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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第4章「みもゆり」
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第87-27話

いつもありがとうございます!

「私とみもりちゃん、最初から仲が良かったわけではなかったんです。」


少し落ち着いたとこでちょっとだけ昔話がしたいという緑山さん。

地元では結構有名な話だそうですが私が彼女達のことを知っていた頃にはもうこれ以上はないほどの仲良しだったのでそのことを知る余地もありませんでした。

疑いようもないかけがえのない仲良し。

それが自分が知っている「フェアリーズ」のみもりちゃんと緑山さんだったのでその話はとても新鮮なものだったのです。


「両親が親同士で友人関係だったので私とみもりちゃんの付き合いはそこそこ長いですが最初からみもりちゃんのことが好きだったわけではありませんでした。

今思えばちょっと可愛くて隙があったら犯したいと思ったくらいですかね。」


「そ…それって結構好きだったんじゃ…」っと些細な疑問もしましたがここはあえて黙って彼女の話に耳を傾けることにする。

そう決めたはずの自分ですが


「みもりちゃん♥エッチなことしませんか♥今なら中出○も全然オーケーですよ♥

と言っても年中オーケーですけどね♥」


今の彼女のことを考えるとさすがにそう簡単には想像できませんね…

みもりちゃんのことが好きではない緑山さんのことって…


そして続く彼女の話。

緑山さんがどういう意図で私にそういう話をしたのか、その意味までは分かりませんでしたがとにかく私は自分の知らないみもりちゃんと緑山さんのことをもっと知るために彼女の話に耳を澄ましました。


「私も生まれた時は病気でしばらく病院生活を続けなければなりませんでした。

幸い幼稚園に入る頃にはすっかり元気になったんですが私のことを強く育てたかったお父様は常に私にこう言いました。」


「お前は「緑山」家の子だから上に立つ者として決して人に舐められないように堂々と振る舞いなさい」。

それが彼女の父であり世界政府の「政の鬼」と呼ばれる「緑山(みどりやま)康紀(やすのり)」さんからの仰せだったそうです。

俗に言う「親ばか」のうちのお父様とは大違いで自分には知らない感覚ですが


「お父様のその話はあの頃の自分にとって呪いのようなものだったのです。」


その時に彼女の心を押し付けていたその言葉の重さはたったの幼稚園入学を控えている子供に耐えるには想像以上のものだったということだけははっきり分かることができました。


「お父様はただ私のことを案じてあんなことを言ったんです。お父様には妹、つまり私の叔母さんの作戦途中の死亡というつらい過去があっていかなる友も自分のことを優先して欲しいという歪んだ愛情がありましたから。」


軍人であった緑山さんの叔母さんは避難民の救出作戦の途中、テロリストによる砲撃でその場で亡くなりました。

そして彼女の友人であった緑山さんのお母さんと兄であるお父さんが結婚して今の緑山さんを生んだ。

妹さんの死後、お父さんは変わってしまったという緑山さんの話はとても悲しくてつらいものでした。


「「緑山」家の家訓は「進撃」「勝利」、そして「征服」です。

お父様は自分の名も捨ててそれにふさわしい子を育てると決めて私を強く育てました。

そのおかげで私は誰にも負けないくらいに堂々とした人になりましたがその代償としてあまりいい交友関係を持てなかったのです。」


「緑山」家の子として生まれ持った歴然とした力の差。

欲しいものがあればどんな手を使っても手に入れ、気に食わなければ口より手の方が先走ってしまう傲慢で身勝手な子。

そんな自分に変えられるきっかけを与えたのが人生初の友達であったみもりちゃんだと彼女はそう話しました。

緑山さんの両親は彼女の教育方針をおいてよく言い争うようになったそうです。


「今は少しマシになりましたがあの時はどうしようもないおてんば娘だったんですよ、私。

なんでも独り占めして欲しいものがあれば暴力を使ってでも手に入れなきゃ気がすまなかった。

偶に向かってくる男の子達もいましたが一度ボコボコにしておけば二度と歯向かおうとはしなったので特に問題ではなかったんです。」


でもそれを繰り返しているうちにいつの間にか一人ぼっちになっていた自分。

その時、彼女は初めて自分の行動に大きな疑問を抱くようになったそうです。


そしてその楽ちんな生き方を一気に捨てるようになったきっかけというのが


「初めてだったんですよ。私のことを好きって言ってくれた人は。」


誰も来てくれない誕生日パーティーにたった一人で現れたみもりちゃんのその一言でした。


幼稚園に入ってから初めての誕生日。

両親は盛大なパーティーを用意しましたが


「誰も来なかったんですよ。」


皆緑山さんのことを避けて誰一人会場に現れませんでした。

彼女はそれ以上涙を堪えなかったとあの頃の心境を私に正直に言ってくれました。


その時に現れたのが将来彼女の王子様となるみもりちゃん。

緑山さんは彼女だけは絶対来ないと思い込んでいたから突然の彼女の登場に戸惑いのあまりしばらく呆然としていたらしいです。


「あの子だけは絶対来ない、そう信じてました。だって私、初対面でこう言ったんですよ?

「あなたは私は格が違うから友達にはなれません。」って。

あの時、みもりちゃんギャン泣きになっちゃって…」


一瞬だけでも大好きなみもりちゃんにあんなことを言ってしまったことを心の底から後悔している緑山さん。

その同時に彼女はあの時、みもりちゃんが自分に会いに来てくれたことに今までのどんなことより大きな感謝の気持ちも抱いていたのです。

それを私は今彼女の懐かしさと愛情がいっぱい詰まった目を見て確信しました。


そして彼女はつけておいた髪飾りを外して私に見せながら


「これはあの時にみもりちゃんからもらった人生初の友人からの誕生日プレゼント。

私の一生の宝物です。」


初めて私に自分の宝物を教えてくれました。


裁縫も甘くてお世辞でも決していい出来とは言えない雑な髪飾り。

でもそれを見ている彼女の表情には幸せと愛情がいっぱい込められていて私はそれこそ彼女の宝物に間違いはないということが分かるようになりました。


お母さんから教えてもらって私のために一生懸命作ってくれた髪飾り。

でもそれ以上彼女を幸せにしたのは


「私…!ゆりちゃんのことが好き…!お友達になりたい…!」


というみもりちゃんの心からの一言でした。


「その一言がなかったら今も私は自分勝手でただ力でねじ伏せる無頼漢みたいに振る舞っていたかも知れません。

みもりちゃんを知ってみもりちゃんのことが好きになってみもりちゃんのことを愛するようになった私はみもりちゃんによって救われたのです。

そしてその気持ちは今も変わりありません。」


溢れ出てくる大切という気持ち。

その気持ちを自分の目で確かめることができた私は改めて思い知らされてしまいました。


「やっぱり私の入りそうな隙なんてないんですね…」


その固い絆に自分が割り込むところなんて一つもない。

分かってはいた事実でもこうやって目の前に突き出されてしまうのはやっぱりつらいことだと私はあえて自分の気持ちを抑えつつそう思いました。


パーティーが終わって帰りのみもりちゃんは窓から自分の姿を見ていた緑山さんの視線に気がついて彼女に向かって大声でこう言ったそうです。


「私…!ゆりちゃんのことが大好きだから…!これからももっともっと仲良くなりたいよ…!」


っと最後に「また明日!」っと言って夕暮れの中に消えてゆくみもりちゃんを見て生まれて初めて胸がいっぱいになったという緑山さん。

その夕焼け色の笑顔は今も記憶の中でキラキラと輝いていると彼女は懐かしい表情で自分の思い出を優しく撫で下ろしていました。


そして


「わたち…!みもりちゃんのことが好きになっちゃったんでちゅ…!」


ついに始まった「みもりちゃん命」。

それこそ伝説の始まり、狂った恋の幕開けでした。


「だからこそ奪われてはいけませんでした。」


そして一緒にいるうちにどんどん強くなったみもりちゃんへの気持ち。

みもりちゃんへの気持ちが強けば強いほど同時に深まる所有欲。

その強烈な感情に彼女は耐えることも、凌ぐ術も持たなかったのです。


「みもりちゃんが他の女の子と話すのがどうすることもできないくらい嫌だったんです。

男の子なんて以ての外。

みもりちゃんが私ではない他の子と話しているところを見るとこの胸が焼かれるように痛かったんです。」


最初はちょっとした焼き餅で始まった気持ちがどんどん膨らんでやがて執着と狂気になって自分だけではなく相手のことまで焼き払ってしまう。

それを分かっていても彼女は自分の走り出した気持ちを止まらせられなかったのです。


「だから私はみもりちゃんの世界を自分で制限しようとしました。みもりちゃんの傍にいるのはいつだって自分だけ。

みもりちゃんには私がいなければ生きられないように何年も掛けて念を入れて私はそれを「愛の囁き」と名付けました。」

「世間では()()と言うんですよね…それ…」


重い…そして怖い…


でも彼女の話から私は彼女にとってみもりちゃんの存在がいかなりものか改めて認識することができました。

生きる甲斐、意味、そして目標。

彼女にとってみもりちゃんはもはやただの仲良しの幼馴染ではなく自分のすべての未来を掛けて守るべきのかけがえのない宝物だったのです。


「だからこそあなたの存在を認めさせられませんでした…

みもりちゃんがあなたのことを知ることで自分の世界を広げて私から離れることだけは防がなければならなかったから…」


そしてみもりちゃんはその同時に彼女のことを縛り付ける最も強力な足枷となって彼女の思考を麻痺させ、判断を鈍らせる。

自分がみもりちゃんのことに執着すればするほどそれと同じく自分の首を絞めることになるというのを彼女はあまりにもよく知っていました。

渇望するほど満たされない虚しさ。

それこそ自分をダメにする毒でありながら止められない甘い蜜だと彼女は私に自分の柵をそう説明しました。


こんな大事なことを私に話す理由はただ一つ。


「そんな嫌いなあなたに私の昔話をするのはただ昔のお礼を兼ねたお詫びをしたかっただけ。

あなたが今も私の敵であることに何の変わりはありませんから。」

「そ…そうですか…」


彼女がやっと私と向き合うことを決めてくれたからです。


今まではただ口を利く価値もないただの邪魔者に過ぎなかった。

でも自分と話すためにこんなところで来た私の本気にやっと同じ相手を置いて競い合う対等な「ライバル」と見てくれた彼女は今度は自分の方から本気を見せてやると腹をくくったのです。


「私はただみもりちゃんと緑山さんのことを応援したいだけなんですけどね…」

「別に関係なんですよ、そんなもの。」


っと言う私に「フンッ」と鼻であしらって目をそらしてしまう緑山さん。

でも私は彼女から自分の話をしてくれたおかげで前より彼女のことをよく理解できるようになったことに大きな喜びを感じるようになって少しだけですが彼女に寄り添えたような気がしました。

意外にちゃんと可愛いところもあるんだなって思ったその時、私はふと数日前にみもりちゃんから聞いたある話を思い出すようになりました。


「ゆりちゃんにはもっと広い目で世界を見て欲しいんだ。ゆりちゃん、いつも私のことばかりでそれ以外は別にどうでもいいって言ってるから。」


いつまでも自分のことに縛られていることではなくもっと広い世界に向かって思いっきり走り出して欲しい。

もっとたくさんの人と出会って心も、考えの視界も広げて欲しい。

みもりちゃんは彼女の成長を心からずっと願い続けてきてたのです。


「だったらやっぱりもったいないじゃん。ゆりちゃん、本当にすごいんだから。」


っとそう言いながら笑ってしまうみもりちゃんのことを見た時、私は気づいてしまったのです。

みもりちゃんは決して彼女に縛られていたわけではない。彼女のその気持ちさえ受け入れてずっと傍で見守っていたということを。

そしてその同時にその中に自分が入る余地なんて端からなかったことに思い知らされてしまったのです。


どんなに時間が経ってもあの子にとって私はただの友達。

決して振り向いても、肩を抱いてもしてくれない。

でもそれこそ彼女達のためであることをよく知っていた私は今はただ自分の役目をはっきり自覚してそれに務めるだけ。

そう自分に何度も言い聞かせ、宥めて私は今ここにいるのですがやっぱりこの寂しさだけはどうすることもできないと私は人知れずその苦い思いを自分の胸のどこかに放り込むことにしたのです。


「怖いんです。みもりちゃんと別れるのが。」


そしていつの間にか誰にも見せない自分の弱さを私にだけそっと打ち明ける緑山さんのことに今はただ自分ではなく目の前の彼女のことに集中することを選んだ私はまた自分の心を慰めてあげられなかったのです。


でも溜め込むだけで消化できずただひたすら淀み続けたそのどす黒くて腐敗した感情が自分を殺す毒となることを私はまだ気づかなかったのです。


「それは私がみもりちゃんのことが大好きになった以後の幼稚園での話です。」


そしていつの間にか始まった緑山さんの2つ目の話。

あそこで私は一体彼女が恐れているのが何なのか、そして彼女が感じた恐怖を間接ながら共感することができました。

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