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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第1章「アイドル」
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第17話

なんかパソコンの調子がちょっと悪いですね。時々止まってちょっと困りですね。

「でも多分みらいちゃんは私のことをただの友達にしか思ってないと思うわ。」


っと少し寂しそうな表情で自分と先輩の関係についた自分の考えを述べる会長さん。

その切なさに満ちた、物寂しい表情から会長さんが感じている気持ちをほんの少しだけ分かるようになった自分は会長さんになんと言って慰めたらいいのか、ただ迷うばかりだったのです。


「あの子には私以上に思っている子がいてね。

それももう「恋」と言ってもいいくらいの…」


先輩のためにずっと献身してきた会長さん。

そんな会長さんですら入れない先輩の心には、すでに会長さんの存在を遥かに越えた思いの人がいる。

会長さんはそれが誰なのか、最後まで私に教えてくれませんでしたが、


「それでも私はあの子のことを愛しているわ。」


たとえそれが自分ではなくても、先輩への自分の気持ちは絶対変わらないと、彼女は心からそう誓いました。


結局、最後まで自分は先輩の特別な人になれないと、そう現実を受け入れてしまった会長さん。

でも私は、


「せ…先輩は会長さんのことを大切な人と言ってました…!」


やっぱり会長さんのその大切な思いがただの悲しい片思いのままで済んで欲しくなかったのです。


「先輩はちゃんと会長さんのことを大事に思ってるんです…!

自分に居場所をくれた大切な人って…!」


もし先輩と会長さんの気持ちが同じものではないとしても、先輩が会長さんのことを特別な人として思っていることに嘘はない。

それだけはちゃんと分かって欲しかった私は自分が知っているありったけの先輩の気持ちを会長さんに伝えました。


お節介な面倒な子だと思われても構わない。

私は私の大好きな先輩に、会長さんの大好きな気持ちがちゃんと届きますようにと、ただ心からそう願うだけでした。


「ありがとう、みもりちゃん。」


そしてそんな私の気持ちに少し勇気づけられて、元気が出た会長さんは、


「あなたは本当に優しいのね。」


そう言いながら、しばらく私の手をギュッと握るだけでした。


白い手袋に包まれた細長くてきれいな手。

上品さが溢れ出るその手で、会長さんは私に思いっきりありがとうって気持ちを届けてくれたのです。


「どうしてゆりちゃんがあんなにみもりちゃんのことが好きなのか、ちょっと分かったわ。」

「そ…そうですか…?」


っとゆりちゃんに私が好かれる理由がやっと理解できたと、私に仄かな笑みを向けてくれる会長さん。

なんか褒められているような気がして気分はいいですけど、やっぱり他人に私たちの関係を分かってもらうのはちょっと恥ずかしいかも…

ゆりちゃんなら絶対、


「ええ♥私とみもりちゃんは()()ですからね♥」


ってすごく舞い上がったと思いますけどね…


でも会長さんって人の考えが読められるのに、まさか先輩の気持ちが分からなくて悩んでいたとは。

先、仲良くなりたく人の考えはどうしても読み取ってしまうって言ったから、私はてっきり先輩の考えはもうとっくに読んでたと思いましたが。


っと頭の中だけでこっそり気にしていることに、


「あ、それは私にはみらいちゃんの考えが見えないからなんだ。」


会長さんはこう答えてくれたのです。


その答えにまた考えを読まれて恥ずかしいと感じる暇もなく、


「そ…そうなんですか?」


驚きながら再びそう聞きましたが、


「ええ。」


会長さんは特に嘘を付く様子もなく、正直にそう言いました。


どうして先輩の考えだけは会長さんにも見えないのか。

その理由については会長さんも知っていることが全くなかったのですが、


「見えなくてもいいの。

見えなくてもあの子のことは私が一番知っているから。」


会長さんは惜しがったり、残念がることなく、ただそう言って自分の中にいる先輩のことを心から信じていました。


金色の目の中に満ちている先輩への信頼。

その絆は揺るぐことなく、褪せることなくいつまでも続いていくことを、いつの間にか自分がそう確信しているほど確かで固いものでした。


そして会長さんは同時に確信していました。


「みらいちゃんなら、あなた達ならきっとこの学校を救えるわ。」


先輩なら、私たちなら今の学校をきっと変えられると。


初めてそれを聞いた時はどういう意味なのか、私は全然気づきませんでした。

でも先輩のことを会長さんが心から信じていて、先輩ならなにか変えられかもしれないという予感だけはなんとなく分かりそうな気がしました。


果てしない可能性、そして情熱。

私は会長さんと同じく、先輩のその一途の気持ちが秘めた可能性を心から信頼していたのです。


会長さんは発表会が終わったら、2学期にはツアーに出るそうです。

3人体制になってからの初めてのツアーで、今すごく気合を入れているという会長さんの話に、私はまたあの素敵なライブが見られるんだっていう期待感にすごくドキドキするようになりました。

世界ツアーまではまだ時間がかかりそうですが、会長さんほどのすごくアイドルならそのうちに成し遂げるって、私は信じてやみませんでした。


「一応国内規模のツアーだけどね。受験もあるし。」

「するんですか?受験…!」

「もちろんよ。」


っとアイドルの仕事もあるのに、律儀に受験もするという会長さんの話に、私はすごく驚いてしまいましたが、


「私は全然平気。これは私がやるって決めたことなんだから。」


会長さんはこれくらい苦にならないと、黙々と自分の道を進んでいました。


「うちのお姉様が言ったの。

王たるもの、自分の決意くらいは全うするべし、とね。

まあ、私はお姉様みたいに意識高くはないけど、ああいうところはちゃんと見習わなきゃてね。」


アイドル系の「女王」である会長さん。

そしてそんな会長さんのお姉様でありながら、「ハイエルフ」の本物の女王である「ヴィクトリア・プラチナ」様。

会長さんが都会に出てから一度も会ったことのないお姉様。

彼女は人間とエルフのハーフである会長さんと違って正真正銘のエルフであるヴィクトリア様はとても意識が高くて気高いエルフだと、会長さんはお姉さんのことを心から尊敬していました。


そんな彼女から教えてもらったこと。


「自分の未来は自分の手で掴みなさい。」


その一言のおかげで、会長さんは脇目も振らず、自分の決意を貫いてくることができたと、彼女はお姉さんにずっと感謝していました。


そして会長さんは私にこう言いました。


「これが私の夢、希望だから。」


夢のためならどんなこともする。いくらでも頑張れる。

でもそれはまるで会長さんが私に、


「だから諦めないで。みもりちゃん。」


っと言いかけているような気がして、私はしばらく何も言えなかったのです。


あの時、会長さんが私の頭から見たもの。

それが何なのか、自分にはよく分かっていても、決して口には出せない。

あまりにも辛くて、苦しかったそのことを、私は今も胸の底に葬って、見ないふりをしている。

それを見透かした会長さんがなんとか私を元気づけるために、あんなことを言ったと私はそう思います。

それが分かった時、私は先輩が言ってた、私たちとそう変わらない会長さんっていう話の意味がようやく分かりそうな気がしたのです。


落ち込んでいる友達を元気づけたい。

悩んで、迷っている子に勇気をあげたい。

友達のために、ただ純粋にそう思える会長さんのことを先輩はすごく大事にして、私もまたそんな会長さんが大好きになったのです。


「では私は生徒会のことがあって、悪いけどここで失礼させてもらえるかしら。」

「あ…!はい…!」


もう生徒会に戻らなければならない時間になったと、先にお暇しようとする会長さん。

私は自分のせいで結局会長さんが先輩に会わなくなった気がして、


「すみません…なんか無駄話ばかりで長く引き止めちゃったみたいで…」


貴重なお時間を無駄にしてごめんなさいと謝ってしまいましたが、


「ううん。私は今日、初めてみもりちゃんとお話できてすごく楽しかったから。」


会長さんはただそう言って、よかったらまた機会があればお話しようと、そう約束してくれるだけでした。


私はもちろんすごく喜んで、ぜひそうするって答えて、


「ありがとう。じゃあ、みらいちゃんによろしく伝えてちょうだい。」


生徒会にへ向かう会長さんの背中にずっと手を振り続けました。


短い間でしたが、私は会長さんとの会話で色んなことを手に入れることができました。

特に先輩が自分が思っているほどの一人ぼっちではないということが分かって、私は本当に安心したのです。

たとえ皆に避けられていても、ちゃんと分かってくれる人は分かってくれるものだと、そう思うようになった私は、次に会うことを楽しみにしてようやく部室への足を運ぶことができました。


そして同好会のために自分は何もできなかったかもしれないけど、こんなに先輩のために、同好会のためにがんばってくれる人がいっぱいいる。

その事実だけで、私は先よりずっと軽くなった足で先輩が待っている部室へ戻ったのです。


***


「あ!いらっしゃい!みもりちゃん!」


部室に戻ったら、いつの間にか戻って私のことを待っている先輩。

今日も華やかできれいな先輩は、


「えへへ♥」


いつにも増して、幸福に満ちた可愛い表情で私のことをずっと見つめていました。


「なんかごきげんですね、先輩。」

「そう見えますかー?」


なにかいいことでもあったのか、そう聞く私に、


「私、セシリアちゃんから聞きました。

みもりちゃんとお友達になれたって。」

「お友達…」


先輩はそう言いながら、お友達になった私と会長さんを思いっきり祝ってくれたのです。

そして私は私のことを自らお友達と認めて、そう呼んでくれる会長さんのことが嬉しすぎて仕方がありませんでした。


「会長さん、すごくきれいで優しい人で、ちょっとびっくりしたんです。

後、思ったより純朴で、初々しくて可愛かったんです。」

「でしょでしょ?皆、セシリアちゃんが芸能人だからってちょっと雲の上の存在みたいに感じてますけど、よく見たら可愛いところもいっぱいあって、友達思いのすごく優しい子なんですー」


会長さんの話ですぐ盛り上がるようになった先輩。

まるでゆりちゃんのことを紹介する時の自分みたいですごく親密感あるかも。


でも先輩がごきげんだった理由にはもう一つがあって、


「実はですね、今日はみもりちゃんにこれを見てもらいたくてちょっと遅かったんです。」

「こ…これって…!」


それはなんと、


「ジャジャジャジャーン!」

「こ…これって…!」


今度、ライブで着る予定の衣装のことでした!


すごいテンションで先輩が一気に紙袋の中から取り出したノースリーブの制服風のワンピース。

靴と手袋、リボン型の髪飾りもちゃんと揃った可愛くて開放感のあるその衣装はそれぞれのイメージに合わせたピンクとイエローの色違いのお揃いだったので、


「す…すごいです…!」


私は一気にその衣装に魅了されてしまいました。


シンプルなデザインなのにベタではなく、むしろさっぱりした華やかさがあって見ているだけで心がウキウキする。

その上、先輩の穏やかで温かい感性とかな先輩の元気と明るさに合わせた抜群の色のマッチまで。

これ以上はないと言っても過言ではないほど、先輩が私に見せてくれたそのステージ衣装は最高でした。


「えへへ♥どうですか。結構いい感じでしょう?

前の先輩達と使ったものをアレンジしただけのものですけど、これなら結構いけるって自分でも思っちゃいますよね。」


っと前代の同好会の先輩たちからのお下がりということまで私に話してくれた先輩は自分でも結構満足しているように見えました。


予算の問題で結局新調はできなかったけど、リサイクルすることでお下がりの衣装に一味違う新鮮さを与える。

私は同好会のために先輩が色んなことを工夫していることに気づいて、改めて先輩のアイドルへの情熱に感動してしまいました。


「これを着て先輩たちがステージの上で歌うんだ…すごい…」


同時に私は想像してしまうのです。

これを着て、発表会で皆の前で歌って踊る可愛い先輩たちの姿を。

先輩たちの華麗な歌と姿に皆は見とれて、感動して、大注目間違いなし。

そうなったらきっと皆がこの同好会に興味を持ってくれて、先輩の大好きなアイドルを皆と一緒にできるという夢が叶う。


そう思って胸いっぱいの夢と希望を見た私でしたが、


「はい、みもりちゃん♥試着してください♥」


っと先輩からその可愛い衣装を渡された時、


「…え?」


私はなんと反応したらいいのか、ただ戸惑うだけでした。

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