第87-6話
いつもありがとうございます!
「私はこれを私とみもりちゃんの愛情を取り戻すための「過程」と呼ぶことにしました♥」
っと言ったゆりちゃんのそのような行為は一日5回、1時間辺りの毎で行われました。
やり方は毎回別の方法で行われましたが決して絶頂までには至らせてもらえませんでした。
「これはあくまで私達の愛を取り戻すための一連の過程に過ぎません♥
だから私はみもりちゃんを強引に犯したりは絶対しませんからご安心ください♥」
目的はあくまで私が自分を求めるようにさせること。
ゆりちゃんは断じて私への危害を加える気はないという意思を示しました。
「私、やっぱりそういうのは愛が伴ってこそ有意味だと思います♥だってみもりちゃんと私はお互いと心が強く結ばれている運命共同体、すなわち「婦婦」ですもの♥
力づくで無理矢理にさせるなんてそんなのみもりちゃんが可哀想ではありませんか♥」
じゃあ、今の私は可哀想じゃない?っと聞きたいところですが
「ああ…♥みもりちゃん…♥私だけのみもりちゃん…♥」
どうやら今はあまりまともな会話ができなそうです…
今私が閉じ込められているところは学校から少し離れたところにある別荘だそうです。
「みもりちゃんにはずっと内緒にしてましたが本当はここから通学する予定でした♥
でもどうやらみもりちゃんには寮生活というやらに憧れがあったようで結局私一人で使うことになったんです♥」
私との二人暮らしの生活を夢見て両親に特別に用意してもらったという別荘。
今はゆりちゃん一人の個人的な場所になりましたがかつてゆりちゃんはこの場所に私が抱いていた寮への憧れほどの期待があったようです。
「ご…ごめん…察してあげなくて…」
っと気づいてあげられなかった自分の鈍感さを謝りましたが
「いいんです♥みもりちゃんのどんくささはとっくに思い知っていたつもりですから♥」
ゆりちゃんは決して素直に受け入れてくれませんでした…
本当は何度も話し合おうとしました。
ゆりちゃん、ああ見えても食事はちゃんと用意してくれて決して体に害を与えるようなことはしませんでしたから。
だからきっとちゃんと話せば理解してくれると思いったんです。
でも
「何度も言ったんじゃないですか♥みもりちゃんったら♥別に怒ってるわけではありませんって♥」
その度にゆりちゃん、別に怒ってるのではないっていつもそう言っちゃって…
「確かにあのぽっと出の不届きな女が私達の間に割り込んだ時は怒りに頭がおかしくなりそうでしたが私は最後まで冷静さを欠きませんでした♥」
炊きあがる怒りを直接ぶつけたいという気持ちも確かにありましたがそれでも最後の最後まで自分の中にその憤りを押さえつけたというゆりちゃん。
でもただ押さえるだけではなくより効果的な静め方をゆりちゃんは見つけ出し、選ぶようになりました。
「知ってます?みもりちゃん♥考えっというのは押さえれば押さえるほど強くなるということ♥
私があの女のことをいくら思い出さないように頑張ってもより強く鮮明になるだけです♥」
そこでゆりちゃんが選んだ方法は
「だから私は考え方を改めることにしました♥」
思考の切り替えでした。
人の考えというのはそう簡単に制御できるものではない。
だからこそ意識のベクターを他のところに向かわせるのが最善だとゆりちゃんはそう判断しました。
それこそゆりちゃんが強い理由の一つの要素なんですが…
「私は今回のことを自分に与えられた「試練」と考えようと思います♥」
やっぱり今回も変な方向性で頑張るようになったようです…
「し…試練って…」
夕食後の束の間のティータイム。
私はいつゆりちゃんが私にあの変な薬を飲ませるのかソワソワしながらより多い情報を得るために何度もそういう質問をやっていきましたが結局有効な情報は手に入れられませんでした。
分かったのはただゆりちゃんが今過去最高レベルの怒りでこれ以上の思考を見放したということだけでした。
「これは間違いなく試練です♥この試練はきっと私達をより強く結んでくれると私は信じています♥
はい♥みもりちゃん♥あなたのゆりの愛情たっぷりのお茶が入りましたよ♥」
っと目隠しを掛けている私が火傷しない程よく冷めた生暖かいお茶を入れてくれるゆりちゃん。
「カモマイル…かな…?」
ここで飲みたくないって粘っても結局無理矢理に飲まされてしまう。
だと言ってもまたあの変な薬が混ざっていればそれはそれで困る。
2つの選択肢を天秤にかけて自分なりに判断した結果、結局私は覚悟を決めてそれを飲むしかありませんでした。
ここでゆりちゃんの機嫌を損ねるわけにはいかないってやれるもんならやってみろとほぼヤケクソの覚悟を決めた私の思いを切った飲み干しに
「いい飲みっぷり♥さすがみもりちゃんです♥」
なんとかゆりちゃんは喜んでくれました。
舌先に触る爽やかな風味。
でも今まで味わったことのない不思議な舌触りに私は不安感を隠せませんでした。
「なんか生臭いような気がするけど…」
「うふふっ♥それがいいですよ♥とても体に効くゆりちゃん特製の漢方茶なんです♥」
特製…
「う…うん…ありがとう…」
どうか排出したものではありませんように…
って心から願う自分が嫌になるところです…
「クッキーもありますから遠慮なくどうぞ♥食べさせて差し上げましょうか?♥」
「クッキー…」
そういえば結局あの日、ゆりちゃんは私が焼いてきたクッキーを全部食べてくれたんでしょうか…
食べるとこを見たのは結局最初の渡す時だけだったしその後もあまり様子が変わらなかったからもしかしてあまり喜んでもらえなかったかなとずっと気にかかって…
あれ、作る時、クリスちゃんが一生懸命手伝ってくれてこれならクリスちゃんの気持ちもちゃんと届けられるかも知れないって思ってたのにそれがあまり伝わってないようで…
っと思いかけていた私に
「そういえば先日、みもりちゃんが焼いてくれた抹茶チョコクッキー、すごく美味しかったんですよね♥」
この間のクッキーのことのことを好評をしてくれるゆりちゃん。
ゆりちゃんは特に「ゆりちゃんのために焼いた」というところが気に入ったと言いました。
「ちょうどいい渋みと控えめの甘み♥みもりちゃんがこのゆりだけのために焼いてくれたという気持ちがグッと来るとびきりの一品でした♥もう全部食べるにはもったいないぐらいでした♥」
「そ…そんなに大げさなものではなかったと思うんだけど…」
ただゆりちゃんの好みに他の人より詳しい上で作れた手作りのクッキー。
私は自分が作ってきたお菓子をただ美味しく食べたというゆりちゃんの言葉があまりにも嬉しかったゆえ、
「ま…また作ってあげるよ…!ゆりちゃんのためなら私なんでもするから…!」
っとうっかりすごいことを口にしてしましました。
「そうですか?♥嬉しいです♥」
明らかに喜ぶ声。
でもまもなく私は
「じゃあ、そんなみもりちゃんには今宵、今回我が「緑山」家の支援の下で開発された「特別洗脳VR」を体験してもらいます♥」
自分の迂闊な発言のことを心底から悔やむようになりました。
「そのためにまず目隠しを取って光に慣れる必要がありますね♥目を痛めないようにゆっくり目を開けてくださいね♥」
っとそっと私につけていた目隠しを取ってくれるゆりちゃん。
丸一日目隠しを被されていたせいか取れたばかりはあまり前が見られませんでしたが徐々に慣れてきてやっと私は自分の目を通して状況の判断ができるようになりましたが
「え…?」
その時、私はついに自分の見で確かめてしまいました。
今のゆりちゃんは決して尋常ではない。
そのことを私は自分の身を持って思い知ってしまったのです。
「うふふっ♥ようこそ♥我が「人形の家」へ♥」
ゆりちゃんはそんな私をニコニコした笑顔で私は心の底から歓迎してくれたのです。
壁をぎっしり埋め尽している自分の写真。
私とのツーショットや子供の時の写真はもちろん私の寝顔やいかがわしいアングルの隠し撮りまで人に見られる時の自分はこういう姿なんだと思わせてしまうほどの様々な姿の自分の写真を見た瞬間、私は一瞬背筋が凍るようにゾクッとしてしまいました。
「な…何…これ…」
写真だけではない。
この薄暗い部屋をいっぱいしているのは全部私絡みのもの。
私の手鏡、私の髪留め、私の靴下や化粧品などの身の回り品はもちろん現役時代のグッズと誕生日などにやり取りになった私からの手紙が全壁に張られている。
「うふふっ♥さすがに本人に見せるのは少し照れてしまいますね♥」
っとレディーの部屋を見せられるという感に照れているゆりちゃんですがこれは絶対そういう可愛げのものではないということを今私は自分の身を持って実感しています。
何より私が一番ゾッとしたのは
「あ♥これですか♥よく撮れてますよね♥」
壁一面になっている自分の顔の写真とその上に無数に付けられている薄桜の艷やかなリップのキスマークのことでした。
これは間違いなくゆりちゃんのイチオシのリップである「Scarlet」社の「Blossom」コレクションの「No.15」。
それはつまりゆりちゃんはこれを付けた自分の唇で大きくプリントした私の写真を埋め尽くしたということです…!
食い尽くす勢いで自分の顔に付いている満開した桜のような数多なキスマーク。
そして私は今、もうすぐ現実の自分がその目に遭いかねないという事実を悟ってしまいました。
「これでゆりの愛を少しは分かっていただけたんでしょうか♥」
やっと視野に入る久々のゆりちゃんの顔。
でもそこに宿っているのはただひたすらの深淵と盲目的な愛情だけでした。
キスマークの写真だけが目を引くものではありませんでした。
私のためにゆりちゃんが部屋中の照明を控えめにしてくれたおかげでそろそろこの薄らな部屋に慣れてきた頃、私は今の自分がたくさんのマネキンに囲まれていることに気がついてしまいました。
「なにこれ…!?こわっ…!」
っとまるで自分が死者の兵士達に墓を守られる古の王になった気分になって思いっきり驚く私に
「あ♥これですか♥」
近くの一つを取り寄せて説明しようとするゆりちゃん。
その顔があまりにも落ち着いていつものようだったのでそこから生まれた乖離に私は更に動揺するようになりました。
「これは特注した「みもりちゃんドール」です♥みもりちゃんとそっくりですよね?♥」
っと私の間近でその人形のことを紹介するゆりちゃん…!怖いってば…!
まるで鏡と合わせているような不思議な感覚。
でもそれは決して好奇心などの感覚ではなくただただ不気味で不愉快な気分に過ぎませんでした。
「これが…私…?」
身長、スリーサイズ、顔持ちから肌の触感や綿毛などの細かいところまで完璧に再現したそのドールはいかにも「ドッペルゲンガー」と呼ぶに足るとにかくすごいものでした。
私の私服まで着せてもはや私の分身と言ってもいいほどのすさまじいクオリティーに私はその次の言葉を失ってしまいました。
「これ、結構お高いですよ?♥さすがにお父様に軽く叱られましたがそれでもなんとか全部用意してくださったんです♥」
っと若干困りそうな顔をするゆりちゃんでしたがこれがちょっと怒られることで済むこと…!?
っというか甘やかしすぎ…!おじさん…!
こういうのがこの家に何体も…私…なんでゆりちゃんがここを「人形の家」って呼んでいるのか分かっちゃったかも…
っと思いっきりドン引きしている私に
「でもまあ…♥やはり本物のみもりちゃんの可愛さには到底敵いませんけどね…♥」
ゆりちゃんはただそう言うだけでした…
「それじゃ、始めましょうか…♥私達の愛を取り戻す「愛の革命」を…♥」
そして私の試練はまたそこから繰り返されたのです…




