第176話
ブックマーク1名様誠にありがとうございます!どうかお気に召されたら幸いです!
もう12月です。1年って本当にあっという間に経ってしまいものですね。今月が過ぎたらもう30歳になってしまうんです。
でも心はいつだって15歳のゆりゆり女の子にいるつもりです!
いつもありがとうございます!
それから数日の時間が経ちました。ゆりちゃんは前に言ったとおりにここ何日を赤城さんのお家でお世話になっていて会長さんの治療は予定に従って進められていました。でも残念ながらそれから変わったことは一つもありませんでした。
ゆりちゃんは未だに私のことを避けていて会長さんの記憶は戻りそうな気配もありません…クリスちゃんが許可を得てお二人の夢にも入ってみましたが何も見つからなかったらしいです…まるでそこからの記憶だけがふっ飛ばされたように痕跡も残らず打ち消されているっと…
私も何度もゆりちゃんのため色々試してみました…が殆どは全部失敗でした…だって今のゆりちゃんって私のことを必死に避けているから…まるでみらい先輩のことから逃げようとする青葉さんみたいに…ここ最近先輩はこんな気持だったんだって思っちゃうくらい私は全力でゆりちゃんから避けられています…
もちろん私のことが嫌だから避けているわけではないのは十分分かっています。ゆりちゃんはただ私に申し訳ないって思っているだけです。あんなに好きって言ったのにこんなに簡単に私への気持ちを失ってしまった自分のことが許せないでしょう…
それでも私は一度くらいはゆりちゃんとちゃんと話し合いたかったです。
会長さんの快方の方もあまりいい知らせは聞こえてないです。いくら何でも会長さんみたいに人の頭を自由自在に操れる能力は今まで人もなかったらしくてその治療には相当の難航を重ねているんです。
でも何より一番著しく現れてしまった問題はその会長さんの不在に乗じて今まで潜んでいた色んな勢力が水面上に浮かんだことです。
生徒会の元過激派だった赤城さんの中心にした現存過激派、速水さんと石川さんを先頭に立てて活動する神界過激派、青葉さんと「Scum」の大分の役員達が引き連れている魔界過激派。そして最近少しずつ勢力を広げている人界側の生徒達。これら全部がお互いの力を強めるためにいがみ合っている今の学校の状況はまさに混沌のるつぼでした。
なんとかこれらを抑えるために色んな人が頑張っているんですが中心になる殆どの生徒が各自の出身に対するプライドが高い、外でも相当の影響力を行使する側の人ばかりだったので状況は取り返しがつかずに悪化される一方でした。
元から今回の派閥争いの影響が殆どなかった私達1年生の間にも少しずつそのような兆しが現れていて私はとても心配です…
でも一番理解できないのはこの期に及んでも未だに理事長さんからは何の指示もないっということです。今でも学校は爆発寸前の状態というのにただ「生徒達の自主性に任せる」って学校のことが外には出られないようにしているだけ…
でもそれじゃダメですよ…こうやって覆って隠していてもいつかはもっと悪い形で暴かれるだけです…
何で…何で何も言わないんですか、理事長さん…このままじゃ私達の学校が…
その上この状況でゆりちゃんまであんな状態で…
いきなり押しかけたあまりの状況に判断が追いつかなくなった私は自分さえ知らないうちにいつの間にかまた悲観の沼に足を浸していました。近頃クリスちゃんも会長さんの治療のお手伝いのことで忙しくなっちゃったし皆それぞれの役割でもう説明会のことはあまり気にしていないようです…
まあ、このままじゃ本当に学校が潰れてしまうかも知れないから仕方ないというのなら仕方ないんですが私は私で今の状況は本当にまずいって思って一人で何日も悩んでいる状態です…
「あら?虹森さん。」
「本当モリモリじゃん。ここで何してるの?」
「赤城さん…かな先輩…」
昼休みの間、中央広場でぼーっとしていた私を見かけたのはちょうどそこを通りかかっていた赤城さんとかな先輩でした。太陽対策でいつも黒い日傘を差している赤城さんといつもそのお傍を守ってくれるかな先輩。お二人さんはいつ見ても仲良しですね。何年も話さなかったのが本当に嘘みたいです。
「そうかな。でもこれも全部モリモリ達が頑張ってくれたおかげだから。ねぇ?なな。」
「ま…まあ…一応感謝はしているんですわ…」
相変わらずはみ出してしまう赤城さんのツンツンぶり。最近大変なことばかりなのにいつもどおりみたいですごいですね、赤城さんって。さすが第3の副会長っという肩書は伊達じゃないですね。
それに比べて私はあんなに偉そうに言っちゃったくせに何もできずただ流されているだけ…
「どうしたんですの?あんな浮かない顔をして…」
私の様子がいつもと違うっということを気づいたように聞いてくる赤城さん。でも今の赤城さんと人界側のことで頑張っている先輩にこれ以上の負担をかけるわけにはいかないし…それにゆりちゃんのことはちゃんと私一人の力でやるって決めたから…
「いいえ…何も…」
だから今はそっと一人にしてください…先輩達には私と違って大きな役目がありますから…
「虹森さん。お隣、よろしいのかしら。」
「え…?あ…はい。どうぞ…」
っと急に私の隣に座る赤城さん。
赤城さんって横から見ると本当に西洋の職人さんが作った高級人形みたいですね…お肌もこんなに真っ白くて上品に巻かれている赤い髪の毛とか金色の瞳とか…
でもここでこうしてもいいんですか…?どこか急いでいたのでは…
「見れば見るほどあの人と似ていますわね、あなたって人は。」
「似ているって一体…」
っと聞く私の顔を見てそっと口元を上げて笑む赤城さん。だがその笑みの意味をその次の言葉で推理するのはそんなに難しいことではありませんでした。
「あの人もずっとこんな顔でしたわ。わたくしと一緒にしている間にずっと。」
「ずっとって…」
その時、私は気づいてしまいました。今私が悩んでいるのはきっとゆりちゃんだって同じはずだと。
「何があったのかは分かりませんわ。だってわたくしには全然話してくれませんから。多分わたくしのことが信じられないっというより一人で悩むのが慣れている人だからからなのでしょ。あるいは二度とそのことを口にしたくないかも知れません。」
一人で悩むのが慣れている…確かにそうかも…ゆりちゃん、あまり人に自分の悩みとか言えないタイプだから…だからいつも一人で突っ走って言っちゃう…同好会に入ってからはちょっとだけマシになったかと思ったんですがやはり完全にそのくせが消えたわけではなかったようですね…
それを全部見抜いた赤城さんって…あの会長さんが副会長として選んだ人です。当然なら当然かも…
「だから虹森さんにもあえて聞いたりする野暮なことはしませんわ。でももし力になってあげることがありましたらいつでも声をかけてくださいまし。いつでも力になってあげますので。あなたにはいつも感謝していますわ。あんたがいなかったら多分わたくしはこの人が転校することさせ分からずにそのまま別れて仲直りなんてできなかったはずでしょ。わたくしはあなたのことを本当に尊敬していますわ。」
尊敬…私みたいな普通過ぎる子を赤城さんみたいなトップアイドルが尊敬…ですか?何で私みたいな…
っとその理由を聞く私の手をそっと重ねてくれる赤城さん。普通の人間より顕著に低い体温に少しびくっとしましたがその温かい優しさだけはちゃんと伝わりました。
「わたくしやあの人と違ってあなたはいつも誰かのために頑張っていますわ。この人のことしか分からないわたくしやあなたのことしか分からないあの人では多分他人のためにっということなんて考えもできないでしょ。わたくしはそんな優しいあなたのことを尊敬していますわ。わたくしにはそれがなかったからわたくしの歌は今まで誰の心にも届かなかったでしょ。ただきれいで上手に歌うだけの人形に過ぎなかった、そういうことですわ。」
少し寂しそうな顔で今までの自分を評価する赤城さん。今までどうして自分は会長さんみたいな皆のアイドルになれなかったのかその理由をようやく分かったような赤城さんは今までの自分の歌を聞いてくれたファンの皆に申し訳ないって言いました。あんな心がこもってない情けない歌を聞かせてしまってって…
「でもこれからは違いますわ。わたくしだってやればできるものですもの。こんな気持ちになえる機会を与えたのはあなたですからもっと自身を持ってくださいまし。わたくしはあなたみたいに皆のために歌えるこの同好会のことが本当に気に入りましたわ。
かつて学校のためにっと口実を付けて学校の色んな部活を潰そうとしたわたくしが心を改めて会長が歩んでいらっしゃった道を歩んでいる。こんなわたくしさえ変えられたあなたですわ。あなたのことが大好きで耐えられないあの人のそんな顔くらいは造作もありませんのでは?」
私が変えた…?本当にそう思うんですか…?赤城さん…
そんな私の言葉に答えを兼ねてそっとうなずいて肯定してくれる赤城さん。私はつい一つ当たり前のことを思い出してしまいました。この人、あのかな先輩の大好きな人だったんだって。何でかな先輩が赤城さんのことが大好きだったのかその理由は今更強いて言うまでもないかも知れませんね。
赤城さん、あなたはあなたが思っているほど冷たい人ではありません。あなたはあなたが大好きなかな先輩と同じくとても優しい人なんです。
「きっと大変なことだと思いますが二人共お互いのことを強く思っているんだからきっとうまくいくはずですわ。ああ見えてもあの人、すごく繊細だからあなたがちゃんと支えなければなりません。あの人に関してはあなたが一番分かっているのではありませんの。今までずっと誰かのために頑張ってきたあなただからこそ見えるものがあるはずですわ。」
そう…赤城さんの言う通りです…ゆりちゃんはああ見えてもすぐ傷ついたりする繊細なところもたくさんいますからちゃんと私が見守ってあげなければなりません!今の私には今の自分にできるを、今の自分がやりたいこと、やらなければならないことを精一杯することしかありません!
今の自分にできること…やりたいこと…やらなければならないこと…そんなに決まっているじゃないですか!私は…!
「なんとか元に戻ったようですわね。やはりあなたにはその顔が似合いますわ。」
やっと腹をくくった私を見て安心したような赤城さん。ありがとうございます、赤城さん!先輩!私、ちょっとやりことがあるので今日の部活はお休みにします!
「分かった。ミラミラ達には私から伝えておくね。その代わりしっかりして来るんだぞ?自分のお嫁さんだろう?悲しませちゃダメじゃんー」
「せ…先輩…!」
「全くですわ。婦婦揃って一体何しているんですのークリスのこともあって今はあの人だってわたくしにとっては妹みたいな人なのですわよ?あんな顔にさせるのは今後このわたくしが承知しませんわ。」
あ…赤城さんまで…!
でも今の赤城さんのおかげでなんかちょっと自身ができました!今日こそちゃんと話そう!ちゃんとゆりちゃんのことを元気づけてあげよう!
「あ、そうだ。実は私、助っ人のお礼で映画のチケットもらったけどこれ今日のうちには使わなければなりないんだ。ちょうど2枚だから良かったら二人で見てきたらどう?モリモリにあげるよ。」
「ええ!?いいんですか!?」
っとポケットから映画チケット2枚を取り出して私に渡そうとするかな先輩。い…いいえ!悪いですよ!自分達のなら自分で払いますから!
っと遠慮する私に
「まあいいじゃん!こういうきっかけは必要なものだからさ!」
結局押し付けて渡した先輩でした。
「ありがとうございます、先輩…じゃあ、お言葉に甘えて…」
っとチケットの映画を確認する私。あ、この映画、私知ってます。最近話題になった娯楽系の映画ですよね?私、この主人公の男優さんのファンなんですよ!格好いいじゃないですか!男の中の男って感じで渋くて!って何でそんな驚いた顔をしているんですか、お二人共…
「いや…モリモリって女の子以外は全く興味ないって思ってたから…」
「ええ…一応お好みの男性像もあったんですわね…」
私を何だと思うんですか!?
「こ…これは単なるファンとしての視線なんです!それに私は女の子ならやっぱり女の子と付き合うのがいいんじゃないかなって思うのだから…」
「あ…そういえばモリモリだって結構ゆりゆりだったんだよね…さすがあのユリユリの幼馴染と言うところなのかな…」
「ま…まあ…趣味はそれぞれですから…」
お二人さんがそれ言っちゃうんですか!?
でも赤城さんも、かな先輩も本当にありがとうございます。このままだと私は今日もまた無駄に流してしまったんでしょう。でもお二人さんが元気づけてくれたおかげで私、やっと立ち上がれました。
本当私の周りってこんなにいい人ばかりなんですね…こんな村人1みたいな私のことをこんなに気遣ってくれる優しい先輩達。やっぱり入って良かったです、同好会…
「あ、それとこれ。」
「はい?」
まだ渡したいのがあるって私にもう一つのものを渡してくれるかな先輩。これって…鍵?なんか部屋の番後もついている…これは一体…
「ホテルへの地図は後で送ってあげるね?あ、これとクーポンね。」
あ…そっち…っていうか几帳面ですね、クーポンまで…
普段お二人さんが一体何をしているのかちょっと想像できてしまった私でした…




