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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第5章「夢と茸」
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第125-2話

いつもありがとうございます!

「なんだかスカートの中がスースーする気がするよ…」

「まるで女装した「男の娘」みたいですね。」

「なんかめっちゃ嫌だね、その表現…」


っとだんだん感覚まで男の人になってきた私のことを「男の娘」みたいっていうゆりちゃん。

でも今の私はどちらと言うと「フタナリ」だと、ゆりちゃんは専門用語まで使って、そう説明してくれました。

どっちもあまり好きではありませんが…


そんな感じでついに始まった下半身だけが男となった私の一日。

私は、


「絶対犯してやります…私のことを抱かずにはいられないようにしてやりますから…」


って血眼になってなにか意味の分からないことをブツブツ言っているゆりちゃんのことから今日を乗り越えて、無事に現実世界に戻らなければならない。

夢の中では何をやってもいいって思うゆりちゃんの理性のリミッター解除された今、私の体を守れるのは、


「みもりちゃんが嫌がったら即、夢から覚めます。」


というその条件、ただ一つ。

実際、何もできずに、私が夢から覚めてしまうことを恐れたゆりちゃんはこれ以上、私になにか仕掛けたりはしません。

でも、その凄まじい執念は背骨が凍るほどぞっとするくらいで、今でもなにかやらかすのではないかとソワソワしています…


まずは苛ついているゆりちゃんのことを落ち着けなきゃと、説得を試みましたが、


「お…落ち着いてよ、ゆりちゃん…せっかくこういうところに来たんだからもっと楽しいことをしよう…?」

「これが一番楽しいです!」


早くも説得失敗…


って感じでもう頭に「みゆ」ちゃんに会うことしか入ってないゆりちゃんに私の声は届きませんでした。

こうなったら何を言っても聞いてませんから、しばらくそっとしといた方が得策。

そう思って今はあまり気にしないことにしよっと心を決めた自分でしたが、


「うーん…」


やっぱりこういうの、あまりよくないかも…


***」


「どうしたんですか?みもりちゃん。浮かない顔をして。」

「うん…ちょっとね…」


教室に入ってからずっとうつ伏せになっていた私に声をかけてきたのは、


「お悩みことですか?よかったら私が話を聞きます。」


いつの間にかお仕事モードではなく、通常モードに戻っていたクリスちゃんでした。


Scum(美化部)」の部員しか着られない黒いセーラー服。

クリスちゃんの紫黒の長い髪の毛と褐色のお肌とよくマッチしているその制服はこの学校の生徒たちを守る「Scum」の象徴。

派手やかなメークを好むクリスちゃんにはちょっと地味っぽいと思われるかも知れませんが、クリスちゃんはその制服を恐ろしいほど完璧に着こなしています。

さすが本物のお姫様は何を着てもオーラが違いますねー…

って感心したいところなんですが…


「はぁ…」


ここはやっぱりクリスちゃんに一度話を聞いてもらわなきゃ…


今日はクリスちゃんがいるクラスとの共同授業が行われます。

クラス担任の「火邑(ほむら)紅丸(べにまる)」先生が出張で不在になったため、うちの「石川(いしかわ)ダイヤ」先生が代わりに視聴覚室で授業をすることになったのです。

だからクリスちゃんがここにいるのは特に珍しいことではありません。


「緑山さんはどこに?」

「ゆりちゃんなら授業準備で先生のお手伝い。

うちのクラス、まだ学級委員いないから仮にね。」

「そうでしたね。」


この学校の普通科の特性上、学級委員が選出されるまで時間がかかるため、うちのクラスは未だに学級委員が決まってないです。

皆、2年になったら大体の進路を決めて、他の科に移したりするから、誰も学級委員をやりたがらないんです。

今は「百花繚乱(風紀委員会)」の高宮さんが臨時の学級委員をやっていて、それを生徒会のゆりちゃんがサポートする形でやっています。

大体のことは入学の時にもらったタブレット端末で処理して昔と違って結構楽になりましたが、まだまだ人の手が必要なことはいくらでもあるというのが、ゆりちゃんの考えです。

二人共、本当に頑張っていて、おかげさまで私たちが楽させてもらってます。

クラスの皆もそこんとこは同じ意見で、二人にはすごく感謝しています。


というわけで今、ここにゆりちゃんはいませんが、


「あのね、クリスちゃん。実はゆりちゃんのことでね…」


問題は私がそのゆりちゃんのことで悩んでいるということです…


「ゆりちゃんがああやってグイグイ攻めてくるのが嫌ってわけじゃないんだ。

「みゆ」ちゃんのことはゆりちゃんの子供の頃の夢だったし、たとえ夢の中でもそれが叶えるが嬉しいだけだから。」

「では何がみもりちゃんのことを悩ませているのか、聞いてもいいですか?」


っとできれば今、考えていることを話してもらいたいというクリスちゃん。

でもそれにはクリスちゃんの私への優しい心遣いが隠れていることに、私は内心気づいていたのです。


ここは夢の空間。そしてクリスちゃんはその夢を司る「夢魔(サキュバス)」。

夢は無意識の空間であり、ここに入った以上、私が考えていることなんてクリスちゃんには手に取るほど全部分かるはず。

それでも私の口から私の考えていること、気持ちを話してもらいたいと、クリスちゃんはその深い目で、そう語りかけていました。


クリスちゃんに言った通りに、ゆりちゃんのちょっとアグレッシブとも言える勢いが嫌なわけではありません。

ちょっと強引な子ですけど、それほど私のことを大切にしてくれるという証拠ですから。

ただそのゆりちゃんの期待に応えられないというのはまずいって思っただけです。

あんな勢いではなく、ちゃんとお互いのことを向き合ってからこそが大事だと思いますから。

たとえここが夢であることを知っていてもー…って


「ど…どうしたの…?クリスちゃん…急にそんな微笑ましい目で…」


っといつの間にか本当の気持ちを明かしている私のことをなんだか微笑ましく見ているクリスちゃんに、なにか変なことでも言ったの?っと私はクリスちゃんにそう聞きましたが、


「いいえ。みもりちゃんって本当に純粋な人ですねって思いまして。」


クリスちゃんはそんな私にほんのりした笑みを浮かべて、私のことを純粋って言ってくれたのです。


「みもりちゃんにはちゃんと誰かを大切にする力があって、あなたは全力でそれを表現している。

だからこそみもりちゃんはいつも誰かに愛されて、誰かを愛することができると思います。」


そしてそれは私の歌を初めて聞いた時、クリスちゃんが初めて感じた超越的な感情、つまりすべてを司る「愛」だと、クリスちゃんは私のこの気持ちをそう説明しました。


それはただの理想、ひいては幻のようなものかも知れない。

それでも今の時代だからこそ、その愛が必要とされる、クリスちゃんはあの時の私から王として備えなければならない大事なものを学ばせてもらったと言いました。


それに私は、


「お…大げさだよ…そんなの…」


はずいってはぐらかしてしまいましたが、


「あなたならきっとなんでも叶えられます。」


それでもクリスちゃんは心から私のことを信じ、私に勇気を吹き込んでくれました。


「みもりちゃんの心に聞いてください。

自分はどうなりたいか、どうしたいのか。

あなたが何を選択しようと、私達はそれを尊重します。」

「私の気持ち…」


それは初めて私が同好会に入る時に、先輩が私にしてくれた話と同じ話。

自分の心に素直になって、ちゃんと向き合うこと。

私ならきっと正しい選択ができる。

どうして私にあんなことができるのか、その理由まで教えてくれませんでしたが、


「頑張ってください。私の憧れのみもりちゃん。」


クリスちゃんはただ私の手のひらに小さな何かを握らせて、そう言うだけでした。


「愛して、愛される才能。それこそあなたの才能です。」


その最後の一言を残して、


「じゃあ、私は授業が始まる前にトイレに行ってきますね。」


クリスちゃんは私から離れて、後ろの扉から出ていってしまいました。


クリスちゃんが私に話したいこと。

その言葉の意味が完全に飲み込めなかった私は、少しだけクリスちゃんの行動に戸惑いを感じてしまいましたが、それでも分かったものもありました。


「ありがとう、クリスちゃん。」


っと遠く行くクリスちゃんの背中に小さな声でお礼を言う自分。

私は今のクリスちゃんの話から勇気をもらって自分の胸がいっぱいになった気がしたのです。


それはきっと私を元気づけるためのクリスちゃんの心遣い。

かつて私の歌がクリスちゃんに勇気を与えたように、今度は私がクリスちゃんから勇気をもらいました。

それこそ救世主「光」様が唱えた「助け合う」関係。

たとえ私に「人間中心」の「大家」の血が流れていても、私はやっぱり皆とこういう関係が築きたい。

私は「光」様の「合い」と「愛」の関係性こそ、私達の社会が、世界が成り立つことにあたって最も大切なことだと思います。


そして、クリスちゃんが私に話したいと思っていたもう一つが分かった時、


「嘘でしょ…」


私はそこにも「合い」が入っていることがすぐ気づきました。


「「合い」ってそっちの意味だったの…?クリスちゃん…」


クリスちゃんが私にそっと握らせたもの。

ムニッとした不慣れの感触に私は、早速手のひらを開いて中身を確認しましたが、


「これ…絶対()()ってやつだよね…?初めて見たけど…」


それでクリスちゃんが私に伝えたかったことが何だったのかを分かってしまった時は、なんとも言えない複雑な気分になってしばらくぼーっとしていることしかできませんでした。

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