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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第4章「みもゆり」
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第87-20話

いつもありがとうございます!

自分から一本でも取ったら私の「影」への復帰を認め、しかも「女将」さんのジン様への積極的なアピールも約束した薬師寺。

未だにみもりちゃんは彼女のことを「薬師寺さん」ってさん付けまでしているらしいですが私にとって薬師寺はぶち殺すべきの敵。

去年その女がみもりちゃんを連れて行ったせいで私達の青春はめちゃくちゃになっちしまったのですから。しかも今年一度みもりちゃんの前に現れやがってみもりちゃんのトラウマをけしかけて…

まあ、元々の原因と言ったらあのクソババアのせいなんですがとにかく私は彼女のことが嫌いです。


いつも私のことを「お嬢さん」と舐めていて


「ここは子供の遊び場ではありません。」


っと子供扱いしやがって…

私だって一応一人前の「ベルセルク」で実力だけならば上からも十分認めてもらっているつもりなのに…


でも私と薬師寺の間には大きな崖のような差があって何度仕掛けてもきっと彼女には届かない。

戦うところを見たこともないのにもう弱気になっていると思われるかも知れませんがそれほど彼女は規格外の怪物ということです。

武器として何を使うのか、好む戦い方は何なのか、特化している戦術は何。

どこからどう攻めたらより効果的なダメージを与えられるのか見当も付きません。


「でも今の私ならきっとできます。」


自分の心に弱気なんかが突き込む隙は見せない。

私はただひたすらこの拳で私達の前を立ちはだかる全ての障害物を打ち砕き、粉砕して道を切り拓く。


そう思った私は歯を食いしばって今はただ前だけを向くことにしました。


「それにしても…」


薬師寺のことは近いうちに決着を付けるとしても…


「そろそろみもりちゃん成分が薄くなってきましたね…」


震えている手。

今はタバコをお止めになったお父様も確か禁煙初期にはこういう症状だったことを私はよく覚えています。

全身が震えて落ち着かない不安状態は何時間も続いてどうしてもタバコの考えが頭から離れないとお父様はそうおっしゃいました。

そして今私はそれと同じく「みもりちゃん禁断症状」に陥ってパニック発作を起こす寸前でした。


「でも大丈夫です。こういう時のためにー…」


っと私がカバンの中から出したのは


「スーハー…やっぱりみもりちゃんのタイツは落ち着きますね♥」


夕べ洗濯かごから取り出してきたみもりちゃんの2日履きの黒タイツでした♥


鼻を埋め込んで息を吸い込むとタイツに染み付いていたみもりちゃんの柔らかい肌の匂いが一気に入り込んで私の精神を癒やしてくれる。

濃厚な体臭とボディローションの香り、そして僅かな小便臭っー…

おっと♥ここからは女の子の秘密でしたよね♥


全身を巡る溢れる生命力。

薬のようにあっという間に脳に直撃したその匂いは私に失いかけた元気を与えてくれる。

もう頭がぼんやりしてしまうほどその匂いに酔いしれた私はその後、しばらくその場から指一本も動かせないようになったしまったのです。


「みもりちゃんのタイツ、最高♥♥」


匂いが漏れないように念を入れた甲斐がありましたね、本当♥

まあ、みもりちゃんのものですから匂いがなくてもそれだけで風情はあると思いますがやはり匂いがあってこそようやく完成って感じ♥

だってこの芳醇な香りが味わえないのは大きな損害ですもの♥

この匂いこそ人類の守るべきの至宝ー…


「あー…お取り込み中、すみません…」


え?


みもりちゃんのタイツにもはや食らいつく勢いでこびりついていたその時、


「ノ…ノックはしたんですが返事がなくて…いないのかなって思ったんですが中からなんか妙な音が聞こえて心配になっちゃって…」


私がいる部屋に勝手に入ってきたのは今回の事態における全ての元凶、


「黒木…さん?」


「魔界王家」第1王女、次世代「ファラオ」、「幻想王」「黒木クリス」、真名「ニトクリス」でした。


褐色の肌と黒紫の長い髪の毛。

豪華な黄金のアクセサリーなどをいっぱい付けた金ピカの魔界のお姫様。

何より先輩並のすさまじい大きさの胸は相見える必要性もなく見るものに屈辱的で圧倒的な敗北感を与えてしまうほどもはや神話的と言っても過言ではものでした。


夢魔(サキュバス)王朝」の中でも規格外の存在と言われている彼女。

「守護王」と称えられた父を遥かに超えたその圧倒的な才能に果てしなく自分を小さく感じてしまうのはどうしようもない本能。

でもそんな私のことをただひたすら案ずるように見つめている彼女のことから私は何故か自分が愛する女の子と同じ優しさを感じ取ってしまったのです。


「どうしてここに…」


あまりにも突然なことに頭が追いつかなくなった私。

急すぎた彼女の登場は私に戸惑いを呼び起こさせるには十分なものでしたが…


「あ、これ…!差し入れです…!」

「差し入れ…?」


っと私に丁寧に包まれた紙袋を渡してくれる黒木さん。


「こ…これは…!」


それを開けて中身を確かめたその時、


「ど…どうしてみもりちゃんの私物がこんなにいっぱい…!」


細かい疑問は後回しにしようと思った自分でした。


紙袋を開ける瞬間、弾き飛ばすように飛び出てくる濃厚な匂い。

その中にはみもりちゃんがここ数日ずっと身につけていた身の回り品ががっしりと詰まっていたのです。


「な…なんであなたがみもりちゃんの物を…」


既に手はその紙袋に止まっているというのにそれでもみもりちゃんのことに関してはちゃんと聞いておくべきだと思った自分。

彼女のことはどうでも良いのですがみもりちゃんが関わったら話は別でこれには誠実な答えを聞かせてもらわなければ。


「じ…実はこの前のバイトでみもりちゃんにお願いしたんです…!緑山さんに喜んでもらいたいからちょっと集めてくれないかなって…!

もちろんすごく嫌がってはいましたがちゃんと集めてくれて…!」

「あ…はい…ご丁寧にどうも…」

「こ…こちらの靴下とかいかがですか…!?これ、体育の時に履いたものだってみもりちゃんが…!」

「あ…ありがとうございます…」


そんな私の要請を受け入れてこれらの経緯と出処について隠さず話してくれる黒木さん。

実際私は自分の足りない「みもりちゃん成分」を補うに足りるほどのプレゼントに大喜びしていて彼女の目的は十分達成できたと思います。

彼女が勧めてくれるみもりちゃんの履いた靴下はとてもいい匂いがして少し酸っぱくて汗臭くてとにかく最高でした。


でもただこれらを届けに来たというのにはここはあまりにも危険な場所。

いくら彼女が「魔界王家」の「ファラオ」だとしてもここに関わっている組織は「魔界王家」と世界政府に敵対しているのが殆どで言葉も通じない原生動物だっていくらでもいる。

深部よりはマシだとしてもここだってそんなに安全なところとは言えないのに彼女はどうやって何をしにこんな場所まで来たのでしょうか…


浮かび上がる数々の疑問。

彼女に対する敵意も感じる暇もなく私はただ突然な彼女の登場に困惑していましたが


「でもそれは緑山さんも同じだったと思いますから。」

「え…?」


その質問の答えとして彼女の口から飛び出たのは思いもしなかった自分の名前だったのです。


続いて私にどうしても伝えたいことがあるという彼女の話が終わった時、


「この人…」


私はほんの少しだけ彼女のことを理解できるようになりました。

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