第145話
いつもありがとうございます!
「なにこれ…」
言葉も失ってしまったそうな顔の石川先生。自分から相談してあげるっと言ったのにこの反応だなんて、これって結構失礼じゃないかい?っと思っているような顔ですが
「いや…いくらなんでも…」
さすがにこんなの見ちゃったらその場で固まっちゃうのも当然でしょ。
タイツを少し下ろしてその中でいきなりこんな物騒なものを担任の教師の前でお見せしちゃう女子高生なんてこの世に私しかないですから…
「あ…」
もはや相談の件は完全に忘れきってしまったような先生はそのまましばらくずーっと私のお股に生えているあれに釘付けになっていました。っていうかそんなにじーっと見られたらめっちゃ恥ずかしいんですけど!?
「いや、ごめんね…こういうの巫女様のエロ同人誌とかでしか見たことがなくてちょっと驚いちゃって…」
普段何を書いていらっしゃってるんですか、巫女様!?
「ほ…本当にこんなのがは生えちゃうんだ…初めて見たわ…」
「いや…普通は生えませんから…」
これには色々理由があって…
「まだ立ててもいないのにこの大きさ…確かに悩むのも当然かも…挿れる相手を探すのも一苦労だよね…」
先生!?
「…っていうかそういうの悩みもせずにあっさり出しちゃうんだ、虹森さん…」
あ…何か最近ちょっと耐性とか付いちゃって…
その後、私は今回のことについて詳しい説明を話すことにしました。これはただクリスちゃんの趣味でつけられたもので今回はクリスちゃんの能力による夢の共有ってやつだから目が覚めたら全部元通りに戻るって。
それを聞いた後の先生の表情はなんだかすっごく残念そうに見えましたので私はその理由を聞かざるを得なかったんです。
「そうね。せっかく火村さんみたいないい子のことも知ってたのに残念だなってね。火村さんって大人しくてあまり目立たないから話す機会が少なかったから。」
あ、そっちだったんですね。私はてっきりこれのことだと思いました。そうですよね。すみませんーいくら先生でも生徒を相手にそんなことまではしないんですよねー
「まあ、それもあるかな。女の子が相手なら妊娠の心配もないし。そんなすごいのが夢のものだなんてー本当にもったいないよー」
はい!?
でもそんなにがっかりしなくてもいいです。先クリスちゃんに聞いた話によるとここからのことはいずれ外の世界からも起こることらしいです。いわゆる「予知夢」ですね。
私は特別に火村さんとお友達になったことを覚えさせられたんですがたいていの人はここからのことを全部忘れるようになってしまうのです。でもいずれは現実からも起こり得ることなんだからそんなに惜しまなくてもいいだそうです。
「そうなんだ。黒木さんって本当にすごいことができるんだね。」
まあ、その代償として私の匂いを嗅いだりするのはちょっとあれなんですけどね…
「夢…か。じゃあ、私はこんちゃんにそんなことをこれからもう一度聞かされるんだ…」
「先生…?」
あ…あれ?私…今、何かいけないことでも言っちゃったんでしょうか…でもクリスちゃんの能力のこと以外は特に大したものは言ってなかったのに…
急に少し暗い顔になって先生の視線をたどり着いたその先に私の目についたものは幸せそうな顔で微笑んでいる先生とご家族の皆さんが写っていた先生の昔の家族写真でした。
「家族写真…ですね。」
ゴーレムって種族は成長はするけどある地点を限って成長により外見的な変化は止まってしまうらしいです。だからなのでしょうか、昔の先生って今とほぼ同じ感じですね。若奥さんって感じっていうか…
でもそれ以上私の目を引くのはぶっきらぼうな顔で先生の手をギュッと握っていた大きさだけを縮めたそうなちっちゃい石川さんでした。
「子供の頃からずっとこんな感じだったんだ、石川さん…」
「あはは…こう見えてもあの時、ママと離れたくないってめっちゃ泣き出したから離すのに一苦労だったんだ。今じゃあまり想像できないかな。」
「そ…率直に言うと確かに考えづらいですね…」
あの人ってあまりワガママとか張るタイプには見えませんから…でもあの鉄の要塞みたいな人にもそんな子供っぽい時があったという当たり前なことに思わず驚いてしまう私でした。
「じゃあ、こちらの大きな男性の方が…」
「うん。前の夫。私とこの子と違って本当にゴーレムって感じでしょ?ゴーレムの男は大体こんな感じなんだ。それにしても本当に大きいよね。」
私に写真見せる先生はなんだかすごく懐かしそうな表情ですが一方その中には今はもう戻せない過去への切なさが潜んでいるようにその時の私にはそう見えました。
でも何か写真のこのゴーレムの方…前にどこかで合ったような気がしますね…どこだったっけ…
「どうかしたの?虹森さん。」
っと聞く先生。
いいえ…何かちょっとこの方、前にどこかで見かけになったような気がして…
「そう?まあ、ゴーレムの男は大体こんな感じだから。体は無駄にデカブツで頭は禿げているし口数は少ないからあまり面白くない。子供達はすぐ泣いちゃうし女に人気なんて全くなかったけど…」
憂愁に沈んでいる目…その瞳の中に敷かれている仄かな懐かしさを覗いた私はつい先生に持っていた写真を渡してしまいました。
「家族だけはすっごく大切にしてくれた優しい人だったんだ…」
その話を聞いた私はこう思ってしまいました。先生は自分の家族のことを本当に愛しているんだって。
***
「ふあん…」
「随分眠そうですね。昨日は良く眠れなかったんですか。」
口を隠してあくびをするゆりを見て昨日はあまり寝られなかったかなっと思うクリス。
「あ、はい。少し寝不足気味がありまして。でも夢の中で眠られなかったっと言うのは何か少し変な気分ですね。」
「まあ、一応昨日の翌日って設定ですから。」
本物と変わりもないこの世界の現実感にもう一度驚いてしまうゆりであった。
「すごいですね。こういう能力って。ある意味では無敵ではないかと。」
これほど大きな規模で行われる術式に改めて感服するゆり。
「夢」という無意識の空間に干渉するクリスの能力は使い方次第によって相手を二度と起き上がれないようにすることができる凄まじい能力だと彼女は判断していた。本気でこの「鏡」という能力を使えばほとんどの人はまともに対処もできずに廃人になってしまうだろうっとゆりはこの能力のことを心底から恐れていた。
「私なら悪用する方法千個くらいは思い出せるかも知れませんね。みもりちゃんのことなら百万、いいえ、千万!いいえ、1億でも!」
「何をする気なんですか!?」
担任のダイヤに呼ばれて席を外れているみもりのツッコミ穴を律儀に埋めているクリスであった。
「そ…それほど大したことではありませんから。目的の如何によってはよってはある程度のリスクもあるし…このくらいのことならセーフなんですが私自身は未だにこの能力に対して少なくない恐れを持っていますから。完全に制御できるとはいえ危ない能力というのには変わりません…それに私は他の夢魔より弱いから…」
少し落ち込むクリス。
彼女はセシリアとは違って自分の能力の完全なコントロールができたが決して自分の能力に憍慢しなかった。まして自分のことを「ファラオ」とはいえ他の夢魔より力が弱くて人の夢を操れない半人前の夢魔と思っていたクリスに自分のことを強い人だと思わせるのは文字通り夢のまた夢ということであった。
「ファラオ」のくせに他の「ファラオ」と比べて自身も、力も足りない自分のことをいつもみっともないっと思っている彼女はただ自分の能力で少しでももっとたくさんの人々は幸せになればそれで十分だと心から丁寧に願っているだけであった。
「だから私はみもりちゃんと緑山さんのことを憧れていたんです。二人共私なんかとは比べないほど堂々で強いから…」
っといつの間にかいつもの自身が足りないクリスに戻ってしまったクリスのことを心配そうに見つめていたゆりは暗い顔になっていた彼女の手をそっと握って彼女自らの自身への評価を否定してくれた。
「いいえ、私は全然そんな風に思わないんですから。」
「緑山さん…?」
いきなり握らせた手を慌ててもじもじするクリス。
「あなたは誰より強いです。もし私がいなくなったらみもりちゃんのことを任せられるのはあなたしかいません。私はそれほどあなたのことをライバルとして、そして友達として信用しているんです。」
「緑山さん…」
クリスは思った。この前のことで少しは仲良くなったとは思っていたがまさかここまで信用されていたとは思わなかったっと。
今まで誰にもそのような評価を受けられなかったクリスにとってはこれ以上の褒め言葉はなかった。何よりずっと憧れだったゆりから自分がそれほど信用されていたという事実が自分のことを誇らしく思わせたのでつい涙まで出てしまう彼女であった。
「だから自信を持ってください。あなたは私から初めて認めたライバルですから。私、こんなこと、めったに言わないんですよ?」
「は…はい…!」
なんとか元気を出せることになったクリスを見て軽く安堵するゆり。
最後までは言わなかったが彼女もまたクリスにずっと感謝していた。今までみもりのこと以外は目もくれなかった自分がやっと周りのことを見ようとしている。そうやって自分が愛してやまないその子にもっと近づくことができたという事実は彼女の日常をもっと豊かにした。お互いをもっと分かり合って、愛し合う。ゆりはそういう成長を遂げることができたのは全部クリスのおかげだと思っていた。
「あなたは人々を幸せにするための「ファラオ」なんです。だからこれからもよろしくお願いしますね?」
「ま…任せてください!私、頑張りますから!」
見れば見るほどあの子と似ている…っと思ったゆりはそれからしばらくずっとクリスの手をギュッと握っていた。
「でも緑山さん…急にいなくなるなんて言わないでください…緑山さんだって私にはとても大切な人なんですから…みもりちゃんも、緑山さんも、皆私が守ります…」
「黒木さん…」
自分からそんなに憎んでいたのにそう言ってくれる彼女の気遣いが限りなくありがたくていじらしいゆり。彼女は何も言わずに握っていた手の中に指を挟んで
「約束します。」
そうしますっと彼女の心に誓った。
「それじゃ切り替えしてもうちょっと頑張ってみましょうか。」
っと机の上に何かよく分からないおもちゃが詰め込まれているかばんを持ち上げるゆり。
「やはりゴムとかいない方がいいですよね?絶対生の方が気持ちいいですよ。それに私、どうしてもみもりちゃんの子供が欲しいんですもの。」
「でもみもりちゃんって何かそういうとこ、結構厳しそうに見えますから。避妊とか。」
「じゃあ、せめて穴でも開けておいた方が…」
みもりのご苦労はどんどん深まってゆくのであった。




