第16-2話
会長さんと出会ったのは単なる偶然。
会長さんは先輩から合鍵を渡されて、自由に出入りできるらしいです。
そして時間が空いたら今日みたいにちょくちょく先輩に会いに来て、もし先輩がお留守だったら代わりに部室のお留守番をやっているそうです。
「と言っても来てくれる子なんてさほどいないけどね。」
でもあまり人が来ない同好会だから、今回の私みたいに見に来てくれる人ができるのはすごく珍しいことで、会長さんは一度でも私に会いたかったと、私にそう話しました。
「みらいちゃん、みもりちゃんが来てくれてすごく喜んでたわ。
本当にありがとう。」
っと初対面の私に直々お礼を言う会長さんに、私は特にお礼を言われるほどのことはやらなかったって、すごく慌ててしまいましたが、
「ううん。あんなに嬉しそうなみらいちゃんはすごく久しぶりだったから。
よかったらこれからもみらいちゃんと仲良くしてくれる?」
会長さんはそんなにかしこまることはないと、もう一度私にありがとうって言いました。
思ってもなかった入部希望者。
仮に体験入部と言っても、ただ同好会に興味を持ってくれただけでたまらないほど嬉しかったという会長さん。
彼女がどれほど同好会のことを大事にしているのか、特に先輩のことをいかに大切にしているのか、私はこの短い間、彼女と話し合うことでよく知るようになったのです。
「そういえば自己紹介…まだだったんだ…」
いきなりテレビとかでしか見たことがない有名人が目の前に現れたことにびっくりして、今まですっかり自己紹介を忘れていたことにやっと気づいた私は、
「すみません…!自己紹介がまだでした…!
に…「虹森美森」です…!
よろしくお願いします…!」
まず今までの非礼を詫びて、目の前のお姫様に改めて自分のことを紹介しました。
そんな私に、
「「セシリア・プラチナ」です。
こちらこそよろしくお願いします。」
会長さんもまた笑顔で応えてくれたのです。
「もう知っていると思うんだけど、私は生徒会で会長を務めさせてもらってるわ。
だからみもりちゃんの話ならお嫁さんからいっぱい聞いたつもりよ。」
「お嫁さんって…」
生徒会に入って日も浅いのに、もうすっかり馴染んでそれなりに有名人となったゆりちゃん。
会長さんはゆりちゃんは今年入った1年生の中で、特に印象が強くて優秀な逸材だと、次の生徒会長も狙えるかもしれないと、私のゆりちゃんのことをいっぱい褒めてくれました。
もう知っていたことでしたが、やっぱり自慢の幼馴染が褒められるのは鼻が高くなってすごくいい気分なのかも…
それから私と会長さんはたくさん話し合いました。
私の知らない生徒会でのゆりちゃんとことや同好会のこと、先輩とかな先輩のこと。
また会長さんの知らない私が知っている私だけのゆりちゃんのこととか、ここ数日、同好会と先輩たちから学んだことや経験したことなど。
会長さんは有名人なんですから、最初はそれなりに緊張したり、もし私の話がつまらなかったりしたらどうしよって心配もしてましたが、
「すごいわね、みもりちゃん。」
「い…いいえ…!それほどでも…!」
会長さん、すごく真剣に私の話を聞いてくれて、気がついたら私はいつの間にか会長さんと普通に楽しくおしゃべりをしていたのです。
話している途中に気づいたのは、先輩が言った通りにこの会長さんだって本当は私たちとそう変わらない普通なJKってことで、一緒に分かち合えるものがあるということ。
それだけで私はちょっとおこがましいかもしれませんが、会長さんとほんのちょっとだけ仲良くなった気がしました。
「ちょっと調子に乗りすぎたかな…」
っとこっそりそう思った私に、
「そんなことはないわ、みもりちゃん。」
会長さんが自分だって私のことをすごく親しく感じていると言った時、
「今のって、もしかして…」
私はようやく世間で噂になっている会長さんの能力のことを信じるようになりました。
「ええ。私には今のみもりちゃんがどんなことを考えているのか、全部見えているわ。」
特に隠したり、誤魔化したりすることもなく淡々と自分の能力のことを話してくれる会長さん。
そのあまりにも平然とした表情に私はむしろちょっと怒らせちゃったかなと、ふと心配になりましたが、
「ううん、そういうんじゃないから安心して。」
会長さんこんな私の気がかりも読み取って私のことを安心させてくれたのです。
正式名「真理支配」。
神に等しい「七色」級の能力の一つである「黄色」で、能力は「神眼」と呼ばれる目で他人の考えを読んだり、操ること。
会長さんはこれを生まれ持った先天的な能力で、発現したのは小学校に入った頃だと説明しました。
人の考えが見えて、その上、操ることもできる。
実に便利そうで、同時にちょっとゾットする能力かもしれないと、無意識にそう思ってしまう私に、
「その通りよ。便利だけど、不気味な能力ということには間違いないわ。」
会長さんは自分もそう思っていると、自ら自分の能力のことを認めました。
「まずは謝っておくわね。
ごめんなさい、勝手にみもりちゃんの考えを読み取ってしまって。」
っと話を始める前に、勝手に頭の中を覗いてしまったことを謝る会長さん。
私は特に気にしないと言ったんですが、
「でも私は誤解されたくないわ。
これは私の能力が勝手に読み取って、私に知らせているだけだけだから。」
会長さんはこれのせいでせっかくの友達を失いたくないと、正直に自分の気持ちを打ち明けてくれました。
昔の神界の人たちは会長さんのような特別な能力のことを神から預かった特別な力、「権能」と呼んで神聖なものとして崇めてきました。
そしてそれが使える人は「神の代理人」として世界の人々に崇め奉られました。
でも現代に至って、これらの能力の価値は転落して、特に会長さんのような能力は恐れの象徴として疎まれ、避けられるものに過ぎませんでした。
今は色んな研究が行われて、その価値がぐんと上がるようになりましたが、それでも自分の考えが他人に見られることだけは避けたかった人たちは今もこのような能力を持った人たちから距離を置きました。
そして会長さんにはもう一つの問題があって、それは力の大きさゆえ、能力が周りの人たちの考えを勝手に読み取ってしまうということだったのです。
「今は大分マシになったけど、これのせいで随分ひどい目にあったこともあるの。
気絶したこともいっぱいあるし。」
望まなくても勝手に流れてくる他人の考え。
子供の頃は能力の使い方を全く知らなくて、記憶のオーバーロードによって気を失ったことも多々あるという会長さんの話に、私はそんなに都合の良いことだけではなかったということに気が付きました。
でも何より会長さんを苦しめたのは、
「一番嫌だったのは自分が他人に化け物みたいに思われて、避けられることだったの。」
ただ考えが見えるということだけで、自分が皆から避けられることでした。
誰にも侵入できない不可侵の領域。
それに勝手に踏み込んでくるイレギュラーを全部受け入れられるほど人というものは器の大きい存在ではない。
子供の頃はそれがすごく嫌で、自分の能力を心底呪ったこともあると、会長さんは今日初めて会った私にそう話しました。
「でもある日、私は自分の能力の使い方についてコツを掴めたの。
ある出会いのおかげでね。」
でも会長さんは自分の力にくじけませんでした。
むしろこの力をもっといいことに使おうと、そう思うようになったそうです。
とても大切な記憶。
それがある限り、自分は他人の考えに流されない。
軸さえあれば、自分は自分のままでいられると、会長さんはその能力のコツを教えてくれました。
大半の人たちは相手の考えが分からないから悩んで、苦しんでいる。
私だってそうで、ゆりちゃんもきっとそうだと思います。
だから相手の考えがすぐ分かる会長さんの能力はとても魅力的で便利だと思いますが、それ以上に他人の見たくもなかった記憶が勝手に流れてくるのはすごく苦しいことだと、こんな私でもよく分かりそうな気がする。
でも会長さんは自分の中に絶対ブレない自身を保って能力を制御して、ひいてはこの力を使ってもっと皆のためになろうと、その能力を完全に自分の味方にしていました。
「昔と比べたら今は大分制御できるわ。
色々不便なところはあるけど、今はそれなりに受け入れるようになったから。」
もう自分の能力のことを嫌わず、ありのままで受け入れられるようになったという会長さんの話は、どこか自分に足りないところを埋められる何かを与えているような気がしたのですが、それが一体何なのか、私は最後まで見つけられませんでした。
でも、
「だから勇気を失わないで、みもりちゃん。
あなたの心にもブレない、揺るがない自分だけの軸があるから。」
最後のその一言に、私はとてつもない勇気をもらってしまったのです。
会長さんは自分の能力を大分制御するようになったと言いましたが、まだ完全というわけではなさそうです。
特に自分が仲良くなりと思う人が相手ならどうしても無意識に考えを読み取ってしまうとー…って
「そ…それってもしかして私と…?」
「あら。今気づいたのかしら。」
っとあまり信じきれてない私に、
「そうよ。私はみもりちゃんとお友達になりたいと思ってるわ。」
会長さんからそう言ってくれた時、私はもう一度夢幻に連れて行かれるような奇妙な感覚に包まれてしまいました。
神界を代表するスーパーアイドル。
全世界の人々から愛される「ハイエルフ」のお姫様が私とお友達になりたいと、その本音を明かしてくれた時、私は一瞬、息が止まって意識が飛んでしまうような気分でしたが、
「よかったら私のお友達になってくれない?「虹森美森」ちゃん。」
そう言いながら、私の手をギュッと握る会長さんのおかげで、私はなんとか現実に戻って、
「は…はい…」
なんとかそう答えられたのです。
激しくドキドキしてきた胸。
でもこんな私のことを、仄かな笑みで見つめている会長さんのことからふとあのおっぱいの大きい先輩に初めて出会った時のことを思い出しー…
って会長さんって、おっぱいデッカ…!
「せ…先輩ほどではないけど、一体なんなの…!?この大きさ…!」
どうしてあの先輩の周りの人たちはこんなにも胸が大きいのか…
とにかくあんな地味にくだらないことも含めて、私は会長さんって本当に先輩と似た雰囲気がすると、そう感じるようになったのです。
心を落ち着けて、安心させてくれるフワフワで温かい雰囲気。
私は先も私のことをせっかくできた友達と言ってくれたこの優しい会長さんとこれからも仲良くできるような予感がしたのです。
「それにしても会長さんって先輩とすごく仲いいんですね。
合鍵とかも持ってるってなんだか恋人っぽいかも。
なんちゃって…」
っとちょっと調子に乗っちゃったかなって思ったその時、
「こ…恋人だなんて…」
私は今日初めて会長さんの一番の乙女心に満ちた顔を見られました。




