絵は椅子に座っている真っ白な長い髪の毛の少女の肖像画。体が透き通って見えるほど透明な白銀の髪の毛の少女は威厳に溢れる強い目で絵の向こうから私を眺めてしました。
見ている外側をむしろ絵の中から眺めている視線で変えてしまうほどの生命力。そして胸がズキンとする事実的な憂愁に浸っている表情。その絵を見た瞬間、私はこう思いました。「いつか私もこんな絵が書きたい」っと。
でも石川さんは私が思ったよりずっと悲しくて寂しい人でした。彼女は「神樹様」に歯向かった罰としてこの世界から拒まれていた「ゴーレム」。少し時代が変わっておかげで社会は少しずつ彼女達にも興味を持ってくれましたが未だにゴーレムは「罪の種族」として少なくない差別を受けられています。
そんなゴーレムのためにたった一人で死ぬ気で頑張ってきた石川さん。もし彼女の活躍がなかったらゴーレム達は今も「罪の種族」として社会からずっと隔離されていたはずでしょう。
私は石川さんにあんな大きな悲しみが石川さんの胸にあったからこそあんな悲しくて美しい絵が書くことができたと思います。
幼い頃、家の事情でご両親と別れてしまった石川さんはその頃、ゴーレムの森に起きた大火事のせいで命を落としかけました。
幸い石川さんは無事に森から抜けて命の危機から逃れましたが森は半分くらい全焼、相当数の動物達がその生命を失い、ゴーレムの中にも数少なくない死傷者が出ました。
夜遅い時間に起きた火事である同時にあの日は空気が乾燥して強い風まで吹いてしまったせいで「黄金の塔」と世界政府から出動した消防隊がどんなに頑張っても火事はなかなか収まらなかったんです。
あの時出動した私のお父さんはこう話しました。
「生まれて初めて見た地獄だった。」
っと。
森は死に満ちて行く道もなかった。周りは黒煙と炎に飲み込まれて近づくのもままならなかった。何より今でも忘れられない一番苦しかったのは普段あまり声も出さないゴーレム達の耳を張り裂けそうな死の悲鳴だったっと…
あの時、石川さんは「黄金の塔」の方にこう主張したそうです。「頭に角が生えている魔界の奴らが森に火をつけた」っと。
角は魔界の人達だけの所有物ではありません。神界の「ユニコーン」や「虫の一族」みたいに角を持っている種族はたくさんあります。でも石川さんはなぜかずっと魔界の人の仕業だと主張しましたそうです。
ゴーレムは昔から魔界の人達と仲が悪かったです。特に「鬼」の「灰島」にはテロまで行ってしまったほど鬼とは悪縁の関係です。
神界に「灰島」が進出したことでゴーレム達が住んでいた森は大部が発展の礎として破壊されてしまいました。それをなんとか止めたかった彼らは何度も世界政府や「黄金の塔」に自分達の生活の保障を要請しましたが「黄金の塔」は神界の発展のために「灰島」の協力は必要不可欠だと判断してそれを受け入れなかったです。
結局それがきっかけになって「灰島」の工場と世界政府の神社を襲撃、たくさんの死傷者を出してしまいました。
世界政府は直ちに平和維持軍を派遣、工場に立てこもってたゴーレムのテロはあっという間に鎮圧されました。
その後、ゴーレムは世界政府から指定した森に追い出されてずっと「罪の種族」として蔑視されてきました。
そんな理由で「罪の種族」として否定されたゴーレムの石川さんの話には誰も耳を傾けてくれなかったです。特に「黄金の塔」はせっかく成り立った世界政府との協力関係が壊れるのを恐れて石川さんの話を聞き流してしまったようです。
何より犯人を見たと思われるのはあの石川さんだけだったからその話はますます信頼されなかったです。
それ以来、石川さんが「黄金の塔」や世界政府のことが大嫌いになったのはあえて言うまでもありません。真実はともかくひどい魔界嫌いになったのも当然なことでした。
だから私の手紙を振り落とした石川さんのことも十分理解できます。私のあの人への大好きな気持ちが拒まれたのも十分理解します。あの人にはそれほどの痛みがありますから。あの時はとても悲しくて胸が張り裂けそうだったんですがそれでも私は石川さんが私の憧れというのは否定しません。
あの人は昔も、今でも私だけの世界一です。
そんな石川さんが…私だけの世界一で一番かっこいい石川さんが…
「ぶっ殺してやる。このクソ鬼目。」
何でうちの部長と…
「それでは始めさせていただきます。「石川金剛」様、及び「灰島菫」様の退学を賭けた一本勝負。」
何でこんなことに…!
***
「みもりちゃん、すっごく喜んでくれましたね…」
私と一緒に歌って欲しい…か。自分が考えてもワガママすぎる…でも…
「うん!喜んで!」
みもりちゃん…本当に嬉しそうだったんです…あんなとびっきりの笑顔、久しぶりかも…
やばい…本当に天使じゃないですか、あなたという人は…なんかすごくドキドキしてきちゃったような気分…
「みもりちゃん…すごい汗でしたね…」
蒸れ溜まってむわっとしたみもりちゃんの腋…鼻の先っぽがしびれるほど刺激的でとろけそうな匂いでしたね…
って何やってたんですか、ゆり…!みもりちゃんがあんなに苦しんでいたのにあなたっという人は…!
でもみもりちゃん…そんな私を見ても
「あはは…程々にね…?」
っといつもみたいにそっと笑ってくれただけでしたね…そういえばなんだかんだ言っても結局私の性癖やら趣味やら全部甘やかしてくれましたね、みもりちゃん…そういうの、普通はすごく引くはずなのに…
見たい…やっぱりみもりちゃんの笑顔がもっと見たいです…!みもりちゃんにはゆっくり休んでくださいっと言ったからこのまま教室へ向かうつもりだったんですが先のみもりちゃんから見せてくれた笑顔がどうしてももう一度見たいです…!授業前まであまり時間がありませんが全力で走ったらギリギリで間に合う…って
「火村さん?」
あそこに走っているのは隣の黒木さんと同じクラスの火村さんですね。
担任の「火村紅丸」先生の娘さんで去年私とみもりちゃんが石川さんの展覧会で合った「炎人」のちっちゃくて純朴な女の子。「Vermilion」所属で美術が得意な彼女はみもりちゃんみたいなあまり目立つタイプではありませんがそのゆるくて多情多感な性格で結構人気者です。それに加えて普段は隠しているんですが見せた時はかなりの脅威を感じられるほど隠れ巨乳だし。まあ、本人はちょっと恥ずかしいって思っているんですが見れば見るほどみもりちゃんと似通っているんですね。
それにしてもどうしてあんに焦っているんでしょう。なんだかすごく急いでいるような…私のことも気づかないくらい…どこか事故でも起きて出動しているんでしょうか。その割に火村さん以外の「Vermilion」の部員達の姿がどこでも見当たらないんですが…
普段あまり他人のことに興味を持たない私でしたがその時、私はふと火村さんのその不安な表情から何か嫌な予感を感じてしまいました。生徒会すら把握してない何かがこの学校の裏からこっそり行っているかも知れない。
それが例えみもりちゃんと私のことに直接関係がなくてもほっとおけばいずれこの学校を脅かすもう一つの要素になってしまい、ゆくゆくみもりちゃんのアイドル活動の邪魔になるかも知れない。
こう思っている私のことをもしみもりちゃんが見たらきっと
「やっぱりゆりちゃんは優しんだな。」
っと思うかも知れませんが私はただみもりちゃんの楽しい学校生活を脅かす全ての要因を排除しておきたいだけです。
私はちょっとも優しくではありません。私はただみもりちゃんのために生きているだけですから。
根拠は全くないんですが私はなぜかこのまま火村さんの後を追わなければなりないと感じました。例え私が案じているそういう類のものではなくてももし私が力になれることがありましたらぜひお手伝いしたいです。火村さんだってもはや私の親友ですから。
そう思った私はこのまま彼女を後をつけることにしました。何かすごく心配していたようで私がおっていることも気づかず走っていた火村さんの足が向いた場所は学校の外側にある「百花繚乱」の訓練場でした。
本館とは結構離れていて「百花繚乱」以外の生徒は殆どここに来ることなんてありませんでしたが何で火村さんがここに…
比較的に自由奔放な「Scum」とは違って「百花繚乱」の厳しい規律は既に折り紙付きです。上下関係がはっきりして厳格で強硬な彼女達を見ているとまるで軍隊を見ているような気分まで湧いてします。実際「百花繚乱」の殆どは皆名高い軍人の家系ですし。でも団長のゆうなさんはその軍隊みたいな雰囲気があまり好きじゃないようです。
私もお母さんが昔の陸軍の特殊部隊でしたので「百花繚乱」からの勧誘はありましたが私はそういうびりびりした空気は結構苦手だったので断りました。何よりそこに入ったらみもりちゃんの時間が減ってしまうので受け入れる理由は全くありませんでした。
でも「百花繚乱」は世界的にも認められている組織。「百花繚乱」の一員だったという事実だけで皆からは尊敬されるほどあそこで活動できるのはとても名誉なことです。世界政府の就職にもめっちゃ有利ですし入りたいっと希望している人はいくらでもあります。
昔は魔界の人もいたと聞きましたが何世代前からあそこはずっと神界の人だけでした。この期に及んではもう魔界のことを敵だと思っているからますます魔界の火村さんがここまで来る理由はないでしょう。
なのに火村さんはこんなところに何の用で…
「気づかないようにそっと…」
っとドアの後ろにそろっと顔を出した私は思わずつい最近合ったことがあった「影」の知り合いの方のことを思い出してしまいました。
本来お互いと競い合って自分の技術を磨き上げるべきだった「百花繚乱」の訓練場には私が知っているあの方とそっくりの空気を持っている女が凄まじい殺気を吹き出しながら立っていました。
みもりちゃんは彼女の目をすごく怖がっていました。彼女の目は自分以外の全てを見下しているような目みたいって。まるで去年のあのあま…じゃなくみもりちゃんのお祖母さんと同じ目だとみもりちゃんはそう言いました。
だが今の彼女は何か違いました。彼女はただひたすら徹底的にぶちのめしてやるっと言っているような殺気に満ちた凄まじい目で目の前の相手を睨んでいるだけでした。
私が知っている彼女の父親からも見たこともない闘争の目。私はその目が向いてところが火村さんが属している「Vermilion」の部長である「手芸部」のすみれさんだったということを知ってもう一度驚いてしまいました。
「い…一体どういうことです…!?」




