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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第4章「みもゆり」
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第87-29話

去年は大変お世話になりました!

1年間また頑張れたのは皆様からの応援のおかげです!

今年もその応援に応えられるように頑張っていきますのでこれからも何卒よろしくお願いします!

これからも仲良くしてください!

あけましておめでとうございます!


いつもありがとうございます!

「その後、どうなったんですか?」


っとその次の話が聞きたいという黒木さん。

いくら彼女へのお礼として始めた昔話とはいえさすがにこの前まではあんなに大嫌いだった人にこういうこれ以上話を聞かせるのはちょっとためらいを感じるという…


「そ…そうですね…」


でも一度あの頃の可愛いみもりちゃんのことを思い出したら懐かしさと愛しさが止まらなくなった私は自分と意思とは関係なく話の続きをするようになりました。


みもりちゃんと喧嘩して幼稚園を飛び出した私はそのまま町を走り抜けました。

自分が泣かせてしまったみもりちゃんの泣き声が聞こえないほど遠くなって気がついたら私はいつの間にか知らない町にたどり着いていたのです。


通り過ぎる人の中で知り合い誰一人もない見知らぬ町。

その時、私はやっと自分が一番恐れているのが何なのか思い知るようになりました。


「みもりちゃん…わたちが悪かったんでちゅ…」


息が詰まるほど圧倒的な恐怖。

ただみもりちゃんが傍にいないだけで呼吸が苦しくなり、視界がぼやけていく。

やがて精神崩壊にまで近い混乱と錯乱まで引き起こした私はただあそこに佇んで何度も何度もみもりちゃんの名前を呼び続けながら泣いてしまいました。


「みもりちゃん…みもりちゃん…」


あの時、自分が感じたのはただの寂しさや見知らぬ町に対する恐れだけではありません。

それはまさに絶望。

圧倒的な孤独による絶望感と悔い、そしてみもりちゃんへの申し訳無さ。

その全てが私の心にのしかかって幼い精神を押しつぶしていく。

誰も私のことを知らなくて誰も私のことを振り返ってくれない。

あの時まで一度も経験したことのない巨大な感情に私は抗うこともできずただ自分の非力さに絶望しながら泣いているだけだったのです。


幸い近くにいた八百屋のおばさんが泣いていた私のことを見つけ、警察に連絡してくれたおかげで幼稚園の先生が私のところまで迎えに来るようになりました。

そして先生と一緒にきたみもりちゃんのことを見た時、私は


「み…みもりちゃん…!」


なんとか堪えてきた涙を再び溢してしまったのです。


でも


「ごめん…!ごめんね…!ゆりちゃん…!」


そんな私より私のためにあの子の方がずっと大きい声で泣いてしまったのです。


「みもりちゃん…?」


先生の車から降りて八百屋で保護してもらった私を見た瞬間、一思いに駆けつけて思いっきり抱きかかえるみもりちゃん。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で何度も謝ってくるみもりちゃんの顔は今も忘れていません。


「私…!もう悪いこと言わないから…!だからいなくならないで…!私が悪かったの…!」

「みもりちゃん…」


元はと言えばなんでも自分勝手に決めつけ、それをみもりちゃんを押し付けた自分が悪かった。

それでもみもりちゃんは一度も私のせいとは言わなかったのです。

ただもう離れないと言ってくれるように私の小さな体を思いっきり抱き抱えて全部自分が悪かったと謝り続けるだけ。

そんなみもりちゃんに自分もいい加減覚悟を決めてこう言うしかありませんでした。


「ううん…みもりちゃんのせいじゃないでちゅから…悪いのは全部わたちだったんでちゅ…」


みもりちゃんは何も悪くない。悪いのはワガママを言った自分。

私はみもりちゃんの気持ちを分かってあげられなくてその挙げ句自分の理想を彼女に押し付けていた。

自分でももしあの状況なら怒らざるを得ないと私は初めてみもりちゃんの気持ちを理解したのです。


「もうみもりちゃんがお母さんでいいでちゅ…だからもうわたちのことを一人にしないでくだちゃい…」

「うん…!そうするよ…!そうするから…!」


っともう離れないと約束してくれるみもりちゃん。

あの日からみもりちゃんは約束通りずっと私の傍にいてくれるようになったのです。


「お母さんーこれ、何?」


いつか市役所に勤めているみもりちゃんのお母さん、私の「お義母様」が私達にくれた一枚の紙。

それは今は私達の宝箱の中で大切に保管されている私達の人生初の愛の誓い、


「あ、これはね?みもりとゆりちゃんへのママからのプレゼント。

ここに二人の名前を書けば二人はずっと仲良しになれる。」


二人の名前を書き込む「婚姻届」でした。


正式の夫婦になるためにどうしても必要な過程。

お義母様は私達にいつまでも仲良しの二人でいて欲しいと心から望んでいました。


「でも私達、女の子なんだよ?でも夫ってお父さんのことなんでしょ?」

「お父さん…」


その時、ふと思い出した例のおままごとのこと。

私は内心妻の方に自分の名前を書き込みたかったんですが


「わ…私は大丈夫ですよ、みもりちゃん。みもりちゃんが私のお嫁さんになってください。」

「え?いいの?」


あえてその気持ちを抑えてみもりちゃんに妻を譲りました。


「んー…でもね…」


でも何か腑に落ちないようなモヤッとした顔で少し考え込んだみもりちゃんは


「じゃあ、こうしない?」


夫の字を妻と書き換えてこう言ったのです。


「これから私とゆりちゃんは「婦婦」なの。これなら私もゆりちゃんのお嫁さんに、ゆりちゃんも私のお嫁さんになれるでしょ?」

「みもりちゃん…」


っと照れくさく笑ってしまうみもりちゃん。

私はみもりちゃんのそんな気遣いこそ抗えないみもりちゃんの魅力の一つとみもりちゃんの伴侶として彼女と共に未来へ向かって歩く「婦婦」となりました。


でもその時ですらみもりちゃんはまだ気づかなかったのです。

その時、既に私の中から新しい自我が芽生えてうごめいていたことに。


あの日、私は偶然経験することができた圧倒的な絶望を二度も味わわないように自分を鍛え上げ、その同時にみもりちゃんへの気持ちを以前とは比べることもできないほど高めてみもりちゃんのために生き、みもりちゃんのために死ぬ人生を自分の生き方として選びました。

それは私にとって人生の最後のピース、つまりマスターピースと言っても過言ではありません。

幸い私は恵まれた身体能力のおかげでみもりちゃんを守る力を会得し、前代未聞の「怪物」となってずっとみもりちゃんのお傍にいさせてもらうことができました。


私の力の源はみもりちゃんへのひたすらの想い。

みもりちゃんに従属することによって爆発的に上がるフィジカルアビリティ。

みもりちゃんを思えば死の恐怖も、苦痛も全部忘れられる。

それが私の中にいる「怪物」というもう一人の自我だったのです。


でもそのやり方ではたとえみもりちゃんを所有できたとしても本当の幸せを捕まえられないかも知れない。

黒木さんはそれを私に教えたかったと言いました。


ただ拘束して縛ることではなくお互いの本音をぶつけ合って寄り添うこと。

まるで彼女は私にそれができていないと話しているようだったので私は少し屈辱的な思いをしましたが


「みもりちゃんならきっと分かってくれていると思います。ずっとあなたのことを待っているんですから。」


今の自分には見えてないみもりちゃんが彼女の目には見えているかも知れないと私は自分にも知らないうちに彼女の話に耳を澄ませていたのです。


「あなたがどうであれみもりちゃんは心からあなたの全てを迎え入れてくれる。それだけは私が保証しますから。」


だから怖がらずにありのままでみもりちゃんに接して欲しい。

彼女が見抜いていたのはみもりちゃんのことだけではなく


「あなたは十分可愛くて強いです。そんなあなただからこそあの子に愛される資格があると私はそう思います。

あなたのその変わらない一途の気持ちは報われるに値します。

あの子ならきっとそんなあなたのワガママも全部受け入れてくれるはずです。」


私の気持ち、そして私達の愛の関係性までだったのです。


「…」


早速言い返すことはできませんでした。

ただ私は何故か彼女にこう問いかけていたのです。


「あなたは本当にみもりちゃんと私の何になりたいんですか?」


普通な友達になるためにとは思えないほどあまりにも献身的な彼女のことに本当に望むことがあれば言ってご覧なさいと言いましたがそんな私の浅ましい予想をあざ笑うように彼女から出した答えは


「私はただお二人の笑顔が取り戻したいだけです。」


先と変わりのないあっけないものでした。


「でもちょっと欲を言わせてもらえば…」


でもほんのちょっとだけ自分の本音を私にぶつけることを決意した彼女は


「私はやっぱりお二人のような仲良しになりたいです。」


素朴なありのままの気持ちをそっと私に明かしてきたのです。


「もう…やっぱりずるい人…」


その答えに一点の偽りもない。

いつの間にかそう思うようになった私は少しずつ自分の心に彼女のことを入れている自分自身にただ戸惑っているだけでした。


「それじゃ、帰りましょうか。」


っと席から立ち上がった彼女は


「あなたの「楽園」へ。」


その手を差し伸べて私を絶望と諦めにしゃがんでいた私を引き起こしてくれたのです。


思ったより強い力。

彼女の手に引っ張られて立つことになった私。


「入りますね、お嬢さん。」


そしてその同時に扉の向こうから聞こえる女性の声。


私が返事もする前に黒木さんは扉を開けて客人を迎え、その客人の前に私を向かい合わせました。

その時、自分が何を感じ、何を考えているのか後の自分ですらあまり覚えてません。

ただ扉の向こうで少し気まずそうな、それとも嬉しいような、とにかくそういう複雑そうな顔で私と向き合っているその黒髪の「楽園」の女の子を見て


「みもりちゃん…」


その名前を切なく呟いことだけははっきり覚えています。


「えへへ…」


ぎこちない笑顔。

その少女はまず私の名前を呼んで


「元気…だった?ゆりちゃん…」


私の体を案じてくれました。


私の生き甲斐。私の生きる意味。そして私の生きる原動力。

その子の名前は「虹森(にじもり)美森(みもり)」。

私のたった一人の幼馴染であり、私の家族であり、私の伴侶。

その子はもう一度私のことを嫁として迎えるために私の前に現れました。

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