第180話
就職の件で少し遅くなってしまって申し訳ありません。まだ結果が出ていないので少し焦っています。小説の方もずっと書きたいんですがやはり金銭的な問題の方も考えなければなりませんのでとても悩ましいです。
いつもありがとうございます!
「ド…ドアくらいはちゃんと閉めてからやってくだませ…一応女の子ですから…」
「はい…すみません…」
怒られました。
「全く…何度もノックしても反応がないから何かあったっと思いましたわよ。勝手に入って見ちゃったのは申し訳ありませんがとにかく日頃の振る舞いにも気をつけるべきですわ。」
「はい…」
「でもまあ…むしろこういうことで良かったと少しは思いますけど…」
なんだかほっとしたような顔の副会長。呼んでも中からの反応がなかった私のことをよほど心配していたようです。少し大げさですがもし自殺でもしちゃったのではないかっと思っていたのではないかと…
すみません…なんかみもりちゃんのことで少し夢中になっちゃって…
「もういいんですから。それにしても何かいいことでもあったようですわね。」
「そ…そう見えますか…?」
っと私の表情を読み取った副会長の話に少し恥ずかしそうな気分になってしまう私。そ…そんなにバレバレなんでしょうか、今の私って…
「普段そういう顔、絶対見せませんから。悪い意味というわけではありませんわ。ただ今の方が女の子らしくてとてもいい感じということですの。」
「女の子らしい…」
今の私は副会長から見ると本当に女の子らしく見えるのでしょうか…
私は中学校以来、あまり肌を出す服を着るのを控えていました。みもりちゃんのために「女」としての自分を捨てた私はとても年頃の女の子とは思われないほどの体になってしまいました。
破れて裂けまくった傷だらけの体はまるで長年風化されてきた巨大な岩のように決して嘘でも女の子らしいとは言えるものではありませんでした。真っ白くて柔らかくてすべすべなみもりちゃんに比べたら私の体なんてまさに「怪物」と呼ぶべきのそういうものでした。
だから私はみもりちゃんを除いた人の前から自分の肌を出すことはうっかりでもしませんでした。みもりちゃんの前でさえ裸を全部丸出すのは不可能でしたから中3の以来私の裸を見た人は誰も存在しませんでした。
いつか自然に治ると思ってずっと隠していたせいで症状はどんどん悪化され、やがて精神的な問題までもたらしてしまいました。
でもそんな私を昔と変わりもなくいつも自分の世界一の女の子と思ってくれたのが私のみもりちゃん。あの子は誰よりも私の頑張りを分かってくれた私の世界一の大切な人でした。
みもりちゃんがずっと私の傍にいてくれたおかげで今の自分がいる、それだけは今もちゃんと覚えています。
「正直言うとわたくしは虹森さんにはクリスを結ばせてあげたかったんですわ。」
ふとみもりちゃんのことを思っていた私に突然黒木さんのことを言及する副会長。結ばせてあげたかったって…それは私にも初耳のことでした。
「決してあなたのことが嫌いっというわけではありませんでしたわ。わたくしにとってあの子だってあの人と同じく大切な妹だから純粋にあの子を応援したかった、ただそれだけですの。」
多分こんな話をしている間にも副会長は気づいているはずです。私という存在がみもりちゃんにある限り決して黒木さんの気持ちは報われないということを。私達にはいくら時間に経ってもお互いのことしかないということを。
でもこうしている間にも副会長はただひたすら私のことを心配しているだけでした。決してあの子や黒木さんを煽って近づけさせようとはしない。
私はふとその理由がどうしても聞きたくなってしまいました。
「大した理由はありませんの。ただそれでもやはり虹森さんにはあなたが、あなたには虹森さんが必要だと私達がそう思っているだけ。結局あの子も、わたくしも今もずっと「運命の赤い糸」というのを信じている普通な女の子に過ぎなかったということですわ。これ以上勝手に口を挟むのはわたくしのただのわがままに過ぎますから。」
っと少し寂しい笑みを流してしまう副会長。
…ずるいですね、黒木さんって。どこまでお人好しなんですか、あなたという人は…
「わたくしは全力であなたのことを元通りに取り戻すつもりですの。あなたはあの魔界の姫様が認めた唯一の恋敵。つまりライバルなんですの。あの子のためでも必ず取り戻してみせますわ。」
「ライバル…」
本来なら私の身分では黒木さんに話をかけることさえ許されないことでした。あの人は「魔界王家」の「ファラオ」。つまりこの世界で最も高貴で偉い人ということです。父が世界政府から働いているとしても決してその娘の私ごときが言葉を交えてはいけない高い人、副会長はそういう人が私を認めてくれたっと話していました。
あなたはいつもこんな風に私のことを励ましてくれますね、黒木さん…本当に…
「虹森さん、本当に心配していましたから。あの人はあなたの大切なお嫁さんなのではありませんの?ならちゃんと虹森さんのことを笑顔にさせなきゃですわ。」
「みもりちゃんを笑顔に…」
再び思い浮かぶみもりちゃんの顔。いつも私を向けてただひたすら優しく笑ってくれる黒い髪の毛の女の子。そしてかつて私はこの世で最も愛していた私の大切な人。
でも今の私にはいつも切ない笑みだけを見せてしまう。私はなんだかその悲しそうな表情のみもりちゃんを笑わせたくなってきました。
「みもりちゃん…」
そしてもう一度だけ確かめたいです。この唇に残っている熱い気持ちを。空っぽの私の心から芽生えたこの鮮やかなときめきをもう一度確かめたいです…!
「焦らなくても大丈夫ですから。虹森さんはいつまでも待ってくれますから。」
っと私の手を握って励ましてくださる副会長。
いつもかな先輩以外は興味もないっと振る舞っている副会長ですがやはりあなたは優しい人なんです。あの会長が副会長として積極的に推薦したのもうなずきます。
ありがとうございます、副会長…やはりあなたは私達のリーダーに値する人です…
「さあ、そう決まったら今日のこと、よろしければ少しだけ聞かせてくださいませんか。もちろん話したくないのならお話しなくても結構ですわ。」
っと今日のことを少し聞きたそうな顔の副会長。そういえば今日のあのチケット、みもりちゃんがかな先輩からもらったことでしたよね。っといいますと本来ならそれは副会長とかな先輩から使われるべきだったのもの。最近あまり先輩と一緒にできなかったからいい機会だったかも知れないのにそれを私達に…参りましたね、本当…
「いいえ。おかげさまでとても楽しい時間でしたから。」
そうやって私は明日の学校もすっかり忘れて副会長に夜遅くまで間付き合って頂きました。
***
はじめまして。私は「炎人」の「火村祭」と申します。「黒木クリス」さんのクラスメートで「Vermilion」の一員として毎日自分を磨いておりますが同じ学校の教師として働いている一流の火消しのお父さんに比べたらまだまだ青臭いひよこ消防官です。
「Vermilion」に入ったのは本当にお父さんの推薦のだけでしたが私は自分の仕事を誇らしく思っています。
特技は美術、特に絵を書くのが大好きです。小さし頃から絵を書くのが好きでして将来の夢だって絵の関連の仕事がしたいと思います。
いくつの賞ももらったし絵には結構自身のある私なんですがこんな私でも絵を書くのを諦めたくなった時がありました。
子供の時からずっとやっていたのにいつの間にか絵を書くのが楽しくなくなってしまった時、私はこれ以上は無理だと思ってもういいんじゃないかなってしばらく絵から距離を取ってしまいました。
そんな迷いの時出会ったのがあの石川さんの絵でした。
世界的な超有名アーティスト「石川金剛」。世界政府から指定された1級危険区域の「石の森」出身の石川さんの絵は石川さんだけが表現できる事実的で胸がズキッと痛むほどの寂しさと壮大な威厳がよく溶け込んでいて特にお嬢様達や偉い方々に大人気でした。
どんな絵を見ても「悲しく美しい」と評価されている石川さんの絵はどれもすごく高額のもので私のお小遣いなんかではとてもとても…
あ、でも前にお父さんがいた「世界政府消防庁本部庁舎」に石川さんの絵が1枚寄贈されているので時々見に行くんです。
石川さんの絵を見た瞬間、私はその絵から流れ込む寂しさについ涙まで流してしまったのです。なんと美しい絵なんだろうっと…ただ椅子に座っている真っ白な長い髪の毛の少女を描いただけなのにまるで少女の悲しい気持ちが伝わってくるような生彩。華やかで派手な絵もないのにこんなに人々の心を掴み取れるなんて、その時思わずつい敗北感まで感じてしまう私はその同時にこう思いました。
「私もこんな人々を感動させる絵が書きたい」って。
それからまた筆を取った私は屈指の芸術文化系の名門でありあの石川さんが第3女子校に芸術特待生として入学、こうやって毎日楽しい学校生活を送ることになりました。
「おはようございます、まつりちゃん。」
「あ、黒木さん。おはようございます。」
っと教室に入った私に初めて挨拶してくれたのは友人の「黒木クリス」さん。
私のクラスメートでいつも仲良くしてくれる「Scum」所属の私の大切なお友達なんです。ご存知のように黒木さんは「ファラオ」と呼ばれる魔界の「夢魔」の王族出身で私と同じく芸術特待生なんですが2年になったら音楽特待生の黒木さんは音楽科の方に行く予定なので私はそのことについて少し寂しい気持ちも感じています。
でも学校ではいつでも会えるし部屋だってすぐ近くですからそんなに悲しいとは思いません。
「今日も会長のことで授業が終わったらすぐ病院へ行くんですか?」
っと聞く私に
「いえいえ。今日はみもりちゃんのお見舞いです。」
少し心配そうな顔で隣のクラスの虹森さんのことを案ずる黒木さんでした。
「虹森美森」。黒木さんが子供の頃からずっと大好きだったご当地アイドル、いわゆる「ロコドル」だった女の子。
去年石川さんのことで傷ついてしまった初対面の私を精一杯慰めてくれた虹森さんのことを黒木さんのご紹介で知り合った時は本当にびっくりしました。それ以来私ともずっと仲良くしてくれる優しい虹森さんは黒木さんと同じく私の大切なお友達です。
「虹森さん、どこか具合とか悪いんですか?」
でも虹森さんのお見舞いだなんて…確かに虹森さんって緑山さんの様子が少し変わっていてそれで悩んでいましたから。それからあまり目立つ進展はなかったんでしょうか…なんか力になってあげられなかったようで申し訳ない気持ちです…
そのせいでどこか体調でも崩してしまったんでしょうか…まさかあんなに元気だった虹森さんが学校にまで来られなくなったなんて…
「そんなに心配しなくてもいいらしいです。ちょっとした軽い風邪気味のようですし放課後までは部長が見守ってくれるそうですから。」
「紫村さんなら一先ず安心ですね。紫村さんって意外に世話好き上手ですから。」
お父さんよりも遥かに年上の紫村さんなんですがここの生徒の殆どは紫村さんのことを普通にお姉さんみたいな感じで接しています。ちょっと怖そうな外見ですが本当はとても優しくていい人というのを皆分かっているんです。
その紫村さんが見てくれたら私も安心ですね。
「そういうことなら私も一緒に行きましょうか。」
「まつりちゃんもですか。喜んで。」
っと喜んでくれる黒木さんでしたがなんかこれって黒木さんの虹森さんとの時間を邪魔してしまうのではないでしょうか。やっぱり私は行かない方が…
「いえいえ、私はいいですから。それにみもりちゃんは皆でわいわいする賑やかな雰囲気が大好きですからきっと喜んでくれるはずです。それに…」
それに?
「私だって一旦スイッチが入ったらあまり人の目を意識するタイプではありませんから…」
な…何のスイッチが入るのでしょうか、黒木さん…
確か同じ部屋の緑山さんは副会長のお家でお世話になっていましたよね?そういうことならやっぱり緑山さんも呼ぶべきではないかと思います。緑山さんには私から話しておきましょうか。私、この後生徒会室にちょっと用事がありますから。多分午前中は生徒会のことで教室から離れていると思われまして。
っと話す私に
「あ…実はですね…」
なぜかこのことについて難色を示してしまう黒木さん。あ、もしかして言っちゃいけませんか…?
「言っちゃダメっていうかですね…実は緑山さんには言わないで欲しいっというみもりちゃんからの話があって…」
「虹森さんがですか…?」
その時、私は本能的に虹森さんと緑山さんのことは何も解決されなかったということを気づいてしまいました。




