第166話
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いつもありがとうございます!
「結局私達だけで練習したね。」
「そうですね。」
今日から始めることになった朝練のために急いで準備して部室まで駆けつけた私達でしたが結局一番で着いていたと思った先輩は部室に来ませんでした。
「電話も出ないし何かあったのかな…」
「先副会長から聞いた話によると学校にはいるらしいです。」
「そう?」
「でもなんか急いでいるみたいで話掛けられなかったと…」
さすがゆりちゃん、顔が広いから学校のこともちゃんと分かっていますね。しっかりして頼りになるから皆から信頼されている…すごいな、ゆりちゃん…
「みもりちゃん?どうかしましたか?」
「ええ…!?いや、別に…!」
い…いきなり声をかけられてびっくりしましたね…
でも朝起きた時、違和感…っていうかふとそういうものを感じてしまったんですから…やっぱり何かあるのかな…
「おはよう!虹森さん!緑山さん!」
その時、私達に朗らかに挨拶くれたのは今仮の学級委員を務めている同じクラスの「百花繚乱」所属の「高宮ゼマ」さんでした。
オレンジ色のショートカットがとても似合う元気いっぱいの高宮さんはいつもこうやって皆に挨拶してくれるすごく優しくて可愛い女の子です。
昔「百花繚乱」の団長さんであるゆうなさんのことでお世話になって時があってそれをきっかけに私の友達になってくれたんです!
「おはようございます、高宮さん。」
「おはよう、高宮さん。今日も相変わらず元気いっぱいね。」
「それが取り柄だもん!まあ、お母さんはもう少し女の子らしくしなさいって言うんだけどね!」
っと爽やかに笑ってみせる高宮さん。まるで真夏のひまわりのように生命力の溢れる爽快な笑顔にこっちまでいい気分になっちゃいます。
「でも高宮さんだって十分女の子らしいから。絶対モテるタイプだよ。そうよね?ゆりちゃん。」
「ええ。男性の方々から好かれるタイプだと思います。」
「ふ…二人共、褒め過ぎだよ…!」
っと照れくさく笑ってしまう高宮さんですがこういうピュアって感じが同じ女の子の間でも結構決まっていますから。
「実際高宮さんには「妹にしたいランキング1位」という新聞部からのアンケートの結果もありますからもっと自身を持ってください。妹キャラは結構いいアドバンテージなんですよ?」
「ええ…喜ぶべきのことなのかな、これ…」
ゆりちゃん、そういうものも知っているんだ…っていうかうちの新聞部って一体…
「もうすぐ説明会だね。団長も虹森さん達のライブ、楽しみにしているっておっしゃったから。」
「ゆうなさんが?」
それはありがたいお言葉ですね。今もチラシ配りとかでもう少しでもお客さんを増やすために頑張っているんですけど正直皆からの反応がいまいち薄かったからちょっと不安でしたから。
「もちろん私も応援するからさ!頑張ってね!」
「あ!うん!ありがとう!」
高宮さんも私達のこと、応援してくれるんだ…私なんてただのクラスメート1とかで思ったのに…
「そ…そこまで言わなくても…」
「そ…そうかな…」
そうですね!こんなに応援してくれる友達がいるんですから!もっと自身を持たなきゃ!頑張ってもっといいパフォーマンスを見せなきゃ…ってゆりちゃん?先からずっと電話ばかり見てどうかしたの?
「あ、すみません。生徒会のことでちょっと。」
「そうなんだ。」
まあ、今が一番忙しい時ですからね。世界政府付属高校達にとって部活説明会は学園祭や体育祭並の一大イベントですから。特に第3女子校はその中でも一番多い部活が活動しているから朝から忙しいのもうなずけます。
「すみません。なんかちょっとトラブルがあったようで行ってきますね。」
「あ、うん。分かった。じゃあ先生には私から言っておく。」
「ありがとうございます。」
先生には高宮さんから伝えておくって言われた後、
「行ってきますね、みもりちゃん。」
っとすぐ教室から出てしまうゆりちゃん。いってらっしゃい…
「大変だね、生徒会は。」
「そうだね。」
本当に毎日毎日頑張っているんだな、ゆりちゃんって。生徒会のことも、同好会のことも。
「でもなんか今日の緑山さんってちょっと違う感じだな。」
「え?」
急に何の話をしているんでしょうか、高宮さんって…違う感じって…
「ん…こうだ!ってはっきりとは言えないんだけどなんか抜けている感じっていうかさ…」
「抜ける…?」
まさか高宮さんも私と同じくゆりちゃんから何か違和感みたいなものを感じたんでしょうか。そういえば高宮さんって以外に勘が良かったんです。
でも抜けているっていうのは一体何の意味でしょうか…
「なんか今日は大変そうね、緑山さん。」
「高宮さん…?」
今の高宮さんには私が知らないゆりちゃんの何かが見えているんでしょうか…だったらなんで私には見えてないのか…ゆりちゃんのことなら私が一番分かっているはずなのに…
「あ、ごめんごめん。何でもない。」
「じゃあ、後でね?」っと行ってしまう高宮さんでしたが私の心は先よりひどくそわそわしてきました。やっぱり私が知らない何かがゆりちゃんの中で起きてしまったのではないかと…
私は後で高宮さんにこのことについてもう一度聞きましたが望んでいたはっきりした答えを聞けませんでした。高宮さんだって薄らかに何か変わった感じがする程度らしいで…
結局ゆりちゃんは生徒会のことで午前の授業を全部抜きにし、私は授業中ずっと不安な気持ちのままだったんです。
***
「お忙しいところお越しいただき誠にありがとうございます。」
「そんなにかしこまらなくてもいいじゃん、ゆりちゃん。」
「副会長はいないのかしら。」
会議室に少しずつ集まってきた第3女子校の役員共。午前理事長命で緊急招集された彼女達の顔には相当の緊張感がずっしり敷かれていた。
「でもさすがにめったにはないから。緊急招集なんか。」
「百花繚乱」のメンバーと一緒に入って固まっている会議場の空気を気まずく眺めるゆうな。彼女はこういう格式のある場所がかなり苦手な性格であった。
「お茶会…ってわけではなさそうね。緑山さん。」
「もちろんです。」
前で着席しているメンバーを確認しているゆりにいつものような冴えている顔で聞くあい。だがまもなく彼女もゆりの様子を気づいた。
「お。皆揃っているな。」
「紫村さん。」
次に入場したのは「Scum」の部長であるさきと
「ゆうきちゃん…」
副部長のゆうなの妹、ゆうきだった。
温かくなった天気にも関わらずいつもボロボロになっていた真っ赤のマフラーを掛けていた彼女は向こうの席から自分を悲しい目で見ていた姉のことを気づいてそっちに向かって軽く目礼を渡した。
「部長、ここは禁煙です。」
「あ、そうだったな。」
さきに灰皿を渡すゆうき。くわえていたタバコを擦り消したさきはその次に入ったクリスの案内を受けて着席した。
「やっぱり強者ってオーラがぷんぷんするんだよね、紫村さん。」
「勝負すらしてくれなさそう。」
隣にクリスを座らせて手元の資料に目を通すさきを見て内心感服するゆうなとあい。だがその隣に座っていた「百花繚乱」副団長のこんごうの目にさきは全くの興味もなさそうに見えていた。
「これで一通り揃ったようね。」
「あの「陽炎」以外なら大体。でも…」
あいも噂だけならよく知っている「選挙管理委員会」の「陽炎」。だが彼女達は自分達のような学生の安全のために活動している部ではなかったのでこのような公式的な場所にはほとんど顔を出さなかった。
「すみれちゃん…まだかしら…」
あいはいつもあの子しか見ていなかった。
「ちっ…」
そのあいを見て何か非常に気に食わないっという顔で舌を打つこんごう。
「任務中の「Vermilion」を除けば一通り集まったようですね。副会長が不在なので今回の進行は私が務めさせていただき…」
「遅くなってすまない。」
そろそろ会議を始めたいと思っていたゆりの話の途中、急に前のドアから息を荒らして入ったのは「Vermilion」の部長のすみれであった。
「あ、灰島さん。良かったんですね。ちょうど今始めようとしたところでした。」
「そうか。申し訳ない。特に言い訳するつもりではないだが巣から落ちてしまった雛鳥があってそれを…」
「鳥なんてどうでもいい。」
事情について説明するすみれの話を切ってしまうのはそういう彼女のことをずっと気に入らないように見ていた「百花繚乱」の副会長のこんごうだった。
「ろくな仕事もしてないくせに随分偉そうな顔をしているんじゃねえか、お前。さすが「灰島」のお嬢様ってことか。」
「石川…」
苦虫でも噛んだような顔ですみれのことを睨みつけているこんごう。そういう彼女に向けてすみれはいつものどおり無口な顔をしているだけであった。
「お前みたいなゴミ野郎と違ってこっちは忙しいんだ。何勝手に遅刻しやがるんだ。」
「すまない。だが私達は例え鳥っと言ってもその生命を尊敬している。」
「鬼の分際で大した志だな、お前。」
一瞬、凍ってしまう空気。誰か止める暇もなくこんごうは自分のことを無感情に見つめているすみれに散々な話を並び始めた。
「お前ら、「人食い」なんだろう?救うより食うのがあり方じゃねえかよ。」
「いや…私、割と肉食より果物とか好きだが…」
「すみれちゃん…♥」
あいは以外にすみれのこういうとこがかなり好きだった。
だがこの前にすみれとの関係をこんごうにバレてしまったあいはこんごうのことを止められなかった。もしここで自分がすみれの肩を持ってしまったらそれは余計にこんごうの敵意を煽ってしまうから。
それ故、あいはただ複雑な顔で二人の中で黙っているだけであった。
「おいおい、喧嘩なら後でしろよ?」
そろそろ止めた方がいいと思って口を入れるさき。さすがのこんごうでもこの学校で理事長の代理と言われているさきにはむやみに突っかかれなかった。
だが
「同じ魔界のことだと肩入れするんですか。」
それもほんの束の間のことに過ぎなかった。
「卑怯ですね、魔界って。何かあったらすぐ勾張りやがって。」
「こ…こんちゃん…!もうやめようよ…!」
慌てて引き止めるゆうなにも関わらず話を続けるこんごう。
「ここでぶち殺したりでもするんですか。っていうかあなた、本当に強いんですか。皆ただ噂だけであなたのことを恐れているのではないかと私は思いますが。」
「言い過ぎますね、石川さん。」
何も言わずに黙っているさきの代わりにこんごうの話を防ぐゆうき。状況はどんどんややこしくなってゆくのであった。
「あなたみたいな石人形とは違って部長はずっと強いです。」
「まだ学校に残っていたか、この失敗作。」
こんごうのことを石人形と、ゆうきのことを一族の失敗作と呼び合った二人はまたの最悪の組み合わせだった。
「うるさいですね。」
その時、過熱した会議場を一瞬沈ませてしまう女の声。その声の方に皆が目を移した途端、誰も話を続けられなかった。
「まるでガキどものままごっこみたいです。つまらなくて非常にくだらない。あなた達、それでも本当に大人ですか。」
冷めた声で今自分が感じているつまらなさを語っているゆり。今のゆりは相当気分が不愉快だった。




