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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第168話

なんと!ブックマークしてくださった方が一気に3名様も!誠にありがとうございます!

つまらない実力なんですがこれからももっと楽しんでいただければ幸いです!

いつもありがとうございます!

「か…会長…!本当にわたくしのこと、覚えられませんの…!?」


先に連絡を受けて病院へ駆けつけてきたななはこんなに近くで自分達のことを直で見ても何も思い出せないセシリアのことに絶望していた。いつも冷静で落ち着いていたななだったが今回は理性を保てないほど戸惑っていた。


「…」


ななから何度も声をかけても何も言わずに窓の外を眺めているだけだったセシリア。

だが今の状況で一番困っていたのはセシリアは本人のことであった。自分自身も知らなかった記憶を失ったという事実。それだけで今のセシリアはまるで今自分が見ている全てが自分を偽っているように見えていた。


まるで頭の中の電源が切れてしまったように一瞬で起きた記憶の消失。その暗闇の中から握っていた自分に関することは精々自分の名前とつかの間の小さい頃の記憶だけであった。


「そんな…」


信じられないという顔でずっと黙っているセシリアから一歩離れてしまうなな。窓から吹き込まれる春風に自慢のプラチナブロンドを靡かれる病床の彼女はいつもと同じく美しだったがその目は昔の自分のように沈んでいたというのを気づいたななはつい嘆いてしまった。


「どうして…会長はただ学校のために頑張ったことしかないのにどうしてこんな…」


ついに涙を見せてしまうなな。

この混乱状態の学校のためにセシリアがどんな頑張りをしたかいつも傍で見てきたななは彼女の苦労を一番で理解していた。

本職のアイドルまで二の次にして学校の平和のため走り回したその結果が「能力の乱用による記憶喪失」という診断を聞いた時、ななはその場でくずおれてしまった。


「赤城さん…」


そしてななの気持ちを非常に同感していたみらいはただ今のセシリアが不安にならないようにその手をギュッと握ってその哀れな姿を見るだけであった。

初めて見る残酷な現実。みらいはこういう場合一体どう慰めてあげたらいいのかずっと戸惑うばかりであった。


「大丈夫…大丈夫ですから…」


だがななは人一倍は強い子だった。彼女はかなとのことでもう一回り強くて折れない自分になっていた。


「わたくしは会長のことを信じていますから…会長ならきっと戻ってくれるはずですわ…」


未だに体は追いつかなくても心はちゃんと奮い立たせたなな。彼女はこういう時こそ自分が何をするべきか、自分の役目は何なのかをよく知っている賢くて強い心を持っていた。


「あなたがお守りになっていたこの学校のこと…この「赤城奈々」が必ず守ってみせますから…」


ななは今はただいつか彼女が戻る時のために自分が学校を守らなければなりないっと思っていた。


全ての吸血鬼が夜に戻ってもななはたった一人、大好きなかなのために今でも日の下で暮らしているほど強い心を持っていた。その折れない剛直で気高い精神を覗いたみらいはいつかセシリア本人から


「ああ見えてもななはめっちゃ強い子だから。」


っとななのことを評価した彼女の言葉の意味をなんだか分かりそうだった。


かながいなければあっという間に崩れそうに見えたなな。だがセシリアはななのそういう不屈なところを既に見抜いてななに副会長という職責を任せた。もし自分に何があったら学校のことを任せられるのはそういうぶれない精神を持っているななしかないとセシリアそう思っていた。


「セシリアちゃんはこれを言いたかったんですね…」


みらいはその気高い黄金の精神も、二人の絆も羨ましいっと思ってしまった。


かろうじて涙を堪えているななの手をそっと握りしめるみらい。いきなり包まえる温もりに少しびくっとしたななだったが


「赤城さんならきっとうまくできるはずです。私も、皆も協力しますから。だから私達のセシリアちゃんを信じてセシリアちゃんが守りたかった学校を私達の手で守ってみせましょう。」


自分と同じくセシリアのことを信じているみらいの爽やかで輝かしい意志を繋いだ手から感じることができるのであった。


「もちろんですわ…」


ななにとってセシリアはいつか越えなければならないライバル。その同時にずっと目指そうとしていた真のアイドルだった。

だからこそななはセシリアのことを信じて彼女が守ろうとしたその全てを必ず自分が守ってみせると自分自身に誓ったのであった。


「そ…それじゃわたくしは主治医の方の話をお聞きしてきますので会長のこと、よろしくお願いいたしますわ…もうすぐ学校と「プラチナ皇室」からも人が来る予定ですのでその時は…」

「はい、分かりました。私に任せてください。」


少し担当医師と話をするためにセシリアの病室から足を運ぶなな。気持ちとしては自分が残りたかったがセシリアにとって一番心地いい場所はずっと好きだった彼女のお傍というのを知っていたななはしばらくは二人きりにしてあげようとした。


「赤城さん、本当に優しいですね。セシリアちゃんの言ったとおりです。」

「…」


みらいからの話にも何も言わずに外を眺めているだけのセシリア。彼女は今はただ余計なことは考えないようにしていた。


何一つ浮かばない記憶。まるで暗黒の街を歩いているように消失の中をさ迷っていた彼女は今は自分の意識をそっとその暗闇に流そうとした。

だがなぜか自分の手を握っているこの子を見ていると不思議に安心してしまう。今のセシリアは自分を不安のままでほっておかないみらいのことを複雑な気持ちで感じていた。


気がついた時から目の前に現れてずっと自分の傍にいてくれた彼女。彼女はただひたすら自分を安心させようとするだけであった。

何も強要せずにそっと手を取ってくれたこの子は少し、いや、結構迷惑だったがなんだか自分はこの子のことをあまり嫌いではないかも知れないと思っているセシリアであった。


「セシリアちゃん、お腹すきませんか。」


っとかばんの中でいつものクッキーを出すみらい。今日は普段の桃の形ではない小さな小鳥の形をしている可愛いクッキーに自然に視線を奪われてしまったセシリアは


「はい、あん~してください。私が食べさせてあげますね。」


素直に彼女から食べさせてくれるクッキーを口の中に入れ込んだ。


口の中を優しく包んでくれるふわっとした甘み。記憶はないのだが自分ならこのクッキーのことを前からずっと結構気に入っていたような気がしたセシリアはみらいから差し出した次のクッキーを大人しく受け取った。


「美味しいですか?」


もぐもぐしているセシリアに味を聞くみらい。その答えの代わりにセシリアはそっと首をうなずくだけであった。


「そうですか。良かったー赤座さん、あまりチョコーとか苦手ですから甘い物好きのセシリアちゃんのお口に合うか心配だったんですけどこんなに美味しく食べてもらってほっとしました。」


自分の食べているところを見て喜ぶ変な人。まるで子供の頃によくお菓子を焼いてくれた姉と同じ顔をしている彼女にふと濃い懐かしさまで感じてしまった。

そしてその次を続ける悪いっという気持ち。セシリアは先からずっと今朝のことを気にしていたのであった。


「ね…」

「はい。ここにいますよ、セシリアちゃん。」


セシリアの呼びに彼女の方を向くみらい。はっきりと整った顔立ちに思わずきれいっと感心してしまったセシリアだったがその前にちゃんと先のことを謝りたかった。


「先は…ごめんなさい…失敬とか言っちゃって…」


不本意だと思っているがそれでもそれだけは謝りたかった。自分が不安になることを恐れて朝からずっと付ききりになってくれたみらいのことをセシリアはほんの少しだが受け入れるようになったのであった。


「いえいえ、私は平気ですから気にしないでください。セシリアちゃんこそ混乱していたはずですから。」


その気持をよく知っていたみらいはそれ以上何も言わずにただそっと彼女の肩を包んであげた。


「大丈夫。セシリアちゃんのことは私が守ってあげますから。「神樹様」が見守ってくださっているんですから全部うまくいくはずです。」


セシリアはそこからしばらく何も言わなかった。無論抱いているみらいもまた何も言わなかった。二人はそのまましばらく二人だけの温もりを重ねるだけであった。


***


「今日は本当にありがとう、火村さん。相談に乗ってくれて。」

「いえいえ。友達として当然なことです。」


それから私は火村さんと二人きりでプールのベンチでいっぱいお話しました。今朝のゆりちゃんのことも、今大変な状態の会長さんのことも、そして火村さんがずっと気にしている石川さんのことも。


「やっぱり火村さんはまだ石川さんのことが好きなんだね。」


話し合っている間に私は気づきました。あんなことがあったのに火村さんは変わらずに石川さんのことを自分の理想だと思っていたっということを。だって火村さん、石川さんの話をする時は本当に楽しそうに見えたから。

本人は絶対ないって言いましたが「イチャイチャ探偵」の私には分かります!これは恋に落ちた乙女の目っということを!


「でも石川さんは私達のことが嫌いですから…なんだか部長とも仲悪そうだし…」


でも現実は厳しかったです。石川さんは今も魔界の人のせいで死に損なった思っていて去年私達が初めて見た時と同じく未だに魔界の子達には目もくれないんです。それになんだか火村さんのところの「Vermilion」の部長のすみれさんと仲も悪そうですし…


「多分石川さんの方から絡んでいることだと思います…部長は本当に優しくていい人ですから…」

「ん…それは分かっているんだけどね…」


すみれさんができている人というのは私もよく知っています。去年火事で地下から出られなくなった部活途中の生徒達を助けるために一人で突っ込んで救助したという話は新聞にも出るほど有名ですから。


「いくら火やガスに耐性がある鬼としても無茶すぎます。でもその時お父さんは不在だったし地下は殆ど誰も行かないから発見が遅くなって消防署からの到着まではかなり時間が掛かりそうだったから部長一人で現場に突入して…」


その時、「Vermilion」の顧問だった火村さんのお父さん「火村(ほむら)紅丸(べにまる)」先生はお留守だったから「Vermilion」の責任者はすみれさんだったらしいです。

他の部員が火事に巻き込まないように一人で突入したすみれさんは無事に閉じ込められていた部活中だった生徒2名を救助、大した後遺症なく退院した二人は今もちゃんと学校に通っていたそうです。

すみれさんも少しガスを飲み込まれてしまって入院したが体に異常はなかったので無事に退院しました。


「私はお父さんからの推薦もあったから「Vermilion」に入ったんですが部長のことは本当に尊敬しています。鬼と炎人は遠い親戚なものなんですが部長は真剣に皆のことを思っていると私は断言できます。だから石川さんと何かあったら多分…」


落ち込んでしまう火村さん。いくら石川さんの方に何があったとしても自分の口でそれを言うのには相当のためらいを感じているようです…


「き…きっと何かわけがあるに違いないよ!だった石川さんだって生徒のために頑張っている「百花繚乱」の副団長だから!」

「そ…そうなんでしょうか…」


今はただこんなベタな慰めしかできないかも知れませんがやっぱり私は火村さんのこういう悲しむ顔は見たくないです。だって火村さんも私の大切な友達だからなんとか慰めてあげたいです。

だから元気出して、火村さん!私もお手伝いするから!


「虹森さん…」


それに同好会の衣装のことで普段すみれさんにいっぱいお世話になっていますから!私にできることなら何でもお手伝いしたいです!


「ありがとうございます…虹森さんとはあまり関係のない話だったはずなのに…」

「そんな風に言わないで、火村さん。すみれさんにはいつもお世話になっているし。それにやっぱり私は火村さんが笑っているのが好きだから。」


だって火村さん、笑う時めっちゃ可愛いから!ピュアっていうかとにかくそんな汚れのない感じがすっごくいい!


「な…なんだかちょっと恥ずかしいですね…でもありがとうございます…」


っていつの間にかまた熱くなっている!?だから地味に熱いってば、それ!!


「す…すみません!ちょっと恥ずかしい気分になるとたまにこうやって物理的に火照ってしまって…!」


ぶ…物理的にね…


でも火村さんとこうやって喋っている間になんだか気分もだいぶほぐれました。やっぱり一人でくよくよするより誰かと話し合うのがずっといいですね。私も火村さんからゆりちゃんのことについてアドバイスもらったし。


「それは良かったんですね。根拠はありませんが緑山さんはただちょっと疲れているのではないかと思います。謹慎が解けて学校に戻ったのもすぐ昨日のことですから。」

「そ…そうかな。」


でも確かに一理はあるかも…ゆりちゃん、謹慎の間、ずっと「みもりちゃん成分」が足りないって言いましたし。それに理事長さんからの課題もあったっと言いましたしこの前の「影」のこととかも色々ありましたから。ゆりちゃんだって実は私と同じくただの女の子ですから疲れるのも当然かも知れませんね。

今まだゆりちゃんなら何があっても大丈夫って一人で勝手に決めつけてしまって全然気づかなかったんです。ごめんね、ゆりちゃん…


「すみません、虹森さん。黒木さんならもっといいアドバイスができたかも知れないのに…」

「ううん、そんなことないよ?むしろ火村さんに相談して本当に良かったと思う。私一人では多分無理だったんだ。」


だから自分のことをそんな風に言わないで、火村さん。クリスちゃんも、火村さんも本当にいい友達だから。ありがとう!


そう決まったら今日は久しぶりに疲れたゆりちゃんのために私が一肌脱いちゃいましょうか!多分会長さんのことでクリスちゃんも、ゆりちゃんも夜になって帰ると思いますからその間精一杯ゆりちゃんを迎える準備をしてゆりちゃんをびっくりさせてあげちゃいましょう!

一人で用意するのはちょっと大変そうですが大好きなゆりちゃんのために私、頑張っちゃいますね!

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