第144話
いつもありがとうございます!
「その時、「灰島」の援助のおかげで避難民の保護が…」
「なるほど…」
やはり石川先生の授業は分かりやすくて勉強が捗りますね。他の授業も好きなんですがやっぱりこの歴史授業が面白いです。
でも…
「いい話ですね、みもりちゃん♥私からも保護してあげましょうか♥」
「それなら私は精一杯援助しますね♥チチちでも飲みませんか♥まだ出ませんが♥」
この空気での授業はさすがにきつすぎます!!っていうかクリスちゃん、意味分かんないし!!
教科書を置いてきて見せてくださいっと言われたからこんなにくっついているのにひょっとしたら全部嘘だったりとか!?
「ひどいですね、みもりちゃん♥本当に忘れちゃったから嘘じゃないですよ♥ほら、見ている通りかばんの中にはこうやって♥」
「あらあら♥いっぱい♥」
っとゆりちゃんから机の上にかばんを置いて中を確認させた時、私は思わず大きい声で叫んじゃうところでした。
かろうじて叫びそうな口を塞いた私の目の前に見えた中身は昨日、先輩から見せてくれたあの怪しいおもちゃがいっぱい詰まっていました!!いつ持ってきたの!?
「みもりちゃんのベッドの下から見つかりました♥そんなにゆりと遊びたかったんですね、みもりちゃんって♥いけない子♥」
絶対ないよ、そんなの!!それはたまたま勢いで借りちゃっただけで…って何、これ?リモコン?なんで私に?それよりなんでピンク色なの?
「いつでもお好きなだけスイッチ入れてくださいね♥」
「あらまあ♥」
何のスイッチかよ!
「良かったんですね、みもりちゃん♥」
何が!?
だ…ダメです…!全然授業が頭に入らないんですよ…!二人共、勉強する気、全然ないじゃん!このままずっと授業中ツッコミ続けたら死んじゃうのでは…!
「後ろの3人。授業中から静かにね。」
さすがにこれなら先生も気づきますよね…即注意をする石川先生ですが私的には何もしなかったのに注意をされたことだからちょっと濡れ衣のような…
「いけません、みもりちゃん!授業中ですから集中しなくては!め!ですよ!」
「誰のせいかよ!」
っと完全に私のせいだと言うゆりちゃんに少しむっとしたその瞬間、私は思わず
「あ、スイッチ。」
を入れちゃいました。
その途端
「あん…♥」
「ゆりちゃん!?」
っといきなり何かすごい音を出しちゃうゆりちゃん!なんで!?
「ほ…本当におせっかちさんなんですから…♥そんなにいきなり…♥」
だから何がよ!?
「レッツプレイ!っということですね♥」
何言っているの!!
***
「どうかしたの?虹森さん。」
結局怒られました。
「いつも真面目に聞いてくれる虹森さんなのに今日はなんだかちょっと変だな。先生の授業、面白くなかったかな。」
「い…いいえ!決してそういうわけじゃ…!」
少し心配そうな顔になる石川先生。でも本当にそういうわけではありませんから誤解しないでください!先生の授業、本当に分かりやすくて面白いから大好きです!
っていうかなんで私だけ呼び出されて怒られているわけ!?ゆりちゃんも、クリスちゃんも二人だけ巧妙に抜け出しやがって!
「虹森さん?先生、今話しているのよ?」
「あ、すみません…」
また怒られました。
うう…こんなの、濡れ衣ですよ…私、本当に何もしなかったのになんで好きな先生から怒られなければならないんですか…むしろ被害者は私の方なのに…
「何かあったの?何かお悩み事とか?虹森さん頃の女の子なら誰でも普通にお悩みもあるものなんだけどもしかしてあまり人に知られちゃ困ることでもあったの?彼氏のこととか?」
「い…いません、そういうの!」
っていうかできたら多分地味に殺されるかも知れませんよ…ゆりちゃんにとか…
「だったらどうしてそんなに集中してくれなかったの?先生、いつも虹森さんから丁寧に聞いてくれたから虹森さんには感謝していたのに。」
「す…すみません…」
先生…本当にがっかりしたそうな顔をしています…別に本意ではありませんでしたが私って思わず先生に悪いことしちゃったんですね…
でも…
「はい、みもりちゃん♥こうやってキノコさんを弄ってあげれば♥くりくり♥」
「ちょ…ちょっと、ゆりちゃん…!そんなに触っちゃったら…!あふっ…♥」
「あらら♥こんなにじゅるりっと伸びて♥じゃあ、私もお手伝いしてあげますね♥」
「うわっ…!み…耳舐めるの、やめ…て、クリスちゃん…!」
そんな雰囲気で勉強なんかできるはずないですよ!!っていうかこれ、本当にアイドル系の作品ですか!?意味分かんない!!
「何かあったら遠慮なくお話してくれない?知っていると思うんだけど一応先生にも虹森さんと同じ年頃の娘がいるから。どうしても力になりたいんだ。」
っと私の手を握ってありがたいお話を言ってくださる石川先生。
ゴーレムだからかな、先生の手、少しひんやりして気持ちいいかも…
でも話してみてっと言われても困りますよね…こういうの説明したところで果たして先生から納得してくれるかどうか…夢の中だから目が覚めたら全部忘れちゃうことなのは知っていますが自ら感じている時間の経過とか感覚は本物と変わりませんからそういう話、気軽い話したりすることできませんよ…
「虹森さんは絵とか好き?」
「え?」
急に絵の話なんて…
「絵ですか…好きって言われると結構好きな方だと思うんですがそんなに詳しいわけではありませんから…」
「そうか。そういえば虹森さんってアイドルが好きだったっけ。同好会にも入ったし。セシリアちゃんがすっごく喜んでたわ。やっと同好会にも正式部員ができたって。セシリアちゃんって本当に桃坂さんと仲いいんだよね?」
先生…詳しいですね。それに話からもあの会長さんへの親しみも感じられます。
「娘のことでよく話するからね。」
っと言っている先生の顔はなんだか悲しく見えるのはただの気のせいじゃないかも知れません…
「虹森さんのご両親はきっと良い方々だったよね?顔を見れば分かるよ。虹森さんがどれほど愛されていたのかね。」
「私のお父さん、お母さんですか?」
愛された…それについては私自身もそうだったと思います。
地元の大学で教授で働いているお父さん、「国立歴史博物館」の公務員のお母さん。お二人共いつも大忙しのにいつも私のことを一番にしてくださったんです。
毎年私の誕生日パーティーのためにいつも早く帰ってくれたり、運動会や参観授業の日も欠かさなく来てくれたり。お母さんはお仕事中にもいつも私のために博物館やライブ会場につれて行ってくれたし、お父さんだって小学校のクリスマスの時、サプライズのためにサンタさんの変装で屋根の煙突に登って足を滑らせて落ちて怪我した時もありました。
とにかく日頃からずっと私のことを一番大切にしてくださった誇らしいお父さん、お母さんです!
「事情は色々ありますけどそれともお二人さんは私のことをすっごく大切にしてくださって…」
「いいお父さん、お母さんだね。」
そういえば最近はちょっと忙しくなってろくにお電話もしてなかったんですね。後で久しぶりにお電話でも差し上げなくちゃ。
でもどうして先生は急にそういう話をしたんでしょうか…
確かに石川さんはとっても怖いんですけど石川先生は本当にいい先生ですし…この石川先生の娘さんですから実はそんなに悪い人ではないかも知れません。もちろん本当に怖いんですけど!
「確かにあの子ってそういうところあるんだよね。あの人に似ているからかも知れないけど不器用っていうかなんていうか。」
「先生…?」
少しなにかに考え込むような石川先生。そのグラスみたいな透明な瞳に移っていたのが過去から訪れたある日の懐かしさのか、それとも戻せなくなった過ぎてしまった時間へのノスタルジアのか、幼かった私にはまだ分からない感覚だったんですがただ一つ、私の心はそこから感じられた仄かな切なさに少し寂しくなってしまいました。
「先生はね、虹森さんのご両親みたいないい親にはなれなかったんだ。」
なんだか寂しそうな笑みを浮かべる先生。その苦しそうな笑顔にまして胸がちくっとした私でした。
「先生はあの子が幼稚園に通っていた時に別れてしまったんだ。本当は先生の方で育てたかったけど色々事情があってあの子を家に置いて出てしまったの。もっと愛して正しい道で導かなければならない役目のお母さんだったなのにね。だからあの子は未だにあの時のままなんだ。ただ子供の頃からずっとあそこで絵ばかり書いているの。」
「先生…」
既に分かるような人は皆分かっている事実。そんなにそっくりで親子なんだけど石川先生とあの石川さんはもはや親子っと言えないほどもの遠いの関係っというのは結構知られていること。そして先生はあえてそれを意識しないようにしていたこと。
でも親子っという絆はそんなにあっさり断ち切れるものではないですから先生はこんなに苦しんでいるんでしょ…
「今はまだダメかも知れない。でも先生はいつかはあの子の自慢の母親になりたい。そのためにまずは自分の生徒達からいい先生として認められようっと決めたんだ。こうやって皆の心に近づけば少しはあの子の心にも近づけるかなっと思ってね。もちろん単に皆と仲良くなりたいって気持ちもあるし。」
ちょっと恥ずいこと言っちゃったかなっと照れる先生でしたが私は決してそのように思わないんです。大人になっても頑張る先生のことが、お母さんとして、先生として頑張る先生のことが本当にすごいだと思います!誰でもそうしたいけど行動に移すことはきっと想像もできないほど数々な努力を払わなければならないはずですから!理由はともかく今の先生、石川さんのために一生懸命頑張っていますし!
「そうかな…そんなにいいお母さんではなかったと思うんだけど…でもありがとうね?虹森さん。」
かえって慰められたってお礼を言う石川先生。
「だから私は精一杯虹森さんの力になってあげたいんだ。些細なことでもいいから何でも言ってご覧?恋愛でも、進路でも、何でもご相談に乗ってあげるよ。先生は本当に虹森さんのことが心配になっただけなんだから。」
「先生…」
やっぱり石川先生はいつも真剣で親切な優しい先生です!そんなに私のことを思っていたなんて…私、ちょっと感動しちゃいました…!
…ですが果たしてこんなものもご相談になれるかはまた別の問題です…実際私は今朝、これを見た時、泣いちゃいましたから…クリスちゃんは目が覚めたら全部忘れて元通りになるから大丈夫だっと言いましたけど…
でももしかすると先生なら分かってくれるかも知れません!実際こうやって普通に話し合っているし何より他の皆と違って襲ったりしませんから!多分効いてないんですよ、その能力が!先生に相談すればちょっとだけは皆のことを抑えてくれるかも知れないし、何より先生の方からこんなに力になってあげたいっとおっしゃっていますから生徒としてそれに応えなくちゃ!
でもさすがにいざとなるとちょっと気が引けますね…本当に先生、分かってくれるんでしょうか…
「そ…その…笑わないんですか…?犯したり…」
っともじもじしながら聞く私のことを珍しく見つめる先生。
「笑わないよ?約束する。っていかなんで先生が虹森さんのことを犯すの?」
なんでって…到底私の口では言えませんよ、そんなの…だって…
「じゃ…じゃあ…」
こんなものがついていますから……




