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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第4章「みもゆり」
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第87-22話

昨日腰を痛めてしまいました。運動不足気味なのでしょうか。


いつもありがとうございます!

「こちらの写真、見てくれませんか?」

「写真…?」


話の途中、急に私に見せたいものがあると一枚の写真を財布から取り出して見せる黒木さん。


「これ、入学した頃の私の写真なんです。」


そこには伸ばした前髪で目を隠している表情に自身を持たない俗に言う陰キャの少女が写っていました。


どうやって前を見るのかなと思われるほど長く伸ばした前髪。

今の派手なメイクや金ピカの装身具はまったく見当たらない地味で隠しきれないほどの陰気臭さを放っている彼女は今年私とみもりちゃんがこの学校に入学した時、一緒に入学した魔界の姫様でした。


今の華やかな姿からまったく繋がらないあまりにもイモい過去の彼女の姿に私は一瞬言葉を失ってしまうようになりましたが


「えへへ…あまり可愛くないんですよね…?昔の私…」


誰よりも彼女自身こそ自分のことを恥じらっていたゆえ、私は何も言わないことにしました。


「実は子供の頃からずっとこんな感じだったんです…みもりちゃんと緑山さんのことを知って時からずっと…」


そう言われた時、私の記憶から蘇ってくるあの頃の記憶。

私が彼女の存在を知った時、確かに彼女はこんな姿であったことをまもなく私は思い出すことができたのです。


「今のがお姫様…ですか?」


最初に彼女の存在を知ったのはみもりちゃんとのロコドル「フェアリーズ」の活動を初めてからまもなくの頃。

ある日、私達「フェアリーズ」が所属している市役所にある少女が訪ねてきました。


ちょうど先程の黒木さんから見せてもらったような目の下まで前髪を伸ばした褐色肌の小柄の女の子。

今はこんなに背も大きくなって胸も凄まじくなりましたがあの頃は多分自分より小さかったと思います。


何人かの付き添いさんを同伴した彼女はちょうど市役所の入り口を通り過ぎていた私のことを見かけて一走りに駆けつけてきて


「あ…あの…!「フェアリーズ」の「緑山百合」さん…ですよね…!?」


嬉しそうな顔でこう話をかけてきました。


当時「フェアリーズ」は活動開始から随分時間が経ったことにも関わらずまったく人気が出なくて苦しい一時を過ごしていました。

特にみもりちゃんの場合は


「どうしよう…ゆりちゃん…私、やっぱり皆の力になってないのかな…」


っと自分が地元のために、そして皆のために何の役にも立ってないと思ってすごく落ち込んでいました。

そんなみもりちゃんをなんとか元気づけたくて


「だ…大丈夫ですよ…!みもりちゃん…!だってみもりちゃんは私の光であり生命の源ですもの…!」


っとフォローしたり自分なりに頑張ってみましたが


「うん…ありがとう…ゆりちゃん…優しんだね、ゆりちゃんは…」


それは却ってみもりちゃんに気を遣わせてしまうだけで何の慰めにもならなかったのです。

なんとかみもりちゃんを元気づけたかった自分はその頃、みもりちゃんだけのためのパーティーを計画していてそれに頭がいっぱいでしたが正直に言ってアイドルなんてどうでも良かったと思います。


自分がみもりちゃんと一緒にアイドルになったのは単にみもりちゃんのキラキラな笑顔を自分一人で独り占めしたいって思ったからだけでぶっちゃけ言って他の人のことなんて眼中にもありませんでしたからむしろその状況は私にとってチャンスも同然なものでした。

最初から私だけを見て歌って笑ってくれるアイドルのみもりちゃんが見たかっただけでみもりちゃんが落ち込むのは嫌だけどこれをうまく利用すればみもりちゃんは一生自分一人のものになる。

今思えばあの頃の自分はアイドル失格でした。


そんな私の価値観をひっくり返したのが彼女、「黒木クリス」、本名「ニトクリス」の登場だったのです。


「わ…私…!「フェアリーズ」の大ファンなんです…!いつもお二人さんの歌で元気をもらっていて…!」


憧れの人に会えてなんと言えばいいのか分からないような燥いだ顔。

初めてのファンから言われる応援の言葉は当時アイドルにまったく興味のなかった自分でさえ天にも昇るような嬉しさを感じてしまうほど大きな力になってくれました。


「あ…ありがとうございます…すごく嬉しいです…」

「ほ…本当ですか…!?良かった…」


っとお礼を言う私に


「こ…これ…!心を込めて一生懸命書いたものです…!良かったらみもりちゃんと一緒に読んでください…!」


自分で書いたというファンレターを渡してくる黒木さん。

あの時の彼女の浮かれて弾けそうな顔を私は今もはっきり覚えています。


「じゃ…じゃあ…!これからも頑張ってくださいね…!ずっと応援します…!」


っと最後の言葉だけを残した後、彼女は付き添いの人達を連れて慌てながら市役所から離れたのです。


「あ…あの…!お名前でも…!」


っと私は彼女を呼び止めようとしましたが


「あ…行っちゃいました…」


彼女はもうあんなに遠くなって結局私は最後まで彼女の名前を聞けなかったのです。


人生初のファンレター。しかもファン自ら届けにきてくれた大事な応援のメッセージ。

胸のそこから何かグッときてこんなにドキドキで胸がいっぱいなる。

その時、私は初めてアイドルになって良かったと思いました。

後から聞いた話によると彼女は療養のため私達の町にきた魔界のお姫様でとにかくすごく偉い人であることは私をもう一度驚かせてしまったのです。


「どこか痛いんですか…?」


療養ということは体のどこかに何らかの問題を抱えているということ。

自分達を応援してくれる大切なファンがあのような状況に置かれているということがすごく心配になった私でしたが彼女の病気については誰も知りませんでした。

確かなのはそれは彼女の命に関わる大事な問題であることで私はいつか彼女のためにみもりちゃんと一緒に彼女の前で歌ってあげたい。

みもりちゃん以外の人のことを心から思ったのはきっとあの時が初めてだと思います。


でも


「初めてのファンレター…!めっちゃ嬉しいよ…!そうだようね…!?ゆりちゃん…!」


その夜、みもりちゃんに彼女からファンレターを届けてたから状況は一変するようになりました。


アイドルになってから最初から見られなかったみもりちゃんの笑顔。

そして自分には最後までみもりちゃんを元気づけることができなかった。

ただ応援してくれるファンということだけでいとも簡単にみもりちゃんの笑顔を取り戻してしまう彼女のことに私は人生初の敗北感と屈辱感を味わうようになってしまいました。


「嬉しい…!本当に嬉しいよ…!私達、これからももっと喜んでもらえるように頑張ろう…!」


っと心から喜びながら張り切っていたみもりちゃん。

でもそんなみもりちゃんとは違って私は彼女の存在を思わしく感じられなくなってしまったのです。


数時間前まではみもりちゃんと同じく喜んでいた自分。

でも新しく自覚できた彼女の存在に私はかつて感じたことのない凄まじい敵意を抱えるようになったのです。


「みもりちゃんを笑顔にするのはいつだって私…私からみもりちゃんを奪おうとするのは誰でもぶっ殺します…」


その時、自分は嫉妬の感情に飲み込まれた妬みの化け物に入れ替わっていました。


その後、彼女は何度もロケに顔を出して私達のことを遠いところから眺めたり匿名でファンレターを送ったりしましたが


「もう二度とあなたとみもりちゃんの間に繋がりなんて作らせません…」


私はことごとく彼女とみもりちゃんの仲を邪魔しました。


「フェアリーズ」に関することは全部自分を通してから進めるように指示して彼女との接続を全面的に遮断。

ファンレターや贈り物は全部自分で処分するようにしました。

何度もちぎって捨てようとはしましたがさすがに私もそこまではできなかったので今も実家の倉庫に彼女からの手紙などが保管されています。


ただみもりちゃんのことが大好き過ぎた上での行動。

大人げないのは承知の上ですがそれでもそうするしかなかった。

私は初めて現れた恋敵である彼女のことを心から恐れていました。


それでも彼女は私達がいるところなら必ず来ました。

話を掛けることもなくただ遠いところからずっと見守るだけ。

きっと自分が私に嫌われていることに気づいたはずの黒木さんはそれでも「フェアリーズ」のことをファンとして愛してくれました。


やがて「フェアリーズ」が歴然としたローカルアイドルとして皆に認識される頃、彼女は突然姿を消し、二度と私達の前には現れなくなりました。

ファンレターも、贈り物も届けられることもせず完全に私達から消えてしまった黒木さん。

あの時、私はやっと目の上のたんこぶが取れたようなスッキリした爽快な気分でしたが心のどこかで少し寂しさを覚えるようになったのです。


そして自分が思い出したこの記憶のことを遠い未来の今自分の前の前にいる彼女の口から聞かせられた時、自分は


「知ってました。緑山さんがみもりちゃんのことで私のことを嫌っていたのは。やっぱり悲しかったんです。」


あの時の彼女の気持ちと


「それでも私はやっぱり緑山さんのことがみもりちゃんのことが大好きで仕方がないんです。」


今も変わってないその真っ直ぐな愛情の大きさを改めて気づくができたのです。


「だからこそみもりちゃんと緑山さんは一緒でなければならないと思います。」


ふと私の手を握ってくる黒木さん。

その突然な行動に一瞬戸惑ってしまう自分でしたが


「あなたの「楽園」はずっとお傍にいました。」


その一言で私は気づいてしまったのです。


「この人…」


彼女こそ誰よりも私とみもりちゃんは一つになるべきだと思っている人であることを。

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