第142話
ブックマーク1名様誠にありがとうございます!
就職活動のせいで少し投稿の日が遅れております。申し訳ありません。
日本語と関係のあるお仕事を探していますがなかなか難しいですね。
いつもありがとうございます!
「す…すみません!私、なんと失礼なことを…!」
「いやいや、そんなに気にしなくてもいいから。」
「で…でも…!」
私からの話を聞いた後、慌てて謝り続ける火村さん。別に謝らせるつもりではなかったからむしろ私の方が余計なことを言っちゃったようで悪い気がしちゃいます。
「ごめんね、変なこと言っちゃって。でもさすがにゆりちゃんやクリスちゃんに言わせるのもあれだから。どうせ分かるのなら私の口で言った方がいいと思ったんだけど…」
「ほ…本当にすみません、皆さん…!私、全然知らなかったんです…!」
もはや泣く寸前のうるうるな顔になってしまった火村さん。な…泣かないで、火村さん…!私が悪かった…!
「し…知らないのも当然だよ…!今日知りあったばっかだし…!それに私、そのことの話とかあまり話したことないから…!」
ど…どうしましょう…!別に責めたり、泣かしたりするつもりじゃなかったんですが火村さんっていい子すぎるだから私への申し訳無いって心が大きくなってしまって…!どうしよう…!全然止んでくれない…!
「こ…こうなったらあれしかなさそうですね…!」
「私も同意です、みもりちゃん…!あれならきっと一発で止むはずです…!」
っと隣で一緒に慌てていたゆりちゃんとクリスちゃんからのアドバイス。でもあれって一体何なの!?飴とか!?っていうか私、そんなの持ってないよ…!
「そうじゃなくてもっといいものをつけているのではありませんか!」
「ここが踏ん張り所ですよ、みもりちゃん!」
っと応援してくれるのは嬉しんですがそんな都合のいいもの私、持ってない…ってえええ!?まさかこれ!?本気で言っているの、二人共!?
「私達は真剣ですよ!?あれのありえない大きさと逞しい形なら声も出ないはずです!」
意味分かんないよ、そんなの!!
「そ…そんなのゆりちゃんやクリスちゃんしかいないって…!」
「失礼ですよ、みもりちゃん!」
むっとして一緒に言い返す二人。これのせいで余計にややこしくなっちゃったかも…!それに…!
「虹森さん…♥あれ、見せちゃうかな…♥」
「私も目の前に突き出して欲しいな…♥」
何か周りから期待のすごい視線が感じられていますからこの場であれを出すのはまずいです…!二人が変なこと言うから…!
「何の騒ぎだ。」
その時でした。
いきなりものすごい勢いで押し開いたドアから現れたある人物の声に教室の全員はまるで水でも差されたように一気に静かになってしまいました。
「まだ自習は終わっていないはずだ。なんでまだ騒がしくしている。」
大きな身長。そして腰まで延ばした長くて真っ白な髪。厳しい口調で話している彼女に向けて目をそらしたその時、火村さんはいつの間にか泣くのを止んで彼女のことに釘付けされていました。
「席につけ。学級委員誰だ。」
「い…一応私がやらせて頂いています…」
「高宮か。」
彼女の呼び出しに少し怖気づいた顔で手を上げてみせる高宮さん。1年生の「百花繚乱」の部員の中ではぶっちぎりでトップであるはずの高宮さんが目も当てられているとは…
でもそれも無理ではないでしょ…何せよ今、彼女を呼び出して見下しているあの大きな先輩は「百花繚乱」の副団長で先私達の話の話題の人物であった「石川金剛」さんですから…
「お前、自分が「百花繚乱」という自覚はあるのか。」
「も…申し訳ありません…」
た…高宮さん、私達のせいでこんなに大勢の前でめっちゃ怒られている…!ど…どうしよう…!謝らなきゃ…!
「早く静かにさせろ。授業はまだ終わっていない。」
「しょ…承知いたしました…」
っと言った後、すぐ教室から出でしまう石川さん。彼女が出た後、クラスはあえて高宮さんから言うまでもなく静寂に抑えられてしまいます。
よりによってここの見回りの人があの石川さんだったとは…いつも怖い人だと思っていましたが今日は一段と怖いです…!すみれさんみたいに無口な人だとういのは分かっていましたがそういう人があんなに本気で怒っているのを見ると何か背中がひやりっとするっていうか…!とにかく私を含めてクラス全員、その冷静な姿にみっちり怖気づいて何も言えなくなってしまいました。
「こわ…いくらなんでもこんな大勢の前で叱る必要はありますか…可哀想…」
「そうですね…確か去年のあんな感じでしたね…そうですよね?みもりちゃん…」
「うん…怖かった…」
石川さんがいなくなった後、やっとほっとして胸をなでおろす私。本当に怖かったんですよね…特にあの目が…
「怖かったー」
「高宮さん!」
なんとかクラスの皆を抑えた後、私達のところに行って先の気持ちを打ち明けす高宮さん。よっぽど本人も怖かったそうに未だに表情には先の恐れが残ったいました。
「ごめん…!私達のせいで…!」
「いいよ、別に。あの人、いつもあんな感じだから。」
「そ…そうなの…?」
もう慣れていますって話している高宮さんでしたがそれでも私達にはまだ悪いって気持ちが収められませんでした。
「普段話しも掛けないのに団長と違ってすぐ怒るんだよね、うちの副団長様って。あれを見ると他のクラスにも同じことがあったはずだよ、きっと。」
「いつもあんな感じですか?石川さんは…」
っと聞いてくるクリスちゃん。そしてその傍で少し不安な目になってその答えを待っている火村さん。もしかしてクリスちゃんは火村さんのためにそのことについて聞いているので…
そのことについて少し考え込む高宮さん。
「ん…そうだね。悪い人じゃないのは分かっているけど協調性とか全くないから。見た目だけはかっこいいし一応有名人だから最初は結構人気もあったけど後輩の面倒とかめっちゃ嫌いし他人の気持ちなんかはどうでもいいって感じだから皆すぐ呆れちゃってね。おかげさまで「美術部」は「百花繚乱」所属で唯一の存続危機の部かな。」
「そ…そうなの!?」
知りませんでした…うちの美術部って結構名門だからそんなの全く連もないことだと思っていたのにまさかうちの同好会と同じく存続の危機だなんて…
「まあ、仕方ないかな。「合唱部」の青葉さんは同じ有名人の部長なのに教えるのもうまいし、親しくていいお姉ちゃんみたいな感じでいい評判だけど副部長は自分のこと以外は目もくれないから。だから誰も美術部には入ろうとはしない。今回の説明会でこれっと言った結果を残せなければ廃部は決定事項かも。」
そうだったんだ…私もなんとなくそうじゃないかなっと思ってはいましたがまさか同じ部員の人達もそう思っていたとは…
っていうか高宮さんって「百花繚乱」なのに「Scum」のクリスちゃんと普通にしゃべてくれますね。クリスちゃんから聞いた話によると普通の「百花繚乱」の人達は相手もしないって聞いたのに…
「同じ「百花繚乱」でも従う人によってまた性向が違うんだ。私の場合は団長のことを尊敬して「百花繚乱」に入ったケースだから。一目で見てもあの人はああいうのあまり好きじゃないように見えるじゃない?」
「ゆうなさんのことですか?確かにあの人ってこういう無駄な争いとか好むタイプではないんですね。」
っと同感するゆりちゃん。
私から見てもゆうなさんってそんなことを好きにする人ではないのははっきり分かっています。女の子の体を欲しがったりすぐ舐めさせて欲しがったりする変な人なのは確かですが決して争いとか楽しむ人ではないとういのは確かです。
それに「Scum」には妹さんであるゆうきさんもいるからなおさら…
「でしょ?でも団長って人がいいすぎるから。そんなやり方じゃ副団長も、速水先輩も止められない。やれることなんて精々魔界の人と敵対しないことくらいしかない。とはいえ「百花繚乱」のほとんどは速水先輩に従っているからそういう人は結構少ないかな。それに副団長はあの速水先輩の意見に一番積極的に賛同しているから武力的にも大抵の「百花繚乱」の部員はそれに従うしかない。」
「そうだったんですね…」
少し暗い表情になってしまう高宮さん。
いつも元気そうに笑っていたからあまり気づかれないんでしたが高宮さんにも高宮さんなりに色んな事情がありましたね…
でも今、一番心配なのは先からずっと黙ってこの話を悲しい顔で聞いている火村さんでした…
自分が思っていたより自分の憧れの人がこの学校でどれほどひどいことをしているのか、そして彼女がいかにも寂しい人なのか、それら全部を知ってしまった火村さんの気持ちは私なんかでは計れませんでした…
「で…でも心配しないでね、皆!団長も色々頑張っているから!速水先輩のことをなんとかすれば残りは合唱部の青葉さんだけだから!他の部や子達もいるけどそれもちゃんと説得すればうまくいくはずよ?」
そしてそれを気づいてなんとかフォローしてあげようとする優しい高宮さん。仮の学級委員長と言っても自分なりにこの役目を預かられている間にはちゃんとしようとする責任感を覗かれます。
「とりあえずこの話は内緒にしてね?勝手に部外者にまで部のことを喋ったってまた怒られるのは遠慮したいから。特に副団長には…」
「あ、うん、もちろんここの話だけってことで。」
当然ですよね。こんな部の内側の話、勝手に部外者である私達に話してもいいわけありませんはずですから。とはいえまさか1年の「百花繚乱」の中では一番強いって言われている「カラカル」「高宮ゼマ」さんがこんなに怯えているとは…そんなに怖い人だったのかな、石川さんって…
「部長のゆうなさんや「水の矢」の継承者の速水さんが化け物過ぎてそんなに目立たないかも知れませんがその人だって十分化け物ですよ、みもりちゃん。」
「そうなの…?」
この学校のパワーの均衡については私よりゆりちゃんの方がずっと詳しいはずでしょ。普段あまり見せないんですがこういうことに結構興味あるんですよね、ゆりちゃんって。
「興味ってより万が一の状況のために下調べしておいただけです。私はみもりちゃんのためにあなたの周りで一番強い人でいなければなりませんから。」
「ゆりちゃん…」
ど…どうしましょう…私、今のゆりちゃんを見て何かちょっとキュンっとしちゃったんでしたが…ゆりちゃんもパンツとか要る…?
「…やっぱり気に入ったんですよね?それ…もちろんありがたくいただきますが…」
「あ、やっぱりもらうんだ…」
でも断る気なんた全くなかったいつものゆりちゃんでした。
「石川さんは悪い人なんでしょうか…」
不意にそう言った火村さんのことを振り向いた私達は思わず罪悪感ってものまで感じてしまいました。いつ間にか話がどんどん石川さんのことが悪いって方向へ進んでいたせいだったのか
「ほ…本当にあの人は悪い人なんでしょうか…」
火村さんは今でも挫けそうな目でそう聞いていました。
「私はあの人はただ不器用なだけだと思っていました…でも今の話ならあの人から先立って今の悲しい喧嘩を扇ぎ立てているのでは…」
「そ…そんなことないよ、火村さん…!」
「で…でも…」
不安な口調…今の火村さんが不安な状態というのはあえて言うまでもないほど明らかです。自分の憧れとしていつも人生の灯火になってくれた石川さんのことがまさか先頭に立って自分の愛する学校を分けていたというい事実は相当信じられない残酷なものだったんでしょ…
なんとか否定しようとする私達だったんですが既に大きな失望感に覆われていた火村さんに私達の話は一言も届きませんですた。
「ご…ごめんね!?別にそんな風に言うつもりじゃなかったけどね!?副団長だっていいところも結構あるから!」
状況を一気に分かった高宮さんもそう言ってくれましたがまた潤ってきた火村さんの目元は止む気配もありませんでした。ど…どうしよう…!火村さん、また泣いちゃうよ…!
「大丈夫。あの子はいい子だから。」
その時でした。慌てていた私達の中に入り込んで石川さんのことは悪い人ではないっと言ってくれる穏やかな声に一瞬涙を止めることになった火村さん。
その声の方へ皆が視線を移した時、私達の後ろから延ばした真っ白な手は泣いていた火村さんの頭を優しく撫でてくれました。
「そんなに心配しないでね。あの子はとってもいい子だから皆を傷つけたりすることはしない。今はちょっと道を外れているかも知れないけどきっといつかは分かってくれるよ、きっと。」
「あ…あの…」
慌てる火村さん。彼女の目は手を伸ばして自分の炎の色の髪を温かく撫でていた自分の憧れの人と同じ顔をしているある女性の方に止まっていました。
片手には次の授業の資料を持っていたその方はあの人とそっくりな顔をして、あの人なら決して見せない満面の笑顔をつけて
「君はあの子のことが大好きなんだ。好きにしてくれてありがとうね?」
っと泣いていた火村さんに感謝の言葉を渡しました。
「これからもあの子のことを好きにしてくれる?」
っとお母さんのような穏やかな声でお願いする彼女の言葉に
「は…はい…」
思わず頭をうなずく火村さん。それを言った後、すぐ赤くなった火村さんはとっても可愛かったです。
「ありがとう。」
それから彼女はそう言ってくれる火村さんの頭をしばらくずっと撫でてくれました。




