第151話
遅くなって誠に申し訳ありません。最近少し詰まっているって感じなのでなかなか創作が捗らなくて少し遅れてしまいました。
早く元の調子を取り戻せばよいのですが…
いつもありがとうございます!
「ななー部活行こうー」
「あ、はいですわ。」
午後の授業は無事に参加できたななを迎えに来たかな。教室の外で手を振っているかなの姿を見るとふと安心までしてしまうななであった。
「二人は本当に仲良しなんだね。」
そしてその姿を羨ましく見ていたうみは二人にそう話をかけた。
「まあね。でも説明会か終わったらななは会長と一緒にツアーに行っちゃうからしばらくはこれもできないかな。」
残念そうにななとの別れを惜しむかな。そういうかなと同じくかなとの当分の別れをななも同じくすごく残念がった。
「そうですわね。生徒会の仕事は緑山さんからなんとかしてくれると思うんですがさすがに…」
だがかなとの別れによる気持ちについては決して正直には言えなかったななであった。
「赤城さんって本当に恥ずかしがり屋さんだな。正直に言えばいいのにね。中黄さんと別れたくないって。」
「ちょ…ちょっと!?何言っているんですの、あなたは!?」
ニヤニヤしながらななの本音をさらけ出すうみ。ななにとって人の頭を見られるセシリア以上、この人の本音を貫く人魚も厄介な女だった。個人的にはライバルっと思っているくらいだがこういう時はうみの方が圧倒的にななの抑えているのであった。
「べ…別にそういうことではありませんよ!?」
「え…?そんなことではなかったの…?なな…」
もちろん更にその上にいたのはあえて言うまでもなくかなであった。
「私はななと別れちゃうの嫌だったのに…ななは大丈夫だった…?そうか…それもそうかもね…だってななは人気アイドルだし…」
早速落ち込んでしまうかな。ななにとってそれ以上心を痛ませることはこの世に存在しなかった。
「ち…違いますわ…!わたくしだってすっごく寂しいですわよ…!?でも何か口にするのはちょっと恥ずかしくて…!」
その姿に思わず思っている全部を出してしまうなな。相変わらずななはかなにはすごく弱い女の子であった。
「良かったね、中黄さん。」
「うん!」
今日のななは見事に二人に遊ばれてしまったのであった。
「よ…良くもわたくしをからかいやがって…!」
「あははっ。ごめんごめん。でも赤城さんって反応が明らかすぎて面白いからつい。」
普段あまり見せてくれない子供みたいな顔でぷんぷん怒るななを宥めるふたり。だがかなにとってはそういう起こり顔すら愛らしく見えるだけであった。
その時、うみの目についたのは笑う度にちらっと見えるかなの八重歯だった。一見少しは跳ねっ返りのように見える八重歯だったがそのおかげでかなの笑顔は一段と無邪気で元気そうに見えたので生徒の中では「必殺笑み」と呼ばれるほど評判が良かった。
「そういえば中黄さんって赤城さんみたいに八重歯とかあったんだね。いつも見ていてたのに全然気にしてなかった。」
「あ、これ?」
っと自分の歯を見せるかな。日頃から丁寧に手入れをしていたからかなの口の中の調子はきれいに揃って健康そのものであった。
「母さんの遺伝かな。「赤い3家」の子は皆、こんな歯を持っているって。」
「へえーそうなんだ。」
不思議そうにかなの八重歯を観察するうみ。だがまもなくかなから言った「赤い3家」っという単語に少し複雑な気持ちになってしまった。
だがうみはかなと違って自分の気持をいくらでも隠せる天才女優。彼女は決して自分の気持ちのせいで今の空気を乱したくなかったのであえて平気そうな顔で平然と会話を続けた。
「じゃあ、赤城さんもそうなの?」
「まあ、偶然かも知れませんがご覧の通りわたくしにもありますわ。っていうか我々は元から吸血鬼ですからあるのが当然ではないかと。」
かなと同じく少し口を開いて口の中の八重歯を見せるなな。かなの歯とは違って実際使われている吸血鬼の八重歯は実戦に備えて噛まれたらすぐ血が出てしまうほど鋭くて切れていてまるで刃物のように危ないものにまで見られるくらいであった。
「でも実際今の時代でこの歯が使われることはめったにありませんから心配しなくてもいいですわ。むしろ手入れとか少し面倒くさいし。」
「ななの家は定期的にこれの検査を受けるんだってね。一族の証だって。」
ちなみにななは今年からその歯の検査をまた母親から運営している歯科で受けることにした。
「うちの母さん、本当にななのことが好きだから。ななが来なくなってずっと落ち込んでいたんだよ。」
「お義母様には本当に面目ありませんわ…そんなにわたくしのことを大切にしてくださったのに…」
「…それはいいけど何か漢字とか、可笑しくない…?」
ななは将来自分の名字を「中黄」と変える予定であった。
「それにしても中黄さんも「赤い3家」子だったんだ。」
「正確にはお母さんの方なんだ。」
神界の「赤座家」、魔界の「赤城家」、そして人界の「赤絵家」は格世界から「赤い3家」と呼ばれるほど大きな権力を持っていたが犯罪組織の「赤座組」と吸血鬼の「赤城家」とは違って人界の「赤絵家」は医学を家業にしている随分普通な家紋であった。
「神樹様」によって世界が一つになった頃は「大家」に賛同して世界政府に非協力的だったがかなの母親「赤絵花子」の祖父「赤絵吉保」によって「大家」との関係を完全に断ち切った後は世界政府に積極的に協力することになった「赤絵家」は今でも歴史と誇りを持っている一族として人々に仰がれているのであった。
「そして「赤絵家」の血が流れている子は誰でもこういう八重歯が生えているの。」
「なるほどねー何かちょっと歴史勉強会っぽくなったけどとても面白かった。ありがとう。」
「どういたしまして。」
授業では習えないことまで分かることになったうみはあのみもりならこういう話、すっごく興味津々に聞いただろうっと思うことになった。
「でも「赤絵家」はななの家や「赤座家」と全く関係ない…」
つい話に盛り上がってもう少し話を聞かせてあげようっとしたかなは慌てて自分の口を塞いでしまった。
「ご…ごめん、ウミウミ…つい燥いじゃって…」
謝るかな。自分の前で「赤座」って名前を言ってしまったのをこんなに気にしているとは、うみは自分も知らないうちに皆に気を使わせていたかも知れないっと思って慌てて謝るかなに平然と振る舞った。
「大丈夫大丈夫。もう過ぎたことだし。それにそんなに気を使うとこっちまで悪いって気分になっちゃうからそんなに謝らないで。」
「でも…」
っと言ってあげてもまだ心が収まらないようなかな。元からアホほどいい子だから仕方はないと思うんだがさすがにこんなに心配されるのは逆にこっちから気を使ってしまうから少し控えて欲しかったうみであった。
「わたくしからもお詫び申し上げますわ。この人だって別に悪気があったわけではありませんので…」
ついでにかなのことを弁護するなな。婦婦揃って謝るこの状況はさすがに気まずいだと思ったうみは
「分かるよ、そういうの。だから二人共もう大丈夫。なんともないから。」
本当になんともないっと笑ってみせた。
「でもよく考えてみればあの子も二人みたいに八重歯があったよね。」
その同時にかなとななから今はもう自分の傍にいなくなってしまったある女の子のことを思い出してしまったうみ。彼女は自分の思い出に残っている八重歯を持っている名前に「赤」っという字が入っているある女の子のことをじっくり思い描いた。
笑う時にちらっと見えるちっちゃくて可愛い八重歯を持つ赤い髪の毛の小さな女の子。いつも自分の傍で明るく笑っていたその子を失ってしまった以来、自分は変わってしまったっとうみ自身はそう思った。
自分の目の前で精一杯謝っているこの婦婦みたいに昔の自分もその子とずっと一緒だったが
「…もううみっこなんて好きじゃない…」
その子はそれを最後にして自分から離れてしまった。
それどころかついに歪んだ形ではみ出してしまった愛憎は最後でその子を奈落の底まで追い詰めて二度とそこから出られなくようにその子をなかったことにしてしまった。
それがたまらなく悲しくて慈しんでいた自分も結局歪んでしまい、そのあげく無関係な生徒達まで巻き込んで皆に辛い学校生活をさせてしまった。
「もうあなたのことを思い出すことすら私には許されない。」
引き戻すことはできない。そうしないと自分だけのみらいの笑顔を奪われた怒りは誰にでも報われない。そう思ったからうみは自らこの道を選んだ。皆を巻き込んだ罪も、最後まで憎めなかったことりのことから背を向けた痛みも、全部自分が背負ってゆく修羅の道を。
「…でも今日はちょっと会いたいね…赤座さん。」
今日のうみは本当に寂しかった。
「青葉さん?」
「ウミウミ?大丈夫?」
少しぼーっとしていたうみのことを心配そうに見つめていた二人からの呼び声にやっと気がついたうみ。
「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしていたわ。」
「大丈夫ですの?どこか具合が悪いのでは?」
ちょうど先からずっと調子がおかしかったうみを保健室にでも連れて行こうとするななだったが本人から大丈夫っと言ったのでそれは止めることにした。
「あ、モリモリからの電話。」
先からずっと震えているポケットの中から携帯を持ち出して発信者を確認するかな。部長であるみらいの不在時その代わりを務めることになったのはゆりや自分達でもない入学したから間もなかった1年生のみもりだった。
「部長直々の任命ですから従うしかありませんわ。」
っと言ったななだったが心の底からはなんとなく納得する雰囲気だった。
「虹森さんが仮部長なのか。でもちょっと似合うかも。」
思わず部長の振る舞いをしているみもりのことを思い出して笑ってしまううみ。
「そうだね。ああ見えてもしっかりしているから。ユリユリもいるし。」
「それに何か人を引き寄せる力があるんですわよね、虹森さんって。」
いつの間にか同好会のことを引っ張っていた普通だらけのみもりのことをあの「Fantasia」のななから認めている、それだけで彼女には十分その代わりを務める資格があったということであった。
「私もなんとなく分かるかもね。虹森さんってほら。いつも頑張っているし。」
引っ込み思案で大した特技もないあの黒髪の女の子は誰よりも普通だったが皆と仲良くなってアイドルがしたいっというみらいの理想に一番ついていく子だった。自分なりの理由もあったかも知れないがとにかくうみもまたそういう優しくて頑張り屋さんだったみもりのことが結構好きだった。
「そうね。それにしてもそろそろ私達は行くね?何かあったら電話してね?ウミウミ。」
「うん、ありがとう。」
みもりからの督促電話にやっと部活に向かって足を運ぶかななカップル。その後ろからふとうみは久しぶりに同好会に遊びに行きたいっと気持ちが湧いてきた。
「ね。良かったら私も今日遊びに行ってもいい?ちょうど合唱部は今日休みなんだから。」
「珍しいですわね。別にダメっというわけではありませんが。」
普段あまり同好会の方には行かないうみのことを珍しく思うなな。理由はわからないんだが今日はみらいもいないっと先セシリアから言われたから簡単にオーケーするななであった。
「行こう行こう!ウミウミが来てくれたら皆も喜ぶよ!」
そしてこういう賑やかな雰囲気が大好きだったかなはその訪問を大歓迎した。
そうやって部室に向かう信号機トリオ。だがその時、クリスの魔法が解けていた彼女達はすっかり忘れていた。今日のみもりの体にどんな変化があったのかを。




