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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第4章「みもゆり」
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第87-19話

いつもありがとうございます!

「ほ…本当に来ちゃった…」

「ここが「影」…」


紫村さんの話は本当でした。


「くれぐれも私から絶対離れるなよ、お前ら。」


っとここに来る前に何度も念を入れた紫村さん。

彼女は私なんかよりずっとこの世界に慣れている紛れもなくこっち側の関係者だったのです。


「あそこのおばあさんには随分昔世話になってな。私が今この姿でも外の世界で生きられるのは全部そのばあさんのおかげだ。」


遠い昔、一度死んだことでここの「女将」さんに世話になったことがあるという紫村さん。

普通に喋ってたからあまり気づいてませんでしたが紫村さんには「死」という苦しい経験が一度あったことに改めて思い知らさえる一時だったのです。

でも紫村さんはむしろ過去の暗い自分と縁を切るいい機会となったと謙虚にその事実を受け入れてました。


「あまりよくない連中と関わってたからな。自分のことを呪われた運命だとずっとそう思ってた。」


その時、ある人に出会ってやっと一人の人間として救われたとその出会いに感謝の気持ちを表す紫村さん。

その表情から私は初めて彼女の強い愛情を覗うことができたのです。


「ある日、その子が拉致されてそれが全部自分のせいだってことに気づいた。助けてはしたがその代わりこっちがくたばってしちまってな。」


その代償として自分が支払ったのは一つだけの命。

紫村さんはその選択を決して後悔しなかったそうです。


「あいつを失ってこっちが助かっても何の意味もない。そんなの死ぬのがよほどマシだから。

おっと。つまらねぇ話をしちまったな。この話はここで終わりにさせてくれ。」


でも私はこれ以上紫村さんの話を聞くことができなかったのです。

今は自分の話より私の方がずっと大事だってこっちのことを優先してくれる紫村さんのことに私は改めて彼女がもう何十年もこの学校の生徒達を守ってくれる理解のある人であることに気が付きました。


紫村さんが手配してくれた「影」への道。

紫村さんについて夜中学校を抜け出した私達が最初に向かったところはなんと学校から少し離れた場所にある廃工場の倉庫でした。


「あ、あったあった。」


そこで何かを見つけ出した紫村さんが私達に見せてくれたのは


「ランプ…?」


アンティークショップでよく見かける小さなランプでした。


一目で分かるほど古臭い銅製のランプ。

あっちこっちが少し欠けてはいますが使うに特に問題がないほどいい保存状態でああいうお店でいい値段で仕入れてくれそうにすごい高級感が漂っている。

一体こんなところにどうしてこんなものが隠れているのかはまったく見当がつきませんが


「おい、連れてきたぞ。」


そのランプに向かって紫村さんが声をかけた時、


「随分久しぶりなのね、さき。」


私達はこれこそ今の私達があそこに行ける唯一の道であることに気が付きました。


ランプから出てくる威厳の女性の声。

紫村さんのことをよく知っているような口調のその声は久々に会う彼女のことを心から歓迎していたのです。


「君がいなくなってからもう80年も経ったわね。体はすっかり馴染んだようで何よりだわ。」

「そんなもん一々数えるんじゃねぇよ、ババア。というかそんなの言うためにわざわざお出迎えとか来たのかよ。

だったら顔だけでも出したらどうよ。相変わらずキメェなババアだぜ。」

「あいにく今手が離せなくてね。悪いけどそういう暇はないのよ。」

「いつもそればっかりかよ。」


未だに姿を表してない声の女性。

そんな彼女に文句を並べる紫村さんでしたがその声に私は去年一度出会ったことがあって今も彼女の顔を私ははっきり覚えていました。


全身が青くて透けるシルクのような服を着飾ってた大きい体の女性。

妙な香りが漂う薄らな部屋にゆりちゃんと私を招待した彼女はベールの中から妖艶な眼差しで私達を覗いていました。


「もう少し近くに来なさい、可愛いお嬢ちゃん。」


っと私のことを近くに呼び寄せたその青い「魔神」は


「お嫁さんのために張り切るのは結構だけどあんまり無茶してはダメよ?」


一般人である私に危ないことは控えなさいと念を押してくれたのです。

叱るのではなく、それとも見下しているわけでもなくただ私のことを案じてそう言ってくれる彼女のことに私は小さな好意を抱くようになりましたが


「普段あまり人に興味を持たれる方ではありませんからみもりちゃんに興味を示されるのはとても珍しいことです。」


ゆりちゃんの話によるとそれは自分にも初めて見る珍重な光景だそうです。


そして私が彼女のことを覚えているように


「そちらのお嬢ちゃんも元気みたいで何よりだわ。」


向こうもまた私のことをはっきり覚えていました。


でもそれ以上、彼女が私に興味を向けることはありませんでした。

むしろ彼女は私の傍でびっくりした顔でこの光景を見ている


「君は…」


先輩の方に興味があったようです。


確かな理由はありません。ただそう感じただけ。

先輩には彼女のことを知っているようは気配はありませんが彼女は何故か先輩のことを知っているようが気がしてとにかくすごく変な気分でした。


「入場を許可しよう。あなた達のことを心から歓迎するわ。」


でも彼女は最後まで私の疑問を晴らしてくれないまま向こうの世界への扉を開けてしまったのです。


やがて壁の一面にあの世界への扉が現れて


「入るぞ。」


一ミリのためらいもせず足を踏み入れる紫村さん。

そんな紫村さんに引き換え一瞬怯んで迷うようになった自分でしたが


「行きましょう…!みもりちゃん…!ゆりちゃんが待ってますから…!」


先輩のその一言に背中を押されてまもなく思いを切ってもう一度決心を固めるようになりました。


「待ってて、ゆりちゃん…今行くから…」


目を閉じて息を吸い込んで深呼吸。

それを繰り返しているうちに少しずつ冷静を取り戻すことができた私は先輩から出したその手をギュッと握りしめて先輩と一緒に紫村さんの後を追いかけたのです。


通り道の光景…

はっきり言って私はあまり覚えてませんでした。


「あのババアは用心深いから選別した人員以外に道を教えてくれねぇ。最近は外部からの客も多くてそれなりにここの存在が知られてはいるけど全部自分で制御できる範囲内でやっていることで特にあそこまでの道だけはむやみに教えない。」


秘密保持のため意図的に感覚を遮断、何も感じさせない。

遠い昔、一度だけ外部からの攻撃で世界の崩壊という最悪の結果にまで追い詰められたことがあってそれ以来ここの警備は更に厳しくなったそうです。


「「Family」や「Nature」などの大物達が関わるようになったのも同じ理由。

あいつらが協力者としていてくれれば内部の統制も楽になって外の連中もむやみに手出しできないから。」


昔あそこで少しだけ活動したことがあって人並み以上に「影」について詳しい紫村さんからの話は外の世界では決して触れないことばかりでした。

どれも危険がいっぱいですごく怖かったんですが私はなんとか飲み込むことができたのです。

だってそれに準じる危険な組織の一つが自分の素性の一つで去年、その後継者として連れて行かれたんですから。

まあ、特に思い出したくはないんですけど…


「着いたぞ。」


もうそろそろかなと思った時、真っ暗な暗闇から聞こえる紫村さんの声。

気が付いたあそこには


「ここが…」


いつの間にかにぎやかな街が現れていました。


私達が入った入口からズラッと屋台が並んでいて外の人達とそう変わらない見た目の商人さんがいてとてもその恐ろしい世界とは思われないほどの賑わさがある。

信じがたいですがもんじゃのいい匂いがするここが去年私がゆりちゃんを探しに来た「影」、遠い昔「伏魔殿(パンデモニウム)」と呼ばれる裏の世界です。


「あのババアはお祭りとかとにかくそういう派手なものが大好きだからな。

ただでさえここは陰気臭い町だからこういうワイワイしたのが必要されるかも知れない。」


っとこの賑わった雰囲気は「女将」さんの趣味だって言う紫村さん。

確かにこんなところだからこそこういうのが必要かも知れないと私もそう思います。


去年私がここに来る時使ったのは今日みたいな方法ではありませんでした。

私はゆりちゃんの部屋で偶然ここまでの地図を見つけて歩いてここにたどり着いたんです。

そのことを紫村さんに最初に言った時は


「…お前、見た目と違って結構度胸あるな…」


っとすごく驚いてあの時の自分がどれだけ無謀なことをやったか改めて分かるようになりました。


そして今、私達の前に現れた


「ひぃぃぃぃ…!」


生まれて初めて見るこの得体の知れない生き物と遭遇した時、去年の私は本当に知らないうちにすごいことをやらかしてしまったことに気づいてしまったのです。


伸長はおよそ5メートルくらいでもこもこした白い毛がいっぱい生えている生物。

一見ちょっとでかいだけの毛玉と見られたりするかも知れませんが


「め…目玉…!」


その中から開かれるたくさんの目玉のことを見た時、私は驚きすぎて大声が飛び出しそうな気がしました。

でもここに来る時、


「できればあまり大声は出すなよ。騒ぎは起こしたくないから。」


紫村さんからそう言われたのでかろうじて今でも飛び出しそうな声をなんとか抑えることができたのです。


「い…行っちゃった…」


まもなくその毛玉は何もしない私達から興味を失ってすぐ離れてどこかへ行ってしまい、


「よ…良かった…何もなくて…」


やっと一息つくことができた私は安堵の胸をなでおろしました。


「あれは大丈夫だ。きっとガイドの営業とかそんなもんだろう。」

「え!?そんなのあるんですか!?」


何!?その観光地感溢れるやつは!?


ポケットからタバコを取り出して火を付けながら今のことを私達に説明してくれる紫村さん。

彼女は今私達がいる入り口の方は比較的大人しい生き物しかいないと安心してもいいと言ったのです。


「女性割引とかあるからな。割引と言っても女なら一応用心棒も必要だしそれは別料金だから一応知っておいた方がいいよ。」

「割引あるんだ…」

「言っただろう?外からのお客もいるって。」


な…なんかすごく拍子抜けになっちゃいましたね…心配して損したかも…


「お前、ここに来るの初めてじゃねって言ったんだろう?その時はどうした?」


っと私が初めて来た時のことを聞く紫村さん。


「私が初めて来た時は…」


でもその時は確かにあの人が…


「そ…それより先輩は大丈夫ですか…?」


その時、自分のことばかりで完全に忘れていた先輩のことに気が付いた私は慌てて先輩の方を振り向きましたが


「わ…私は大丈夫です…ちょっとびっくりしたんですけど…」


割りと先輩はいつもとそう変わりませんでした。


「いや…特に害を与える気はしなかったというか…」


自分でも分からない感覚。ただなんとなくそういう気がしただけ。

先輩は自分が感じたその根拠はなくても強い感覚を信じて今の毛玉に恐れる気持ちを抱かなかったようです。

たまに見せてくれる先輩のこういう不思議さに戸惑わせることも少々ありますが確かなのは先輩は常に相手のいいところだけを見ようとしていることで私達に色んなことを考えさせてしまうのです。

まるであの会長さんみたいに相手の本当の気持ちを見抜いているって感じで。


「でもみもりちゃんが怖いってなら一緒に手を繋ぎましょうか。」


でも私はそんな優しい先輩が大好きで仕方がなかったのです。


「行くぞ。早くあのバカを連れてここから離れる。」


っと先を急ぐ紫村さん。

その後を手を取り合った私と先輩は刻み足で追いかけたのです。

その時、取り合った手から伝わってくる先輩の体温に私は今の怯える気持ちを忘れることができました。

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