第105話
クリスちゃんと鬼丸の名字が変わりました。最初の計画からはちょっと外れましたね。
いつもありがとうございます!
「あ、ゆりちゃん!」
「みもりちゃん!皆さん!待ってくれたんですか?」
朝からずっと校門で待っていた私達を見つけて走ってくるゆりちゃん。
もうーそんなに急がなくてもいいのに。転んじゃうよ?
今日はいよいよゆりちゃんの謹慎が解ける日なんです!たったの一週間でしたが私、待ちくたびれちゃいましたから!
早くゆりちゃんに会いたくて会いたくて!
「もう、みもりちゃんったら。」
「どんだけお嫁さんに会いたかったのよ。」
「よいではありませんか。わたくしはそういう初々しさこそとても大事なものだと思いますわ。」
「えへへ…」
っとこんな私のことを微笑ましく見ている先輩達の話にちょっと恥ずかしい気分にもなりますがでも私はやっぱりワクワクして仕方がなかったんです!
「おつかれ、ユリユリ。」
「元気でしたか?ゆりちゃん。」
「お帰りなさいですわ。」
こんな朝早く私と一緒にゆりちゃんのことを待ってくれた大切な先輩達。
本当は先輩達だって早くゆりちゃんに会いたくてウズウズしていたそうです。
「お帰り、ゆりちゃん。」
でもやっぱりゆりちゃんに一番会いたかったのはきっと私だったと思います。
「みもりちゃん…」
私のことを見てなんだか少し潤った円のきれいな目。
ゆりちゃんはここ一週間私と会うことすら禁じられて別の所で謹慎しなければならなかったため、その分、誰よりも今日という日をずっと待っていたのです。
「会いたかったですよ…!みもりちゃん…!」
そしてそんなゆりちゃんと同じ気持ちだった私はそうやって一息に私の胸に飛び込むゆりちゃんをそっと抱きしめて
「うん。私もずっと会いたかったよ。」
やっと再開できたゆりちゃんの心を宥めてあげたのです。
たったの一週間でしたが私達には去年、私があの家に連れて行かれたという辛い記憶があってそれ以来一度も離れたことがありませんでしたからここ一週間はいつもよりもしんどい時間でした。
特に私の場合はゆりちゃんがいないと寝付くことができなくて…
電話も禁じられ、謹慎中には近くに来ることも許されなくてまさかこれほど辛いとは思わなかったのです。
幸いクリスちゃんのおかげで夢の中でも会うことはできましたが起きたら全部忘れちゃいますから名残惜しいって気持ちはどうにもならなかったのです。
でもこうやってお互いの体に触れているとなんだかすごくほっとしてー…
「スンスン…みもりちゃんの匂い…胸の匂い…」
…ゆりちゃんも喜んでいるみたいで良かったね…
「もうー朝っぱらからイチャイチャするの?」
「私達もやりましょうー赤城さんー」
「どうしてですの!?」
っといきなり抱きつく先輩とそれを拒もうとする赤城さん。
そしてその姿を微笑ましく眺めているかな先輩。
「そういえば黒木さんがいないですね…」
でもどこにも見当たらないクリスちゃんの姿に少し寂しそうな顔をするゆりちゃんでした。
「あの子なら訓練で今日は学校にいないんですわ。」
っとクリスちゃんと実の姉妹のように仲良くしている赤城さんの答えに
「そうですか…」
今はクリスちゃんに会えないことが分かったゆりちゃん。
平然と日常生活を送っているクリスちゃんのことを少し羨ましそうに思っているゆりちゃんでしたが
「やっぱり強いですね。彼女は。」
その時、その顔が以前に比べて随分清々しくなっていたことになんとなく気づいた私は
「良かったね。クリスちゃん。」
やっとクリスちゃんがゆりちゃんに認められたような気がして二人の中に起きた大きな変化をこっそり喜んでしまったのです。
「影」のことでゆりちゃんが謹慎処分を受けたのは一週間前のこと。
あそこから帰ってきた私達は寮長の紫村さんに反省文を提出しましたがその翌日、ついに入学して初めて理事長室まで禁じられた地である「影」に行ったことで呼び出されたのです。
***
「あの堅物…やっぱり見逃してくれねぇな…」
私達と一緒に理事長室に一緒に呼び出された寮長の紫村さん。
「すまん。私でなんとかごまかそうとしたがどうやらあいつ、手加減してくれそうもねぇ。」
彼女は後始末にしくじったと私達に謝りましたが寮長さんが私達のためにどれだけ頑張ってくれたのかをよく知っていた私達は
「いいえ。そもそも行っちゃダメなところに行ってしまった私達が悪いんですから。」
元はと言えば悪いのはこっちだと決して彼女が悪いわけではないと精一杯彼女のことをフォローしたのです。
「でも寮長さんって理事長さんともお知り合いなんですね。すごいです。」
なんだか理事長さんのことを割りと親しく扱っている寮長さんの態度に私がそう聞いたら
「ああ。こう見えてもそこそこ付き合いなげぇからな。」
寮長さんは彼女のことを自分が「ゾンビ」になる前からの付き合いと説明してくれました。
でもそれが一度の寮長さんの「死」を意味するということが分かった私達はそれだけは聞かないことにしました。
ツギハギの寮長さん。
黒紫のショートカットがそのクールなイメージと相まってとてもお似合いであるこの頼もしい人も一度死んだことがある。
そう思ったら私は急に陰鬱な気分になって足が重くなるような気がしましたが
「気にすんな。もう百年近くの話だから。」
彼女はあまり自分が一度死んだことを気にしてなくてむしろ私に気に病まなと気を遣ってくれたのです。
「すみません、先輩…それとクリスちゃんにも…」
そして首席の音楽特待生である先輩と宗教関係者である「神官」のクリスちゃんのところにまで理事長からの呼び出しが掛かったことに申し訳無さを抱えていた私は早速これについて二人に謝りましたが
「いいえ。ゆりちゃんが戻ったらそうでいいです。」
「私も自分が好きでやったことですから。」
二人共少しの嫌がる気配もせずただゆりちゃんの帰りを喜んでくれました。
「や…やっぱり退学になっちゃったりするのかな…?」
理事長室へ向かっている途中、それなりの優等生だった故、今まで誰かに呼び出されたことがなかった私は自分達にどんな処罰が下されるのかずっと不安で胸を騒がせていました。
もし入学早々退学にでもさせられてしまったらお母さん達になんと言えばいいのか…
「大丈夫ですよ、みもりちゃん。退学になってもあなたにはこの私、「緑山百合」に嫁ぐだけで一生暮らせますから。」
「あ…ありがとう…」
っとゆりちゃんはそう言ってるんですがさすがに退学はまずいですから…
それに私のせいで先輩とクリスちゃん達にも迷惑がかかっちゃったらもう二人に合わせる顔がないよ…
「私のことは心配しないで、みもりちゃん。私にはセシリアちゃんがいるんですもの。」
「私も実家に戻れば平気なんです。」
だからなんで皆退学前提なの!?
っと不安の大きさを嵩ませている私に
「心配すんな。いくらなんでもそこまではしねぇ。」
そういう心配なら必要ないとこの際にはっきり言ってくれる寮長さん。
「あいつも一応教師ってもんでな。生徒には結構甘いしせいぜいどこかのお掃除くらいだろう。」
「お掃除…!」
思ったよりそこまで厳しい罰は当たらないと安心させてくれる彼女の言葉に私はちょっとだけほっとするようになりましたが
「な…なんか嬉しそうね…ゆりちゃん…」
「だって私、お掃除得意ですもの…♥ほーら…♥」
っと私に唾液でジトジトでベトベトなお口の中を見せてくれるゆりちゃんのことに先よりずっと嫌な予感を感じるようになりました…
という何のお掃除!?
とか言っている間、いつの間にかたどり着いた理事長室。
そしてそのドアの向こうで私達を待っていたのは
「来たか。」
芸術文化系として由緒正しき歴史を持っている誇り高い第3女子校の理事長、
「この人が…」
「神族」の「朝倉色葉」様でした。
普通の人なら一度手入れするだけで一苦労するような豊富なボリュームの長い銀髪。
赤い眼鏡の向こうからの私達を向けて鋭い光を放っている黄金の瞳。
そして腰の辺に生えている大きくて聖なる純白の羽。
その姿を見て私はこう言わざるを得ませんでした。
「天使様…」
っと。
子供の頃に読んだお伽噺から出てきたような「天使」の姿。
その美しくて純潔な姿に見惚れてしまった私はしばらくその場から動けなくなってしまったのです。
「ちょっと…みもりちゃんの天使様は私だけだったんじゃなかったんですか…?」
っと思いっきりほっぺを膨らませてやさぐれているゆりちゃんをなんとか宥めた私は
「全員揃ったようだな。まあ、そこに座り給え。」
席を案内してくれる理事長さんの言葉に従って来客用の高級ソファーに皆と一緒に腰を下ろすようになりました。
そして手元の書類から手を止めて私の前で歩いてくるその人を見た瞬間、
「背…高っ…!」
私やゆりちゃんより頭が一つ、いや…2つ分ほどの彼女の高い背に驚いてしまったのです…!
何より…!
「で…でっけえ…」
目の前にドドン!っと威風堂々に見せつけられているこのでっかい2つのメロンは圧巻そのものでした!
「お…大人ってすごいね…」
「そ…そうですね…」
この大きさはさすがに反則ではないんですかって珍しく私と同じ顔で驚いているゆりちゃん。
最近先輩やかな先輩、会長さんみたいな爆乳達に囲まれて過ごしたせいでちょっと耐性が付いたと思いましたがさすが大人の大きさは桁が違うっていうか…!
「ん?誰の頭がでかいって?」
ええ!?急に何を言っているんですか!?この人!?
っていうか言ってませんから…!そんなの…!
っと急に突飛な発言で私達を困らせる理事長さんに
「あ、それ、あいつの口癖みたいなもんだから気にするな。」
いつものことだと言ってくれる寮長さん。
私は今ので理事長さんと寮長さんの仲の距離感がどれほどなのか少し掴むことができたのです。
「「世界政府付属第3女子高校」の理事長「朝倉色葉」だ。よろしく頼む。」
っと正式に私達に自己紹介をする理事長さん。
その日、私は生まれて初めて自分の目で生の本物の「神様」を確かめることができたのです。




