第181話
結局今年は就職できずに済んでしまいましたね。仕方ありませんがまた仕切り直してまた頑張るしかないと思います。
いつもありがとうございます!
「じゃあ、何かあったら呼べよ。すぐ来るから。」
「ありがとうございます…」
「ゆっくり休んでおけよ」っと言った後すぐ部屋を出す舎監さん…結局朝からずっとつきっきりで看病してもらっちゃったんですね…
意外ですたね…まさかあの舎監さんがお粥まで作ってくださるとは…なんか「フーフー」もしたかったようでしたが
「あ…そういえば私、タバコ臭いだったんだ…」
っとすごく申し訳ないって顔で自分で食べてくれって言いました…
見た目はちょっと怖いんですけどやっぱりあのゆうきさんがお頼りになって従っているくらいとても優しい人なんですね、うちの舎監さんって。
普段あまり風邪とか引きやすいタイプってわけではありませんがなんか昨日の夜、部屋に帰った直後から急に体調が悪くなっちゃって今日は学校を休むことにしました。
クリスちゃんと先輩達の方には連絡しておいたから今日も同好会は休んでしまうことになるでしょう…もうすぐお披露目会なのにこんな風に休んでもいいのかなって心配する気持ちもありますが
「ダメですよ、みもりちゃん!健康第一ですから!」
っとビシッと言ってしまう先輩に何も言えませんでした。
でも皆にはできればゆりちゃんには言わないで欲しいって伝えておきました。もちろん別に隠さなくてもいいって話もつけておきましたから。
今のゆりちゃん、私とのこと以外にも色々大変ですから余計な心配は掛けたくなくて。もちろん午後に教室に戻ったら自然に分かることなんですが少しは自分の務めに集中して欲しいって思って…
それに…
「うう…」
昨日あんなことがあったばかりに顔を合わせるのはやっぱり恥ずかしいです…!
ゆうきさんは多分本人も自分の初めてが私だったことを喜んで受け入れるはずだと言いましたがそれを差し置いてもやっぱりちょっと恥ずかしいですよ…!勢いだったとはいえまさか幼馴染の女の子とのファーストキスだなんて…!
「ゆりちゃん…変だと思うのかな…」
今もそわそわざわめく胸。でも仕方ないですよ…私だって初めてでしたから…こんな気持ちで顔合わせられるわけありませんよ…
きっと今まで何度も触れ合ったゆりちゃんの唇なのに自分からあんな風に接したことはありませんでした。癖になっちゃったらどうしようってちょっと心配になるほどむにむにしてすごく柔らかくて温かくて心地よかった感触…ほんのり甘かった香りは今も私の唇にそっと残っていて今も感じられます…
「あんなゆりちゃん、初めて見た…」
初々しくてびっくりした猫みたいに驚いた顔…そんな顔でゆりちゃんはしばらく私のことをぼーっと見ていました。
うう…何だよ…また思い出しちゃったせいで恥ずかしくなっちゃったじゃん…やっぱり謝った方がいいかな…
「そういえば昨日ルルさんと何話したっけ…」
ふと思い出す昨夜のルルさんのこと。でもなぜかその内容までは思い出せない…
…確か一緒にカフェに行って少しお喋りしたよね?なんか色々質問みたいなものを聞かれた気もするんだけどルルさん、私から何か聞きたかったのでもあったのかな…?
でもなんかルルさんと話し合っている間に急に気分が悪くなっちゃって…
「うう…」
でも何の話をしたのか全く思い出せない…きっと何か重要な話だったような気がするんだけど…
精一杯昨夜のことを思い出そうとする私でしたが結局それが何だったのかは分かりませんでした。
でもその時の私は自分がそのことについて思い出せなかったのが決して体調不良が原因ではなかったというのをまだ全然知らなかったんです。
「静かだな…」
朝目が覚めたらいつも目の前で私のことを見下ろしていた天井。その中を漂っている不慣れの静かさだけが今の私の唯一の暇つぶしでした。
いつもなら授業中のはずなのにこうやって一人で寮にいるのは初めてかも。いつも傍にいてくれたゆりちゃんもいない空っぽの部屋の私はそうやってたった一人だけの時間を思う存分満喫していました。
「さ…寂しい…」
なにこれ…体は痛いし、周りも静かすぎて思ったよりずっと寂しい…最近周りにずっと先輩達や友達に囲まれて賑わっていたからますますそう感じてしまう…放課後にはクリスちゃんも来てくれるそうで多分先輩達も、ゆりちゃんも来てくれるはずですがそれまでは私たった一人だけ…ってどんだけ寂しがり屋さんだよ、私って!
「おまけに全然眠れないし…」
先までずっと爆睡中でしたからそれも当然でしょうか…そもそもそんなにきつい状態でもなかったし程よく汗もかいたから朝起きたばかりより大分良くなったのでもし誰か来てくれたらちょっとだけでも話し合いたいなって思いまし…
「みもりちゃん…?」
て?
暇で暇でどうすればいいのか悩んでいた私はふと部屋のドアから私の名前を呼ぶ女の子の声にふと考え事を止めてしまう私。
でもこの声はあえて推測しなくても十分分かるほどすごく馴染む女の子の声でした。何せよ私が今までの人生の中で一番多く聞いてきた声でしたから。
私はいきなり登場したその聞き慣れた声の持ち主の名前を
「ゆ…ゆりちゃん…!?どうして…!?」
布団の中で潜り込んで小さく呟いてしまいました。
***
「…さすがにこれ以上隠すのも…」
「そうですね…」
ぎこちなく笑ってしまう黒木さん。ちょうど今A館の廊下でばったり出くわしてしまった緑山さんに虹森さんのことを話してしまった私達。教室に戻ったらすぐ分かることですし昼休みの間でも様子を見に行って欲しいってつもり虹森さんの体調のことについて話しましたが…
「み…みもりちゃんが風邪…?」
それはまるでこの世の終わりでも見たようなものすごい顔でした…
「し…心配しなくてもいいですから!部長もついているし!それにちょいとした風邪気味のようですから!」
「で…でも…!」
っとなんとか安心させようとした黒木さんでしたがあの時の心配ゲージMaxの緑山さんに私達の話は全然聞こえなかったんです。
結局その道で緑山さんは虹森さんのところへ行ってしまい、私達はなんか余計なことをしちゃったのかなってそわそわしている状態になったというわけです…
「でもこのままほっておくわけにもいきませんから…」
なら今のうちに少しだけでも虹森さんの様子を見に行かせよう、そう思って私達はできるだけ緑山さんには自分のことを話さないで欲しいっと言った伝言のことまで破って本当のことを伝えました。
予想通りすごく心配した緑山さんでしたが私と黒木さんはそれでもそれが一番いいと思います。
虹森さんは緑山さんから自分のことをすっかり忘れてしまったって言いましたがあの心配する顔は決して嘘ではなかった。
私と黒木さんは相変わらず緑山さんは虹森さんのことを大切にしているのをその顔から覗くことができました。
「じゃあ、私はこのまま消防施設の点検に向かいますね。」
「あ、はい。お疲れさまです、まつりちゃん。」
玄関から黒木さんとそう別れた後、また館に戻った私はまず今朝「陽炎」の方から頼まれた施設の点検に向かうことにしました。
「「陽炎」か…」
そういえばあまり合ったことはありませんね、そちらの方って。
「頭領」の方も含めて「陽炎」の人達は殆どが自分の身分を隠して一般生徒として生活しているんですし、生徒会主管の会議にも顔を出しませんから。でもなんか皆仮面を被っているらしいって噂はありますから一応ちゃんと学校にはいるらしいです。
「うう…でも…」
やっぱりなんか緊張しますね…分からないから怖いって話はよく言われていましたがまさにこういう時のための話かも…
別に怖いってわけではありませんが何しろあの「陽炎」って部活は謎が過ぎますからこうなるのも無理じゃないかも知れませんね。
でも「Vermilion」の一員としてしっかり成し遂げて見せますから!
「ここか…」
っと思ってたらいつの間にか「選挙管理委員会室」…こんなに足早かったっけ、私…
「すみませんー「Vermilion」の「火村祭」と申します。消防施設の点検のことで参りました。」
軽くドアを叩いて自分の存在を知らせる私の声に
「はい。」
そっと開けられる「選挙管理委員会室」のドア。な…なんかすごく緊張しますね…ここってあの生徒会長さえ「陽炎」の頭領の許可がない限り勝手に入れないって聞きましたから…私達の方からも部長以外は誰も来たことないからなんだか禁断の場所に足を踏み入れたようなちょっぴりスリルのある気分です…
「お忙しいところお越しいただき誠にありがとうございます、火村様。灰島様からはかねがね火村様のお話を伺っております。私は「菖蒲」。ここ「陽炎」の一員として働かせて頂いております。以後よろしくお願いいたします。」
「あ…!は…はい!こちらこそ…!」
ドアを開けて私を中に入れてくれたのは部長並の高い背の大きい女性の方。180センチくらいかな…大きいな…
それに噂の通りに本当に仮面を被っていますね…声だって何らかの機会なんかで変換していて見分けがつかないんですがリボンの色から見ると多分私と同じく1年生…こんな大きいな子、いたのかな…
「本日わざわざお越しいただいたのはお手数ですがこちらの施設の点検をお願い頂きたいと思いましてでございます。どうぞ、お中へ。」
「あ…!はい…!」
うわぁ…なんかすごい威圧感…同じ学校の生徒だから危険なことはないと思いますがそうでなかったら危うく逃げたくなるところって感じかも…
「既にご存知だと思われるのですがこちらのことは他言無用でお願いいたします。「陽炎」は「絶対中立」。立会人として決して外部から振り回せれるてはいけない組織でございますので。」
「あ、はい!」
他言無用って…わざわざこんなことまで言っちゃうんですか、普通…?
「とはいえ決して疚しいことをやっているわけではありませんのでご安心ください。我々もまた「百花繚乱」や「Vermilion」のように一般の生徒よりほんの少しだけ強い生徒が集めているだけの普通の部活でございますので。」
「そ…そうですか?あはは…そうですよね?」
だ…ダメです!私だって「Vermilion」の消防官だから!お父さんの名に恥をかかせるわけにはいきません!ここはやっぱり部長みたいにビシッと…!
それにしてもこの廊下、どこまで続くのかな…なんかちょっと暗くて変な音も…うう…こ…怖くない…!怖くないから…!
「お連れいたしました。「Vermilion」の「火村祭」様でございます。」
「ご苦労だったな。」
長い廊下を通ってやっとたどり着いた「陽炎」の執務室。よし…ここはしっかり挨拶を…!
っと思って「陽炎」の皆さんに向かったその瞬間、
「いっちゃう…!いっちゃうよ、なな…!」
「わ…わたくしももう…!」
私はなぜこの部活が今までずっと影の中でこっそり運営されていたのかを分かってしました。
「……え?」
なに…これ…?
「もういっかい…もういっかいやろうよ、なな…」
何で…
「ええ…?でももうすぐお昼休みが終わっちゃうんですわよ…?」
何で…?
「ちょっとぐらい遅れても大丈夫だから…ねぇ…」
「しょ…しょうがないんですわね…一回だけですわよ…?」
何であの副会長とチア部の部長さんが画面の向こうから全裸になって体を交わっているんですか!?!?!?
「なるほど。夜は確かに副会長の方がリードするが昼間の間は中黄様の方が優勢。」
「それにあれ程の量。ここ数日随分溜まっていたと思われます。」
そして何でその副会長とチア部部長の情事を皆で大きいテレビで感想しているんですか!?!?!?
「な…な…なに、これ…」
だ…だから部長はここのことを何も言わなかったんですね…!こんな異常的な光景、ろくな精神では絶対言えませんから…!ってうわぁ…!?ま…まさかそんなもの、中に挿れちゃうんですか!?
「あ。やっぱり固まっちゃった。」
「だから最初から部長の方に頼めばいいって話したんじゃない。」
あまりにも衝撃的な光景に言葉も失ってしまった私を見てひそひそ話している「陽炎」の皆さん。同じ仮面を被っている女の子達が一斉に私を見ているのも相当の恐怖でしたがそれ以上何でこんなことを皆でまるで映画でも感想しているように興味津々して見ているのかっという疑問の方がもっと理解できなかった私でした…
それにあのアングル…!間違いない…!あれ、絶対上からの角度ですよね!?まさかあれ、盗撮ということですか!?
色々聞きたいことはたくさんありますが盗撮は明らかな犯罪なのです…!「Vermilion」として見逃すわけには…!
「いいえ、盗撮ではございません。これはお互いの合意によって撮影させて頂きました。副会長と中黄様はこの学校の少女達の恋愛の自由のために我々にご協力くださっております。今我々は見ているあの生放送のことが外に漏れることは断じてありませんのでご安心ください。こちらの部屋には頭領からの結界が張られて我々「陽炎」の人間以外は誰も近づけません。」
結界!?そこまでするんですか、普通!?っていうか生放送!?じゃあ、今副会長とチア部の部長は…!?
「はい。この隣の部屋からお楽しみにしております。」
っということは先廊下から聞こえたあの音って…!?えええ…!?まじですか!?!?
その日、私はお父さんも知らないこの学校の重大な秘密の一つに触れてしまいました。




