第171話
遅くなって申し訳ありません。
Pixivの方にも投稿することになりました。修正しつつ投稿する予定なのでよろしくお願いたします。
いつもありがとうございます!
「お…おかえり、ゆりちゃん!」
「すみません、みもりちゃん。意外に時間がかかってしまって…ってみ…みもりちゃん…!?」
疲れて体を引いて寮に帰った私は私の迎えてくれるみもりちゃんの格好を見た瞬間、つい柄でもなくびっくりしてしまいました。
「ど…どうかな…ゆうなさんから借りてきたんだけど…」
もじもじしながら私の前で今の自分をお披露目するみもりちゃん。こんなみもりちゃん、初めてかも…!
この前、私が謹慎で理事長のところに行く前にみもりちゃんを誘惑するために履いたものとほぼ同じのランジェリーを身にまとっているみもりちゃん!
みもりちゃんの柔らかくてふにふにな真っ白な肌が丸透けているほど透明感を帯びている薄暗いランジェリー格好のみもりちゃんは非常に今の自分の格好を恥ずかしがっているんですがこういう姿をあまり見たことがない私的にはすごく新鮮でセックシーそのものでした!
プリルがいっぱいついている薄っぺらい布で隠しきれなかった最近だんだん大きくなった豊かなボリュームは今でもはち切れそうですごくそわそわしますがどうしても目が離れられないっていうか…!きちんと網タイツまで…
と…とにかくあまりにもすごい格好のみもりちゃんだったので私はしばらくその場に固まってしまいました!
「やっぱりちょっと変だよね…?私、ゆりちゃんやクリスちゃんみたいな美少女ってわけでもないし…」
い…いけません…!私が何も言わなくなったからみもりちゃんが落ち込んできました…!ダメですよ、ゆり…!何がともあれいつも平常心を保たなければ…!
「そ…そんなことありません、みもりちゃん!すごくお似合いですから!」
「ほ…本当…?でもやっぱりちょっと恥ずかしいな、これ…」
ぎこちなく笑いながら今の照れる感情を隠そうとするみもりちゃん。
それにしてもこう見るとみもりちゃん、いいバランスですね…元から発育も結構良かったし水泳で鍛えていたから人並み以上っというのは分かっていましたが…
でもどうしたんでしょうか…あの着物がとてもお似合いで日本人形みたいに大人しくてしおらしいみもりちゃんがどうしてもこんな破格的な格好を…普段こういうのあまり好きではないのに…
それよりどうしても私はこんなみもりちゃんを見て何も…
「な…なんか今日のゆりちゃん、すごく疲れそうに見えてから…!だから私が元気づけたいと思ってゆうなさんに相談して…!」
慌てて今の格好になるまでの経緯を説明するみもりちゃん。つまりこれは私一人のためにみもりちゃんが用意してくれたっというの…?
相談相手が非常に外れているっという考えもありますがそれでも私は純粋にそういうみもりちゃんの心遣いが嬉しかったんです。まさか自らこんな格好になるくらい私のことを思っていたなんて…
今の気持ちがどうあれ私のことを真剣に考えてくれたみもりちゃんに私はつい涙が宿ってしまうくらい大きな感謝を感じました。ありがとうございます、みもりちゃん…
「会長さんのこともあるだけど今日だけはゆっくり休もうね!私、ゆりちゃんのためなら何でもするからやって欲しいことなら遠慮なく言ってね!」
「みもりちゃん…」
私なんかはほっておいても良かったのに…なんか申し訳ないですね、気遣わせてしまったようで…
「確か夕飯は外で済ましたよね?先赤城さんから電話があったから。」
「あ、はい。病院の食堂から適当に…」
「じゃあ、お風呂でもしない?私、ゆりちゃんがいない間、家からいい入浴剤をもらったんだ。これ、お父さんが出張で神界に行った時に買ってくれたんだ。なんか疲労回復とかですっごく効くらしい。」
っと机の上においていた入浴剤を見せてくれるみもりちゃん。確か神界ではそういうことが発達しているから効能もいいでしょ。
でもこれ、結構高級品だから私一人で使ってもいいのか少し迷ってしまいます…その以前に私は別に疲れているわけのでは…
「ちょっと待っててね?すぐ用意してあげるから。」
でもあんなに張り切っているみもりちゃんには絶対言えませんね。そんなに嬉しいでしょうか、私のために何かしてあげるのが。
「…」
でも同時に私は自分の心にしがみついている重い「罪悪感」に自分に向かってこう問いかけていました。本当に今の自分にみもりちゃんの優しい気持ちを受ける資格があるのかっと…
私はただみもりちゃんの背中を見ながら胸を痛めるだけでした。
***
「ごめんなさい、赤座さん。今日は病院で泊まる予定ですから家には帰れないんです。赤座さん一人じゃ不安なのでになちゃんに話を通しましたからまもなくになちゃんと1校の「Silence」の方が来るはずです。」
「そう…ですか。」
電話でみらいから今日は帰れないっという話を聞いたことりは今まで感じたこともない大きな不安に包まれてしまった。
「それで会長は…」
っとセシリアの様子を聞く彼女だったが
「今のところ何も…」
返って来るのはあまり希望的とは思われない返事だけであった。
「ニュースで見ました…もうこんなに大事になって…ネットでも皆その話ばかりで…」
人気アイドル「Fantasia」のリーダー、セシリアの記憶喪失の件は凄まじい速さでネット上に広まった。放送局からもこの事件を緊急速報として扱って続いてテレビから流して今日だけで知らない人がいないほど知られてしまった。世界はまさに大混乱だった。
「能力の暴走なんて「神樹様」の出演以来殆どなかったんですから…それは悪用する場合ではなければ「神樹様の恵」によって絶対起こらない現象です…なのにどうして会長みたいな人に…」
セシリアはことりにとっても特別な人だった。うみとの件で第1女子校に転校したことりを合ってくれた唯一な人。自分の立場も十分分かっていた彼女だったがそれでも彼女はことりのことをみらいと同じくただ可愛い後輩の一人と思っているだけであった。
だからことりはセシリアのことを信じていた。彼女に限ってそれはあり得ないことっということを。
「会長は時々ことりに学校のことやうみっこのことを教えてくれたんです…多分あの件で家から追い出されて子達の生活の援助まで全部会長一人でやっていたんですしことり達にとっても会長は特別です…だから…」
うみのためとはいえ自分達を学校から追い出したのは確かにセシリアだったが彼女はその後、その件に関わっている子達の復学のために一生懸命頑張ってくれた。
うみのことだけなんとかできれば皆を学校に呼び戻せると思った彼女はまずことりの方に声をかけることにした。
「ことりがうみっこにちゃんと謝ろうっと決めたのは全部会長が背中を押してくれたおかげです…でももしこのまま会長が元に戻れなければ…」
ことりは知っていた。今の学校がギリギリな状態でも機能できるのは全てセシリアのおかげということを。本来生徒会の所属であった「百花繚乱」、「Scum」が自主的に独立組織として分離してお互いといがみ合っている今の状態で彼らとかろうじて連携を取れたのは全部セシリアの人徳と名声があったこそ成り立つものであった。
だがその仲裁役のセシリアが不能状態になった今の状況が続いてしまったら学校はあっという間に崩壊、第2、第3の去年のような悲劇が起こってしまうということをことりは何よりも恐れていた。
「そうなるとことりは二度とうみっこと…」
「大丈夫です、赤座さん。」
そのもしもの状況を想像しながら恐れることりに何の問題もないっと言っているようなみらい。
この状況でそういう無責任な言葉は何の慰めにもならないのをよく知っていたことり。だがなんだか今のみらいの言葉には自分は知らない強い力が宿っているの気づいた彼女は黙ってその続きに耳を傾けた。
「そうならないように私達が頑張りますから。セシリアちゃんが戻るまで私達がこの学校のことを守ります。」
確信に満ちた強い声。今年のみらいは確実に去年のみらいと何か違う、ことりはふとそう思った。
周りのことが大切すぎたせいでいつも控えるばかりだった彼女はいつの間にか自ら前に進もうとする堂々で自身に溢れる強い人になっていた。
それが羨ましくなる一方少し悔しい気分になったことりは
「…やっぱ適うわけがないですよ、先輩みたいな人…」
っと小さな声で呟いて
「分かりました。じゃあ、会長のこと、どうかよろしくお願いします。」
セシリアのことを頼んだ後、電話を切らせてもらうことにした。
「でも会長…本当に能力を使いすぎて記憶喪失になったのかな…」
だが電話を切った後も相変わらず残っている胸のざわめきにふとセシリアのことを再び思い返すことり。まるで小さな棘が差されたようにずっと気になる疑問に頭をやや傾ける彼女だったが何か肝心なところだけは霧がかかっているようにぼやけていたせいでそれ以上は進められなかった。
***
「いいお湯でしたねー」
「本当?良かったー」
風呂上がりの私を見て微笑んでくれるみもりちゃん。やはり高級品だけのことはありましたね。香りもすごく良かったしなんだか体もすごく軽くなった気がして。
みもりちゃんも一緒に入ったら良かったんですが何か準備したいことがあるって遠慮されてしまって…私のために頑張ってくれるのはとても嬉しいですがなぜか私はみもりちゃんが頑張れば頑張ってくれるほど心が重くなってしまって素直に喜べない複雑な精神状態です…
でも…
「ゆりちゃん!私がマッサージしてあげようか?昔はよくやったじゃん。」
こんなに嬉しそうな顔のみもりちゃんを見られて本当に良かったんです。
マッサージですか。そういうば中学校の時もよくやってくれたんですね。生徒会長ながら陸上部も兼ねた私のためにあなたはいつもその美しい手で私の足をマッサージしてくれましたね。今思えば懐かしい思い出ですね。
「そうですね。じゃあ、お言葉に甘えてぜひ。」
「うん!分かった!任せて!」
浴室から出た私をベッドまで案内してくれるみもりちゃん。でも…
「はい、どうぞ。入って入って。」
この格好で案内しているみもりちゃんを見ているとなんだかものすごくいけないお店にでも来たような気分に湧いてきて…まるで風俗店…ってみもりちゃんのことを何だと思ってるんですか、ゆり!?みもりちゃんはただ私を喜ばせるためにこんな格好をしているんですよ!?本来こういう役目はあなたではありませんか!?あなたはあくまで誘惑する側の人間!みもりちゃんに誘惑されては…!
「どうしたの?ゆりちゃん。」
ふとなかなか入らない私を見てそう聞いてくるみもりちゃん。だが私はどうしてもある考えに捕らわれてこれ以上足を進められませんでした。
ああ…どうして…どうして頭では分かっているのに私はあなたへの気持ちを思い出せないんでしょうか…こんなに愛しくて大切なあなたを目の前にしているのにどうして私は…ゆりは本当に可笑しくなってしまったんでしょうか…
あなたのことを愛していない私なんて存在する意味もないのにどうして私はこういういじらしいあなたを見ても何も感じられないんでしょうか…
私はきっとあなたのその黒髪も、素直な瞳も、穏やかな声も、優しい心もあなたの全てを愛してたはずなのに…
「ゆりちゃん…?大丈夫…?」
ああ…もうダメです…これ以上みもりちゃんを騙してはいけません…この偽った心でみもりちゃんの親切を受けてはいけません…
今でも心が張り裂けそうにズキズキっと痛いです…引きちぎれそうに痛いです…あなたの目を見ていると耐えきれないほどの罪悪感が押しかけて今でも崩れ落ちそう…いっそこの目を潰してあなたを見られなくなってしまう方がマシだと思ってしまう…
みもりちゃん、私は一体…!
「ゆりちゃん。」
ついに溢れてきた涙をかろうじて堪えている私の方をそっと包んでくれるみもりちゃんの温もり。
一瞬その暖かさに解れてしまう私自身でしたがこれ以上私にできることは何もありませんでした。私はただ必死に喪失感から生まれた深い悲しみに自分を保とうするだけでした。
「ごめんなさい、みもりちゃん…ごめんなさい…」
溢れる悲しみに喉まで詰まってろくな話もできず何度も謝る私。きっとこれではなく言いたいことがあるはずなのになぜか私の心には「ごめんなさい」以外は何も浮かびませんでした。
でもそんな私をみもりちゃんは何も言わずに抱いたままでした。いつものように優しく、そして強く抱いてくれるみもりちゃん…私はそういうみもりちゃんに顔を向けられませんでした。
「大丈夫。大丈夫だから。」
私の頭を撫で下ろす温かい手…でも私はもう溢れてきた涙を抑えられませんでした。
「話してくれない?今のゆりちゃんの気持ち。」
どうすればいいのか分からなくて戸惑って泣いているばかりの私と違って落ち着いているみもりちゃん。
でもそんなみもりちゃんに私は決して言えませんでした。今の私がみもりちゃんへの気持ちを全部なくしてしまったということを。今のあなたを見ても罪悪感以外は何も感じられないということを…




